新製品情報 材料設計支援統合システム MedeA:最新版2.17リリース MedeAは原子・分子レベルのシミュレーション技術を基にさまざまな材料の物性評価を行うための統合環 境です。MedeAの最新版 (バージョン2.17)では、クラスター展開法や力場パラメーターフィッティング機能 といった新モジュールが搭載されました。これらの機能は、第一原理計算だけでは取扱いの難しかった大 規模な系に対して、具体的な取り組みを可能にします。本稿ではこれらの新機能を紹介します。また、クラ スター展開法の実行が可能な新ツール 「MedeA-UNCLE」については、4月に紹介セミナーを開催しました。 セミナーの内容についても本稿にてあわせて紹介します。 ■ MedeA2.17新機能 ■ MedeA-ForcefieldOptimizer(FFO) ■ MedeA-COD-GUI FFO は、第一原理計算プログラム (MedeA-VASP)の計 MedeA-COD-GUI は、COD (Crystallographic Open 算結果から、力場パラメーターを作成することのできる Database)用のインターフェースです。COD で公開されて ツールです。作成された力場パラメーターは、古典分子 いる構造データベースを MedeA 上でも利用できるように 動力学計算プログラム (MedeA-LAMMPS)で利用できま なりました。COD の25 万件の構造を検索し、モデル構造 す。これにより、第一原理計算と分子動力学計算を連携さ をグラフィカルに表示する操作が、MedeA 上でシームレ せることができ、マルチスケールシミュレーションが可能 スに行えます。 になります。 特にその効果を発揮するのは、無機結晶系です。結晶 ■ MedeA-UNCLEセミナー の取り扱いに長けた VASP に基づき作成された力場パラ 4 月21日弊社にて、クラスター展開法ツール「MedeA- メーターは、無機結晶において信頼性の高いパラメーター UNCLE」を紹介するセミナーを開 催しました。セミナー であることが期待されます。無機結晶系のパラメーターを で は、Materials Design 社 の Dr. David Reith を招 聘し、 精度良く作成できるFFO は、これまでの MedeAでの力場 MedeA-UNCLE の方法論や応用例を紹介しました。また、 計算を大幅に改善し、新しい系へのアプローチを可能に 弊社技術者よりデモンストレーションを行い、実際の入力 します。 設定方法や解析方法を紹介しました。以下では、セミナー FFO には次のような機能が搭載されています。 で講演した内容を紹介します。 ・Buckingham 形式および EAM 形式の力場ポテンシャ ルパラメーターを作成。Buckingham 形式はイオン、 EAM 形式は金属系の記述に適しています。 ・MedeA-VASP の計算結果 (エネルギー、力)を力場に 反映。 ■ An overview of the cluster expansion method and its implementation in MedeA-UNCLE クラスター展開法は、系を原子クラスタ―で展開し、そ の総和で物性 (例えば、エネルギー)を評価する方法です。 ・遺伝的アルゴリズムによるパラメーター空間の探索。 原子クラスターのエネルギー値は、第一原理計算の結果 ・最小二乗法によるパラメーターの最適化。 を基にフィッティングされ、クラスターごとに固有の値 J F (Effective Cluster Interaction, ECI)として表現されます。 ■ MedeA-UNCLE 系全体の的確な表現は、原子クラスターの選択に依存 MedeA-UNCLE は、クラスター展 開 法を実 行 可 能 な します。MedeA-UNCLE では、少ないクラスター数で収束 ツールです。合金や固溶体等のランダムに混合した物質 するように、遺伝的アルゴリズムによってクラスターを選 の特性を評価できます。 別します。 現バージョンでは、二元系の合金について基底状態ダ イアグラムを表示することができます。今後、三元系の相 図についても表示できるように開発が進んでいます。ま た、空孔を取り扱うこともでき、例えば水素の侵入型置換 サイトを指定し、水素吸蔵合金での安定相を計算すること ができます (下記、紹介セミナーの内容も参照ください)。 ■ LAMMPS-Surface Tension MedeA-LAMMPS を利用して、スラブモデルを用いて表 面張力を計算するツールです。有機液体だけでなく、溶融 酸化物、溶融金属等のどのような液体でも適用できます。 4 図1 クラスター展開法のイメージ 材料設計支援統合システム ■ Atomistic multi-scale modeling with MedeA-UNCLE to study structure, phase-stability and ordering の 組 成では、2,600 K 以下では相 分離の生じた状 態 が 安定であることが分かります。 MedeA-UNCLE は、そのインターフェースから、次のよ うな手順で簡便に計算を実行できます。1)モデリングで は、各サイトに原子の占有率を定義するのみです。例えば、 Au-Cu 合金の場合には、fcc 構造の全てのサイトに Auと Cu を占有率 1.0として定義すれば、自動的に組成を変化 させて計算を行います。2)計算内容は、フローチャート機 能を利用して直感的に設定することができます。フロー チャート内では UNCLE ステージを単にセットするのみで す。UNCLE ステージ内では、フィッティングに用いる第一 原理計算の内容を自由に設定することができます (図 2)。 3)フローチャート上で設 定された計算は、実行後、Job Server-Task Server システムにより管理されます。計算が 収束するまで、トレーニングセットの更新や第一原理計算 の実行・回収を自動で行います。 図4 モンテカルロ計算による温度変化 図2 MedeA-UNCLEでの計算設定 上記の計算を実 験で得られた状 態図にプロットした 図 3 は、MedeA-UNCLE で得られる基底状 態ダイアグ のが図 5 です。Mg 0.2 Ca 0.8 O では 2,600 K 付近がβ相から やAuCu(L1 が 安 定 相とし ラムです。Au1Cu(L1 1 0 相) 3 2 相) α+β相へ転移する温度で、上記計算結果と良く一致し て得られ、Au-リッチな相ではアダプティプ構造となって ています。 いることが分かります。本計算は、クラスター展開による 34368 個の構造のエネルギー評価 (数秒程度)と、トレー ニングセットとして196 個の構造の第一原理計算 (500 時 間程度)を実行することで得られます。 図5 CaO-MgO相図 (赤丸が計算での転移点) 図3 Au-Cu合金の基底状態ダイアグラム セミナーで は、上 記 の 他、炭 化 ボロンで の 基 底 状 態 ダイアグラムの計算や、合金での磁気モーメント (Slater- MedeA-UNCLE ではクラスター展開で評 価した構 造 Pauling 図)を評価した例を紹介しました。 を利用して、モンテカルロ計算によって統 計平均をとる ことができます。図 4 は、酸化マグネシウム / カルシウム (Mg1-x Ca x O)で温度変化を計算した例です。Mg 0.2 Ca 0.8 O 5
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