出典:日本薬学会第136年会講演ハイライト集 一般学術発表 ハイライト要旨 生物系薬学 生物化学 細胞分裂・周期調節 副作用がない新たな抗がん剤を目指して 〔鹿児島大院医歯/鹿児島大院理工〕川畑 拓斗 多くの抗がん剤は正常細胞の DNA も攻撃するため、強い副作用や DNA 変異による新たな 発がんのリスクが発生します。近年の研究から、DNA 変異を与えず、がん細胞を優先的に死 滅させる「核小体ストレス応答」という、ヒトの体に備わったがん防御反応が明らかになって きました。私たちは抗がん剤を探索する新たなシステムを構築し、核小体ストレス応答反応 を利用した候補薬を得ることに成功しました。 27S-am14S 生物系薬学 核小体の完全性維持機構による細胞分裂制御と抗腫瘍薬の開発 生物化学 脳・神経系 ネズミのひらめき 〔東大院薬〕牧野 健一 私たちは問題に直面したとき、瞬間的にその問題の答えをひらめくことがあります。こう した結論への突然のジャンプは「洞察学習」 (アハ体験)と呼ばれ、ヒトなどの霊長類を対象に 研究が行われています。今回、私たちは、げっ歯目であるラットが、洞察学習に類似した突 然かつ急峻な学習曲線を示すことを発見しました。この成果をもとに「ひらめき」の脳内メカ ニズムの解明に挑みます。 27U-pm12S 生物系薬学 ラットにおける洞察による学習促進 薬理学 薬効・安全性評価 3Dプリンタで創薬向けヒト肝臓モデルを構築 〔サイフューズ アプリケーション研〕木澤 秀樹 製薬会社では前臨床段階での創薬研究を加速化するツールが求められています。私たちは このニーズに答えるべく、独自のバイオ 3D プリンタ「レジェノバ」を用いることにより、機能 が 2 ヶ月以上持続する小さなヒト肝臓組織の構築に成功しました。薬物代謝だけでなく、種々 の代謝に関連した遺伝子の発現も長期間保持されていますので、前臨床段階での初期から後 期の幅広い研究用途での応用が期待できます。 29AB-pm009 28 バイオ3Dプリンターで作製したヒト肝臓構造体が高い薬物代謝機能を 長期間持続する 出典:日本薬学会第136年会講演ハイライト集 薬学会ポスター要旨 バイオ 3Dプリンターで作製したヒト肝臓構造体が高い薬物代謝機能を長期間持続する 長尾映里 1、張光元 1、○木澤秀樹 1(1 サイフューズアプリケーション研) 【目的】製薬会社では前臨床段階での候補化合物のヒト毒性試験や代謝物の評価を主にヒ ト初代培養肝細胞の 2D培養系を用いて行っているが、その薬物代謝機能は 2, 3 日間しか持 続しないため、より長期間機能が持続する in vitro ヒト肝臓評価系の開発が望まれている。 しかしながら、既存の 2D および 3D 肝臓モデルで高い薬物代謝機能を長期間持続できてい る例は知られていない。そこで、我々は、独自のバイオ 3Dプリンター「レジェノバ」を用 いてヒト肝臓構造体を作製し、その機能性を評価した。 【方法】市販の非接着性 96- well plate を用いてヒト初代培養肝細胞を含むスフェロイド を作製し、9×9 剣山上に立方体の構造体 1 個当り 27 個のスフェロイドを含むようにスフェ ロイドを積層した。剣山に刺したままの構造体を 4 日間培養した後、剣山から構造体を抜去 してさらに培養を継続した。このようにして得られた肝臓構造体を以下の実験に用いた。 【結果および考察】本構造体では主要な薬物代謝酵素遺伝子である CYP3A4の発現が 2 ヶ月 以上持続し、その発現レベルは最高で Day 0 肝細胞と同レベルに達した。また、既存薬物の 長期間暴露による肝毒性を検出することができた。さらに糖、脂質、コレステロール、胆汁 酸および薬物等の各種代謝に関連する代表的な遺伝子の Day 30 での発現が Day 0 肝細胞と 比べて同等もしくは高い値を示した。このように本構造体は高い機能を長期間持続するこ とから、創薬候補化合物の前臨床での肝毒性や代謝物の評価系として有用であると共に、将 来的には生活習慣病領域(糖尿病、肥満、NASH等)での i n vitro 病態モデル構築への応用 も可能であると考えられた。 出典:日本薬学会第136年会講演ハイライト集
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