膨張宇宙での構造形成 ∼ 簡単バージョン ∼ 羽部朝男 . . 北海道大学理学研究院物理学部門 2015 年 11 月 18 日 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 1 / 12 膨張宇宙の中の「密度が少し大きい球状領域」 膨張宇宙の中で、初期の膨張は宇宙と同じだが密度がわずかに大きな球 状領域を考える。 ある宇宙年齢の、この領域の半径を r として 1 dr 2 GM ( ) − =e 2 dt r とする。e は定数となる。M はこの領域内の質量である。これに対して、 この宇宙年齢の時の宇宙の平均密度を持つ、半径 R = r の球状の領域では 1 dR 2 G M ( ) − =0 2 dt r となる。右辺がゼロなのは、宇宙の曲率は平坦であるからである。ここ で M = 4πρR 3 /3 である。ρ は宇宙の平均密度である。 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 2 / 12 球状領域の進化の方程式 dη = dt/r (t) という媒介変数 η を導入する。時間微分は dr dr = dt rdη のようになるので, エネルギー保存の式は 1 dr 2 GM ( ) − =e 2 rdη r となる。両辺に r 2 をかけて η で微分すると dr d 2 r dr dr − GM = e2r 2 dη dη dη dη 両辺を dr dη でわると、次の球状領域の進化の方程式が得られる。 d 2r − GM = e2r dη 2 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 3 / 12 球状領域の方程式 d 2r = e2r + GM dη 2 e < 0 なら振動解, e ≥ 0 なら時間とともに増大する e = 0 のときは解は簡単 また GM 2e も解。これは、変化しないし e < 0 の時のみ成り立つ。 r =− 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 4 / 12 球状領域の方程式 e = 0 のときの解は 1 r = GMη 2 + C1 η + C2 2 これを dt = rdη に代入すると 1 dt = ( GMη 2 + C1 η + C2 )dη 2 よって 1 1 t = GMη 3 + C1 η 2 + C2 η + C3 6 2 η = 0 で t = 0、r = 0 の場合、C2 = 0,C3 = 0。さらに簡単のために C1 = 0 とする。 1 1 r = GMη 2 t = GMη 3 2 6 3GM 1/3 2/3 r =( ) t 2 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 5 / 12 球状領域の方程式 e < 0 のとき e < 0 のときは r = C1 cos(ωη + φ) + GM 2|e| ここで,ω 2 = 2|e|。 dt = rdη に代入すると t=− GM C1 sin(ωη + φ) + η + C2 ω 2|e| η = 0 のときに t = 0 とすると、φ = 0、C2 = 0 となる。さらに、r = 0 とすると GM r = C1 cos(0) + =0 2|e| より C1 = − 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) GM 2|e| 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 6 / 12 球状領域の方程式 以上から r= t= GM (1 − cos(ωη)) 2|e| GM (sin(ωη) + ωη) (2|e|)3/2 簡単のため ξ = ωη とおくと r= t= GM (1 − cos ξ) 2|e| GM (sin ξ + ξ) (2|e|)3/2 となる。 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 7 / 12 球状領域の方程式 e < 0 のとき r= GM (1 − cos ξ) 2|e| t= GM (sin ξ + ξ) (2|e|)3/2 について。r は、ξ = π で最大値 r = rmax は rmax = は、この領域の膨張速度はゼロ。よって、 |e| = GM |e| となる。rmax で GM rmax ξ = 2π で r は再びゼロとなる。このときを t = tc とすると tc = 2π 3 GM rmax = π( )1/2 2GM (2|e|)3/2 Mh = 1012 M 、rh = 100kpc のとき、rmax = 2rh とすると、tc = 28 億年。 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 8 / 12 dark hao のサイズ rh と rmax 球状領域には主として dark matter が分布している。球状領域が収縮して dark halo が形成されるとする。その時の宇宙年齢は、t = tc である。 dark halo のサイズ rh は、rh = 0.5rmax である。その理由は dark halo で は、速度 vh と rh とは vh2 GM = 2 rh rh を満たす (virial 平衡)。また、vh と rh は 1 GM GM =e=− (vh )2 − 2 rh rmax を満たすので、dark halo のサイズは rh = 0.5rmax となる。 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 9 / 12 レポート dark halo のサイズは rh = 0.5rmax となることを説明せよ。 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 10 / 12 球状領域の方程式 e > 0 の場合 同様に、e > 0 の場合には d 2r − GM = e2r dη 2 より r = C1 cosh(ωη + φ) − GM 2e ここで,ω 2 = 2e 。 GM C1 sinh(ωη + φ) − η + C2 ω 2e 簡単のため φ = 0 とする。η = 0 のときに t = 0 とすると GM r = 0 = C1 cosh(0) − 2e t = 0 = C2 t= より C1 = 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) GM 2e 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 11 / 12 球状領域の方程式 e > 0 の場合 GM (cosh(ωη) − 1) 2e GM t= (sinh(ωη) + ωη) (2e)3/2 r= よって ξ = ωη とおくと r= t= GM (cosh ξ − 1) 2e GM (sinh ξ − ξ) (2e)3/2 となる。 羽部朝男 (北海道大学理学研究院物理学部門) 膨張宇宙での構造形成 2015 年 11 月 18 日 12 / 12
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