WORKING REPORT 自然環境保全グループ 尾 田 昌 紀 GISを用いた琵琶湖水産有用種の GISを用いた琵琶湖水産有用種の 生息環境評価 生息環境評価 ■ 業務の概要 琵琶湖はわが国最大・最古の湖で、古来より豊かな水産資源に恵まれ、特有の漁業文化を育んできました。中でも琵琶 湖固有種のニゴロブナ、ホンモロコ、イサザ、セタシジミ等は重要な漁業資源となり、内水面漁業を支えていましたが、近年 では内湖の干拓、湖岸環境の改変、外来種のブラックバスやブルーギルの侵入・繁殖などによって、漁獲量が減少してきて います。これらの資源回復のために、GIS(地理情報システム)を用いて沿岸の漁場環境ベースマップを作成し、水産有用 種の産卵・仔稚魚育成に関する生息環境評価を行い、漁場造成ポテンシャルマップを作成しました。 → 漁場環境に関する既存資料の収集・整理 1)自然環境情報(湖岸周辺) 漁場環境ベースマップの作成 2)漁業環境情報(漁業基盤、漁場整備、漁業生産) → ↑ 漁場造成ポテンシャルマップの作成 水産有用種の生活史・生態等にもとづいて、資源育成場の環境を定量化 ■ 漁場造成ポテンシャルマップの作成 ニゴロブナ漁場造成ポテンシャル(1が最適、0が不適) 水産的に有用な5種(下表参)の産卵場・仔稚魚育成場として の適否(0∼1に規準化)について、生態学的な知見をもとに環 境因子を抽出し、それぞれ関数化しました。各関数は因子ごと に重みづけを行い、乗法型により総合指標化し、漁場造成ポテ ンシャルとして評価しました。 漁場造成ポテンシャル計算に用いた環境因子 底質 水質(光の 水深 抽水植物 (平均粒径) 消散係数) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 魚種 ニゴロブナ ホンモロコ イサザ セタシジミ テナガエビ 沈水植物 ○ ○ ○ ○ ニゴロブナの漁場造成ポテンシャル(例) ニゴロブナは、南湖東岸の赤野井湾、北湖北西岸や北東岸の姉川河口 付近でポテンシャルが高くなっており、浅場でヨシ帯や沈水植物帯に依存 していることが再現されました。 ニゴロブナの関数化(例) 1 1 0.5 0.5 0 0 0 2 4 6 水深 [m] 8 10 0 20 40 60 沈水植物植被率 [%] 80 100 ■ 漁場造成ポテンシャルマップの意義 漁場環境ベースマップ(環境情報図)および漁場造成ポテンシャルマップの作成は、水産行政や環境行政において各種の 施策決定を支援するツールとして期待できます。 (この業務は、平成12年度に滋賀県水産課の委託を受けて行ったものであり、水資源開発公団琵琶湖開発総合管理所の資料も引用させていただきました。) −6−
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