認知症支援体制の整備 第6章 1 認知症高齢者への支援の充実 認知症の人は、「精神科病院や施設を利用せざるを得ない」という考え方が一般的でし たが、国では、認知症になっても本人の意思が尊重され、「できる限り住み慣れた地域の よい環境で暮らし続けることができる社会の実現」を目指すこととしています。 このような社会の実現のため、本市においても、地域包括支援センターなどの相談支 援体制を充実させるとともに、認知症に関する正しい知識や理解の普及啓発に努めま す。 また、今後も認知症高齢者が増えていく中で、医療との連携体制を強化し、早期の段 階からの診断と対応に努めます。さらに、介護支援専門員と連携し地域における支援体 制を強化し、認知症の本人や家族に対する支援、地域で認知症の人を支える仕組みを構 築します。 (1)認知症ケアパスの構築 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 現状と課題 ・アンケートでは、要介護認定を受ける原因疾患として、「整形外科疾患」が 16.4%についで、「認知症(アルツハイマー病等)」の割合が 15.6%とな っています。 ・認知症高齢者も今後さらに増えることが予想される中、高齢者が住み慣れ た地域で暮らしていくためには、認知症に関する情報が散在するのではな く、一元化しわかりやすくする必要があります。そのために、認知症を在 宅で支援する医療や介護サービスの情報を体系的に整理するとともに、地 域や市の標準的な情報を提供できるような体制の整備が求められます。 今後の取組み ・「認知症の人やその家族が、認知症と疑われる症状が発生した場合に、い つ、どこで、どのような医療や介護サービスを受ければよいか理解できる ためのもの」すなわち「認知症ケアパス(状態に応じた適切なサービス提供 の流れ)」を作成し周知を進めていきます。 ・早期発見・早期治療への支援や住み慣れた地域で安心して生活できるよう に、かかりつけ医等の医療との連携も含めた認知症高齢者を支える地域の ネットワーク体制の整備・強化に取り組みます。 91 ■ ■ ■ 92 アウトリーチ・・・援助が必要であるにもかかわらず、自発的に申し出をしない人々に対して、公共機関などが積極的に働きかけて 支援の実現をめざすことで、実施機関が、在宅患者や要介護者を訪問して社会生活を支援する。 タクティールケア・・・手で触れることで認知症の様々な症状を緩和するケア。 (2)認知症の早期発見・早期支援への取組み ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 現状と課題 ・認知症の前段階といえる軽度認知障害(MCI)の段階で早期発見・予防をし て、年齢相応まで回復させたり、できるだけこの状態を維持することが大 切です。 ・認知症を発症しても、初期の段階であれば、薬の効果も出やすいので、で きるだけ早期に受診して症状の軽い状態を維持することが望まれます。 ・認知症高齢者の増加が予測される中、早期発見、早期治療につなげるため の医療との連携の強化が求められます。 今後の取組み ・軽度認知障害(MCI)についての相談に、適切に対応します。 ・物忘れ相談プログラムを活用し、認知症になる前段階(予備軍)の状態であ る軽度認知障害(MCI)の人を早期に発見し、早期治療につなげます。ま た、中年期や高齢期の健康づくりへの支援と介護予防、認知症予防を推進 します。 【関連する主な事業】 事業名 事業内容 物忘れ相談プログラムの活用 相談窓口や事業を通して物忘れ相談プログラムを活用し、住民 自らが脳の健康チェックに役立てることができるよう啓発。 必要に応じて訪問し、医療や支援につなげる。 【実績及び計画値】 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 平成 29 年 物忘れ相談 計画値 ― プログラム 実績値 1,244 の活用(回) ※平成 26 年度実績は見込み値 ― ― 1,100 1,100 1,100 1,086 ※1,100 ― ― ― 93 ■ ■ (3)認知症初期集中支援チーム・認知症地域医療連携の方策 ■ ■ ■ ■ ■ 現状と課題 ・認知症は、なるべく早い時期から関わり、生活環境を調整し、不安を取り 除いていけば、それまでと同じような生活を送ることができます。少しで も早くから集中的に関わり、その後の支援体制をつくっていくことが重要 です。 ・認知症高齢者の増加が予測される中、高齢者に対する保健・医療・福祉等 の多様なサービスが身近なところで早期にかつ包括的に提供できる支援体 制を確立するためには、関係機関や医師会等と連携し、認知症高齢者を支 える地域のネットワークの強化が求められます。 今後の取組み ・認知症初期集中支援チームは、専門医・医療関係者・介護関係者から編成 し、直接自宅を訪問し、本人・家族と専門医をつなぐ役割を担う支援チーム です。この認知症初期集中支援チームを編成し、認知症の早期発見・早期支 援を推進します。 (4)認知症地域支援推進員の配置 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 現状と課題 ・認知症の人が住み慣れた地域で暮らしていくためには、地域の医療機関や介 護サービス事業所及び地域の支援機関などをつなぐコーディネーターの存在 が重要です。 今後の取組み ・既に認知症地域支援推進員を配置しており、引き続き、医療と介護の連携強 化や地域における支援体制の構築を図ります。 94 ■ ■ ■ (5)地域における支援体制の構築 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 現状と課題 ・認知症になっても笑顔で暮らすことができるよう、すべての市民が認知症 を正しく理解し、協力し合いながら、認知症の人やその家族を応援する 「認知症サポーター」になることを目指します。 ・日頃からの認知症の本人やその家族への声かけや見守り、地域ぐるみでの 助け合い活動を進めることが望まれます。 ・認知症の介護者の負担を軽減するための方策が必要です。 ・認知症になっても、地域の身近な場所で地域住民が主体となった活動に継 続的に参加できるような支援の充実が必要です。 今後の取組み ・地域や企業、団体、学校などでの「認知症サポーター養成講座」の開催を進 め、サポーターを増やしていきます。また、講座の講師役となるキャラバ ン・メイトも、随時養成します。 ・認知症の人の家族の介護負担を軽減するため、認知症の人とその家族、地 域住民や専門職などの交流の場(家族介護者のつどい・物忘れ予防カフェ) を開催します。 【関連する主な事業】 事業名 事業内容 認知症サポーター養成講座 認知症を正しく理解し、認知症の人やその家族を温かく見守る 「応援者(サポーター)」を養成する講座。 茶話会(家族介護者のつどい) 介護方法や介護で困っていることを一人で抱え込まないよう、 介護者同士が集う場。ストレスの発散と介護知識を広めるため に、情報交換や介護に関する学習会などを行う。 物忘れ予防カフェ 認知症の人の家族の介護の負担の軽減を図るため、認知症の人 とその家族、地域住民、専門職等の誰もが参加でき集う場で、 認知症の本人や家族が地域で悩みを相談したり交流できる場。 95 ■ ■ 【実績及び計画値】 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 平成 29 年 認知症サポ 計画値 ーター数 実績値 (人) 茶話会(家 計画値 族介護者の つどい) 実績値 (箇所) 物忘れ予防 計画値 カフェ 実績値 (箇所) ※平成 26 年度実績は見込み値 500 500 500 500 500 500 694 454 ※500 ― ― ― ― ― 6 8 10 12 ― 5 6 ― ― ― ― ― 6 8 10 12 ― 4 6 ― ― ― 96 (6)ひとり外出見守り・徘徊 SOS ネットワーク ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 現状と課題 ・日頃の地域のつながりを活かし、見守り・声かけすることで高齢者が安心 してひとり外出ができ、徘徊行方不明を予防できるまちづくりを進めてい ます。 ・平成 22 年に「ひとり外出見守り・徘徊 SOS ネットワーク」を構築し、平 成 23 年度から対応を開始しています。 ・アンケートでも、「自治会や事業所などとの連携による高齢者を地域で見守 り、支えるネットワークづくり」が求められています。 今後の取組み ・今後もネットワークの周知と協力体制を推進するとともに、行方不明の危険 がある高齢者の事前登録を進めます。 【関連する主な事業】 事業名 事業内容 ひとり外出見守り・徘徊 SOSネットワーク 認知症(かもしれない)の方が安心・安全に外出できるよう事 前登録を行い、地域の人や協力機関の目配りにより外出支援を 行う。徘徊行方不明が発生した時には、早期発見に協力するネ ットワーク。 【実績及び計画値】 平成 24 年 平成 25 年 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 平成 29 年 ひとり外出 見守り・徘徊 SOS ネット ワーク(協力 機関)(人) 計画値 220 240 260 240 250 260 実績値 218 224 ※230 ― ― ― ※平成 26 年度実績は見込み値 97 ■ ■ ■ ひとり外出見守り・徘徊 SOS ネットワーク ひとり外出見守りネットワーク[ひとり外出を見守り、行方不明を予防] 地域の人達が日常生活を通じた目配りによってひとり外出が安心してできるシステム 徘徊 SOS ネットワーク[行方不明時の早期発見協力] 本市に登録した協力機関などが行方不明発生時に、日常業務の中で捜索協力し、早期発見する システム 98 (7)若年性認知症の人とその家族の支援 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 現状と課題 ・65 歳未満で認知症を発症する「若年性認知症」は、働き盛りで発症するた め、本人及び家族にとって、経済的・心理的影響が大きいことが問題で す。 ・若年性認知症は、病気の進行が早いため、早期に受診し診断を受けること が大切です。そして、症状が軽いうちに生活の工夫をしたり、将来の計画 を立てることが求められます。 今後の取組み ・認知症の本人や家族の思いに寄り添えるような支援ができるよう、相談援 助職の質の向上を目指します。 ・就労支援を含め、日常生活継続のために利用できる制度の周知を図りま す。 ・若年性認知症の当事者と家族の会を立ち上げ、その人らしい生活が継続で きるように支援します。 ・若年性認知症についての理解が進むよう普及啓発するとともに、本人やそ の家族の地域生活の支援に努めます。 99 ■ ■ ■
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