学校における自殺予防教育プログラム GRIP フル/ショートバージョンについて GRIP の理論的背景(生徒に獲得されるもの) 1. 「課題に挑戦し回復する力」:失敗しても立ち直るスキルと、立ち直ることができるという有能感を 経験して、 「自らを傷つけてつらさを紛らわす=自傷・自殺」パターンに陥らないことを目指す。 ① 段階的学習:否定的感情に身を任せ衝動的に行動するかわりに、自分の内的状況を客観視する こと、対処行動、相談の仕方、対処困難な状況での判断を順に学ぶ (模倣、ゲームやディスカッションなど)を通して気づきを得る ② 対人相互交渉: ③ 二者から三者に:生徒同士の相談で解決が困難な状況で、信頼できる大人に相談できる 2. ジョイナーの自殺の対人関係理論:自殺行動に影響する3つの要素の改善を体験する。 ① 自殺の実行に関わる衝動性へのコントロールを身につける ② 対人関係の負担感を緩和する「自分も友達にできることがある」という実感を得る (このクラスで)つらいときには助けてもらえる」という期待をもつ ③ 所属感の醸成「 GRIP(フル・バージョン)各プログラムの学習内容:授業時数5 No.1 マインド・プロファイリング:ワークブック「マインド・プロファイリング」を通じて、自分の感 情に気づき、嫌な気持ちに対処することができる。 No.2 マインド・ポケット:嫌な気持になった時に自分の心の健康を回復する対処法(対処スキル)を学 ぶ。そして状況に応じた対処が可能になる。 No.3 キノ:感情表現ゲーム「キノ」を通して、自分の感情を他者に伝えるには、様々な気持ちの変化や 葛藤があることを考える。また、他者に伝える際の切り出し方を知る。 No.4-5 シナリオ・コンテスト:DVD 教材を用いて友達の悩みに気づいたときの話の聞き方(ECO(エ コ)の原則)を習得する。相談できる身近な大人を見つけることができる。特に、友達の自傷行 為に気づいたときの対応方法を習得する。 No.4-5 相談コンシェルジュ:DVD 教材を用いて友達の悩みに気づいたときの話の聞き方 ECO(エコ) の原則を理解できる。特に、相談先の選択(open)について判断(choice)できるようになる。 *シナリオ・コンテストの実行が難しいときの代案。自傷を直接扱わない。 GRIP ショートバージョン 学習内容:授業時数3 生徒の発達状況等を考慮して、学習段階の途中から GRIP に取り組む場合の授業の組み合わせ。 1. No.1~No.3 自分の感情に気づくことを基本に、対処行動について学び、特に他者にうちあける練 習をする。衝動性コントロールが高まる。自殺予防の中核「相談」が学べず、効果は期待しにくい。 2. No.2~No.4 感情への気づきは前提として、対処行動と他者へ打ち明けるスキルを基本に、自分が 相談にのることも学ぶ。「相談」の経験は、負担感・所属感の改善に影響する。自傷・自殺を含む解 決困難な状況での判断についての学習が不十分となる。 3. No.3~No.5 自分の感情への気づきと対処スキルを前提に、他者にうちあける練習を基本として、 自分が相談にのる事(二者相談)、そこで困難な状況に気づき、信頼できる大人に一緒に相談するこ と(三者相談)を学ぶ。感情への気づきと対処スキルは、他の機会に学習済みである場合等に選択。
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