企業・産業動向レポート = 2015年10月1日~31日の報道内容 = Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況 ◎いすゞ自動車 ◆いすヾ、一転営業増益に【10.28】 ≪4-9月9%増840億円 国内販売が堅調≫いすヾ自動車の2015年4-9月期の連結 営業利益は、前年同期比9%増の840億円前後だったようだ。従来予想は3%減の750億円だったが増益に転じた。国内 のトラック販売が計画より堅調だった。海外は中東と北米の売れ行きが良く、東南アジアの不振を補った。対㌦での想定 以上の円安進行も利益を押し上げた。≪円安も押し上げ要因≫売上高は8%増の9,500億円前後とみられる。国内トラッ ク市場は大都市の再開発需要や東日本大震災の復興需要が根強く、物流施設向け販売も伸びた。今期の国内販売台 数は復興需要が減るとみて3%減の計画だったが、業界団体によると同社の4-9月は3万5,828台と1%増えた。景気が 底堅い北米のトラック販売も伸びた。主にタイから輸出するピックアップトラックも、サウジアラビアやオーストラリアで販 売が好調だった。想定以上の円安も海外販売の採算改善につながった。4-9月期実績は1㌦=120円程度で、前年同期 より17円、期初想定と比べても5円ほど円安に振れた。前年同期比では円安効果が100億円近くの営業増益要因になっ たようだ。調達見直しなど原価低減策も利益率を高めた。半面、東南アジア市場は苦戦した。国内に次ぐ市場であるタ イは不安定な政情や長引く消費不振で、トラック、ピックアップトラックとも振るわなかった。インドネシアは公共事業の執 行の遅れや資源需要の低迷で受注が落ち込んだ。16年3月期通期の営業利益は前期比2%増の1,750億円を見込む。下 期も東南アジア以外の海外販売が伸び、国内も堅調が続く見通しで、通期業績は従来予想を上回る可能性がある。4-9 月期の決算発表は11月6日に予定している。 ◎住友重機械・住友重機械ME ◆住重/アフラマックス1隻受注、18年第4四半期納期【10.15】 住友重機械工業は、アフラマックスタンカー1隻を北欧 船主ルンドクビスト・レデリエルナから受注した模様だ。製造子会社・住友重機械マリンエンジニアリングの横須賀造船所 で建造、2018年第4四半期に引き渡す予定。両社のアフラマックス建造契約は、13年に再開されてからこれで計8隻とな る。マーケット筋によると、住重は11万2,000重量㌧型アフラマックス1隻をルンドクビストから受注した。デリバリーは18年 第4四半期。両社は今年6月までに、同型船1隻(18年7月竣工予定)の建造契約を結んでいた。住重は今回の2隻目受注 により、18年船台をほぼ埋めたものとみられる。ルンドクビストは13年6月、アフラマックス2隻(14~15年竣工)を住重に発 注し、18年ぶりに住重との取引を復活させた。その後、13年12月までにアフラマックス2隻(14~15年竣工)、14年5月まで にアフラマックス1隻(16年3月竣工予定)、同年8月までにアフラマックス1隻(16年5月竣工予定)、15年6月にアフラマック ス1隻(18年7月竣工予定)をそれぞれ発注した。住重のアフラマックス受注は今年に入り、今回の1隻を加え、これで11隻 に拡大した。 ◆18年から年5隻体制まで回復/住友重機械、規制フル適用船も開発【10.19】 住友重機械は、2018年に新造船の建 造量を年5隻程度の体制まで戻す計画だ。一時は操業を年1隻まで絞っていたが、昨年来のアフラマックス・タンカー需 要の高まりを受けて徐々に操業を引き上げている。手持ち工事は、このほど海外船主からアフラマックス1隻を追加受注 し、2018年いっぱいまで確保した。新規制をフル適用した船型の開発も完了しており、19年納期以降の新造商談にも備 えている。住友重機械は得意とするアフラマックス・タンカーの連続建造体制をとってきたが、リーマン・ショック以降の 円高や発注低迷などを受けて、2011年から操業を最小限に絞り、13年度は1隻にまで減らした。ただ、昨年来のアフラマ ックス需要の高まりを受けて、欧州を中心とした海外船主から受注を積み上げており、受注活動とともに徐々に操業の 引き上げを図っている。手持ち工事の状況などから18年には年5隻体制まで引き上げる見通し。住友重機械の受注残は アフラマックス13隻。マーケットレポートによると、このほどフィンランド船主ルンドクビストからアフラマックス・タンカー1 隻を追加受注した。納期は18年第4四半期とみられる。ここ3年にルンドクビストから受注したアフラマックスは計6隻にな り、2隻は昨年10月と今年2月に引き渡している。また、昨年には44m幅の11万2,000重量㌧型の省エネ船型を市場に投 入しており、欧州や香港船主から受注している。原油タンカーだけでなく、LRⅡ型プロダクト船の建造にも対応してお り、先月に1隻を引き渡している。今後の商談を見据えて、IMO(国際海事機関)の窒素酸化物(NOx)3次規制と、国際海事 協会連合の新共通構造規則(H・CSR)をフル適応したアフラマックス・タンカーの船型開発にもめどを付けた。NOx3次規 制対応では、排気ガス後処理装置(SCR)、排ガス再循環(EGR)システムの双方でフレキシブルに対応するようだ。 ◆住重船舶/営業損益トントン【10.29】 ≪4-9月期 売上高13%増130億円≫住友重機械工業が29日発表した2015年 4-9月期連結決算は、船舶事業の営業損益が前年同期の11億円の赤字からトントンに好転した。売上高は前年同期比13 %増の130億円。新造船は前年同期と同じアブラマックスタンカー1隻を引き渡した。受注高は42%減の186億円。新造船 受注は前年同期比1隻減のアブラマックス2隻を受注している。船舶部門の通期連結業績予想は、売上高が前期比15% 増の300億円、営業損益は5億円の黒字(前期は12億円の赤字)と従来予想を変更していない。受注高は400億円と35 %減少するものの、前回予想を50億円上方修正した。新造船の受注予想をアフラマックス5隻から6隻に引き上げたもの とみられる。9月末現在の新造船受注残はアフラマックス13隻。全社ベースの15年4-9月期連結決算は、売上高が5%増 の3,225億円、営業利益は7%減の183億円、経常利益は15%減の168億円、純利益は6%減の114億円。中国経済減速の 影響などにより、建設機械部門などが低迷した。16年3月期通期の連結業績予想は、売上高が前期比3%減の6,900億 - 1 - 円(前回予想7,000億円)、営業利益は前期並みの460億円(同525億円)、経常利益は4%減の430億円(同500億円)、 純利益は10%増の270億円(同300億円)と下方修正した。為替の前提レートは1㌦=120円。 ◆営業益460億円【10.30】 ≪住重、今期業績予想を下方修正≫住友重機械工業は29日、2016年3月期連結決算で 営業利益が前期比横ばいの460億円になる見通しを発表した。従来の業績予想から65億円減の下方修正となる。油圧 ショベルなどを手がける「建設機械部門」が中国市場の需要低迷により、売り上げ減少と営業利益の悪化を見込む。売 上高は従来予想を100億円下回る6,900億円を見込む。15年4-9月期連結決算は、営業利益が前年同期比7・9%減の183 億円だった。建設機械部門の営業利益は22億円と前年同期を51億円下回った。期中の全社受注高は同2・5%減の3,563 億4,100万円だった。建設機械部門が不振だったほか、造船などの「船舶部門」が落ち込んだ。 ◆4~9月期営業損益ゼロに/住友重機船舶、3期ぶり黒字へ前進【10.30】 住友重機械が29日発表した2015年4~9月 期の船舶部門の連結営業損益はゼロ(前年同期は11億円の赤字)だった。円安などの影響もあり、9四半期ぶりに損益を トントンまで持ち直した。通期は3期ぶりの黒字転換を見込む。また、期中にアフラマックス・タンカー2隻を受注した。売上 高は前年同期比13%増の130億円で、新造船の引き渡しは1隻だった。受注高は前年同期比42%減の186億円。受注残 はアフラマックス・タンカー13隻で、2018年度第2四半期までの手持ち工事を確保している。通期業績は売上高が前期比 15%増の300億円、営業損益が5億円の黒字(前期は30億円の赤字)と従来予想を据え置いた。受注高は従来予想を50 億円引き上げ、前期比35%減の400億円となる見通し。予想の前提となる為替レートは1ドル=120円。 ◎今治造船関係 ◆国内最大1,330㌧クレーン導入/今治造船が丸亀の新ドックに、住重製【10.19】 今治造船は丸亀事業本部で建設中 の大型ドックに、造船用クレーンとしては国内最大となる吊り能力1,330㌧のゴライアスクレーンを3基導入する。従来の 最大型は1,200㌧だったが、これを上回る大きさ。住友重機械搬送システムが製造する。住友重機械が15日、クレーンの 受注を発表した。住重は今治造船向けにこれまで200基超のクレーンを納めており、今回受注したゴライアスクレーンに より、今治造船向けには計11基の大型ゴライアスクレーンを納めることになる。今治造船は丸亀で全長600mのドックを建 設しており、来年10月に完成する予定。同ドックに国内最大クレーン3基を導入することで、搭載ブロックの大型化により 生産効率を高めるねらいがある。造船所のドック用クレーンとしては、日本国内ではこれまで1,200㌧吊りが最大で、三 菱重工長崎造船所(香焼工場)や大島造船所、ジャパンマリンユナイテッド有明事業所が採用している。また海外では、 川崎重工業が技術支援しているブラジルのエンセアーダ・インダストリア・ナバルの1,800㌧型が可動式としては世界最 大とみられる。 ◆三菱重工工作機械/きょう始動【10.1】 三菱重工業は30日、100%出資の工作機械製造・販売会社、三菱重工工作 機械(滋賀県栗東市、白尾誠二社長)が1日に営業を始めると発表した。資本金は30億円。これまで別会社だった製造と 販売の両部門を新会社にまとめ、機動力を高める。歯車工作機械と切削工具による加工システム、情報通信技術(ICT) を活用した工場情報処理システムなどを重点化する。従業員数は約1,000人。 ◆大型客船2隻目も延期協議/三菱重工・鯨井副社長明かす【10.3】 三菱重工業が長崎造船所(長崎市)で建造して いるドイツのクルーズ会社「アイーダ・クルーズ」向けの大型客船について、2隻目の引き渡し時期を当初予定の来年3月 から延期することでアイーダ側と協議していることがわかった。造船など交通・輸送分野を担当する鯨井洋一副社長 が朝日新聞のインタビューで明らかにした。鯨井氏は、2隻目の納期について「遅れる可能性がある」と話した。新たな 納期を協議中で、具体的な時期は明かさなかった。三菱重工は2011年11月に2隻の客船を受注したが、設計変更や工事 のやり直しが相次ぎ、1隻目の引き渡しが予定より9カ月遅い今年12月にずれ込み、2隻目の建造も遅れている。客船事 業では昨年度までに約1,336億円の特別損失を計上しており、鯨井氏は「ビジネスとして成り立っていない」と指摘し た。三菱重工は赤字事業の見直しを進めているが、客船については撤退はせずに、事業構造の改革をすすめるという。 ◆三菱重工長崎の商船分社【10.7】 デスク まずは三菱重工長崎造船所の商船分社からいこう。A 会見にはテレ ビから新聞までほぼすべてのメディアが出席しました。地元・長崎のメディアの記者はばば全員、分社が長崎へ及ぼす 影響について質問していました。B 三菱重工船舶海洋の横田宏社長は「従来と変わらない。エンジニアリングなどの 人員も含めると、900-1,000人が長崎造船所で働いている。パートナー(企業)も従来通り。多少整流化するものの、仕 事が増えることはないかもしれないが、特に減ることもない」と答えました。デスク 船体ブロックの外販も行う「船 体」については、造船業界内で疑問を投げかける声が多い。C 三菱重工船体の村上幸司社長は「現在商談を進めてい るのて、具体的なことは差し控えたい。船体平行部のブロックをやりたい」と答えるにとどめました。デスク 「船舶海 洋」はガス船に特化するが、ガス船の需要がなくなったらどうするのか。A 横田社長は「ガス船は、シェールガス(非在 来型ガス)関連で向こう数年は需要があるとみている。北米以外の”ポストシェール”も出てくる。この3年ほどの間に連 続建造で競争力を高める。その先は、市場ニーズを踏まえて対応する」と答えました。5-10年後の姿は「走りながら考 える」とも。これまでの新造船受注で3年分の仕事は確保しているので、まずはしっかり結果を出すということなのでし ょう。デスク 客船2隻の建造で1,300億円を超える赤字を出している。戦略の意思決定はどこが担うのか。B 横田社 長は、ガス船については「船舶海洋が決めていくつもりでいる」と話しました。要となるLNG(液化天然ガス)船の営業・ 設計は今治造船との合弁MI・LNGカンパニーにシフト済みなので、その意味では意思決定が反映されるのでしょう。C 売上高はここ3-4年で「船舶海洋」が1,000億円、「船体」は100億円規模を目指します。黒字化は、不採算の資源探査船 を今期は建造しているため、来期には達成すべき、としています。客船の損を少しでも取り戻す狙いがあるものとみら れます。デスク 韓国や中国に対抗できるかとの質問に、ガス船建造実績が乏しい中国はともかく、対抗できると言っ - 2 - たそうだし、海外プロジェクトの新造案件も受注していくという意気込みがみられたそうだが、規模で上を行く韓国に 本当に対抗できるのだろうか。A 「船舶海洋」のガス船の年間建造隻数が5隻であることを踏まえると、相当の踏ん張 りが必要と思われます。 ◆豪の次期潜水艦「1隻目から現地で建造」/三菱重、受注獲得へ攻勢【10.9】 三菱重工業と日本政府は8日、オースト ラリアで受注を狙う次期潜水艦について、1隻目から現地で建造する用意があると明らかにした。豪州に訓練センター を設立する計画も示し、技術移転に積極的な姿勢を明確にする。豪州での生産を最大化する方針を前面に出し、ドイツ やフランスとの受注競争を優位に進めたい考えだ。11月末に豪政府に計画を報告する。三菱重工や川崎重工業が建造 し、6隻が就役中の「そうりゅう」型を基に設計。リチウムイオン電池を世界で初めて搭載し、潜航能力を高めた最新型と する。溶接技術などを教える訓練センターを設立することも提案する。実物大の模型を使い、約300人の豪州人労働者 に約1年にわたり技術指導する。これまでは最初のl~2隻を日本国内で建造し、徐々に豪州の建造比率を高める案を軸 に検討してきた。豪州で高まる雇用懸念に配慮し、受注を確実にするため完全な現地生産も可能な体制をアピールす る。豪政府は現行のコリンズ級の老朽化に伴い、2025~31年に8~12隻の次期潜水艦を調達する方針。米豪が開発する戦 闘・兵器システムや、20年間に及ぶ保守・維持費用を合わせ、総額500億豪㌦(約4兆3,000億円)に上る。このうち200 億豪㌦が潜水艦の建造費に相当する。 ◆三菱重工、背水の陣で臨む【10.21】 ≪「長崎」で商戦改革、造船技術 最高水準の“中手”に≫三菱重工業が祖業の 造船事業の再構築に乗り出した。長崎造船所香焼工場(長崎市)の商船部門を解体し、船体建造、船体ブロック建造の専 業2社を1日に始動。累計1,300億円もの巨額損失を計上した客船はエンジニアリング事業に衣替えした。事業モデルは 〝世界最高水準の技術力を保持した中手(中堅)造船所″。しがらみを捨て、背水の陣で臨む長崎商船改革。慢性赤字 から抜け出すための器は整った。問われるのはスピード、マインドセットだ。≪「不振」に戦略ミス≫9月25日、長崎造船所。 交通・輸送ドメイン長の鯨井洋一取締役副社長執行役員をはじめ、新体制を含めた改革の進捗フォローと、大詰めを迎 える客船建造の課題洗い出しが議論された。「反省の上に立ち、もっと危機感を持つことが必要だ」と鯨井副社長は断 じる。そもそも国内最大級の設備を持ち、建造効率は高いはずなのに、長崎の商船事業が振るわない理由は何か-。7 2年に完成した香焼工場。当初、長さ1,000㍍のドックで超大型タンカー(VLCC)の連続建造を想定していた。だが、最新 設備を持つ韓国造船所との競争に敗れ、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)運搬船に軸足を移行。一層の差別化 を求め、客船や海洋資源探査船など韓国、中国の造船所が手がけない超の付く高付加価値シフトを敷くが「あまりに難 しく、設計などリソースが追いつかなかった」と長崎造船所長兼三菱重工船舶海洋社長の横田宏執行役員は分析する。 生産の混乱を招き、得意のガス船にも悪影響を及ぼした。能力過信による戦略ミスだろう。「連続建造モデルにしない と商船は成り立たない」(横田執行役員)。元気のある造船所は今治造船や常石造船、名村造船所、大島造船所など、中 手または強手と呼ばれる専業大手。ばら積み運搬船やコンテナ船、タンカーなど船種やサイズを絞り、連続建造による ボリューム効果を最大限享受する。三菱重工もガス船で同モデルを描き、18年度までLNG船を年4-5隻造り続ける。客船 の後続案件も視野に入れるが、現実は「(ガス船に支障が出ない)条件でしか受注できない」(鯨井副社長)。ガス船に限 れば黒字体質は定着している。当面はこれに集中し、16年度通期での黒字確保が最初のハードルだ。≪異なるDNA、第 三者視点で評価≫15年度の商船事業は約2,000億円を見込む。客船、下関造船所のフェリーや海上保安庁船、国家プロ ジェクト案件も含む。今後規模を追わず1,500億円規模で確実に利益を出せる事業体を目指す。改革を指揮するのが同 副ドメイン長兼船舶・海洋事業部長の大倉浩治執行役員。化学プラント部門出身で、海外大型プロジェクトのファイナンス に精通する。プラントは機器調達や建設を取りまとめるエンジニアリング力がカギ。「コスト、納期、安全、品質などトラブ ルを一つずつ解決し、ゴールに導くマネジメント経験を持った人が多い。変革の時には必要とされるのでは」(大倉執行 役員)。モノづくり系出身とは異なるDNAを持ち、第三者視点で客観的に評価できる。客船建造を指揮する星野直仁執 行役員もその1人だ。商船改革のポイントは造船バリューチェーンにおけるスマイルカーブにわかりやすい。上流の「設 計」、下流の「建造・艤装」の価値は大きく、中央の「コンポーネント製造」が劣る。上流と下流を結びつけ、固定費を絞り 込んだのが船体建造の「三菱重工船舶海洋」。安価な船体ブロックを他社から調達する選択肢もある。一方、価格競争 にさらされるブロック専業「三菱重工船体」は営業や設計などを置かない身軽な組織で、他造船所への外販で量を確 保する。ブロック製造ラインの思想はVLCC胴体平行部を大量につくる前提で企画された。現状は曲がり部の多いLNG船 が中心で「自社の船舶受注に応じて作業量が大きく変動し、本来の強みを発揮できなかった」(鯨井副社長)。平行部の 外販が焦点となる。アイーダ・クルーズ向け客船2隻はどうか。当初計画から9カ月遅れで12月に1番船を完工する予定 だが「気が抜けない。(来年3月完成予定の2番船も)納期を変える可能性を否定できない」(鯨井副社長)と、少なくと も3カ月程度の遅れは想定している模様だ。≪契約にも甘さ≫ただ、つまずいた理由は明白。プロトタイプと呼ばれる前 例のない船で、契約にも甘さがあった。火災を引き起こした「旧ダイヤモンドプリンセス」と同等規模ながら、建造から10 年以上経過し、トレンドを見失っていたこともー因。客の目の前で調理するレストラン、複数のシアターなどエンターテイ ンメント施設を充実した上で客室も多い。配管や電気・通信設備など狭い空間の設計、組み付けが増え工程が混乱した。 ≪「下関造船所」ヒント≫商船改革のヒントは意外にも近くにある。下関造船所江浦工場(山口県下関市)。造船不況をく ぐり抜け、フェリーやアルミ高速船などを軸に長年黒字を維持する優等生だ。陸上から滑り下ろして進水する「船台」を 利用する大手で数少ない造船所だ。進水後すぐに止めないと、目の前の巌流島にぶつかる恐れがあるなど地の利が あるとは言いがたい。歴史上、閉鎖のうわさは絶えなかったが、三菱重工が選択したのは横浜や広島、神戸での商船建 造撤退だった。生き残れたのは「奇跡ですね」と北村徹下関造船所長は冗談交じりに語るが「下手をすると閉じられる という危機感をバネにがんばってこれた。規模が小さく紛れもなかった」のが本音。実は「85年まで貨物船など輸出船 ばかりだった」がプラザ合意で一変。フェリーに照準を合わせ、約30年で40隻近くを送り出した。今でこそ国内トップだ が、産みの苦しみも味わった。≪失敗糧に成長、ハンドメードの船造り≫80年代の初の大型フェリーでは機関室振動が船 内に伝わり、試運転後に大改造を強いられた。受け継がれた失敗が、成長力に姿を変えた。下関造船所では進水が迫る と、設計、建造のマネージャー級が一組で自然とパトロールし、改善点を話し合う「ハンドメードの船造り」(北村下関造 - 3 - 船所長)文化が根付く。基本設計、詳細設計、生産設計の垣根も低く、工作部を含めて横連携は滑らか。フェリーは客船 同様、内装品や資機材が多く、狭隘設計・製造が一般的。連携と経験値が物を言う。≪組織の壁崩せ≫長崎造船所に求 められているのも全体最適志向だ。10月から船体建造部隊は設計、工作、調達などを含めて大部屋に集結。それまで設 計は立神地区の本工場に拠点を置き、同じ造船所にいながら「心が離れていた」(関係者)面は否めない。「長崎の企業 風土を変えることで合理的な仕事、コストダウンもできるはずだ」(横田長崎造船所長)。組織の壁を崩し、ワンチームに なれるか。「現時点で業界再編は考えていない。改革をやり遂げて初めて次の絵を描ける」(大倉執行役員)。改革の行 方は、我が国造船業の行く末も占う。 ◆大型客船建造で特損309億円計上/三菱重【10.31】 三菱重工業は30日、長崎造船所(長崎市)で建造しているドイ ツのクルーズ会社「アイーダ・クルーズ」向けの大型客船について、納期の延期に伴う特別損失約309億円を2015年9月 中間決算に計上した。新しい納期に間に合わせるため、内装の仕上げや試運転に、多くの人員を投入しているためとい う。大型客船は2隻受注。15年3月期決算までに約1336億円の特別損失を計上した。今回分をあわせると損失は約1646 億円にのぼり、約1000億円とされる受注額を上回る見通し。 ◆三菱重、経常益13%減、発電設備で修理・交換費用/4~9月【10.31】 三菱重工業が30日発表した2015年4~9月期 の連結決算は、経常利益が前年同期比13%減の1118億円だった。関西電力に納入した火力発電設備に不具合が起き、 修理や部品交換などの費用がかさんだ。営業外収益に計上する為替差益の減少も響いた。売上高は7%増の1兆8820 億円、営業利益は2%減の1159億円だった。足を引っ張ったのはエネルギー・環境部門だ。部門営業利益は377億円と39 %減った。関電向けで蒸気タービンの翼が破損するなどの事故が発生。同型の製品を納入した他の顧客向けも含め、修 理や部品交換などの費用が発生した。機械・設備システム部門も24%減益だった。自動車用ターボチャージャーは好調 だったが、海外子会社の決算期変更に伴い、収益の計上期間が短くなった影響が大きい。半面、交通・輸送部門の営業 利益は330億円と6・1倍に拡大した。米ボーイング向けの航空機部材の販売増や円安効果が利益を押し上げた。防衛省 向けの航空機などを手掛ける防衛・宇宙部門も増収増益だった。純利益は433億円と14%増えた。固定資産売却益を計 上した上、少数株主への利益流出が前年同期より減ったため。16年3月期は売上高が前期比5%増の4兆2千億円、経常 利益は9%増の3千億円とする従来予想を据え置いた。小口正範最高財務責任者は「エネルギー・環境は厳しいが、航空 機の好調で業績目標は達成できる」と話した。 Ⅱ.国内造船・造機関係の動向 ◆年間受注量はリーマン後最高に【10.16】 ≪国内造船、1-9月1,500万㌧超、規制影響≫国内造船所の1-9月受注量は 1,500万総㌧を超え、暦年ベースでリーマン・ショック後最高を更新した。日本船舶輸出組合の輸出船契約実績は285隻・ 1,537万総㌧(735万CGT)で、㌧数ベースで前年同期比27%増となり、既に昨年の年間受注量を上回った。ドライバルク 市況の低迷など新造船市場の環境は良くないものの、新規制発効前の駆け込み契約などで、内定していた案件を中心 に契約が集中している。仮にこのままのペースが続けば、年間実績は造船ブーム最終年の08年に匹敵する水準にな る。今年7月から新たに国際船級協会連合(IACS)の新共通構造規則(調和化船体構造規則:H-CSR)が適用となり、規制 直前の6月には規制を回避する“駆け込み”契約が相次いだ。7月以降は駆け込みの反動で急減速するとの懸念もあっ たが、来年1月の起工船から適用されるNOx3次規制を背景に、契約実績は7月以降も月間150万総㌧の高水準が続いて いる。造船ブーム期の年間受注量は、03年が2,676万総㌧、04年が1,952万総㌧、05年が1,398万総㌧、06年が2,659万 総㌧、07年が2,472万総㌧、08年が1,943万総㌧。仮に10月以降も月間150万総㌧ペースの受注が続けば、年間2,000万 総㌧弱となり、04年、08年とほぼ同水準になる。今年上期の大きな特徴はバルカー以外の受注量が多いことだ。1-9月 の実績を船種別にみると、バルカー系が170隻・709万総㌧、タンカー系が76隻・547万総㌧、コンテナ船を含む貨物船系 が39隻・281万総㌧で、全体に占める比率は総㌧ベースでそれぞれ46%、36%、18%となっている。対前年比では、バル カーが2割減、タンカーが4.5倍、貨物船が5割増だった。タンカー系の契約はリーマン後最高で、造船ブーム最盛期に 匹敵する水準になっている。バルカーを主力とする造船所がドライバルク市況の低迷を背景にタンカーやコンテナ船 の受注にシフトしていたが、その傾向が統計上にも表れた格好だ。また、バルカーは7月以降ハンディサイズの隻数が 多くなっているが、ハンディサイズの多くにH-CSRが適用されないことが影響しているとみられる。受注船285隻のう ち純輸出船は89隻で、前年同期と比べて海外船主向けが減少し、邦船系向けの案件が増えた。2015年4-9月の船主系 列別受注量は、邦船系72.2%、欧米系9.6%、ギリシャ系4.6%、香港系1.3%、その他12.3%となっている。12-13年度に かけてギリシャや欧米系船主の発注が増えたが、昨年度以降は減少している。国内造船所は、今年に入ってから受注し ていた新造船のうち、正式契約を交わしていない内定案件も多数あった。NOx3次規制の適用が目前に迫る中、契約調 印を急ぐ動きは規制直前まで続くとの見方もある。既に2018年いっぱいまで手持ち工事を確保した造船所も多いこと から、内定案件だけでも今後も上積みがありそうだ。ただ、規制が適用される来年以降は反動から急減速するとの見方 も強くなっている。 ◆9月の国内受注/3.4倍の153万㌧【10.16】 ≪輸組統計、新規制適用後も高水準続く≫日本船舶輸出組合(輸組)が まとめた9月の輸出船契約実績は40隻・153万総㌧で、総㌧ベースで前年の3.4倍だった。7月から新規制の新共通構造 規則(調和化船体構造規則:H-CSR)が適用されたが、7月以降も月間150万総㌧の高水準が続いており、5カ月連続で前 年同月を上回った。9月の契約船の内訳はコンテナ船10隻、一般貨物船3隻、RORO船2隻、バルカー19隻(ハンディ10隻、 ハンディマックス5隻、ポストパナマックス2隻、木材運搬船1隻、チップ船1隻)、タンカー6隻(スエズマックス2隻、アフラマ ックス2隻、LNG船2隻)となっている。40隻のうち純輸出船は21隻で、船主系列は7カ国と多くなっている。9月の受注船 の契約態様は、㌧数べースで円建て契約30.6%、円・外貨ミックス4.2%、外貨建て65.2%だった。現金払い契約は100 - 4 - %、商社契約は15.6%。納期別では2016年度もの17.5%、17年度もの17.3%、18年度もの54.5%、19年度もの10.7%だ った。竣工量に相当する通関実績は、前年同月比24%減の29隻・99万総㌧だった。 ◆9月輸出舶契約40隻、幅広い船種受注/輪組まとめ【10.16】 日本船舶輸出組合が15日に発表した9月の輸出船契 約(受注)実績は、40隻、153万総㌧(87万CGT=標準貨物船換算トン)で、総トン数ベースで前年同月比3.3倍の増加とな り、5カ月連続のプラス。コンテナ船、バルカー、タンカーなど幅広い船種で契約が増えた。この結果、4~9月実績は229 隻、1,204万総㌧で前年同期比77%増、1~9月実績は285隻、1,536万総㌧で27%増だった。7月1日からバルカーとタンカ ーの契約船を対象に適用された新国際規則「H-CSR(調和共通構造規則)」の適用回避を狙い、6月までに契約された 新造船が表面化してきたことに加え、NOx(窒素酸化物)3次規制が2016年から適用されることを前に、この適用回避を 狙った契約の増加が主因とみられる。9月の契約隻数40隻の船種別内訳は、コンテナ船10隻▽ハンディサイズバルカー 10隻▽ハンディマックスバルカー5隻▽一般貨物船3隻▽ポストパナマックスバルカー2隻▽RORO船2隻▽スエズマック スタンカー2隻▽アフラマックスタンカー2隻▽LNG(液化天然ガス)船2隻▽木材運搬船1隻▽チップ船1隻。契約は全て現 金払い。トン数ベースの契約形態別内訳(シェア)は、円建て30.6%、円・外貨ミックスが4.2%、外貨建てが65.2%。商社 契約は15.6%。海外船主向け純輸出船は21隻。納期は16年度17.5%、17年度17.3%、18年度54.5%、19年度10.7%。輸出 船の竣工量を示す通関実績は29隻、99万総㌧(48万CGT)と、23.8%減少した。4~9月実績の229隻(1,204万総㌧)を船 主系列別でみると、邦船系72.2%、欧米系9.6%、ギリシャ系4.6%、香港系1.3%、その他12.3%。15年9月末現在の輸出船 手持ち工事量は709隻、3,374万総㌧(1,649万CGT)と、1年前と比べ31隻、528万総㌧増加した。 ◆輸出船契約/9月3.4倍152万5,550総㌧、5カ月連続プラス【10.16】 日本船舶輸出組合(JSEA)が15日発表した9月 の輸出船契約実績(一般鋼船)は、前年同月比3.4倍の152万5,550総㌧の大幅増で、5カ月連続のプラスとなった。隻数 は40隻(前年同月12隻)。2016年1月から施行される窒素酸化物(NOx)の3次規制に対する駆け込み需要が継続してい る模様。コンテナ船や液化天然ガス(LNG)運搬船などが、全体の受注を底上げした。内訳はコンテナ船が10隻、ハンディ 型ばら積み運搬船10隻、ハンディマックス型ばら積み船5隻、ポストパナマックス型ばら積み船2隻、スエズマックス型油 送船2隻、LNG船2隻。納期別内訳は16年度17.5%、17年度17.3%、18年度54.5%、19年度10.7%。通関実績は29隻、同76.2 %増の99万2,660総㌧。9月末時点の手持ち工事量は709隻、3,373万7,189総㌧となった。4~9月の契約実績は1,203万9, 687総㌧となり、半期で前年度の総計に達しつつある。市況は引き続き堅調との見方が大勢を占めるが、下期は駆け込 み需要の反動減を懸念する声も出ている。 ◆手持ち工事量/3,374万㌧に増加【10.16】 日本船舶輸出組合がまとめた今年9月末時点の手持ち工事量は709隻・ 3,374万総㌧(1,649万CGT)で、総㌧ベースで8月末時点から増加した。納期別の内訳は、2015年度引き渡し分151隻・603 万総㌧、16年度241隻・1,086万総㌧、17年度178隻・886万総㌧、18年度98隻・552万総㌧、19年度以降41隻・246万総㌧だ った。 ◎新造船 ◆バルカ一・タンカー/新造船価弱含み続く【10.2】 バルカーとタンカーの新造船価が、横ばいながら弱含みで推移し ている。国際ルール改正に伴う年前半の新造船駆け込み発注の反動で、新造発注が止まっていることが主因。ガス船、 超大型コンテナ船(ULCS)は横ばい、自動車船(PCTC)は小反発した。マーケット筋によると、足元のタンカーの新造船価 レベルは、全般的に若干弱含みながら横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は9,550万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックス は6,450万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマックスは5,300万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミデイアムレンジ)型プロ ダクト(石油製品)タンカーは3,550万㌦(5万1,000重量㌧型)で推移している。バルカーの足元の新造船価レベルは弱 含み横ばい。ケープサイズは4,800万㌦(18万重量㌧型)パナマックスは2,600万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマッ クスは2,450万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,050万㌦(3万5,000重量㌧型)。低迷するドライ市況の出口 が見えない影響で新造引き合いそのものが極めて低調なため、目先は気配値先行でじり安基調が続く可能性が高い。 ガス船は、LNG(液化天然ガス)が横ばいの2億㌦(16万立方㍍型)。弱含み基調が続いていた大型LPG(液化石油ガス) 船VLGCは横ばいに転じ、7,700万㌦で推移している。コンテナ船は、1万3,000TEU型ULCSが横ばいの1億1,600万㌦、2,75 0TEU型は弱含み横ばいの3,050万㌦。PCTCは、6,000台積みが直近と比べ10万㌦高の5,910万㌦を付けている。 ◆新造船価相場/ケープ小幅続落4,750万㌦【10.7】 新造船マーケットでケープサイズの新造船価相場が小幅続落し た。足元のレベルは直近と比べ50万㌦安の4,750万㌦(18万重量㌧型)。近年の最安値である2012年の4,600万㌦にじり じりと接近してきた。一方、自動車船(PCTC)は小反発し、6,000台積みが40万㌦高の5,950万㌦を付けている。マーケッ ト筋によると、バルカーの足元の新造船価レベルは、パナマックス以下の中小型船が弱含み横ばい。パナマックスは2,60 0万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは2,450万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,050万㌦(3万5,0 00重量㌧型)。タンカーの足元の新造船価レベルは、VLCC(大型原油タンカー)が若干弱含みながら横ばいの9,550万 ㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは横ばいの6,450万㌦(15万7,000重量㌧型)、アブラマックスは横ばいの5,300万 ㌦、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)夕ンカーは弱含み横ばいの3,550万㌦(5万1,000重量㌧型)となって いる。ガス船は横ばい。LNG(液化天然ガス)船は2億㌦(16万立方㍍型)、大型LPG(液化石油ガス)船VLGCは7,700万㌦ で推移している。コンテナ船は、1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、2,750TEU型は50万㌦安の3,000万㌦となっ ている。 ◆新造船価相場/ケープ小幅続落4,700万㌦/中型タンカーも小反落【10.15】 新造船マーケットでケープサイズバル カーの船価レベルが小幅続落し、4,700万㌦となった。長引くドライ市況低迷の影響で、新造発注がほぼ止まっているこ - 5 - とが主因とみられる。これまで比較的堅調だったスエズマックス、アフラマックスといった中型タンカーの新造船価レベ ルも、ここへきて小反落。年前半の新造船駆け込み発注の反動とみられる。マーケット筋によると、バルカーの足元の新 造船価レベルは、直近と比べケープサイズが50万㌦安の4,700万㌦(18万重量㌧型)。近年の底値だった2012年の4,60 0万㌦に迫っている。パナマックス、ハンディマックス、ハンディサイズは弱含み横ばい。パナマックスは2,600万㌦(7万6, 000重量㌧型)、ハンディマックスは2,450万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,050万㌦(3万5,000重量㌧ 型)。タンカーは、VLCC(大型原油タンカー)が横ばいの9,500万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは50万㌦安の6,400 万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマックスは50万㌦安の5,250万㌦、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タ ンカーは弱含み横ばいの3,550万㌦(5万1,000重量㌧型)。ガス船も横ばいで、LNG(液化天然ガス)船は2億㌦(16万立 方㍍型)、大型LPG(液化石油ガス)船VLGCは7,700万㌦(8万2,000立方㍍型)。コンテナ船は1万3,000TEU型が横ばいの 1億1,600万㌦、2,750TEU型フィーダーは弱含み横ばいの3,000万㌦で推移している。自動車船(PCTC)は、6,000台積み が横ばいの5,950万㌦。地合いはここへきて小じっかりしてきた。 ◆新造船価格相場/バルカー下落圧力強まる【10.26】 ≪タンカーもやや弱含み≫新造船マーケットで、バルカーの相 場の下落圧力が強まってきた。足元の船価レベルは横ばいながら、長引くドライ市況の低迷により新造発注がほぼ止ま っている影響が大きい。タンカーの船価レベルも横ばいで推移しているものの、若干弱含みの傾向が続いている。国際 ルール改正に伴う年前半の新造船駆け込み発注の反動が響いているとみられる。マーケット筋によると、バルカーの足 元の新造船価レベルは、ケープサイズ4,700万㌦(18万重量㌧型)、パナマックス2,600万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハン ディマックス2,450万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズ2,050万㌦(3万5,000重量㌧型)。タンカーは、VLCC(大型 原油タンカー)9,500万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックス6,400万㌦(15万7,000重量㌧型)アフラマックス5,250万㌦、M R(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカー3,550万㌦(5万1,000重量㌧型)。ガス船は横ばい基調を維持。LN G(液化天然ガス)船は2億㌦(16万立方㍍型)、大型LPG(液化石油ガス)船VLGCは7,700万㌦(8万2,000立方㍍警。コン テナ船は1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、2,750TEU型フィーダーは弱含み横ばいの3,000万㌦。自動車船(PC TC)は、6,000台積みが5,950万㌦と横ばいながらやや強含みとなっている。≪中古船価はバルカー続落、ケープサイズ 下落基調≫中古船価相場は、バルカーが続落した。全船型で船齢5年物や10年物が下落した。特にケープサイズバルカ ーの下落基調が強まっている。バルカーの足元の中古船価レベルは、ケープサイズが新造リセールは直近と比べ100 万㌦安の4,500万㌦、船齢5年物は200万㌦安の3,300万㌦、船齢10年物は横ばいの2,000万㌦、船齢15年物は弱含み横 ばいの1,050万㌦。パナマックスは、新造リセールが横ばいの2,800万㌦、船齢5年物は100万㌦安の1,700万㌦、船齢10 年物は横ばいの1,050万㌦となっている。ハンディマックスは、新造リセールが弱含み横ばいの2,550万㌦、船齢5年物は 横ばいの1,600万㌦、船齢10年物は100万㌦安の900万㌦で推移している。ハンディサイズは、新造リセールが横ばいの 2,100万㌦、船齢5年物は100万㌦安の1,200万㌦、船齢10年物は横ばいの950万㌦、船齢15年物は強含み横ばいの550 万㌦。タンカーの足元の新造船価レベルは全般的に横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は新造リセール1億500万㌦、船 齢5年物8,000万㌦、船齢10年物5,500万㌦、船齢15年物3,800万㌦。スエズマックスは、新造リセール7,000万㌦、船齢5 年物6,000万㌦、船齢10年物4,200万㌦。アフラマックスは新造リセール5,600万㌦、船齢5年物4,500万㌦、船齢10年物3, 000万㌦となっている。 ◎中古船 ◆中古船価/バルカ一反落【10.1】 ≪解撤船価は中国続伸≫英国ボルチック・エクスチェンジの9月28日付の中古船 価インデックス(船齢5年)はVLCCを除く全船型で下落した。スクラップ船価は中国解撤船が全船型で続伸した一方、イ ンド亜大陸解撤船は全船型で下落した。直近のマーケットレポートで報告されたバルカーの中古売買成約は、ギリシャ船 主ターゲット・マリンがトームから7万6,000重量㌧型“Torm B?rnholm”(常石造船で2004年建造)と、7万4,200重量㌧型 “Torm Anholt”(名村造船で04年建造)をともに9,250万㌦で買船。トームは今月23日にバルカ一事業からの撤退を発表 しており、バルカーの自社船はこれらの2隻を残すのみとなっていた。このほか中東バイヤーが7万3,400重量㌧型“Eas ternView”(現代重工で95年建造)を550万㌦、7万1,700重量㌧型“New-1ead Markela”(日立造船で90年建造)を320万 ㌦で買船した。ハンディマックスでは買主不明で4万7,600重量㌧型“Talent”(大島造船で96年建造)が380万㌦で買船 された。タンカーの中古船市場では、スエズマックスで14万9,700重量㌧型“Front Splendour”(三井造船で95年建造) が不明買主に1,430万㌦で買船された。MR型では4万6,700重量㌧型“serifopoulo”(現代重工で95年建造)をナイジェリ アバイヤーが800万㌦で買船したほか、3万7,100重量㌧型“STI Highlander”(現代尾浦で07年建造)をノルデンが1,950 万㌦で買船した。3.4 ◆中古船価/VLCC高齢船強含み/バルカー弱含み横ばい続く【10.5】 中古船マーケットで、VLCC(大型原油タンカー) の高齢船が強含み基調で推移している。スポット運賃市況が冬場の需要期の船腹手当てに入る来月以降、じりじり上昇 する可能性がある。タンカーの足元の中古船価レベルは、全船型で強含み横ばい。なかでもVLCCの高齢船の地合いが 強い。VLCCが新造リセール1億500万㌦、船齢5年物8,000万㌦、船齢10年物5,500万㌦、船齢15年物3,800万㌦。スエズ マックスは、新造リセール7,200万㌦、船齢5年物6,100万㌦、船齢10年物4,200万㌦。アフラマックスは、新造リセール5,60 0万㌦、船齢5年物4,500万㌦、船齢10年物3,000万㌦。バルカーは、やや弱含み横ばい。ケープサイズは、新造リセール 4,600万㌦、船齢5年物3,500万㌦、船齢10年物2,000万㌦、船齢15年物1,050万㌦。パナマックスは、新造リセール2,800 万㌦、船齢5年物1,800万㌦、船齢10年物1,200万㌦。ハンディマックスは、新造リセール2,550万㌦、船齢5年物1,550万 ㌦、船齢10年物1,050万㌦。ハンディサイズは、新造リセール2,100万㌦、船齢5年物1,300万㌦、船齢10年物950万㌦。 ◆中古船価/バルカー続落【10.7】 ≪「解撤船価は全船型で下落≫英国ボルチック・エクスチェンジの5目付の中古船 価インデックス(船齢5年)は、バルカーが全船型で続落した一方、タンカーは全船型で小幅に上昇した。スクラップ船価 は全船型で下落した。直近のマーケットレポートで報告されたバルカーの売買成約では、ゾディアック・マリタイムが17万 1,900重量㌧型“Ocean Ceres”(1999年旧NKK建造)を860万㌦で買船。ハンディマックスではバルク・シーズが5万2,400 重量㌧型“Lotus”(01年常石造船建造)を650万㌦で、米国バイヤーが5万4,300重量㌧型“Ermis”と“AIpine Trader”(と - 6 - もに09年江蘇重工建造)をそれぞれ1,000万㌦で買船した。ハンディサイズでは、中国バイヤーが3万6,100重量㌧型“N ormandie”(渤海船舶重工で99年建造)と“Algarve”(同98年建造)をそれぞれ450万㌦で買船したほか、ブルガリア船社 ナビブルガーが3万2,600重量㌧型“Regina”と“Tesoro”(ともに10年遼宇宏冠船業建造)をそれぞれ950万㌦で買船。さ らに買主不明で3万1,000重量㌧型“New Laurel”(99年現代尾浦建造)が450万㌦で買船された。タンカーの売買成約で は、MR型で3万7,300重量㌧型“King Eric”(01年現代尾浦建造)をドイツ船主コーニック&シー(Konig &Cie)が1,070万 ㌦で買船したほか、3万7,000重量㌧型“ElbtankItaly”(同06年建造)をマースクタンカーズが1,820万㌦で買船した。 ◆中古船価相場/中型バルカー小幅下落【10.9】 中古船マーケットで、中型バルカーの中古船価相場が小幅下落し た。パナマックスは船齢10年物が直近と比べ100万㌦安、ハンディマックスは船齢10年物が50万㌦安となった。ドライ市 況の低迷が響いているとみられる。ただ、大型バルカーのケーブサイズの中古船価は船齢5年物、10年物で横ばいな がら強含みに転じており、値ごろ感が台頭してきたようだ。マーケット筋によると、バルカーの足元の中古船価レベル は、ケープサイズが新造リセールは横ばいの4,600万㌦、船齢5年物は強含み横ばいの3,500万㌦、船齢10年物は強含 み横ばいの2,000万㌦、船齢15年物は弱含み横ばいの1,050万㌦となっている。パナマックスは、新造リセールが横ばい の2,800万㌦、船齢5年物は横ばいの1,800万㌦、船齢10年物は100万㌦安の1,100万㌦。ハンディマックスは、新造リセー ルが弱含み横ばいの2,550万㌦、船齢5年物は50万㌦高の1,600万㌦、船齢10年物は50万㌦安の1,000万㌦と値動きが 交錯している。ハンディサイズは新造リセール、船齢5年物がやや弱含み横ばいで、それぞれ2,100万㌦、1,300万㌦。船 齢10年物は横ばいの950万㌦、船齢15年物は強含み横ばいの550万㌦となっている。タンカーの中古船価レベルは全 般的に横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は新造リセール1億500万㌦、船齢5年物8,000万㌦、船齢10年物5,500万㌦、船 齢15年物3,800万㌦。スエズマックスは新造リセール7,200万㌦、船齢5年物6,100万㌦、船齢10年物4,200万㌦。アフラマ ックスは新造リセール5,600万㌦、船齢5年物4,500万㌦、船齢10年物3,000万㌦。タンカーマーケットでば来月から冬場 の需要期の船腹の手当てが始まる。運賃市況が上昇すれば、中古船価も連れ高となる可能性がある。 ◆中古船価、バルカー下落続く【10.14】 ≪解撤船価はインド亜大陸で続落≫英国ボルチック・エクスチェンジの12日付 の中古船価インデックス(船齢5年)はバルカーが全船型で続落した一方、タンカーは全船型で小幅に続伸した。スクラッ プ船価はインド亜大陸の全船型で続落した。直近のマーケットレポートで報告されたバルカーの売買成約は、11万4248 重量㌧型“chiara”(2011年中国の新世紀造船建造)が買主不明で1,300万㌦で買船された。パナマックスでは7万6,598 重量㌧型“Amarantha”(05年今治造船建造)をギリシャバイヤーが1,030万㌦で、7万6,500重量㌧型“seaOf Future”(05 年常石造船建造)をギリシャのタイタン・マリタイムが1,005万で㌦買船したほか、7万6,623重量㌧型“New Agility”(01年 今治造船建造)が名称不明のバイヤーに630万㌦で買船された。ハンディマックスでは4万5,428重量㌧型“Hui An”(97 年大島造船所建造)を中国バイヤーが370万㌦で、5万2,300重量㌧型“GlobalAce”(04年大島造船所建造)をギリシャの ダロマー・シッビングが780万㌦で買船。ハンディサイズでは買主不明で3万3,200重量㌧型“Sinfonia”(10年神田造船所 建造)が1,090万㌦、3万3,158重量㌧型“Matsushima Bay”(11年同造船所建造)が1,150万㌦で買船された。このほか中国 筋が2万8,400重量㌧型“BK Champ”(97年函館どつく建造)を310万㌦で、2万8,378重量㌧型“cs sacha”(01年今治造船 建造)をベトナムバイヤーが500万㌦で買船した。タンカーの中古船マーケットでは、ドイツバイヤーが7万2,749重量㌧ 型”Genmar Companion”と”Genmar Compatriot”(ともに04年大蓮船舶重工建造)を各2,200万㌦で買船。MR型では4万7, 100重量㌧型“Baizo”(04年尾道造船建造)を中東バイヤーが1,720万㌦で買船した。 ◆ケープサイズ下げ止まる/中古船価相場、値ごろ感台頭【10.19】 中古船マーケットで、じり安基調が続いてきたケ ープサイズバルカーの中古船価が小じっかりとした基調に転じ、下げ止まりそうな展開となってきた。値ごろ感が出て きたことが主因とみられる。バルカーの足元の中古船価レベルは、ケープサイズが横ばい。新造リセールは4,600万㌦、 船齢5年物は3,500万㌦、船齢10年物は2,000万㌦、船齢15年物は1,050万㌦。船齢5年物、10年物は基調が小じっかりと し、若干強含みに転じた。船齢15年物はやや弱含み。パナマックスは、新造リセールが横ばいの2,800万㌦、船齢5年物は 横ばいの1,800万㌦、船齢10年物は直近と比べ50万㌦安の1,050万㌦となった。ハンディマックスは全般的に弱含み横 ばいながら、船齢5年物は若干の強含みに転じた。足元のレベルは、新造リセール2,550万㌦、船齢5年物1,600万㌦、船 齢10年物1,000万㌦。ハンディサイズは全般的に横ばい基調の中、船齢10年物と15年物が強含みに転じた。足元のレベ ルは、新造リセール2,100万㌦、船齢5年物1,300万㌦、船齢10年物950万㌦、船齢15年物550万㌦。タンカーの足元の新 造船価レベルは、VLCC(大型原油タンカー)が横ばい。新造リセール1億500万㌦、船齢5年物8,000万㌦、船齢10年物5,5 00万㌦、船齢15年物3,800万㌦となっている。スエズマックスは、新造リセールが200万㌦安の7,000万㌦、船齢5年物は 100万㌦安の6,000万㌦、船齢10年物は横ばいの4,200万㌦。アフラマックスは横ばい基調。新造リセール5,600万㌦、船 齢5年物4,500万㌦、船齢10年物3,000万㌦となっている。 ◆中古船価バルカー続落【10.29】 ≪VL・アフラも反落≫中古船価相場はバルカーで全船型が続落したのに加え、こ れまで横ばいで推移してきたタンカーでもVLCC(大型原油タンカー)、アフラマックスが反落した。バルカーの足元の中 古船価レベルは直近と比べ、ケープサイズが新造リセールは100万㌦安の4,400万㌦、船齢5年物は100万㌦安の3,200 万㌦となった。船齢10年物、15年物は横ばいで、それぞれ2,000万㌦、1,050万㌦。パナマックスは、新造リセール、船齢5 年物、10年物が横ばいを維持し、それぞれ2,800万㌦、1,700万㌦、1,050万㌦。船齢15年物は50万㌦安の600万㌦をつけ ている。ハンディマックスは、新造リセール、船齢5年物、10年物が横ばいとなり、それぞれ2,550万㌦、1,600万㌦、900万 ㌦。船齢15年物は50万㌦安の550万㌦となっている。ハンディサイズは、新造リセールが横ばいの2,100万㌦。船齢5年 物は50万㌦安の1,150万㌦、船齢10年物は100万㌦安の850万㌦、船齢15年物は50万㌦安の500万㌦で推移している。 タンカーの足元の中古船価レベルは、VLCCが新造リセールは250万㌦安の1億250万㌦となった。船齢5年物、10年物、15 年物は横ばいで、それぞれ8,000万㌦、5,500万㌦、3,800万㌦。スエズマックスは全般的に横ばいで推移しており、新造 リセール7,000万㌦、船齢5年物6,000万㌦、船齢10年物4,200万㌦。アフラマックスは、新造リセールが横ばいの5,600万 ㌦、船齢5年物は500万㌦安の4,000万㌦、船齢10年物は100万㌦高の3,100万㌦と強弱の基調が交錯している。 - 7 - ◆鉄鉱石、3ヵ月ぶり安値【10.24】 ≪スポット価格 中国で在庫増≫鉄鋼の主原料となる鉄鉱石の国際価格が再び下 落している。指標となるオーストラリア産の中国向けスポット(随時契約)価格は1㌧51-52㌦。直近の高値を付けた9月中 旬に比べ約9%安く、ほぼ3カ月ぶりの安値水準にある。輸入国の中国で鉄鉱石の在庫が増え余剰感が再燃している。 足元の在庫量は8千万㌧前後で9月中旬から4%増え、5月以来の高水準。国慶節明けの製鉄所の操業が十分に回復せ ず鉄鉱石の引き合いが鈍い。景気減速を背景に鋼材価格の下落が止まらず、原料にも値下げ圧力が強まっている。主 産地のオーストラリアなどでは資源メジャーによる生産がなお高水準だ。リオ・ティントの7-9月の世界生産量は8,610万 ㌧と前年同期比12%多い。「資源国の通貨安でドル建てでみた生産コストが下がり、競争力の強い鉱山を中心に増産機 運が消えていない」(大手商社)豪州に比べてコストの高い中国の鉱山は価格下落で採算が悪化し、生産も減っている。 その分豪州産の輸入が大きく落ち込まなかったため、この数カ月は国際価格が底堅く推移していた。ただ、価格が上 向くと高いコストの産地からの売り圧力が強まりそうだ。 ◆バルカー専業も18年船台完売【10.5】 NOx(窒素酸化物)3次規制の適用を目前に控える中、国内の大手や中堅造 船所が、少なくとも3年以上の手持ち工事を確保した。バルカーの新造需要低迷を受けて、バルカー以外の船種で営業 を展開して線表確定を先行してきた造船所のほか、バルカ一に特化して営業を進めてきた造船所も18年船台を売り切 った格好だ。コンテナ船で受注を進めている今治造船は大型工場で19年いっぱいまでの線表確定したようだ。国内の 造船所はNOx3次規制非対応船で多くの造船所が3年超の受注残を確保しており、規制前の商談はほぼ趨勢が決して いる。今治造船は昨年から、新造船の軸足をコンテナ船に転換した。邦船や台湾船社から1万4,000~2万TEU級のメガコ ンテナ船の受注を相次いで決めたことで、大型船を建造する西条工場、広島工場、ドックを新設する丸亀事業本部は20 19年いっぱいまで線表を進めたようだ。また、エバーグリーンから2,880TEU型のフィーダーコンテナ船を受注し、小型 船の建造工場も19年以降に線表を伸ばしている。バルカ一に特化して営業を進めてきた造船所も、友好船主向けのリ プレース案件などを中心に受注し、3年超の手持ち工事を確保している。大島造船所は、工場の操業を落とさないベー スで3年超の手持ち工事を確保している。今年上期には34隻を受注し、18年いっぱいの船台を売り切り、19年の前半も 一部埋まった。建造隻数としては今年度は過去最高の年間40隻を計画している。また、サノヤス造船は、8万2,000重量 ㌧型バルカーや6万重量㌧型バルカーを中心に受注を進め、18年いっぱいの線表にめどを付けた。既にNOx3次規制と 新共通構造規則(H-CSR)をフル適応した船型もあり、次の商機に備えている。バルカー需要の低迷を受けて、プロダク ト船の受注にいち早くシフトし、線表確定が最も進んでいる尾道造船は、グループの佐伯重工業とともに20~21年まで 線表を進めている。アフラマックス・タンカーとのプロダクトミックスを展開する名村造船所グループや常石造船も18年 船台にほぼめどを付けたようだ。名村造船の伊万里事業所は、19年納期も既に後半まで進んでいるほか、佐世保重工 業も18年いっぱいの船台にほぼめどを付けたようだ。新来島どっくグループも大半の工場で3年超の手持ち工事を確 保している。ジャパンマリンユナイテッドの有明・呉・津、三井造船の千葉、川崎重工業の坂出といった大型船の建造工場 も18年いっぱいの手持ち工事にほぼめどを付け、案件によって19年納期の受注も進めている。また、ガス船に特化する 三菱重工業、アフラマックス・タンカーに特化している住友重機械工業も18年いっぱいまでめどを付けている。来年1月 の起工船から適用になるNOx3次規制を控える中、造船所は未対応船での受注残を積み上げてきたが、「営業、契約か ら起工までの期間を考慮すれば、ほとんど趨勢は決まっている。これから新規の案件を進めるのは難しい」(市場関係 者)。来年以降規制の適用に伴い、新造商談は完全に停止する懸念もある。特にドライバルク市況は来年も厳しいとする 見方もあるが、日本の造船所は3年超の手持ち工事を確保し、既にNOx3次規制適用以降に商談の照準を合わせる造船 所も多くなってきた。 ◆造船この1カ月<上>【10.6】 ≪三菱重工、新体制がスタート 見えぬ再建への道、3年後に次の動きか≫三菱重工業 の船舶部門が、長崎造船所の事業分社によって新体制をスタートした。ガス船特化と、ブロック外販による再建の道を示 しているが、造船事業の再建策としての勝算は見えにくい。船舶部門の歩む道は、困難なものとなりそう。事業改革の 目安として区切った「3年」が、次なる変化のタイミングになるのか。≪ガス船特化とブロック外販≫司会 今月からいよ いよ三菱重工業の船舶事業が新体制になった。長崎の商船事業分社をはじめ、大きく姿が変わる。― 長崎の商船事 業会社「三菱重工船舶海洋」と香焼のブロック会社「三菱重工船体」が分社して、船舶事業部の下にぶら下がる形にな った。組織としては、下関造船所の事業と横並びになっているので、部分的に別会社として切り出された形だ。― こ れまで、五月雨式に新体制の姿が公表されてきたが、新体制にはなっても運営などまだよく分からない部分もある。― 「走りながら考える」という言葉をよく聞く。運営面はこれから詰める部分もあるのだろう。今回は客船建造にリソー スが取られる中で、短期間で分社体制の準備が整えられたから、やむを得ないのだろう。― 決まっているのは、長崎 の商船新会社「三菱船海」はガス船に特化するということだ。受注残には探査船などがあるが、これを消化した後はLN G船とLPG船以外の船は建造しないという。客船の建造は別組織の担当だ。― ガス船しか造らない、と決め打ちして 大丈夫なのだろうか。シェール関係の商談もほぼ決着している。― 今後3年分はシェール案件で線表が確定している から、当面は仕事に困らない。その先は、ポストシェール商談を見込んでいるという。― シェール・プロジェクトは国策 に近い案件だったから日本造船所の受注はある程度約束されていた。今後は大変だと思う。顧客とのチャンネルも、他 の商船がなくなると細りかねない。三菱の分社を縮小のサインとみた韓国などが、日本のLNG船商談にもこれまで以 上に攻勢をかけてくるのは間違いない。≪客船の混乱≫司会 新体制になったとはいえ、目下の課題は客船だろう。1 番船は9月から12月に納期が延びた。― 9月に間に合わないことは、ずいぶん前から誰もが予想していた。これだけ 多くの人が関わっているから、客船建造現場の混乱は隠しようがない。― 三菱としては「クロスドメイン」と称して、全 社挙げての体制でリカバリーしようとしたが、他部門の力をもってしても納期をまもれなかった。― むしろ、その「全 - 8 - 社体制」が混乱に拍車をかけたのではないか?― さすがに、それはないだろう。― 他部門のプロジェクトマネジメ ントのノウハウを活用している、と聞いたが、リカバリーのためとはいえ、あれほどの人数を投入しても使いこなせてい なかった。客船が人で溢れて混乱に陥っているすぐ隣で、影響を受けずにガス船を粛々と建造していることの方がす ごい、とすら思ってしまった。― だからこそ、長崎はガス船だけ建造していれば、という分社判断をしてしまったので はないか。― 客船は今後はエンジニアリングで行うということだし、長崎での今後の建造も否定はしていない。本当 だろうか。― 全ては、1番船を竣工してからだろう。この納期を守ることもかなり大変だと思う。≪臥薪嘗胆の3年≫司 会 しかし改めて、なぜ三菱が今回こういう形での分社を行ったのかは、よく分からない。― 客船と物理探査船であ れほど赤字を出したのだから、抜本改革は必要なのは誰の目にも明らかだったが、分社にしても別の方法があったの ではないかと思う。― 分社のねらいは、本社から切り離してコストを下げ、ガス船の連続建造で長崎の競争力を高め るということだ。― ただ、もともと三菱は、韓国や中国よりコストが高いという前提で、高コストでも客船建造で成立 している欧州造船所をロールモデルとしていたわけだろう。だが、今は日本の中手、専業造船所を手本にしているかの ようなコメントばかりだ。― 確かに、従来の戦略は「失敗だった」と明言しているし、ガス船特化で必要最小限の体制 に絞るのは、中手の「連続建造」スタイルと同じだとコメントしているね。ブロック工場を別会社にしたのも、もしかする と中堅造船所の「水平分業」モデルを意識してのことかもしれない。― だが、オーナー系造船所の利益率が高いとい う「結果」だけを見て、彼らの連続建造と外注比率の高さだけをまねて分社したのだとしたら、短絡的過ぎないか。― 事情を知らない外部の人間でもあるまいし、まさかそんな単純な発想で事業計画が立てられているわけではないと 思うよ。― そう願いたい。そもそも専業ヤードの戦略にとって、連続建造や外注比率は一面でしかないし、むしろ今は 各社とも逆に、内作率を高めて、多角化しようとしている。― 三菱の分社は、造船業の事業モデルを問うようなもの だね。― そもそも、何のための分社なのが、やはりよく分からない。賃金水準も下げないという。下げろというつもり はなくて、結局新会社に裁量があまりないのではないか、と思う。機動的に動くといっても、実際に自己の裁量ででき ることは建造工法の改善くらいなのではないか。― もっと裁量はあると思うし、さすがに、船舶事業全体としてしっか り戦略を描くのだろう。それに、三菱重工の分社策は船に限らない。10月1日で工作機械事業も分社して、産業用クレー ンも売却しており、三菱本体がホールディング会社になるのではないか、というくらいの勢いだ。宮永俊一社長自身、製 鉄機械事業の分社で、分社会社のトップとして事業を立て直した実績がある。分社スキームの効果に、勝算があるのだ ろう。― であれば、この造船分社にも勝算があるのだろうか。僕は、造船事業として死に物狂いで自立できるよう、武 器を持たせて放り出す分社であるべきだったのではないかと思う。― ROEなどの数字はこれで改善するのかもしれ ないが…。― 心配されているのは、この再編で三菱の造船技術に関する知見が失われるのでは、ということだ。― 本社としても、船の技術をどう生かして残すかを模索しているような感はある。オイル&ガス関連事業との協力や、浮 体技術の活用などの検討もあるようだ。― ただ、客船と探査船の赤字で明らかになったのは、三菱の造船に関する 技術力が予想以上に足りなかったということだろう。技術や過去の経験が継承できていなかった要因は、長年の縮小 路線のせいだと思う。今回は「身の丈に合った経営」にするということだが、結局また技術の断絶と弱体化を繰り返し て、悪循環にはまると危倶している。― そうかもしれない。今のままでは三菱重工の5-10年先は見えない。百年の大 計とまで言うつもりはないが、オーナー会社はそれくらいの視座で事業を行っているし、JMUや川崎重工など重工系も 将来の道を示している。― 1つだけ言えるのは、三菱重工の今回の体制は、あくまでも一時的な姿だろうということ だ。本体復帰か、他社との合流か、船舶全体での分社かは分からないが、必ず次のステップがある。そうでなければ、全 く意味がない。― であれば、船舶の人々にとっては、しばらくは雌伏のときが続く。制約がある中でもきっちり成果を 出して、復活してもらいたい。― 中期事業計画では、3年で事業改革にめどとしている。期限を区切っているわけで、 このタイミングで次の動きがあるかもしれない。誰が次の絵姿を描くのかは分からない。今度は船舶部門身なのか。あ るいは別の誰かなのか。いずれにしても、日本造船業にとっての損失になるようなことはやめてもらいたい。 ◆造船この1カ月<下>【10.7】 ≪国内造船、18年船台完売、NOx規制目前、韓国は巻き返し≫NOx(窒素酸化物)3次規 制の適用を目前に控える中、国内の大手や中堅造船所は、少なくとも3年以上の手持ち工事を確保した。バルカー以外 の船種で営業を展開して線表確定を先行してきた造船所のほか、バルカ一に特化して営業を進めてきた造船所も18年 船台を売り切った格好。規制前の“駆け込み”はほぼ趨勢が決したようだ。その一方、韓国造船所は18年船台にもまだ余 裕があり、ここにきて巻き返しを図っている。韓国や中国造船所は17年納期での受注も相次いでいる。≪手持ち工事3 年超に≫司会 NOx3次規制の適用が目前に迫っているが、ここまでの日本国内の造船所の受注動向はどうだろうか。 ― 中型以上の船型を建造する国内の造船所の多くは、3年以上の手持ち工事を確保して、2018年納期の船台をほぼ 売り切っている。― バルカーの新造需要低迷を受けて、バルカー以外の船種で営業を展開してきた尾道造船、今治造 船、名村造船所などは以前から線表を先行していたよね。尾道はプロダクト船、今治はコンテナ船、名村はアフラマック ス・タンカーにいち早く受注をシフトしてきたことが功を奏した。― バルカ一に特化して営業を進めてきた造船所も18 年船台を売り切った。マーケット環境としては非常に厳しい状況が続いているが、リプレースを予定していた友好船主 向けを中心にNOxや新共通構造規則(H・CSR)の回避を前提とした商談を進めてきた。― バルカ一に特化して営業を 進めていたのが、大島造船所とサノヤス造船だね。大島は既に19年初頭、サノヤスは18年いっぱいまで埋まっている。 ― ただ、大島はフィーダーコンテナ船を開発したし、サノヤスもかつて建造していたタンカーなどバルカー以外の船 種の検討もしている。今後はバルカー一本の建造体制を転換する可能性もありそうだ。― バルカー以外のデザイン を持っていた造船所が比較的スムースに商談を進めていたことも考えると、バルカー以外の受注を模索するのも自然 な流れではある。― コンテナ船の受注にシフトしてきた今治造船は、大型船を建造する西条工場や広島工場、丸亀事 業本部が既に19年もほとんど埋まったようだね。今年に入ってからのコンテナ船の受注は目を見張るものがある。― 川崎汽船、商船三井のほか、エバーグリーンやヤンミン・マリンなど台湾船社からもメガコンテナ船の受注を獲得し、正 式契約に調印した。コンテナ船はロットでの受注になるから、線表は一気に先まで確定することになる。― 受注を見込 んでいた韓国造船所などからすれば、逆にその分穴が空いたことになるね。― 今治造船をはじめ、国内ではこの間 - 9 - に19年納期の船台も埋まってきたという話も耳にする。NOx3次規制前の“駆け込み”は大勢がほぼ決まったとみていい のだろうか。― 今回は契約ではなく、起工が必要になるから、これから新規の商談を始めて、契約、起工までを年内 に済ませるのは日程的にはかなりきつい。内定案件以外では、あったとしても付き合いの深い友好船主向けになるだ ろう。趨勢はほぼ決まったと言えそうだ。― もちろんまだ契約を交わしていない内定案件などもあるから、そうした 案件が今後表面化してくるだろう。― 日本船舶輸出組合の統計によると、1-8月の輸出船契約実績は昨年の同期実 績を2割近く上回る1,384万総㌧で、昨年超えがほぼ確実となっている。統計上に表れるのはこれからになる見込みの 案件も多い。― 昨年の年間実績はリーマン・ショック後最高だから、今年もリーマン後最高を更新する可能性が強くな ったね。― 今年はこれまで月間100万総㌧を下回ったのは2月のみで、H-CSR前の駆け込みで6月には400万総㌧を超 えた。その後も高水準が続いている。― NOx3次規制非対応船で少なくとも18年いっぱいまで受注を固めるというの が1つの営業方針だったが、国内の造船所は大方のめどが付いたようだ。≪現代尾浦が受注ラッシュ≫司会 海外造船 所の受注状況はどうだろうか。― 韓国造船所も巻き返しを図っているようだ。特にここ1-2カ月は現代重工グループ の現代尾浦造船の受注攻勢がすさまじい。― 確かに。8月末からの約1カ月で計10億㌦を優に上回る新造船を受注し た。中小型船型を中心とした受注でこの数字はすさまじい。― それでも年初の時点で掲げた受注目標にははるかに 及ばない。― 現代尾浦は昨年後半から今年前半まで受注が低迷していたからね。主力のMR型プロダクト船の受注が ほとんどないのが象徴的だ。中小型船中心の建造とはいえ、かなりの建造能力があることから、まだ17年納期の船台 に空きもあるのではないだろうか。― 表面化する新造成約ではさすがに16年納期は見かけなくなったが、17年納期 はまだまだ多いね。韓国や中国造船所はまだまだ18年船台にも余裕がある。― 韓国造船大手にしてみれば、海洋案 件、LNG船で思うよう受注が進められないことが響いている。得意とするメガコンテナ船も全てを受注するくらいの心 構えだったはずだが、今治造船の躍進など誤算が続いている。― ここまで前年同期の受注実績を上回っているの は、大型の海洋案件を受注できたサムスン重工業のみ。韓国造船所は業績でも多額の赤字を計上したが、受注面でも 厳しい状況だ。≪JMUが10年ぶりスエズ受注≫司会 タンカーの発注は好調だな。 ― VLCC、スエズマックス、アフラ マックスとタンカーの発注隻数はいずれも昨年実績を上回ることがほぼ確実だ。昨年もタンカーの発注が決して少な かったわけではないが。― 昨年は市況の先高を見込んで動いた投機筋が目立ったが、今年はそれに加えて伝統的な タンカープレイヤーのリプレースも多かった。― タンカーはリーマン・ショック以降、発注が途絶えていた期間も長く、リ プレースも進んでいなかった。新規制の適用で、建造コストの増加だけでなく、燃費の悪化などの影響も懸念されてい ることから、規制前に発注する方針をとっていた船主が多かった。造船所は、韓国だけでなく、日本もVLCCやアフラマッ クスなどを受注している。― 大きなトピックとしては、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)のスエズマックス内定があった ね。JMUのスエズ受注は契約ベースで約10年ぶりになる。日本の造船所としてもリーマン・ショック以降のスエズ受注は 初めてだ。― スエズマックスといえば、日本鋼管(NKK)時代からの津事業所の主力メニューの1つだ。津ではバルカー のほかLNG船があるが、バルカー需要がない中でメニューに厚みを持たせたいという考えもあったのではないか。― 確かにLNG船は当初見込んでいたよりも調達隻数が少なくなった。今後も予定されている商談はあるが、シェールガ ス開発の遅れなどもあり、動向としてはいまひとつ不透明な部分がある。シェールガス輸送向けのLNG船は年間建造隻 数の増産しなければ需要に応えきれないという話も当初はあったが、少し残念な結果になっている。― 話を戻そう。 JMUが受注したのはH-CSR対応型で、新規制に対応した新船型の受注が表面化するのも初めてだった。― 各社が開 発を進めていたH-CSR対応の新船型も徐々に出てきているね。先日のサノヤスの会見でも話にあがった。― H-CSR のみに対応した船型というよりは、NOx3次規制も踏まえた船型を開発している造船所が多いね。NOxについてはオプ ションで選択できるような仕様にしているところも多いようだ。中型以上の船型であれば、搭載スペースの問題もそれ ほど深刻ではないようだ。― 規制の対応とともに、船型の大型化など船型そのものを見直して、全く新しい新デザイ ンとしての市場投入を考えている造船所もあるようだ。― マーケットの環境が悪いので、各社ともじっくり腰を据え て開発するというスタンスなのだろう。― 今年これだけ多くの受注があったことを考えると、来年への反動が怖い ね。規制適用後はしばらく商談が中止すろ可能性も大いにありそうだ。 Ⅲ.世界・各国造船業の動向 ◆中国造船、1-9月受注量65%減【10.20】 ≪CANSI、12カ月連続マイナス≫中国船舶工業行業協会(CANSI)によると、 今年1-9月の中国造船業の新造船受注量は前年同期比65%減の1,816万重量㌧だった。受注低迷が浮き彫りになってお り、昨年や一昨年の年間実績を大幅に下回ることがほぼ確実となっている。9月の受注量は前年同月比39%減の311万 重量㌧で、単月ベースの受注量は12カ月連続で前年同月を下回っている。四半期別ごとの受注量をみると、1-3月が59 9万重量㌧、4-6月が520万重量㌧、7-9月が697万重量㌧。新規制の影響などで上期に比べて若干受注量は増加してい るものの、低迷が続いている。竣工量は9月が前年同月比2%増の406万重量㌧、1-9月累計が前年同期比13%増の2,93 7万重量㌧としており、昨年に比べて上向いている。手持ち工事量は受注低迷に伴って減少が続いており、9月末時点で 1億3,327万重量㌧で、8月末時点と比べて187万重量㌧減少。1年前と比べると2,144万重量㌧減少した。重点観測企業 とする造船54社の1-9月の受注量は前年同期比67%減の1,643万重量㌧、竣工量は11%増の2,702万重量㌧、手持ち工 事量は14%減の1億3,101万重量㌧だった。船舶関連の重点観測企業とする88社の1-9月の完成工業総生産額は4%増 の3,100億元(約5兆8,100億円)。このうち造船関連が3%増の1,490億元(約2兆7,900億円)、舶用が5%増の248億元 (約4,600億円)、修繕が1%増の97億元(約1,800億円)としている。また、主要事業収入は3%増の2,200億元(約4兆1,2 00億円)で、利潤総額は33億元(約620億円)で13%減少した。 - 10 - ◆1-8月受注高/海洋案件で大差【10.5】 ≪韓国造船大手、現代尾浦は巻き返し図る≫韓国造船大手3社の今年1-8月 の造船・海洋(オフショア)部門の受注高は計224億㌦で、受注金額ベースで前年同期比8%減となった。前年同期実績 を上回ったのはサムスン重工業のみで、大型の海洋案件の有無で受注実績に差が表れている。また、8月に受注があっ たのは現代重工業グループのみで、ここまで出遅れていた現代尾浦造船が巻き返しを図っている。3社グループの1-8 月の受注実績は表のとおり。各社が公表しているIR資料によると、唯一前年同期を大きく上回っているのがサムスン重 工だ。ここまでの受注実績は34隻(コンテナ船10隻、LNG船3隻、タンカー15隻、海洋構造物6基)。大型の海洋構造物の 受注が相次ぎ、受注高の65%を海洋案件が占めている。現代重工の造船・海洋部門の受注実績は、グループの現代三 湖重工や現代尾浦造船を含めて95隻・94億㌦で、前年同期比30%減だった。現代重工が39隻(タンカー17隻、コンテナ 船15隻、LNG船2隻、LPG船3隻、その他2隻)、現代三湖が27隻(タンカー16隻、コンテナ船5隻、LNG船2隻、その他4隻)、現 代尾浦が14隻(プロダクト船7隻、LPG船5隻、自動車船2隻)を受注した。中小型船を主力とする現代尾浦は8月から9月 に受注が相次いでおり、今後も大幅な上積みがありそうだ。大宇造船は、これまでに25隻(コンテナ船11隻、タンカー6 隻、LNG船7隻、その他1隻)を受注した。海洋部門で大幅な赤字を計上しており、商船中心に受注を進めている。 ◆韓国造船、赤字拡大の懸念【10.14】 韓国造船大手の赤字規模が拡大する可能性が高まっている。海洋構造物で のプロジェクト遅れや、新たな損失要因の発覚などが相次いでおり、これまでに引当処理していた損失額をさらに上回 る規模に赤字が膨らみそうな状況だ。今期中の業績改善は難しい情勢となり、過去最悪の決算となりそうだ。韓国現地 紙によると、現代重工業は新たに半潜水(セミサブ)式リグでの工事遅延が発生したもよう。サムスン重工業でも、フラ ンスのトタールグループから受注した固定式プラットフォームで納期遅れが発生しているもようで、いずれも業績への 影響が懸念されている。大宇造船海洋は債権団らによる実態調査で、新たにルーマニア子会社の大宇マンガリア造船 などでの損失が発覚。海洋案件のキャンセルなどもあり、7~9月期に追加の損失を計上する見通しとなっている。韓国 大手3社は今年1~6月期連結決算で大規模な損失を計上しており、税引前段階では大宇造船が3兆2,736億ウォン(3,50 0億円)の赤字、サムスン重工が1兆4,654億ウォン(1,600億円)の赤字、現代重工が4,676億ウォン(500億円)の赤字だっ た。いずれも海洋構造物で工程が混乱に陥り、コストが膨れ上がっている。7~9月期決算は通常は11月半ばに公表予定 だが、大きな変動がある場合は、これより前に何らかの発表を出すことになっている。 ◆韓国造船/1-9月赤字が巨額に【10.28】 ≪大宇造船5,300億円、現代とサムスンは1,000億円超≫韓国造船大手の20 15年1-9月期決算は、巨額の赤字が続いている。大宇造船海洋は27日、税引前損益が4兆9,618億ウォン(5,300億円)の 赤字(前年同期は1,608億ウォンの黒字)になったと発表した。現代重工業は税引前損益が1兆1,767億ウォン(1,260億円) の赤字(前年同期は3兆827億ウォンの赤字)。サムスン重工は1兆4,047億ウォン(1,500億円)の赤字で、前年同期の1,44 2億ウォン(150億円)の黒字から赤字転落した。海洋事業の損失で経営が悪化している。大宇造船の1-9月期は、売上高 が24%減の9兆2,916億ウォン、営業損失は4兆3,003億ウォン(前年同期は3,183億ウォンの黒字)、純損失は3兆8,275億 ウォン(811億ウォンの黒字)。海洋部門の損失拡大やドリルシップ解約、海外子会社の赤字などを織り込み、赤字が拡大 した。現代重工は売上高が9%減の35兆926億ウォン、純損益は8,190億ウォンの赤字(同2兆1,682億ウォンの赤字)だっ た。創業来最悪の決算だった前年同期に比べると赤字幅は縮小したが、7-9月期の3カ月の損益も引き続き赤字。半潜 水(セミサブ)式リグの契約解除や海洋部門の損失引当を計上したほか、リストラの一環で子会社清算を進めるための 費用を計上したことで、業績が悪化した。サムスン重工は売上高が34%減の6兆4,858億ウォン、純損益は1兆936億ウォ ンの赤字(1059億ウォンの黒字)。7-9月の四半期損益では黒字に転じたものの、1-6月に海洋関連で巨額の損失引当を 行ったことが響いている。 ◆韓国造船大手/商船営業に傾注【10.29】 ≪1-9月受注高3%減、海洋はサムスンのみ≫韓国造船大手3社の今年1-9 月の造船・海洋(オフショア)部門の受注高は計253億㌦で、受注金額ベースで前年同期比3%減となった。ここまで海洋 構造物の受注があるのはサムスン重工業のみで、タンカーやLPG船など商船の営業を積極的に進めている。特に現代 重工業グループが8-9月にかけて商船の受注を巻き返している。3社グループの1-9月の受注実績は表のとおり。各社 が公表しているIR資料によると、唯一前年同期を大幅に上回っているのがサムスン重工だ。ここまでの受注実績は45 隻(コンテナ船10隻、LNG船3隻、タンカー26隻、海洋構造物6基)。大型の海洋構造物の受注が相次ぎ、受注高の62%を 海洋案件が占めている。現代重工の造船・海洋部門の受注実績は、グループの現代三湖重工や現代尾浦造船を含めて 124隻・111億㌦で、前年同期比23%減だった。現代重工が48隻(タンカー19隻、コンテナ船15隻、LNG船2隻、LPG船10隻、 その他2隻)、現代三湖が33隻(タンカー18隻、コンテナ船5隻、LNG船2隻、LPG船2隻、その他6隻)、現代尾浦が43隻(プ ロダクト船19隻、コンテナ船2隻、LPG船9隻、自動車船10隻、その他3隻)を受注した。グループで9月に計29隻もの新造 船を受注している。特に中小型船を主力とする現代尾浦は8月から9月にかけて受注実績を計29隻を受注している。大 宇造船海洋は、これまでに25隻(コンテナ船11隻、タンカー6隻、LNG船7隻、その他1隻)を受注した。海洋部門で大幅な 赤字を計上しており、商船中心に受注を進めているが、8-9月は受注がない。 Ⅳ.造船・造機以外の産業動向 ◎外航海運 ◆ばら積み船運賃16%下落/4-9月過去2番目に低く【10.2】 ≪第一中央汽船、再生法の背景≫ばら積み船運賃の値動 きを示すバルチック海運指数(BDI、1985年=1,000)は4-9月期の平均が809となり、前年同期に比べて16%低下した。 - 11 - 上半期平均では86年の650に次いで過去2番目に低い。9月末には中堅海運会社、第一中央汽船が資金繰りの悪化で 経営破綻しており、市況低迷が海運業界に影を落としている。中国経済の減速で鉄鉱石や石炭といった主要貨物の荷 動きが頭打ちになっているほか、船舶の慢性的な供給過剰も依然として解消していない。BDIは2月に過去最低の509を 記録するなど、15年に入って「歴史的な安値圏」(海運大手)が続いている。海運会社などでつくる日本船主協会の工 藤泰三会長(日本郵船会長)は「ばら積み船の運賃はすべての船型でコストを割り込んでいる。この状態が続けば、世界 中で苦しくなる会社が増える」と懸念する。 第一中央は9月29日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、受理され た。日本郵船など大手海運会社がタンカーや液化天然ガス(LNG)船、自動車専用船と多角的な事業を展開しているの に対し、第一中央はばら積み船が主力だったことが裏目に出た。ばら積み船の不振を象徴するのが、中国経済との関 連性が特に深い大型船「ケープサイズ」だ。主要貨物の鉄鉱石は世界全体の輸送量の6割以上を中国向けが占める。中 国の8月の鉄鉱石輸入量は前年同月に比べて1%減った。4-8月の累計も前年同期を1・6%下回っており、頭打ち感が出 ている。第一中央の薬師寺正和社長は「中国の『爆買い』は収まった」と話す。鉄鉱石運賃の算定基準となるケープサ イズの用船料(海運会社が船主に支払うチャーター料)は4-9月の平均で1日あたり約8,200㌦と、前年同期に比べて33 %下がった。毎年10-12月は鉄鉱石の荷動きが増える需要期だが、足元でも用船料は1万3千㌦前後にとどまり、海運業 界の採算ランとされる2万-2万5千㌦を下回る。中国経済の減速もあり、需要期の荷動きや運賃がどこまで伸びるか不 透明だ。 ◆鉄鉱石船/用船料3割安【10.14】 ≪9月下旬比 中国への荷動き鈍く≫鉄鉱石を運ぶ大型ばら積み船、ケープサイ ズの用船料(海運会社が船主に支払うチャーター料)が軟調に推移している。スポット(随時契約)は主要航路平均で1日 あたり約9,800㌦と、直近の高値を付けた9月下旬に比べて3割安い。世界最大の鉄鉱石輸入国である中国への荷動き に頭打ち感が出ているほか、船舶の過剰感も依然として強い。毎年10-12月は中国の製鉄会社が厳冬期に備えて原材 料の在庫を積み増すため、1年間を通じて用船料が最も高くなる傾向がある。しかし、中国経済の減速感が強まったこ とで「荷動きは思ったほど伸びていない」(海運大手幹部)。2万-2万5千㌦とされる海運業界の採算ラインまで大きな 開きがある。老朽船の退役を前倒しする船主も増えているが、最近はペースが落ちている。調査会社のトランプデータ サービスによると、全世界で退役で解体されたケープサイズは2-5月に毎月10-20隻だったが6月以降はlケタにとどま る。一方で新造船の就航もあり、需給バランスは緩い状態が続いている。用船料に連動する鉄鉱石のスポット運賃は代 表的な航路であるオーストラリア西部-中国間で1㌧あたり約5・5㌦と、9月下旬に比べて1割下がった。 ◎内航海運 ◆9月期申請5隻増18隻、小型貨物船が堅調/内航総連【10.1】 日本内航海運組合総連合会(内航総連)がまとめた2 015年9月期の船舶建造募集で、組合員(内航事業者)からの申請状況は全船種合計で18隻・3万2,400対象㌧(貨物船・ 重量トン、油送船・立方メートルなど)だった。前年9月期(13隻・4万6,300対象㌧)と比べ、隻数は5隻増えた一方、トン数 は1万3,900㌧減った。隻数自体は前年水準を上回ったが、小型船の応募が主体だったことでトン数は伸びなかった。申 請事業者が内航総連に納める建造納付金額は免除額を差し引き、概算で12億4,800万円。前年同期(16億2,100万円)よ り3億7,300万円減った。申請船18隻の船種別の内訳は、一般貨物船14隻・2万2,970重量㌧、石材・砂・砂利専用船3隻・8, 300重量㌧(プッシャーとバージはそれぞれ1隻として集計)、油送船1隻・1,150立方㍍。15年度の建造申請は5月期が一 般貨物船の応募が多かったため35隻、7月期は5月期申請の反動もあって15隻だった。9月期は序盤、低調な動きだった が、小型の一般貨物船の申請が比較的堅調だったため、前年より5隻多い18隻となった。15年度の建造申請数は9月期 (5、7月期は認定ベース)までに68隻。9月期の船舶建造募集は暫定措置事業規程に基づき、15年度実施の第3回受け付 け(募集期間9月1~20日)として行われた。 ◆推定鉄骨需要量は約43万㌧【10.5】 ≪2カ月連続で前年を上回る≫国土交通省の8月の建築着工統計調査報告に よると、全着工床面積は前年同月比2・6%減(前月比4・9%減)の1,101万2,000平方㍍となった。構造別(※表1)では、S 造が同3・1%増(同7・3%減)の418万5,000平方㍍、SRC造は同39・8%減(同75・1%減)の12万3,000平方㍍。全床面積中 のS造、SRC造の比率は39・2%、推定される鉄骨需要量は約42万5,000㌧の水準(前年同月は約42万㌧※表2)と2カ月 連続の増加となった。 ◆工作機械受注19%減/日工会【10.14】 ≪9月1,096億円2カ月連続減≫日本工作機械工業会(日工会)が13日に発 表した9月の工作機械受注実績(速報値)は、前年同月比19・1%減の1,096億9,700万円となり、2カ月連続で減少した。内 需が27カ月ぶりに減少し、同2・3%減の480億2,900万円だった。9月は半期の決算月であり、大幅増が理想の姿だった。 政府の補助金効果が一段落しており、「これまで需要を先食いしてきた反動」とする声が出ている。合計額は同20%減 に迫ったが、1,000億円超は健全水準とされる。国内は政府による省エネ補助金が終了し、新たにモノづくり補助金が始 まる谷間との指摘がある。外需は同28・6%減の616億6,800万円で4カ月連続の減少だった。中国市場は「ユーザーが 資金調達に苦労している」(オークマ営業部)と停滞基調にある。北米市場は車、航空機向けが堅調だが、幅広い分野の 加工を請け負う中小企業向けが弱含みという。ただ、日工会は「マイナス分はスマートフォン関連の特需がなくなった だけに過ぎず、2カ月ぶりに600億円台を回復している」(事務局)と全体基調は8月までと変わらないとの見方だ。 ◆工作機械8社受注/内需増で全社高水準【10.14】 ≪本社まとめ4-9月、為替など追い風≫日刊工業新聞社が13日ま とめた工作機械主要8社の4-9月受注は、前年同期比10・4%増の3,008億3,000万円で2年連続の増加だった。過去最高 の牧野フライス製作所をはじめ、全社が総じて高い水準だった。補助金政策を背景に内需が同35・0%増の1,403億9,70 0万円と伸びた。外需は8-9月の減少が響き、同4・8%減の1,604億3,200万円だった。4-9月は内需が2年連続の増加、 - 12 - 外需は2年ぶりの減少。内需は為替と補助金が追い風になり、外需は北米を中心に稼いだ。ただ、市況はここにきて変 わりつつある。9月単月は、前年同月比11・3%減の4,67億6,400万円で25カ月ぶりの減少だ。内需は26カ月連続増だが、 個社では減少が目に付く。DMG森精機は「補助金が一巡した」(広報・展示会部)影響などで足元の基調は強くないとみ ている。オークマは国内の大幅増も「中堅、大手からの受注に寄り始めた」(営業部)と、中小企業が設備投資を慎重に みる動きが広がり、決算月としては物足りない内容だった。外需は中国を中心にアジアの力強さが欠け、2カ月連続の 減少。北米は高水準の横ばい状態だ。3カ月連続減のOKKは米国が堅調だが、アジアの減少分を補うまでではない。一 方、ツガミは中国が「若干のマイナスで収まった」(管理部)。前月比が2ケタ増で、中国市場は落ち着きを取り戻したと みる。DMG森精機は前年9月の米国での国際展示会が盛況だっため、減少幅が膨らんだ。10月上旬の欧州での展示会効 果などで「年間では去年並みだろう」(広報・展示会部)と分析している。 ◎産業機械 ◆産機受注38%増4,539億円【10.9】 ≪8月、内外需とも好調≫産機工が8日発表した8月の産業機械受注額では、内 閣府の機械受注統計と比べて堅調だったが、工作機械などを含まず、金額の大きい化学機械が大きく伸びたことなど による。内需は同35・5%増の2,464億6,300万円と2カ月ぶりに、外需は同41・8%増の2,074億5,700万円と7カ月ぶりに 各プラスに転じた。内需のうち製造業向けは同14・3%増、非製造業向けは54・1%増、官公需向けは同67・9%増といずれ もプラス。一方、主要約70社の輸出契約高は同41・5%増の1,968億5,200万円で、7カ月ぶりにプラスに転じた。地域別構 成比は南米43・1%、アジア26・8%、中東20・4%、北米6・3%、欧州2・9%、オセアニア0・3%。 ◎環境装置 ◆環境装置受注85%増 8月【10.9】 ≪民需・官公謡とも大幅増≫日本産業機械工業会が8日発表した2015年8月の 環境装置受注実績は、前年同月比85・4%増の501億9,500万円で2カ月ぶりに増加した。民需は非製造業がけん引して 同55・2%増の84億8,900万円、官公需は都市ゴミ処理装置の増加により同92・1%増の410億8,600万円となった。外需 は排煙脱硫装置、排煙脱硝装置が伸びて同2・9倍の6億2,000万円。民需の内訳は製造業が同9・8%増の47億1,500万 円、非製造業が同3・2倍の37億7,400万円。製造業は食品、石油化学、機械産業向けの産業排水処理装置と鉄鋼向けの 汚泥処理装置、非製造業では電力向けの排煙脱硫装置と産廃処理業者向けの事業系廃棄物処理装置が好調だった。 主な装置別の内訳は大気汚染防止装置が同3・5倍の35億9,600万円、水質汚濁防止装置が同30・3%減の121億9,000 万円、ゴミ処理装置が同4・0倍の343億300万円。 ◆国内4輪生産4.7%減【10.1】 ≪8月 軽の増税響く≫日本自動車工業会(自工会)が30日発表した2015年8月の生 産輸出実績によると、4輪車の国内生産は前年同月比4・7%減の60万4,974台となり、14カ月連続で前年同月を下回っ た。軽自動車税の増税が響き、軽乗用車が同22・8%減の8万8,843台と苦戦。軽トラックも同11・7%減の2万6,067台に落 ち、1966年の統計開始以来、8月として下から2番目の低水準だった。乗用車のうち普通車と小型車は前年同月をわず かに上回った。小型車は15カ月ぶりにプラスへ転じた。一方、トラックは軽トラックの苦戦が影響し、8月として過去2番目 の低さだった。4輪車の輸出は同0・1%減の32万2,494台とほぼ横ばい。海外生産移管が進む乗用車の小型車は同5・8 %減の1万7,100台となり、72年の統計開始後で8月として過去最低を記録した。国・地域別では市場が低迷するロシア への輸出が同46・1%減の8,368台と大幅ダウン。中国向けは同7・5%減の1万6,682台だった。2輪車の国内生産は同3・9 %減の3万6,598台で10カ月連続のマイナスとなり、8月として過去最低となった。 ◆新車販売5・8%減【10.2】 ≪4-9月期 軽が大幅落ち込み≫日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車 協会連合会(全軽協)が1日発表した2015年4-9月期(上期)の新車販売台数は、前年同期比5・8%減の232万9,270台と なった。上期の前年割れは3年連続。13、14年上期に100万台を超えていた軽自動車が、同16・2%減の84万2,291台と大 幅に落ち込んだため。登録車は低水準ながら同1・2%増の148万6,979台と前年を上回った。15年4月からの軽自動車増 税の影響と前年の駆け込み需要に対する反動減で、軽販売は大幅に減少した。「新車があまり伸びていない。しばらく 前年超えは難しい」(全軽協)。登録車は東日本大震災やリーマン・ショックなどに次いで平成に入り下から4番目の水準 で、「状況は厳しい」(自販連)。9月の新車販売は前年同月比7・6%減の47万9,375台で、9カ月連続の前年割れ。軽が同 14・7%減の17万3,573台、登録車が同3・0%減の30万5,802台だった。登録車も前年超えの月が続かず、14年4月の消費 増税の影響から抜け出せずにいる。 ◆普通トラック7・6%増/4-9月【10.7】 トラック業界がまとめた2015年4-9月期の普通トラック(積載量4㌧以上)の販売 台数は、前年同期比7・6%増の4万2,312台と、5年連続で前年同期を上回った。14年4-6月は消費増税による反動減が あったほか、15年度上期は荷台部分を箱型に架装したバンなどカーゴ系車両が全体を押し上げた。車種別では大型トラ ックが同14・2%増の2万5,045台と好調に推移。一方、カーゴ系車両よりダンプなど建設系車両の比率が高い中型トラッ クは、同0・7%減の1万7,267台だった。建設関連需要は引き続き堅調に推移する見込みだが、これまで市場をけん引し てきた伸び率からは一服感がみられる。9月単月の普通トラックは前年同月比4・0%減の1万1,159台で、6カ月ぶりに前 年同月を下回った。年度の見通しについて業界関係者は公共事業の減退などで「前年度を下回る」と予想。運賃の改善 や燃料代の落ち着きで運送業者の経営環境が安定し、堅調に推移するカーゴ系車両だが「足元の荷動きが良くないな ど不安も残る」 ◆車の国内生産7・3%減【10.27】 ≪8社の4-9月 海外では増≫国内白動車メーカー8社が今年度上半期(4-9月)に 国内でつくった車は、前年同期より7・3%減の417万7,318台だった。主に国内の販売が落ち込んでいるためで、8社のう ち5社が前年実績を下回った。一方、海外での生産は4・2%増え、現地生産が一段と進んでいる。8社が26日、発表した。 - 13 - 国内と海外を合わせた世界生産は微増だった。海外生産が上半期で過去最高だったのは日産自動車、ホンダ、スズキ、 マツダ、富士重工業の5社。トヨタ白動車は新興国経済の落ち込みで海外生産を減らしたが、5社は北米やインドなどの 販売で補った。日産、ホンダ、マツダ、富士重の4社は世界生産でも上半期で最高だった。国内では、4月からの軽自動車 税の引き上げの影響が尾を引いている。軽が主体のダイハツ工業は国内生産が17・3%減、スズキは12・8%減で、大きく 落ち込んだ。円安で、日産やホンダは輸出を増やしているが、全体では売れる地域でつくる現地生産の流れは続いて いる。 ◆粗鋼需要3・7%滅【10.7】 ≪10-12月 内需回復に遅れ、経産省見通し≫経済産業省は5日、10-12月期の粗鋼需要 量が前年同期比3・7%減の2,653万㌧になりそうだと発表した。製造業を中心に国内需要の回復が遅れているほか、中 国経済の変調などで輸出環境がより一層、悪化しているため。四半期ベースでの前年割れは5四半期連続となる。鋼材 需要の見通しは同2・1%減の2,407万㌧。このうち、内需は同1・5%減の1,609万㌧。輸出は同3・3%減の798万㌧。経産省 は「アジアで自動車需要が低迷し、エネルギー関連の輸出も減少が続く。もとよりアジアで鋼材の供給過剰が継続して いる」(鉄鋼課)と、ここにきて輸出環境がさらに悪化してきたと指摘した。内需も建築や自動車で回復が見込めるもの の、建設機械や船舶向けの減退などが響き、普通銅鋼材の国内消費量は同0・2%減を予想。特に製造業は同1・1%減と 回復が遅れそうだ。9月末の普通鋼鋼材のメーカー・問屋在庫は660万㌧、在庫率1・08カ月の見込み。「高い水準だ。ま だ在庫調整は完了していないという認識で、業界もそう思っているはず」(同)だとして、各社に現行の減産を継続す るよう求めた。約半月前の日本鉄鋼連盟の会見で、柿木厚司会長(JFEスチール社長)は10-12月期の粗鋼生産量見通し を前年同期並みと予測した。わずか半月の間に中国を中心に世界経済の不透明感が一気に増大。その見通しから下方 修正せざるを得ない状況に陥っている。 ◆普通鋼鋼材受注4.2%減/8月、内需・輸出とも減【10.19】 日本鉄鋼連盟によると8月の普通飼鋼材の受注量が2カ 月連続で減少した。前年同月比4.2%減の540万5,000㌧で、このうち内需が同4.5%減の350万8,000㌧、輸出が同3.7 %減の189万7,000㌧と、いずれも前年を割り込んだ。特にプラス基調にある輸出は3カ月ぶりにマイナスへ転じた。内 需のうち、製造業用は同1.8%減の166万3,000㌧、建設用も同8.8%減の86万㌧でなかなか水面上に浮上できない。た だ、製造業用の主用途では、自動車用が同0.1%増の79万2,000㌧と2カ月連続で増加。7月の水準も大きく上回り、回復 の兆しが見えてきた。船舶用も同0.1%増の36万5,000㌧で4カ月ぶりにプラスへ転じた。建設用の内訳では建築用が同 3.9%減の49万2,000㌧、土木用は同17.1%減の17万㌧。引き続き、公共事業比率の高い土木の不振が際立つ。 以 - 14 - 上
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