Grepafloxacin (GPFX, OPC-17116) の概要

Grepafloxacin(GPFX,OPC-17116)の
概 要
副 島林造
川崎医科大学呼吸器内科
Grepafloxacin(GPFX)は
大 塚 製 薬 株 式 会 社 に て 開 発 さ れ た ニ ュ ー キ ノ ロ ン系 の 合 成 抗 菌 薬 で
あ る 。 そ の 化 学 構 造 はFig.1に 示 す 様 に キ ノ リ ン骨 格 の1位 に シ ク ロ プ ロ ピ ル 基,5位
に メ チ ル 基,
7位 に3-メ チ ル ピ ペ ラ ジ ニ ル 基 を 有 す る 新 規 化 合 物 で あ る 。
Fig. 1.
本 剤 は グ ラ ム 陽 性 菌,グ
Chemical
structure.
ラ ム 陰 性 菌 お よ び 嫌 気 性 菌 に 対 し て 幅 広 い 抗 菌 ス ペ ク トラ ム と 強 い
抗 菌 力 を 有 し て い る 。 特 に メ チ シ リ ン 耐 性 菌 を 含 むStaphylococcus
niae,Streptococcus
faecalis等
イ コ プ ラ ズ マ,レ
ジ オ ネ ラ,ク
抗 菌 力 を 有 し,マ
pyogenes,Enterococcus
剤 はin vitroで
で,同
の グ ラ ム 陽 性 菌 に は,既
pneumo-
存 の 同 系 薬 剤 よ り強 い
ラ ミ ジ ア に対 して も強 い 抗 菌 力 を示 した 。 本
の 抗 菌 力 お よ び 良 好 な 肺 組 織 移 行 性 を 反 映 し,動
物 を用 い た 呼 吸 器 感 染 症 モ デ ル
系 薬 剤 よ り優 れ た 治 療 効 果 が 得 ら れ た 。
GPFXを
健 康 成 人 男 子 に100,200,300お
0.41,0.66,0.99お
よ び1.62μg/mlで
間 と 長 く,1日1回
あ り
,主
よ び400mgを
あ り,用
経 口 投 与 し た 時 のCmaxは,そ
れ ぞ れ
量 相 関 性 が 認 め ら れ た 。 血 中 半 減 期 は11∼12.5時
投 与 で の 治 療 が 十 分 可 能 で あ る と 予 想 さ れ た 。 ま た,本
事 の 影 響 は ほ と ん ど 受 け ず,反
∼12%で
aureus,Streptococcus
剤 の吸収 にお ける食
復 投 与 で の 蓄 積 性 は 認 め ら れ な か っ た 。 本 剤 の 尿 中 排 泄 率 は10
に 胆 汁 を 介 し て 糞 便 中 へ 排 泄 さ れ る 。 従 っ て,腎
機 能 障 害 患 者 に お い て も本
剤 の 血 中 濃 度 は 大 き く影 響 さ れ る こ と は な か っ た 。
成 人 に1回100∼300mgを
度 比:0.56倍),喀
経 口投 与 した 時 の体 液
痰0.70∼4.02μg/ml(約3倍),髄
1.3∼9.6μg/g(約5.6倍),胆
2.60∼6.44μg/g(2.1∼5.2倍),扁
あ った。
液 で0.32μg/ml(血
顎 洞 粘 膜,中
嚢組 織
膚 組 織0.12∼2.35μg/g(約1.26倍),
立 腺 液0.18∼0.53μg/ml(約1.18倍),女
桃 組 織,上
中濃
液0.06∼0.14μg/ml(約0.13倍),胆
汁6.7∼189μg/ml(約50.8倍),皮
前 立 腺 組 織3.03∼6.70μg/g(約5.65倍),前
3.99μg/g(約5.84倍)で
・組 織 中 濃 度 は,唾
耳 粘 膜,耳
性 器 組 織
下 腺,顎
下 腺0.58∼
GPFXの
臨 床 第 二 相 試 験 は ,in
中 心 に1日1∼2回
vitroの 抗 菌 力 お よ び 体 内 動 態 よ り 勘 案 し,200mg∼300mgを
経 口 投 与 す る 治 験 が 実 施 さ れ た 。 呼 吸 器 感 染 症 に お け る 有 効 率 は,咽
扁 桃 炎 ・急 性 気 管 支 炎 で は90.8%(89/98),肺
(126/143),慢
炎 ・マ イ コ プ ラ ズ マ 肺 炎 ・異 型 肺 炎 で は88.1%
性 気 道 感 染 症 で は85.1%(217/255)で
対 し て89.5%(17/19)の
菌 別 臨 床 効 果 で は,グ
有 効 率 が 得 ら れ,同
あ っ た 。 ま た,び
ま ん性 汎 細 気 管 支 炎 に
系 薬 剤 の そ れ と比 較 し優 れ た 成 績 で あ っ た 。 起 炎
ラ ム 陽 性 菌 で100%(54/54)の
有 効 率 を 示 し,本 剤 の グ ラ ム 陽 性 菌 に 対 す
る 抗 菌 力 の 強 さ を 反 映 し た 成 績 で あ っ た 。 腸 管 感 染 症 で は,948%(73/77)の
泌 尿 器 科 領 域 感 染 症 で はUTI薬
効 評 価 基 準 に よ る 臨 床 効 果 は,単
雑 性 尿 路 感 染 症59.8%(104/174),淋
あ り,全
純 性 膀 胱 炎100%(53/53),複
あ っ た。外 科領 域 感 染症 で
道 感 染 症94,7%(36/38),外
傷 ・熱 傷 ・手 術 創 な ど の 二
体 で は85.3%(151/177)の
有効 率 で あ った。皮 膚科 領 域 感染
症 で はII群91.7%(44/48),IV群86.4%(38/44),V群89.3%(50/56)で
(151/169)の
有 効 率 で あ っ た。
菌 性 尿 道 炎90.0%(18/20)で
は 浅 在 性 化 膿 性疾 患85.9%(61/71),胆
次 感 染81.8%(27/33)で
あ り,全
有 効 率 で あ っ た 。 産 婦 人 科 領 域 感 染 症 で は94.3%(50/53),耳
症 で は85.1%(120/141)の
喉 頭炎 ・
有 効 率 で あ っ た 。 複 雑 性 尿 路 感 染 症 を 除 き,い
体 で89.3%
鼻 咽喉 科 領域 感染
ず れ の領域 にお いて
も ほ ぼ 満 足 す べ き臨 床 効 果 が 得 ら れ た 。
細 菌 学 的 効 果 は グ ラ ム 陽 性 菌 で87.1%(210/241),グ
性 菌 で93.5%(29/31)の
菌 消 失 率 で あ り,in
ラ ム 陰 性 菌 で79.9%(333/417),嫌
vitroの 抗 菌 力 を 反 映 し た 成 績 が 得 ら れ た 。 ま た 複
数 菌 感 染 症 を含 め た 全 体 の 菌 消 失 率 は80.2%(747/932)で
副 作 用 と し て は 解 析 対 象 症 例1611例
精 神 神 経 系 症 状 が24件,皮
1291例
上 昇29件
中80例(6.2%)に
中65例(4.0%)に
膚 ・過 敏 症 状 が10件,そ
発 現 が 認 め ら れ,主
気
あ った。
発 現 が 認 め ら れ,消
の 他10件
な も の は,好
化 器 系 症 状 が40件,
で あ った。臨床 検査 値異 常変 動 は
酸 球 増 多22件,GOT上
昇21件,GPT
であ った。
本 剤 は グ ラ ム 陽 性 菌 に 対 す る 抗 菌 力 を 増 強 し,組 織 移 行 性 が 良 好 で 中 で も肺 組 織 に 高 濃 度 分
布 す る 特 徴 を 有 し た 薬 剤 で あ る 。 臨 床 試 験 に お い て グ ラ ム 陽 性 菌 に 対 し85.4%(228/267)の
効 率 を 示 し,ま
た,87.1%の
菌 消 失 率 を 示 し た こ と よ り,本
反 映 さ れ た も の と 考 え ら れ る 。 ま た,び
臨 床 効 果 が 得 ら れ た こ と は,本
以 上 の 成 績 か ら,GPFXは
有
剤 のin vitroの 抗 菌 力 が 十 分 臨 床 に
ま ん性 汎 細 気 管 支 炎 な どの 呼 吸 器 感 染 症 に お い て 高 い
剤 の 高 い 組 織 移 行 性 に よ る も の と考 え ら れ る 。
感 染 症 治 療 薬 と して 有 用 性 の 高 い 薬 剤 で あ る こ とが 示 唆 され た 。