話合いに自信をもって参加し、自己有用感を高められる学級活動

話合いに自信をもって参加し、自己有用感を高められる学級活動
―「グループ討議」から「全体討議」へと段階を踏んだ学習形態を取り入れて―
藤岡市立美土里小学校
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廣兼 雅子
はじめに
本学級の児童は、互いに協力して自分たちでよい学級をつくりたいという思いをもっている。しかし、自
分の意見がよい学級づくりに生かされている、役立っているという思いを、学級活動の話合いの中で十分も
てていない児童がいる。それは、自分の考えに自信がなく、集団の中で発言することが苦手なこと、その結
果、友達から認められる場面が少ないことが要因であると考えた。
考えに自信をもって話合いに参加できるようになれば、他の児童から認められる機会も増え、その結果、
児童一人一人の自己有用感を高められるのではないかと考えた。そこで、学級活動 (1)の話合いにおいて、
一人一人の児童が自信をもって参加し、「自分の考えが友達に認められ、学級の一員として役立っている」
という自己有用感を高めるための手だてとして、「グループ討議」から「全体討議」へと段階を踏んだ学習
形態を位置付け、以下の通り実践を試みた。
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実践の概要
(1)「はばたく群馬の指導プラン」(学級活動 指導の基本 P128、129)をもとに学級会の整備
・計画委員 4 名
(司会 2 名 記録 2 名)
・議題決定は、学期ごとに
児童にとったアンケー
トから
・約1週間前に計画委員か
ら議題を提案する。学級
会シートをクラス全員
に配布し、事前に自分の
考えを書いて本時に臨
めるようにした。また、
シートは事前に回収し、
話し合いの流れが予測
できるよう、計画委員と
の直前の打ち合わせに
使った。
(2)実際の話合い
①議題1「『帰りの会』を充実させよう」
本学級の帰りの会は、教師の話だけで児童の活動場面
がほとんどなく、学級会で話し合いたいことのアンケー
トの中では8割の児童が「帰りの会の充実」を挙げてお
り、本学級にとって取り上げる必要性の高い議題であっ
た。短時間で繰り返し実践ができ、学級全員で活動がで
きる「帰りの会」を児童主体の活動の場ととらえ、その
内容を話し合って決定することで自己有用感をもたせ
たいと考えた。
「グループ討議」では、全員の児童が事前にノートに
書いてきた自分の考えと理由を発表でき、質疑応答が行えた。このことにより考えを友達に伝え、聞く中で
整理・修正され、自分の考えを明確にして「全体討議」に臨むことができた。各班では考えを一つに絞らず、
話合いの視点に合った考えをすべて全体の場に出すようにしたことで、発言が苦手な児童の考えも「全体討
議」の対象とすることができた。また、「全体討議」の前に黒板にネームプレートで自分の考えを示したこ
とで、同じ意見に同意する発言をしたり、友達の発言を頷きながら聞いたりと、進んで「全体討議」に参加
できた。「全体討議」では、活発に意見が出され、皆が納得して集団決定できた。しかし、「グループ討議」
から出された友達の意見に対して、否定する形で議論が進む場面があり、一人一人の児童の自己有用感を高
める話合いとしては課題が残った。
②議題2「卒業文集のクラスページをつくろう」
本校の卒業文集は個人の作文と6ページのクラスページから構成されている。どのようなページにするか
は各学級に任せられており、学級の個性を出すことができる。本時は「卒業文集のクラスページ」について
話し合う活動を通して、クラス全員がかかわれて、大人になった時に読んで楽しめる内容を考えることをね
らいとした。議題1を踏まえ、児童が自分の考えに自信をもって話合いに参加し、学級での自己有用感を高
められるように、「グループ討議」の目的を明確にし、「全体討議」での発言について留意点を確認すると
いう2点を改善し、実践を試みた。
「グループ討議」を行ったことで、どの児童も「全体討議」に向けて自分の考えを明確にできていた。「全
体討議」では、議題1での反省から、話合いの視点に沿って友達の考えのよさも認めつつ、自分の考えも主
張する流れとなり、女子の発言も前回より活発だった。司会の意図的指名により、ふだんは発言に消極的な
女子児童の発言をきっかけに、折り合いを付けて集団決定ができた。
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まとめ
自己有用感の低かった児童が、話合いを通して学級の一員としてよりよい集団作りに貢献できたという
実感をもち、その後の学級の活動に協力して取り組むようになった。その要因としては、「グループ討議」
を設定したことで、友達の考えを聞いてから、自分の考えを明確にでき、自信をもって「全体討議」に臨め
たこと、その結果、全体の話合いの中で自分の考えが言え、友達に受け入れてもらえたことが挙げられる。
課題としては、本実践では、「グループ討議」は意見を出し合い、自分の考えを明確にする場と考えたが、
グループ間で話合いの程度に差があった。中には、「全体討議」で話し合う必要感が薄れたグループも見ら
れた。「グループ討議」で何を目的にどの程度まで討議するのかを明確に示す必要がある。