企業法I講義資料No.05-3 機関(2)その他の機関③ 委員会設置会社 テキスト参照ページ:173~213p、 259~264p(委員会設置会社に関 する部分) 1 Ⅰ 総説 • コーポレートガバナンス論が世界的に議論さ れるようになる中で、平成14年の商法特例 法の改正により、大会社等について、取締役 会に社外取締役を中心メンバーとする指名 委員会、監査委員会および報酬委員会を置 き、業務執行は執行役が行い、監査役を設 置できないものとする、新しい機関構造の株 式会社である委員会設置会社(平成14年改 正当時は、「委員会等設置会社」とよばれて いた)が認められることとなった。 2 Ⅰ 総説 • 委員会設置会社では、業務執行と監督の分離を推し進め るため、業務執行の決定は原則的に業務執行機関に純 化した執行役に委ねることができるものとされ、取締役会 は監督機関としての性格の強いものとなっている。した がって、取締役は執行役の指揮命令下にある支配人その 他の使用人を兼ねることはできない(331Ⅲ) • ただし、取締役と執行役の兼任は禁止されていない • 委員会設置会社の取締役会は、次に述べるように、経営 の基本方針の策定とともに会社経営に関する基本的な事 項を決定する機関でもあるので(この点で監査役と異な る)、実際に業務を執行する執行役が取締役会の構成員 として加わることが望ましいという面もあるからである 3 Ⅱ委員会設置会社の取締役会 • 会社の業務執行を決定し(意思決定)、取締 役および執行役および会計参与設置会社では 会計参与(以下、執行役等という)の職務の 執行を監督する(監督)→416Ⅰ①柱書・② • 取締役会は、その決議により、一定の専決事 項を除き業務執行の決定を執行役に委任する ことができる(取締役に委任することはでき ない):416Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ(監督機関としての性 格が強い) 4 「取締役会の専決事項」 • 限定列挙(416Ⅰ①、Ⅳ) ①経営の基本方針 ②監査委員会の職務の遂行のために必要な事項 ③執行役の選任・解任と職務分掌等 ④代表執行役の決定 ⑤三委員会を組織する取締役の決定 ⑥株主総会の招集と総会提出議案の決定 (ただし、他の委員会の権限とされる事項を除 く) ⑦ 内部統制システムの構築 5 等 取締役会の招集 • 各取締役に招集権。ただし、定款または取締役会 決議で招集権者を決定できる(366Ⅰ) • 委員会が委員の中から選定する者(417Ⅰ) – 委員会がその委員の中から選定する者は、遅滞なく、 当該委員会の職務執行の状況を取締役会に報告しな ければならない(同Ⅲ) • 執行役も、取締役会の招集請求権および招集権 を有する(417Ⅱ) – 執行役は、3ヶ月に1回以上、職務執行の状況を取締 役会に報告しなければならず、取締役会の要求が あったときは、取締役会に出席し、取締役会が求めた 事項について説明しなければならない(同Ⅳ・Ⅴ) 6 Ⅲ 委員会 ①組織・運営:指名委員会、監査委員会および報酬委員 会を置かなければならない(2⑫)。各委員会は取 締役会決議によって選定される3名以上の取締役に よって組織され、その過半数は社外取締役(2⑮)で なければならない(400Ⅰ~Ⅲ) ⇒社外取締役は複数の委員会の委員を兼任できる ※監査委員会のメンバー(監査委員)となる取締役 は、全員が当該会社の執行役または子会社の執行役・ 業務執行取締役、会計参与(会計参与が法人であるとき は、その職務を行うべき社員)もしくは支配人その他の使 用人を兼ねることができない(400Ⅳ) ・各委員会の委員は、いつでも取締役会決議によって解職 7 することができる(401Ⅰ) 委員会の招集等 • 各委員会の招集手続、決議方法、報告の省略ならびに議 事録については、取締役会に準ずる(410~414) • ただし、決議を省略することはできない(370対照) • 委員会の構成員となっていない取締役も委員会の議事録 を閲覧・謄写でき、委員会の構成員である取締役は自己 が所属しない委員会の議事録についても閲覧・謄写でき る(413Ⅱ) • 各委員会を組織する取締役は、その職務の執行に関し て、会社に対して費用の前払い、支出した費用およびそれ に対する利息の償還ならびに負担した債務の弁済を請求 することができ、会社はそれが職務の執行に必要でないこ とを証明した場合でなければこれを拒むことができない (404Ⅳ、民649・650参照) 8 ②各委員会の権限(指名委員会) • 株主総会に提出する取締役(会計参与設置会社 では取締役・会計参与)の選任・解任に関する 議案の内容を決定する(404Ⅰ) ⇒監督機関である取締役構成員の人事権を、社 外取締役を中心とする指名委員会に委ねること で、執行役からの独立性を確保する趣旨(ただ し、代表執行役が取締役を兼務している場合、社内取締 役として指名委員となることができるため、事実上の影響 力が及ぶおそれもある) 9 ②各委員会の権限(監査委員会) • 監査報告の作成のほか、執行役等(取締役・執行役・ 会計参与)の職務の執行を監査する職務権限を有し、 また株主総会に提出する会計監査人の選解任・不再任 に関する議案を決定する(404Ⅱ)⇒監査委員会によ る業務監査は妥当性監査にも及ぶ • 監査委員会の指名する監査委員は、いつでも執行役等 および支配人その他の使用人に対し、職務執行に関す る事項の報告を求め、会社の業務および財産の状況を 調査することができ、また監査委員会の権限を行使す るため必要があるときは、子会社に対しても営業の報 告を求め、その業務および財産の状況を調査すること ができる(405) 10 ②各委員会の権限(監査委員会) • 監査委員は、執行役または取締役が法令・定款に 違反する行為をし、もしくはするおそれがあると認 めるとき、または法令定款に違反する事実や著しく 不当な事実があると認めるときは、遅滞なく取締役 会においてその旨を報告しなければならない (406) • また、監査委員は、執行役または取締役の法令・ 定款違反行為により会社に著しい損害が生ずるお それがあるときは、当該執行役等に当該行為の差 止を請求できる(407) 11 ②各委員会の権限(報酬委員会) • 執行役等が受ける個人別の報酬等の内容を決定 する(404Ⅲ前段):定款で定めたり、総会決 議を得たりする必要はない⇒取締役会の執行役 からの独立性確保と執行役によるお手盛り防止 ・確定金額による支給→各個人別の具体的金額 を決定 ・不確定金額による支給→各個人別の具体的算 定方法を決定 ・金銭以外のものでの支給→各個人別の具体的 内容を決定 • 使用人兼務執行役の使用人分報酬についても報 酬委員会が決定する(404Ⅲ後段) 12 Ⅳ 執行役 i.選任・解任等 ・取締役会で選任(解任)される(402Ⅱ・403Ⅰ) ・資格:執行役は取締役であることを資格要件とする ものではない(取締役を兼任することができる: 402Ⅵ) ・執行役にも取締役と同じ欠格事由が定められており (402Ⅳ→331Ⅰ)、また公開会社である委員会設置会 社は定款によっても株主であることを執行役の資格要 件とすることはできない(402Ⅴ) ・員数:1名以上であれば良い。1名の場合はその者が 当然に代表執行役に選定されたものとされる (402Ⅰ・420Ⅰ) 13 ⅱ 任期 • 選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに 関する定時総会が終結した後最初に招集される取締役会 の終結のときまで、またはそれより短い期間(402Ⅶ) • 委員会を置く旨の定款の定めを廃止する定款変更により 委員会設置会社でなくなる場合は、当該定款の変更が効 力を生じる時に執行役の任期は満了する(同Ⅷ) • 任期満了前でも取締役会は執行役を解任でき、解任につ いて正当事由がないときは執行役は会社に損害賠償を請 求できる(403Ⅰ・Ⅱ) • 欠員の場合の措置および執行役の職務執行停止・職務 代行者については、取締役に準じる(403Ⅲ→401Ⅱ~Ⅳ、 420Ⅲ→352) 14 ⅲ • • • • 職務・権限 執行役は、取締役会によって委任された業務に ついて決定するとともに、会社の業務を執行する (418) 執行役は、3ヶ月に1回以上、職務の執行の状況 を取締役会に報告し、取締役会の要求があれば 取締役会が求めた事項について説明をしなけれ ばならない(417Ⅳ・Ⅴ) 個々の取締役と同じく、執行役にも株主総会にお ける説明義務があり(314)、また取締役会招集 請求権・招集権を有する(417Ⅱ) 会社の組織に関する訴えを提起する権限も認め 15 られる(828Ⅱ) ⅳ 執行役の義務と責任 • 会社と執行役との間の関係には委任に関する規 定が適用され(402Ⅲ)、執行役は会社に対して善 管注意義務および忠実義務を負う(民644、 419Ⅱ→355) • 競業取引および利益相反取引の規制についても 取締役と同様である(419Ⅱ→356、365) 16 Ⅴ 代表執行役 • 取締役会は執行役の中から会社を代表す る代表執行役を選定しなければならない (420Ⅰ):執行役が1名のときは、その 者が代表執行役となる • 代表執行役の解職も取締役会が行う(同 Ⅱ) • 代表取締役に関する規定が準用される (同Ⅲ →349Ⅳ・Ⅴ ) • 表見代表執行役についても表見代表取締 役と同様の規定(421) 17
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