小曽戸洋・天野陽介著

小曽戸 洋 著
『 新版 漢方の歴史─
中国・日本の伝統医学
』
(四六判・並製・二六四頁・
本体一、
七〇〇円+税 大修館書店・あじあブックス)
小曽戸 洋・天野陽介 著
『針灸の歴史─ 悠久の東洋医術』
(四六判・並製・二九六頁・
本体一、
八〇〇円+税 大修館書店・あじあブックス)
が 取 り 上 げ ら れ、
『 新 漢 方 史 』 第 二 章「 よ
文献研究の成果がバランスよく増補されて
両書は、中国をはじめとする多様なアジ
みがえる古代医学の遺物」を補う内容に
おり、入門書としてだけでなく、最新の研
ア の 文 化 を 一 九 九 八 年 以 来、 十 数 年 に わ
なっている。漢代から六朝・隋唐の展開を
たって紹介してきた「あじあブックス」の、 究動向を知る上でも有意義な改訂になって
ま おう たい
書籍によってたどる際には目録学の知識が
い る。 主 な 増 補 部 分 は、 馬 王 堆 出 土 医 書
シリーズ第七 六・七七冊目として 刊行され
援 用 さ れ る が、
『 新 漢 方 史 』 で は『 漢 志 』
た。本シリーズにおける医学史・科学史の 『五十二病方』の復元研究、六朝期におけ
そん しん じん ぎょく かん ほう
専著としては、一九九九年の小曽戸洋氏の
る 本 草 書 の 継 承、 宋 版『 孫 真 人 玉 函 方 』 方 技 略 か ら 書 籍 分 類 を 説 く の に 対 し て、
『 漢 方 の 歴 史 ─ 中 国・ 日 本 の 伝 統 医 学 』 が
等であり、資料豊富な江戸時代の記述も大 『針灸史』では『隋志』によって書 籍の散
逸・伝存が説かれる。また『新漢方史』で
最初で、本草学を取り扱った川原秀城氏の
幅に増補された。増補部分からも著者の書
の『 孫 真 人 玉 函 方 』 に 対 し て、『 針 灸 史 』
『毒薬は口に苦し─中国の文人と不老不死』 誌文献研究を基盤とする研究方法がよく看
こう こう しゅ けつ きゅう ほう
では『膏肓腧穴 灸 法』(『孫真人玉函方』に
取される。
(二〇〇一年)が続き、その後しばらく途絶
えていた。そこに昨年九月、『漢方の歴史』 「 初 め て の、 針 灸 の コ ン パ ク ト 通 史 」 と
合綴)が貴重な図版と共に収録される。こ
が大幅に増補改訂されて (一九六頁→二六四 い う 帯 の コ ピ ー が そ の 意 義 を 端 的 に 示 す
こからは両著の相互補完的な性格がうかが
える。
頁。附、年表・生薬解説・索引)新版となっ 『 針 灸 史 』 に お い て も 小 曽 戸 氏 の 基 本 姿 勢
は変わらないが、いくつかの特色も認めら
『針灸史』では中国針灸通史を説
て加わり (以下、『新漢方史』)
、更に本年一
な お、
れる。
き終わった後、あらためて日本針灸通史と
月にその姉妹篇として小曽戸洋・天野陽介
両 氏 に よ る『 針 灸 の 歴 史 ─ 悠 久 の 東 洋 医
第 一 章「 序 説 ─ 宇 宙 と 自 然 と 人 」 で は、 なる。中国と日本を前後に分けたのは共著
宇宙論・生命論・陰陽論・五行論がわずか
故か。この部分の構成にやや難があるもの
術』(以下『針灸史』)が備わった。
一六ページで分かりやすく面白く概説され、 の、
『新漢方史』同様、書名・人名索引、関
まず『新漢方史』について言えば、全十
初学者にも読みやすい。
連年表まで附した充実した一冊である。
章の章題は旧版と同一で、基本的な枠組み
は全く変わらないが、近一五年に進捗した
(町 泉寿郎・二松学舎大学)
第四章「針灸の成立」では漢墓出土医書
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