10.いろいろなプラズマ(2)

10.いろいろなプラズマ(2)
「プラズマ工学」講義資料 2015年度版
熊本大学工学部情報電気電子工学科
勝木 淳
10.1 低圧気体放電プラズマ
10.2 高エネルギー密度プラズマ
10.3 液体を介在する放電プラズマ
10.4 放電以外の方法によるプラズマの生成
放電プラズマの温度の圧力依存性 (再掲)
新しい放電技術:
パルス放電、高周波放電、など 1 atm.
Temperature [K]
直流・交流放電プラズマ
● 低気圧グロー放電 非熱平衡 (Te ≫ Tg)、熱くない 大体積 可視発光が弱い 放射光エネルギーは比較的大きい ⇒発光は可視光よりも紫外領域 ● 高気圧アーク放電 熱平衡 (Te 〜 Tg)、熱い 小体積 可視発光が強い
放射光エネルギーは比較的小さい ⇒発光は主に可視光から赤外領域 105 Te
4 10
3
10 Tg
2
10
10-­‐4 10-­‐2 1 102 104 106
Pressure [Torr]
水銀の放電における電子温度とガス温度
圧力依存性
電子エネルギー緩和時間よりも
短い時間で電界を変動させる。 (1) 直流放電プラズマ
放電開始は、電子衝突による電離の起こりやすさ、電子が電界から
得るエネルギーと電極に到達するまでの寿命で決まる。
マグネトロン放電プラズマ
正イオンが衝突して二次電子を放出する陰極表面に磁界を印加して,
衝突電離に寄与する電子を補足し、高密度のプラズマを発生する。
⇒ E×Bドリフト効果
高密度プラズマと陰極の間(d)の高電界で加速されたイオンによって
陰極がスパッタされる。
マグネトロン放電装置
(2) 高周波放電プラズマ
放電開始は、電子衝突による電離の起こりやすさ、電子が電界か
ら得るエネルギーと電極に到達するまでの寿命で決まる。
電子の運動方程式
me dve /dt = −eE − meω eg ve
νeg 電子と中性粒子の衝突周波数
電界(ω)から電子が得るエネルギー
Ug =
2(eE0 /ω eg )2
me {1 + (ω /ω eg )2 }
→ ωが大きいほど小さい
高周波電界中での電子の移動度
µ eH = µ e /{1 + (ω /ω eg )2 }
→ ωが大きいほど小さい、寿命が長い。
e
e
e
e e
e
e
E0 e − jωt
容量結合型高周波放電プラズマ(CCP)
2つの対向電極にMHz以上の高周波電
界を印加してプラズマを発生する。
RF(13.56 MHz)、VHF帯の周波数。
容量結合型高周波放電プラズマ
(平行平板)
電極のバリエーション
誘導結合型高周波放電プラズマ(ICP)
容器に隣接したコイルに高周波電流を流し、発生する磁束の
時間変化により誘導される電界でプラズマを発生する方式。
(Inductively Coupled Plasma)
ヘリコン波プラズマ
電磁コイルで発生した直流磁界中で
ヘリカルアンテナに高周波電界(13.56
MHz)を印加すると,ヘリコン波が励起
される。
ヘリコン波は、
ωci << ω << ωce
の周波数領域で主に磁力線方向に
伝搬する円偏波の電磁波。プラズマ
では通常ホイッスラー波と呼ぶ。この
ときの電界 E は,時計回りの方向に
回転しながら伝搬する。
小さい電力で高密度プラズマが生成
できるのが特徴。
ヘリコン波プラズマ生成装置
(3) マイクロ波放電プラズマ
表面波プラズマ
プラズマ
スリースタブチューナーおよび短絡プラ
ンジャは、負荷であるプラズマに効率よく
マイクロ波電力を伝送し、マイクロ波電力
の反射を最小限にするための装置。
電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ
勾配がある磁界に、電子サイクロトロ
ン周波数 ωec>ω となるマイクロ波を
強磁界側から入射すると、透過して右
回りの円偏波が励起される。
ω/ωec → 1 ⇒ 電子サイクロトロン波
電子サイクロトロン波が弱磁界側へ伝
搬して、ω=ωec の共鳴層付近で波動
エネルギーが電子に吸収されて,電子
サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマが生
成される。
角周波数ω=2πf (2.45 GHz)のとき
、磁場 B0 = 875 G の位置で共鳴する。 サイクロトロン運動
磁力線に対する旋回運動
ωc =
qB
m
電子サイクロトロン共鳴プラズマ
10.2 高エネルギー密度プラズマ
(1) パルス放電プラズマ ・ 放電状態の制御が容易。例えば、アークに移行する前に電力供給停止。
・ 非熱平衡状態を大きい空間で形成可能。
・ パルス電流によって容易に高エネルギー密度プラズマを生成可能。
・ パルス放電の緩和過程に現れるアフターグロープラズマが得られる。
供給損失
供給損失
熱伝導
ゆっくりとした
エネルギー供給
熱伝導
放射
パルス電力
負荷
不安定性
(流体、放電)
放射
負荷
不安定性
(流体、放電)
(1) ピンチ放電プラズマ
(Θピンチ、Zピンチ、プラズマフォーカス)
・ 高温プラズマ中でイオンが多価に電離する。
・ さらに,高密度では,衝突周波数が大きく
なり、電離する頻度が大きくなる。カスケー
ド式に電離する。
高輝度の高エネルギー電磁波放射源
→ 高エネルギー電磁波、
粒子線の放射
→ 高輝度放射
EUV、軟X線、硬X線、中性子
生成方法
パルス大電流で一気にプラズマを自己収縮・加熱
強磁界によるプラズマ収
縮・閉込め、力のバランス
∇p =
プラズマ
圧力勾配
! !
j ×B
ローレンツ力
(磁界の圧力)
Θピンチ
Bz
z
Θ
jΘ
nT>0
r
力のバランス
Θピンチ方式
磁気圧 pB
プラズマ圧力 p
一巻きコイルに流すパルス電流の磁場
BZ によってプラズマに誘導電流 jΘが流
れ、jΘx BZ によってプラズマが閉じ込め
られる。
Z ピンチ
BΘ
Bθ-Feld
z
r
Iz
Θ
Iz-Strom
力のバランス
Bθ
p
jZ
Iz(t)
t
typ. µs
プラズマフォーカス
(2) 真空放電 (低気圧放電とは違うので注意!)
真空中では、電極間に存在する粒子が少ない
ため、放電開始過程が特有である。
強電界
e
【放電過程】
・ 電極間に超高電圧(数10 kV)を印加すると、
陰極表面の微小突起(ウィスカー)に電界が集
中し、先端から電界電子放出が起こる。
・ ウィスカーはジュール熱によって蒸発し、電極
間に放出された金属蒸気を通して絶縁破壊が
生じる。通常、アーク放電に移行する。
( 原子供給とプラズマ生成が同時に起こる。)
【特徴】
・ 陰極には陰極点または陰極スポットと称する
輝点が生じる。
・ 高速に加速された電子は陽極に衝突して制
動放射(X線)を発生する。
e
ウィスカー
陰極
金属蒸気
10.3 液体を介在する放電
(1) 水中ストリーマ放電
パルス高電圧
(+) 100kV,1µs
10 cm
水中ストリーマ放電
水中ストリーマの物理作用
水中ストリーマ放電に伴う衝撃波
Photo emission
Streak Image of
Shock Front
Shadowgraph
Schlieren Image
Time resolved imaging of streamer
discharges, photo emission and
Shadowgraph
Pressure Measurement
(Hugoniot relation)
Images indicate the streamers generates
shock waves.
Pressure exceeds 1 GPa near the
streamer heads
(2) 液面放電、気泡内放電
(3) 水中パルスアーク(スパーク)放電
(4) 水中に浸したコンクリート複合体における放電
電圧
電圧: 400~1000 kV
水の破壊電圧
石の破壊電圧
U( t )
Rock
~5 µs
0
時間
(写真 浪平先生)
Unp( t )
Water
【問10.1】
(1)  低気圧放電プラズマの生成法を一つ挙げてその特徴を述
べよ。
(2)  高エネルギー密度プラズマの特徴を述べ、生成法を一つ
挙げて原理を説明せよ。
(3)  液体を介した放電プラズマの特徴を述べ、その生成法を一
つ挙げて原理を説明せよ。
10.4 放電以外の方法によるプラズマ生成
(1) 光電離によるプラズマ生成
レーザー光を1点に集光することによって
対象を絶縁破壊し、プラズマを生成する。
この過程では、単純な光電効果ではなく、
多光子電離や逆制動放射過程が支配的
である。
?
hυ
水素
13.6 eV
ルビーレーザー
hv = 1.73 eV
光電効果?
多光子電離
同時に複数の光子を吸収して、大きなエ
ネルギーポテンシャルを飛び越える。
hυ
電子の加速 ⇒ 衝突 ⇒ 絶縁破壊
多光子電離で生じた初期電子は、レーザ
ーの強電界や、逆制動放射などによって
加速され、イオンや中性粒子と衝突し、
破壊を促進する。
多光子電離
光電離による破壊の閾値
破壊が起こるための条件
レーザー光の吸収
による電離、電子加速
衝突電離
>
再結合
拡散
→ 一定値以上の光強度が必要。
ターゲットのガス密度が小さい場合のレーザー光強度
1S
⎛ N eS ⎞
⎟⎟
I S = hυ ⎜⎜
⎝ α S N 0 t ⎠
Δt
N0
Nes
αs
レーザーのパルス幅
ガス密度
電子密度
同時に吸収する光子数
レーザー生成プラズマ
レーザー核融合装置「激光XII号」
(大阪大学レーザー核融合研究所)
ターゲットのガス密度が大きい場合のレーザー光強度
aVicmω 2
IS =
4π eυm t
a
Vi
νm
m
レーザーのパルス幅
ガス密度
電子密度
同時に吸収する光子数
※ターゲットの種類と
レーザーの波長に
依存
(2) 熱電離によるプラズマ生成
接触電離生成プラズマ
電離電圧の低い物質 Li,Na,K,など
熱した金属に接触させて電離する.
静かなプラズマ → 物理実験に用いられる.
原料
(低温)
プラズマ
熱した金属
衝撃波生成プラズマ
衝撃波による加熱でプラズマ化
人工衛星,スペースシャトルなどの大気圏
再突入時に発生. プラズマによる電磁波遮断.
プラズマ