(平成17年6月) 光田周史 公認会計士・税理士 平成18年4月から会社経営に関する法律が全面的に見直されます! 新しい会社法は、商法第二編(会社)のほか有限会社法など複数の法律に分散 している会社法制を一本化し、現代的な表記に改めるものです。そして、私たち 利用者の視点に立ちつつ、最近の経済社会の変化にも的確に対応できるよう、会 社に関する各種制度の見直しが行われます。 その骨子をまとめますと次のようになります。 point y 株式会社の役員は1名でもOKです! これまでの株式会社では、3名の取締役と1名の監査役を置く必要がありまし たが、取締役1名だけという場合も認められることになりました。 取締役 3名 役員数 の下限 改 正 の 骨 子 ① 商法本体と有限会社法などに分かれている現行法を1つの法典にまとめ、再 編成する。 point u 削 減 監査役 1名 取締役1名だけでも可 株式会社の役員任期が延長されます! ② 明治32年制定当初以来のカタカナ文語体の商法をひらがな口語体に改める。 従来、株式会社では取締役と監査役の任期は、それぞれ2年と4年とされてい ③ 利用しやすい法制にするため、株式会社と有限会社を統合し、最低資本金の ましたが、一定の株式会社においては、定款の定めによって10年まで延長する 規制を見直す。 ことが可能となりました。 ④ 会計参与制度を創設し、創業活性化のための新たな会社類型(合同会社)を 新設する。 ⑤ 定款による会社の自治範囲を拡大し、経営の機動性と柔軟性を高める。 そこで、これらの骨子に沿って改正内容を簡単にフォローしてみましょう。題 して「知っておきたい会社法」。経営者のみなさんにとって文字どおり「知って おきたい」10のポイントをまとめてみました。 (注)会社法は現在国会で審議中であり、未だ法案の段階ですが、ここでは「会社法」とします。 pointq 取締役 2年 任 期 point i いずれも10年まで延長可 延 長 監査役 4年 (ただし、定款に定める必要あり) 会社の名前(商号)が自由に使えます! これまで同一市町村(政令指定都市においては同一行政区)内においては類似 の商号を用いることができませんでしたが、この規制が廃止されることになりま した。 ただし、同一の商号を同一の所在地で用いたり、不正目的で誤解を与えるよう 会社経営に係る法律が再編成されます! 現在、会社経営に関する法律は、「商法第二編(会社)」をはじめ、「有限会 社法」や「商法特例法」などに分散して規定されていますが、これらを1つの法 な商号については、従来どおり認められません。 類似商号の使用禁止 商 号 撤 廃 商号使用の自由化 律としてまとめ、わかりやすく再編成されることになりました。 point o ・商法第二編(会社) ・有限会社法 一本化 会 社 法 ・商法特例法 pointw 新たに「会計参与」というポストが創設されます! 株式会社の新しい機関として「会計参与」が創設されました。会計参与とは、 株主総会で選任され、会計に関する専門的識見を有する者として、取締役等と共 法律がひらがな口語体となって読みやすくなります! 同して計算書類を作成するとともに、当該計算書類を取締役等とは別に保存し、 株主や会社債権者に対して開示すること等をその職務とします。 商法はカタカナ文語体で表記されていますが、会社法ではひらがな口語体とし なお、会計参与は公認会計士(監査法人を含む。)または税理士(税理士法人 て読みやすくなります。たとえば、現行商法32条と会社法432条を比べてみまし を含む。)でなければなりません。 ょう。 会計参与 【商法32条】 創 設 ─ 会計参与 【会社法432条】 商人ハ営業上ノ財産及損益ノ 状況ヲ明カニスル為会計帳簿及 口語化 貸借対照表ヲ作ルコトヲ要ス 株式会社は、法務省令で定める ところにより、適時に、正確な会 計帳簿を作成しなければならない。 point !0 組織再編にあたっての手続が簡略化されます! 合併や株式交換などの組織再編には、原則として株主総会の特別決議が必要で すが、例外的に株主総会に代えて取締役あるいは取締役会決議による承認だけで pointe よいという簡易な手続が認められます。 有限会社がなくなります! 現在、わが国には約100万社の株式会社と約120万社の有限会社が存在しますが、 小規模な株式会社と有限会社との間に実質的な差異は少なくなったとして、会社 法では有限会社を株式会社に統合することになりました。 なお、現在の有限会社については当面現状維持とされますが、株式会社に移行 たとえば、子会社を吸収合併する場合や、株式交換による子会社の完全子会社 化(90%子会社の100%化など)などで利用されることになるでしょう。 組織再編成 株主総会の特別決議が必要 簡略化 取締役あるいは 取締役会決議で可 するための手当てが行われます。また、合名会社と合資会社については従来どお り存続します。 株式会社・有限会社 統 合 まとめ 株式会社のみ 従来、株式会社という看板を掲げている限り、3名以上の取締役と1名以 pointr 「合同会社」という新しい会社が創設されます! 廃止される有限会社に代わって、新たに「合同会社」という会社が登場します。 この合同会社では、対外的には社員(=出資者)の有限責任が確保される一方、 対内的な運営方法や利益配分については社員間で柔軟に決めることができます。 (廃止される有限会社に代わるもの) 創 設 合同会社 上の監査役がいて、資本金は少なくとも1,000万円以上、そして2年に一度 の役員変更登記をする会社という最低限の条件をクリアしていましたが、今 後はこうした条件を満たさない株式会社が市場にデビューしてくることにな ります。 また、従来なら、あえて有限会社ではなく株式会社を選択している以上、 それなりの規模と覚悟のある会社という見方もできましたが、これからは一 概にそうともいえなくなりそうです。 pointt 株式会社の資本金は1円でもOKになります! つまり、株式会社といっても、従来の有限会社よりも小規模なものが存在 しうることになり、もはや株式会社という看板だけでその会社を信用してし 従来、株式会社は1,000万円、有限会社では300万円という最低資本金規制があ まうことは少々リスクを伴います。 りましたが、この規制が撤廃されます。したがって、資本金1円という会社も設 そこで、私たちとしては、会社を看板で判断するのではなく、その中身を 立可能となります。 見透すノウハウ、つまり「会社を見る目」を養っていかなければ、思わぬト 最低資本金 株式会社1,000 万円 有限会社 300万円 ラブルに巻き込まれるかもしれません。文字どおり「自己責任」が問われる 廃 止 資本金1円の株式会社もOK 時代が到来したといっても過言ではないでしょう。
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