健翔会だより45号が発行されました。

いつまでも健康な体でどこまでも
けん しょう かい
健翔会だより
45
発
行
所
香川県坂出市川津町
号
(〒762-0025)3329-14
医療法人社団 健翔会
堀
2015・10 月 1 日
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TEL
口 医 院
0877-45-8686
<担当>高橋,青北
TEL 0877-45-8686 FAX 0877-45-8883
HP
http://www.horiguchi-hp.jp
つながるようです。テロメア長は自分で長くすることはできま
せん。しかし炎症を抑制することは、かなり可能性があると考
えます。
皆さん、長寿を目指して
頑張りましょう!
堀口 裕 先生
1.当院の患者さんへ
当院は平成4年10月開院いたしました。丸23年が過ぎ、今月
から24年目に入りました。この間1万7000名余りの初診の
患者様に来院頂きました。
多くの患者様のご利用頂きましたことに、心から感謝申し上げま
す。また同時に近隣や県外の医療機関様にも、患者様のご高診を
頂き、誠に有り難く思います。開院当初70歳であった患者様は、
もう90歳を超え、現在の最高齢は97歳です。しかし正直なと
ころ、70歳であった方が90歳になられても、それほど容姿に
変わりがないように感じます。いつも診察させて頂いて、見てい
るためかも知れません。20年ぶりに出会ったとしたら、変わっ
た印象なのかも知れません。
ただ、実際にお元気ですね。20年前よりも体調が良くなって
いる患者さんが多いと思います。これからもお元気でお過ごし頂
き、人生を大いに楽しんでほしいですね。
2.元気を裏付ける指標
20年余りに亘って、同じ患者さんの経過をみておりますと、何
となくお元気さの理由が見えてきます。臨床的に、一つは免疫バ
ランスが良い方のグループです。例えば末梢血中のリンパ球割合
が30%を超え、単球割合も5%に達しています。こういう患者
さんは、常に元気さを保っています。経験的に単球割合が5%台
か、それとも4%台かでは僅か1%の差ですが、体調の良し悪し
に大きく影響しています。ご高齢になっても5%台を維持できて
いることは、とても素晴らしいことです。もう一つは炎症所見が
少ない方のグループです。例えば天候の悪い時に、きまって膝や
腰の関節痛を訴える患者さんと、全くそんな症状の出ない患者さ
んがおります。あるいは血液検査で炎症反応の CRP(C-反応性蛋
白)が高くなり易い患者さんと、いつも CRP がゼロで過ごしてい
る患者さんがおります。やはり炎症所見の少ない方は、大体にお
いてお元気で過ごされております。このように免疫バランスが良
かったり、炎症所見が少ない患者さんはお元気で過ごしやすいと
言えます。
3.炎症が低いと長寿に
先ごろ慶應義塾大学医学部の百寿総合研究センターらの研究チ
ームが、長寿にかかわる二つの要因を発見したとの新聞報道を読
みました。一つは細胞の老化を決めているテロメア長がより長く
保たれていることです。通常細胞内の染色体の末端に付いている
テロメア長が長い方が細胞老化が遅くなり、人の寿命も長くなり
ます。研究結果では、実年齢が80歳代でも、60歳代の平均値
に匹敵するテロメア長だそうです。もう一つは炎症が低いことで
す。最近マウスを使った研究では、炎症が老化を促進することが
報告されていますが、人の場合でも炎症を抑制することが長寿に
4.炎症を調べるマーカー
私どもも炎症に関して、随分早くから関心を持っていました。
これは長寿についてではなく、病気の重症度や病気の発症につ
いてです。例えば、ほぼ同じ年齢で、同じ性別の人が、同じ部
位の、同じ種類のガンを患っていても、そのガンの進行度に大
きな差がみられます。最も顕著な例は、胸水や腹水が溜まるほ
どのガン患者さんの場合です。もし末梢血中の白血球数上昇や
CRP(C-反応性蛋白)高値などの炎症を認めた場合、ガンの病態
は深刻になることがあります。しかし厄介なことは、はじめ白
血球数や CRP が全く正常値内であるにもかかわらず、やがて
病気が進行し、炎症を認めるようになる例があります。もし微
小な段階の炎症を捕まえることができれば、その炎症を抑制し
て病気の進行を食い止めることができるはずです。現在私ども
は、東京にラボをもつ株式会社 SRL 様が受託している血液ラ
ジカル生成能を、微小レベルの炎症マーカーに用いています。
ガン患者さんでは、健常者と比較して明らかに大きな数値を示
します。一方、慢性腎不全の血液透析患者さんでは、ラジカル
生成能が極端に低くなっています。病気の重篤性から推測する
と、むしろラジカル生成能が高くなっているはずですが、恐ら
く血液透析の際に炎症性物質の除去が行われていると考えら
れます。
5.炎症が起こるメカニズム
何故炎症が起こるのか?そのメカニズムは十分解明されてい
ません。ただ臨床的に推測できることは、はじめに心身のスト
レスと過労が繰り返され、それによって中枢性・末梢性自律神
経系の乱れが生じ、さらに末梢の血液循環障害と免疫バランス
の不調が起こることで炎症が発生すると考えられます。また食
事による糖質や脂質の過剰摂取も炎症を引き起こす原因と思
います。日頃から早期の炎症を抑制することができれば、病気
の進行だけでなく、病気の発症を食い止め長寿に導くことがで
きると考えられます。
●歯の清掃
磨き残しを作らないことが大切です。歯ブラシだけでは除
去しにくい歯と歯の間の汚れは、デンタルフロス(歯間を清
掃する細い糸)や歯間ブラシで取り除きます。
いろいろ豆知識
口腔ケア
え ん げ
高齢者になると、飲み込む(嚥下)機能が衰えて、飲食物や唾液が
ご え ん
誤って気管に入り(誤嚥)、このとき一緒に入った細菌が肺に炎症
ご え ん せいはいえん
を起こすことがあります。これが誤嚥性肺炎で、命にかかわるこ
とも少なくありません。
誤嚥性肺炎を予防し、しっかり噛んで、おいしく食べ、高齢期
を健康に過ごすために欠かせないのが、毎日の口腔ケア(お口の
おていれ)です。
ご え ん せいはいえん
☆誤嚥性肺炎は口腔内の細菌が原因
肺炎は今、日本人の死亡原因の第3位です。肺炎にかかる人の
多くが 65 歳以上の高齢者で、70 歳以上では肺炎の7割が誤
嚥性肺炎です。
飲食物を食道に向かって“ごっくん”と飲み込むとき、気管の
入り口が閉じて、飲食物が気道に入り込むのを防ぎます。この
え ん げ はんしゃ
働きを嚥下反射といいます。高齢になると、嚥下反射が弱くな
り、食事中に飲食物が誤って気管に入ってむせることがよくあ
ります。また、気管に異物が入ったときに咳をして排除する
毛先が開いた歯ブラシは清掃効果が落ちて、磨き残しが増
えます。歯ブラシは2週間から1か月ごとに交換しましょ
う。
●入れ歯(義歯)の清掃
入れ歯の形は複雑なため、細かい溝などを磨くのに適した
入れ歯専用ブラシを使いましょう。また、週に一度は入れ歯
洗浄剤で清掃しましょう。
●粘膜や舌の清掃
歯肉や上あご、頬や唇の内側などの粘膜は、スポンジブラシ
や口腔用のウェットティッシュなどで、舌の表面は舌クリー
ナーなどで清掃します。
☆口腔機能を高めて誤嚥を予防
口腔機能は、口周辺の筋肉を鍛えることで衰えを防いだり、
低下した機能を高めたりすることができます。
また、唾液は口腔内の乾燥を防いで自浄作用を高め、細菌の
増殖を抑えます。話す言葉もなめらかになります。
せきはんしゃ
咳反射という働きも弱くなります。そのため、食事中の誤嚥だ
けでなく、睡眠中など、知らない間に唾液や胃から逆流してき
た胃液が気管に流れ込み、そこに含まれる細菌が肺に入って誤
嚥性肺炎を起こします。
じょうざい
誤嚥性肺炎の原因菌の大部分は、ふだん口の中にいる細菌(常在
きん
菌)です。
◆嚥下反射をテストしてみましょう◆
中指で、のどぼとけ(甲状軟骨)を軽く押さえた状態で、唾液を 30
秒間に連続して何回ごっくんと飲み込めるか(嚥下反射)をテスト
します。3回以下であれば、嚥下反射が低下している可能性があ
ります。
☆お口の機能をアップするケア
●飲み込み(嚥下)体操
①お口の体操
口を大きく開いたり、閉じたりする。
②頬の体操
頬をふくらませたり、すぼめたりする。
③舌の体操
口の両端を舌でなめてみる。
舌を出したり、のどの奥へ引っ込めたりする。
「エヘン」と声を出して咳払いする
●唾液腺マッサージ
☆口の中を常に清潔に
そしゃく
誤嚥性肺炎の予防には、口の中を常に清潔に保ち、咀嚼や嚥下、
唾液分泌などの口腔機能の衰えを防ぐことが非常に重要です。
これが口腔ケアです。
うがいや歯磨きは、口の中の細菌の繁殖を抑えるために、とて
し こ う
も大切です。特に、歯や歯肉に付着するプラーク(歯垢)と呼ば
れるネバネバした物質には、非常に多くの細菌が含まれ、この
細菌が唾液や飲食物の誤嚥で肺に入ると、誤嚥性肺炎を起こし
ます。
また、プラークがたまると歯肉に炎症が起き、歯周病を引き起
こします。歯周病は成人が歯を失う最大の原因で、高齢者では、
そしゃくりょく
咀嚼力の低下が栄養状態や体力、脳機能の低下につながり、認
知症になる可能性もあります。
さらに歯周病は、糖尿病、動脈硬化など全身の病気とも深くか
かわることがわかってきました。
磨き残したところは細菌増殖の温床になるので、歯科医師や歯
科衛生士に正しい歯磨き指導を受けましょう。そして、定期的
に歯科医院でチェックしてもらい、虫歯や歯周病は、きちんと
治療しておきましょう。
入れ歯(義歯)もこまめな清掃が大切です。
☆お口の清潔を保つケア
●うがい(ぶくぶくうがい)
食べカスや汚れを取り除き、口の中を保湿します。
①耳下腺への刺激
3本の指で上の奥歯のあたりを後ろから前へ向かって
やさしく回すように押してマッサージ。
②顎下腺への刺激
あごの下から骨の内側の柔らかい部分に親指を当て、
耳の下からあごの下までの数か所をやさしく押す。
③舌下腺への刺激
あごの真下から両手の親指でやさしく突き上げるよう
にゆっくり押す。
出典:こまどNo.45
株式会社
こまど社
2015年3月発行