試験研究だより 簡易で効果的なシロアリ検出方法

試験研究だより
試験研究だより
簡易で効果的なシロアリ検出方法
簡易で効果的なシロアリ検出方法
木材利用課
増田勝則
木材利用課 増田 勝則
1.はじめに
木造住宅の長寿命化のために、シロアリ
対策は不可欠です。そのためにはできるだ
け早くシロアリの存在に気づき、早期に対
処することが肝要です。専門的な知識や技
術が無くとも、簡単に住宅周囲の土壌中に
シロアリが生息しているかどうかを検出で
きる技術があれば、効果的です。当センタ
ーではこのシロアリ検出に利用するディテ
クターの開発を行いました。具体的には建
築物の周囲の土壌にディテクターを設置
し、土壌中にシロアリが存在した際に顕著
な摂食痕を形成させることで検出します。
2.ディテクターの特徴
ディテクターとしてはシロアリが好むス
プルースやアカマツ等の材を地面に埋設
し、一定期間後、摂食を確認することでそ
の機能は果たせるのですが、これら木材は
腐朽しやすいという性質も持っています。
検出対象は、イエシロアリとヤマトシロア
リの2種ですが、イエシロアリは腐った木
材を嫌う傾向があります。また、これら木
材は摂食される速度も速いので、摂食と腐
朽によって知らない間に無くなってしまう
こともあります。
当センターではこれまでの実験で、モウ
ソ ウ チ ク 粉 末 (以 降 、 モ ウ ソ ウ チ ク の 粉 末
に 相 当 す る も の を 素 材 と 言 い ま す )を ポ リ
プロピレンなどの樹脂と混ぜ合わせて成形
した材料(以降タケプラと言います)が、
腐りにくく、シロアリによく食べられる性
質を持っていることを発見し、これがディ
テクターに利用できないかと考えました。
室内試験の状況(右端がモウソウチク粉末)
よく食べられると早く無くなり、摂食誘引
効果もなくなります。この矛盾を樹脂と混
ぜ合わせて材料を硬くすることで解決でき
る可能性がありました。
3.検討したこと、その結果
まず、タケプラに対するイエシロアリの
摂食特性を、室内試験で間近に観察しまし
た。その結果摂食は、速度は遅いが、試験
開 始 後 間 も な く 開 始 さ れ 、 49 日 の 試 験 期
間中継続し、後にははっきりとした摂食痕
が形成されました。このことから、タケプ
ラの摂食は積極的かつ長期に継続すると予
測されました。次に素材を検討するため、
モウソウチク粉末の他に各樹種の木粉、栄
養価に富んだ綿実リンター、蒸煮処理した
モウソウチク粉末などを時計皿にいれてシ
ロアリに食べさせる選択式の室内摂食試験
を行いました。その結果、どの素材と比較
しても最も良く食べられたのは無処理のモ
ウソウチク粉末でした。一例を図1に示し
図2 ステーション(左)とその中に作られたヤス
デの巣(中)、アリの巣になった植木鉢の中(右)
図3 イエシロアリと杭状の
タケプラ製摂食誘引材に残された摂食痕
ます。次に摂食誘引方法の検討として、タ
ケプラをステーション(図2)に入れる、
杭状にして地面に突き刺す、板状にして地
面に伏せて植木鉢で覆う、顆粒状にして撒
き餌にするなどの方法を各種試みました。
その結果、ステーション方式や板状鉢伏方
式でも一定の効果はありましたが、図2に
示すようにアリを始めとする他の土壌生物
の住みかとなることが良くありました。結
局、杭状で地面に突き刺す方法が、生物の
住みかとなることもなく効果的にシロアリ
に 食 べ ら れ (図 3 )、 摂 食 痕 が は っ き り 残 る
ため、その存在を良く知ることができまし
た。
― 4 ―