4.参考資料 事業収支のシミュレーション (株)オリエンタルコンサルタンツ 1. 事業収支の考え方 道の駅における収支計画には、管理運営に関する経費などを計上しなければならないため、あらかじ め管理運営主体が決定しているか、想定したうえでシミュレーション等を行う必要がある。ここでは、 弊社が実施した道の駅策定業務を参考事例として、一般的な収支計画のスキームを紹介する。 まず、一般的な収支計画のフローは以下の通りである。 (1)予想売上高(収益)の算出 ↓ (2)予想経費(費用)の算出 ↓ (3)収益計算 なお、各項目における算出方法の考え方は以下の通りである。 (1)予想売上高の算出 道の駅において、収益が得られる施設(農産物直売施設、物産販売施設、飲食施設、加工施設等) における売上を計上する。なお、管理運営形態が指定管理者としての運営である場合は、指定管理料 収益等も併せて計上する。 表 予想売上高算出における収益項目の設定 金額 収益項目 (千円) 農産物直売売上 物産販売売上 飲食売上 加工売上 総売上高 なお、各収益施設における年間の予想売上高の一般的な算出方法としては、以下の 2 パターンが考え られるが、本事例ではパターン①を採用している。 <パターン①> 各収益施設における年間予想売上高を、利用者数および客単価を想定し算出する。 売上高 各施設の客単価 利用者数 <パターン②> 各収益施設における年間予想売上高を、同様の立地条件の道の駅算出する。 売上高 1㎡当りの売上高 売り場面積 1 (2)予想経費項目 予想経費項目として、売上原価、販売費、一般管理費等を計上していく。なお、人件費に関しては、 各施設への人員配置人数や年間給与等から算出される。 表 予想経費算出における項目の設定 費用項目 概要 売上原価 売上に要する費用(直売の商品 仕入代金、加工施設の材料費等) 販売費及び一般管理費 道の駅全体の運営に要する費用 (内訳は以下による) 人件費 正職員及び臨時職員の人件費 福利厚生費 法定福利費、福利厚生費 維持管理運営経費 光熱水費、清掃費、警備・保守 費、備品・消耗品費、リース料 等 その他経費 広告宣伝費、保険料、租税公課、 減価償却費、通信・交通費等 表 施設名 人件費算出における人員配置計画 職務 農産物 責任者 直売施設 販売員 物産販売 責任者 施設 販売員 飲食施設 責任者 要員 (人) 販売員 加工施設 責任者 販売員 公益的 駅長 施設 責任者 事務員 合計 2 年間給与 人件費 (千円/人) (千円) (3)収益計算 (1) (2)の算出結果を基に、年間の収支を計算する。 年間収支 ①(総収益) ‐②(総費用) ①収益 表 総収益 科目 金額(千円) 売上高(A) 直売施設 物産販売施設 飲食施設 加工施設 指定管理料収益等(B) 総収益(A+B) ②費用 表 総費用 科目 金額(千円) 売上原価(C) 直売施設 物産販売施設 飲食施設 加工施設 販売費及び一般管理費(D) 人件費 福利厚生費 維持管理運営経費 維持管理運営経費 その他経費 総費用(C+D) 以上が、弊社の事例を参考にした収支計画のスキームである。本業務における収支計画を行う場合は、 まず収益が得られる施設、施設面積等を検討したうえで、収支計画を行う必要がある。 3 2. 事業収支のシミュレーション 本章では、本事業における事業収支のシミュレーションを行う。 2.1 集客のシミュレーション まず、道の駅の年間利用者数の予測を行う。道の駅利用者数は、前面道路交通量に立寄率を乗じて推 測することが可能である。 浪江町の道の駅における営業時間内(ここでは 10:00~19:00 とした)の前面道路交通量(台/9h) を用いて、一日あたりの立寄人数を算出すると、平日では 1,271 人/日、休日では 2,496 人/日とな る。 これらに営業日数(年中無休と仮定)を乗じて、年間利用者数を算出すると、以下のようになる。 1,338 人/日×(365-2×52)日+2,496 人/日×(2×52)日=608,802 人 ≒約 61 万人 表 平日の利用者数 国道 6 号 国道 114 号 項目 前面道路交通量 (台/24h) 営業時間内の交通 量(台/9h) 立寄率 立寄り台数 (台/9h) 車種別乗車人数 (人/台) 立寄り人数 (人/9h) 立寄り人数小計 立寄り人数合計 備考 小型車 大型車 小型車 大型車 11,555 4,301 7,556 652 4,333 1,613 2,834 245 0.12 0.07 0.12 0.07 520 113 340 17 1.3 1.18 1.3 1.18 676 133 442 20 809 施設営業時間を 10:00~19:00(9 時間)と想定 パーキングエリアの値を「道の駅」平均間隔 15kmで 除した値を採用 国道 6 号と国道 114 号の交差部に位置するため、両道路 の交通量から算出される立寄り台数の合計とした 平成 22 年度道路交通センサスより 462 1,271 4 表 休日の利用者数 国道 6 号 国道 114 号 項目 前面道路交通量 (台/24h) 営業時間内の交通 量(台/9h) 立寄率 立寄り台数 (台/9h) 車種別乗車人数 (人/台) 立寄り人数 (人/9h) 立寄り人数小計 立寄り人数合計 備考 小型車 大型車 小型車 大型車 10,931 4,069 6,877 593 4,099 1,526 2,579 223 0.27 0.07 0.27 0.07 1,107 107 696 22 1.3 1.18 1.3 1.18 1,439 126 905 26 1,565 平成 17 年度道路交通センサスより、平休比を国道 6 号 は 0.95、国道 114 号は 0.91 とした 施設営業時間を 10:00~19:00(9 時間)と想定 パーキングエリアの値を「道の駅」平均間隔 15kmで 除した値を採用 国道 6 号と国道 114 号の交差部に位置するため、両道路 の交通量から算出される立寄り台数の合計とした 平成 22 年度道路交通センサスより 931 2,496 5 2.2 施設運営における収支のシミュレーション (1)予想売上高の算出 各施設の利用者数及び客単価を想定し、各収益施設における売上を算出すると、総売上高は 589,260 千円となる。 収益項目 農産物直売売上 物産販売売上 飲食売上 加工売上 温浴施設売上 総売上高 金額 算定方法 (千円) (客単価※1×利用者数※2) 183,000 利用者数の約 30%が消費 1,000 円/人×61 万人×0.3 183,000 利用者数の約 30%が消費 1,000 円/人×61 万人×0.3 54,900 利用者数の約 10%が消費 900 円/人×61 万人×0.1 91,500 利用者数の約 30%が消費 500 円/人×61 万人×0.3 76,860 利用者数の約 30%が消費 420 円/人×61 万人×0.3 589,260 ※1:客単価は以下の値を参考とする。 「農産物直売所の経済分析(農林水産政策研究第 16 号(2009))」 によると、購入1回当たり販売金額(直売所販売金額2~3億の場合)は 1,056 円。また、 「外 食に関する消費者意識と飲食店の経営実態調査(H25 日本金融公庫) 」によると、飲食(平日昼、 郊外幹線道路沿い)の平均客単価は 947 円、中食(昼食)の平均支出額は 597 円。 なお、温浴施設単価は東北地方にある温浴施設併設の道の駅 16 箇所の入浴料の平均値を採用。 ※2:各施設の利用者数割合は、他事例を参考に、農産物直売:約 30%、物販:約 30%、飲食:10%、 軽食:30%、温浴施設:30%とする。 (2) 予想経費項目 予想経費項目および人件費は以下の通りである。なお、要員人数および給与に関しては、弊社が過 年度に検討した道の駅における人数を利用した。 表.予想経費項目一覧 費用項目 売上原価 概要 備考 売上に要する費用(直売の商品仕入 代金、加工施設の材料費等) 販売費及び一般管理費 道の駅全体の運営に要する費用 (内訳は以下による) 人件費 正職員及び臨時職員の人件費 要員計画による 福利厚生費 法定福利費、福利厚生費 人件費×10% 維持管理運営経費 光熱水費、清掃費、警備・保守費、 備品・消耗品費、リース料等 6 他事例による その他経費 広告宣伝費、保険料、租税公課、減 価償却費、通信・交通費等 他事例による 表.本事業において想定する要員計画 施設名 職務 要員 年間給与 (人) 人件費 備考 (千円/人) (千円) 農産物 責任者 1 5,000 直売施設 販売員 6 2,025 17,150 正職員 臨時職員 時給 900 円×1日 5 時間 ×週 5 日 物産販売 責任者 1 5,000 施設 販売員 6 2,025 17,150 正職員 臨時職員 時給 900 円×1日 9 時間 ×週 5 日 飲食施設 責任者 1 4,000 販売員 6 2,025 16,150 正職員 臨時職員 時給 900 円×1日 9 時間 ×週 5 日 加工施設 責任者 1 4,000 販売員 5 2,025 14,125 正職員 臨時職員 時給 900 円×1日 9 時間 ×週 5 日 温浴施設 責任者 1 5,000 従業員 6 2,025 17,150 正職員 臨時職員 時給 900 円×1日 9 時間 ×週 5 日 公益的 駅長 1 7,000 責任者 1 4,000 事務員 4 2,025 19,100 正職員 施設 臨時職員 時給 900 円×1日 9 時間 ×週 5 日 合計 100,825 ※営業時間は全て 10:00~19:00 とする。 ※要員、年間給与に関しては他事例の値を利用 7 (3)各施設における損益計算 運営者は第三セクターを基本として管理運営を行うことを仮定すると、年間の損益は下記の通りと なる。なお、維持管理運営費に関しては、施設面積が決まっていないため、他事例を参考にしている。 想定される損益は、①-②=627,260-604,996=22,264 千円となる。 ①収益 科目 金額(千円) 売上高(A) 589,260 直売施設 183,000 物産販売施設 183,000 飲食施設 54,900 加工施設 91,500 温浴施設 76,860 指定管理料収益(B) 総収益(A+B) 38,000 備考 1,000 ㎡×38 千円/㎡(他事例を参考) ※公益的施設分の維持管理運営経費 627,260 ②費用 科目 金額(千円) 売上原価(C) 380,091 直売施設 155,550 物産販売施設 146,400 飲食施設 19,215 加工施設 32,025 温浴施設 26,901 販売費及び一般管理費(D) 人件費 福利厚生費 維持管理運営経費 ※収益施設分 直営方式(委託販売) 売上×85%(販売手数料 15%) 直営方式(委託販売) 売上×80%(販売手数料 20%) 直営方式 売上×35% 直営方式 売上×35% 直営方式 売上×35% 224,905 100,825 要員計画による 10,080 人件費×10% 38,000 維持管理運営経費 ※公益的施設分(温浴施設 備考 1,000 ㎡×38 千円/㎡(本事業で想定する面 積より算出、単価は他事例を参考) 2,000 ㎡×38 千円/㎡(本事業で想定する面 76,000 積より算出、単価は他事例を参考) 含む) 総費用(C+D) 604,996 8
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