徒手理学療法雑感その1 石川県リハビリテーションセンター 荒木 茂 私が徒手理学療法について知ったのは、昭和54年神奈川県リハビリテーションセンタ ー七沢老人リハビリテーション病院に勤務していた時に、スイスから富田先生が帰国され Maitland の本を見せていただいた時であった。この本を少しずつ日本語訳にしようと思っ ていたが、その時は何のことかわからず挫折してしまった。その後昭和59年辻井先生グ ループが開催していた日本整形徒手療法研究会セミナーに参加した。現在はマイオセラピ ーで有名であるがその当時はオーストラリアンアプローチ、マッケンジー、それからカル テンボルンのテクニックなどいろいろな手技の勉強会であった。この頃から徒手理学療法 を勉強する理学療法士が徐々に増えていったように思う。また、外国から講師を招いた徒 手療法の講習会が行われるようになった。石川県の有川整形外科の有川 功院長のご支援 により平成7年から平成9年にかけて、日本で初めてアメリカの Dr.S.V.Paris の Institute of Physical Therapy より講師を招き脊柱の評価と治療(S1)のコースを開催することが できた。1回のコースは定員30名であったが、日本全国から熱心な理学療法士が集まっ てくれた。通訳を引き受けてくださったのは、当時札幌医大の宮本 大の藤縄 重範先生と埼玉県立 理先生であった。8日間だったと思うが、テルメ金沢という温泉サウナ付きの ホテルの和室で宿泊しての合宿のような講習会であった。講師の先生も通訳の先生も受講 者も勉強と酒でくたくたになった。現在このコースはセントオーガスチン大学日本支部で 実施されアメリカと同じカリキュラムで行われている。金沢でのS1のコースは3回のみ の幻のコースとなったが、今振り返ってもものすごいエネルギーを持った人たちが集まっ た講習会であった。今も皆さん各方面で活躍されている。その後、藤縄先生の紹介でマー クジョーンズ夫妻の講習会、マリガンの講習会を金沢で開催することができた。 いろいろな体系のインストラクターから講義や指導を受けたことは私にとっては非常に幸 運であった。特にマリガン法は患者の自動運動とモビライゼーションの組み合わせという 今まで考えていなかった多くの臨床に役立つアイデアを提供してくれた。徒手療法に関し て1つの体系をきっちり基礎から勉強することは非常に大切なことである。しかし、他の 考え方を受け入れず排他的になってくるとその集団は宗教的な雰囲気が生まれてくるもの である。私たちは常に新しい情報を取り入れ発展していかなければならない。自分たちが 勉強した治療方法がいいかどうかは、偉い先生の権威や修了証書ではなく、患者さんが評 価してくれるものである。 -1-
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