電磁気学 I

<平成27年度前期>
内容:
12. 磁場における荷電粒子の運動
電磁気学 I
磁場-序論
磁気現象に関する歴史 磁場中で運動する荷電粒子に働く力
磁場の定義・性質,ローレンツ力
第12回
井上 真澄
磁場-序論
磁場中で運動する荷電粒子に働く力
磁気現象に関する歴史
磁気の定義・性質
800B.C.(紀元前)頃 ギリシャ人はある種の鉱石が鉄の小片を引きつける
ことを発見
(ある種の鉱石・・現在マグネタイト(Fe3O4)と呼ばれるもの)
[マグネシア地方にに産することに由来]
700~800 日本での磁鉄鉱発見(続日本紀)
1296 「磁気書簡」(ピエール・ド・マリクール)
磁気の引力,磁化作用,南北極の区別などについての実験結果の
記述
1600 「磁気論(磁石及び磁性体ならびに大磁石としての地球の生理)」
(ウィリアム・ギルバート)
鉄を磁化する方法/地球自身が大きな磁石であること/地球の
磁極が南北両極付近にあること,など
1750 「人工磁石についての論文」(ジョン・ミッチェル)
「磁荷」の間に働く力は距離の二乗に反比例(逆二乗則)
[クーロンの法則の発表より前]
1820 電気と磁気の間の相互関係についてのいくつかの重要な発表・発見
[電磁気学の夜明け]
「電流の磁気作用」の論文(ハンス・エルステッド)[電流の周
りに磁場が発生]
アンペールの法則
ビオ・サバールの法則,など
<参考>
・空間の1点における電界の定義
→その点に置かれたテスト電荷に作用する単位電荷あたりの
電気力
・空間の1点における重力場g(重力加速度)の定義
→その点に置かれたテスト質量に作用する単位質量あたりの
重力
同様に,適当なテスト物体に働く磁気的な力を使って,その点での
磁場を表すベクトルBを定義 (磁束密度)
テスト物体・・・速度vで運動する電荷qの荷電粒子
電場(電界)や重力場はないと仮定
観察結果:
観察結果
F = qv × B
[ q:電荷, v:速度, B:磁場(磁束密度)]
・磁気力Fの大きさ・・・qとvに比例
・磁気力Fの大きさと方向・・・Bとvに依存
・vとBが平行 → 磁気力はゼロ
・vとBがある角度θをなす → 磁気力FはvとBの両方に垂直
磁気力Fの大きさはsin θに比例
・同方向に運動する正電荷と負電荷には反対向きの力
以上をまとめると次の式になる
F = qv × B
vとBとFの関係
(正電荷の場合)
磁場中で運動する荷電粒子
の偏向(破線)
ローレンツ力
正電荷 → Fはv×Bの方向
磁場中で運動する荷電粒子に働く力
負電荷 → Fはv×Bと反対の方向
F = qv × B
(29.1)
・・・・ローレンツ力
v×B の方向・・・右手系規則 (覚え方はお好きの方法でどうぞ)
・右手を開いて4本指をvの方向に揃えてからBの方向に向くまで曲げる
→ 親指の方向がv×B (4本指が伸びたままならゼロ)
・右手を開いて親指をvの方向に向け,他の4本指をBの方向に向ける
→ 手の平の向く方向がv×B (親指と他の4本指の方向が揃ったらゼロ)
・vとBを含む面に垂直に右ネジを立て,vの方向からBの方向に右ネジ
を回そうとする
→ ネジの進む方向がv×B (ネジが回せなければゼロ)
磁気力の大きさ
F = qvB sinθ
θ = 0, 180°
θ = 90°
(29.2)
→
F =0
→
F = qvB (最大)
(最小)
磁場(磁束密度)の単位
【電場と磁場の相違】
1. 電気力は電場(電界)の方向に作用。
磁気力は磁場の方向と垂直な方向に作用
・・・ T (テスラ)
これはWb/m2 (ウェーバー/m2)に等しい
2. 電気力は荷電粒子の速度に無関係。
磁気力は荷電粒子が動いているときのみ作用。
単位間の関係:
(電界がなく,電荷を持つ粒子が磁場に垂直に運動するとき)
3. 電気力は荷電粒子を変位させる時に仕事をする。
磁気力は磁場が定常(静的)なときは荷電粒子を変位させても
仕事をしない(運動方向と磁気力が垂直のため)。
→ 磁場のみがある空間では荷電粒子の運動エネルギーは
変化しない
(磁場は粒子の速度の方向を変えるが,速さを変える
ことはできない。)
電界も存在する場合 → 電気力qEと磁気力qv×Bが作用
電荷に作用する合力Fは
F = qE + qv × B
= q( E + v × B)
F = qvB
より
B=
F
qv
→ 1 Cの電荷が1 m/sの速さで1 Tの磁場(磁束密度)中で運動する
ときに受ける力が1 N
 N 
 Wb 
 N 
 N 
1 [T ] = 1  2  = 1 
=1 
=1 



m 
 C ⋅ m/s 
A ⋅m
 (C/s) ⋅ m 
∴
(29.3)
<参考>
CGS単位系での磁場(磁束密度)の単位・・・ G(ガウス)
(29.4)
1 [T] = 10 4 [G ]
(29.18)
・・・・これもローレンツ力と呼ばれる
地球磁場・・・ 0.5 [G] = 5×10-5 [T] 程度
超伝導線を用いたコイルの強力磁場・・・数十 T
まとめ
[例題29.1](磁場の中を運動する陽子)
ある陽子がxy平面内にあって速さ8×106
m/sで
正のx軸方向に運動しており,x軸に対し角度60
度に向いた大きさ2.5 Tの磁場領域に入る(図参
照)。陽子に作用する初期の磁気力および加速
度を計算せよ。
式(29.2)より
F = qvB sinθ
= (1.6 ×10 −19 [C])(8 ×106 [m / s])(2.5[T])(sin 60°)
= 2.77 ×10 −12 [N]
Fの向きはz軸の正方向 (∵ v×Bがz軸の正方向で,電荷が正)
陽子の質量と加速度をそれぞれm, aとすると
F = ma
F
m
F = qv × B
(29.1)
[ q:電荷, v:速度, B:磁場(磁束密度)]
・・・・ローレンツ力
磁気力の大きさ
F = qvB sin θ
θ = 0, 180°
θ = 90°
<解>
∴ a=
磁場中で運動する荷電粒子に働く力
(29.2)
→
→
(最小)
F =0
F = qvB (最大)
磁場(磁束密度)の単位
・・・ T (テスラ)
これはWb/m2 (ウェーバー/m2)に等しい
 N 
 Wb 
 N 
 N 
1 [T ] = 1  2  = 1 
=1 
=1 


m 
 A ⋅ m 
 C ⋅ m/s 
 (C/s) ⋅ m 
(29.3)
そして・・・
=
2.77 ×10 −12 [N]
1.67 ×10 −27 [kg]
= 1.66 ×1015 [m / s2 ]
磁気力の問題を考える際に重要なこと: 各ベクトルの方向の関係
を間違えないように図をイメージする(絵を描く)
図をイメージする(絵を描く)ように心がける
図をイメージする(絵を描く)
こと。