かつうらしい ひと 菊地さん。その専門は藻類学とあって、 い。 「名前も〝ノリオ〟ですしね」と笑 海藻の説明をし出したらもう止まらな 地域おこし協力隊・ぬまっち特派員が勝浦の様々なモノ・コトとつなが 生物の声を伝える仕事 藻博士の裏側を知りたくなった。 う 菊 地 さ ん。そ う 聞 く と、ま す ま す 海 今回は柳さんの補助として参加者に解 を掛ける今回の主役、菊地則雄研究員。 り地域で活躍する勝浦らしい人=「かつうらしいひと」にフォーカス! 磯・いそ探検隊 く、絶滅が危惧されているアサクサノ お仕事を激写すべく『培養庫』と書か な数収蔵されている。中には戦前の海 さっそく海の博物館の展示フロアの さらに奥、普段来場者は立ち入ること れた鉄扉を開けると、そこには予想通 藻 も 収 められているが、お し ば は 水 に ピンク色のところは海藻なんです。白 りのアカデミックな光景が!妖しい光 戻 す こ と が で き、顕 微 鏡 観 察 や DNA 「いつもヤドカリは住宅難なんです。 貝の殻を置いてあげるとすぐに物件探 を浴びるフラスコにはプクプクと泡が 鑑 定 も で き る。 「恒久的に残していく リを培養するためのものだったのだ。 浮かび、中でゆらりとした物体が水中 のが私の仕事。こうすれば私がいなく のできない研究員たちの秘密の隠れ家 を漂っている ……「空気を入れて水流 なっても、 ここにくれば判るでしょう」。 くなってるのは海藻が死んでしまった を作ってやると、すっときれいに伸び そう、これは時 空 を 超 え て 生 物 の メッ しを始めます」 。ちびっこたちを前に、 るんです。一週間に一度くらい水を交 セージを伝える壮大な作業なのだ。 (?)に 潜 入 す る。 菊 地 さ ん の 日 々 の 換します。ノリはこのようにして育て ところです」 。岩 を 指 差 し な が ら 語 る るんです」と言う菊地さん。このフラ が多いことから、「『これ初めて見たん く、勝浦は民間のダイビングショップ かう。だが、自ら現場に赴くだけでな 岩礁へ、そして時には海中へ採取に向 基礎研究には、藻類の収集という作 業 が 欠 か せ な い。 菊 地 さ ん は 干 潟 へ、 基礎があるからこそ産業につながるの 究の、 さらに基礎になる研究なんです。 ます。生産量を上げる産業のための研 ておくことで養殖に使う可能性が探れ あります。ほかの種類の特徴を把握し ですが、環境の変化で全滅する恐れも ぼひとつの種類しか使われていないの 目 標 だ と 言 う。 「日本の養殖ノリはほ や系統をより明確にすることが今後の す土台としての基礎研究をしつつ、や 豊 か な ん で す 」。 そ う し た 資 源 を 活 か が多いです。勝浦は海の自然が本当に やサザエをはじめ、魚やイセエビなど ジメの海中林にはそれを食べるアワビ 元ですから動物も豊富。特に広大なカ 富な場所。海藻は海の動物の食べ物の 「日本は世界でも海藻の種類が多い 所ですが、中でも勝浦近辺は海藻の豊 護や人々の暮らしに活かされる。 礎研究を支え、やがてそれが自然の保 り ま す 」。勝 浦 の 海 の 自 然 と 生 業 が 基 は貴重。ここが危険という情報も分か くれたこともあります。人からの情報 ます。とてもめずらしい海藻を採って とか。海老網の漁師さんも情報をくれ いるとか、こっちの方がサザエが多い 潜りしますよね。あそこにこんなのが 「やはり漁師さんからの情報 ま た、 は多いです」と、菊地さん。 「勝浦は素 かけにしたい」との想いだった。 ての普通を、価値として認識するきっ れば嬉しいです」。それは「地元にとっ 動をすることで、その価値が認識され で勝浦の自然の素晴らしさを伝える活 はその一つだと思います。海の博物館 けで違ってきます。例えばダイビング すよね。自然の魅力はガイドがいるだ されて活かされるようになると良いで じるかもしれないですが、それだけで だけの豊かな自然があるのを普通に感 ん は 語 る。「 地 元 の 方 は、 勝 浦 に こ れ も寄与できるようになればと、菊地さ 勝浦の自然と人とともに なりわい です』って、写真を見せてくれたりし がて研究が観光や自然体験、暮らしに です」 。 ます」といった具合に、ダイバーたち スコは魔術に使うものではもちろんな 海藻の中でも特にノリを深く研究し ている菊地さん。ノリの仲間は日本に イソギンチャクのプロフェッショナ 説 を し て 回 る。 「こういう岩の表面が 菊地則雄さん のり お 一方、標 本 庫 に は 押 し 花 の 海 藻 版 で ある〝おしば〟という海藻標本が、膨大 けんすけ ル、柳研介研究員が生き物について解 説する。この日は、千葉県立中央博物 館分館〝海の博物館〟で行われている、 博物館前の磯の観察会〝磯・いそ探検 隊〟に参加。夏休みとあって大勢の親 子連れで大賑わいだ。 「 こ れ が ヒ ジ キ 茹 で た ら お い し い のかな?」。歓声を挙げる親御さんの中 にもう一人の研究員が。 「あ、これ高級 な 生 き 物 だ よ。こ れ は ね、イ セ エ ビ の 殻だよ」 。殻 を 拾 い 上 げ た 女 の 子 に 声 8 月に行われた「磯・いそ探検隊」の様子。大勢 の家族連れで賑わう人気企画だ 種類あるそうだが、それぞれの特徴 29 の情報を活かすことができるという。 価値のあることです。その価値が認識 左の海藻は、勝浦市に生育する海藻をおしばにしたもの。 上から順に「ハバノリ」「マクサ」「ワカメ」(写真提供:海の博物館) KATSUURA 2015.9.18 1 2 3 4 5 菊地さんが 2010 年に新種発 表したノリ 「アカネグモノリ」 。 おしばにして海の博物館に保 管されている !? ノリはかせのノリオ さんと勝浦の海 【 菊地さんの仕事の数々 】 ❶難しそうな文献に囲まれる菊地さん ❷小さな糸のような状態になったノリの「糸状体」を培養 ❸採取した 海藻をおしばにする ❹海藻の切断面を顕微鏡で確認 ❺なんと菊地さ ん自らダイブ!海中の藻類を採取・観察する(❺は写真提供:海の博物館) 取材・撮影・文・デザイン:沼尻亙司 イラスト:瀧川由貴子 記事の問合せ▶勝浦市企画課地域活力推進係 ☎ 0470-73-3337 昭和 43 年 6 月 12 日生まれ。 東京都世田谷区出身。千葉県 立中央博物館分館海の博物館 の主任上席研究員。専門は藻 類学。東京水産大学(現:東 京海洋大学)卒業後、長崎県 水産部を経て、研究員として 千葉県立中央博物館へ。海の 博物館設立と同時に勝浦市へ 移住。奥様と、中学生、小学 生のお子さんの 4 人家族 7 人 培養中のアサクサノリ 29 katsuurashii-person
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