高力ワンサイドボルト接触面が弛緩に与える影響 加振

土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)
Ⅵ-075
高力ワンサイドボルト接触面が弛緩に与える影響
大 鉄 工 業 株 式 会 社 正会員○山 口 善 彰
京橋メンテック株式会社 正会員 神 薗 卓 海
京橋メンテック株式会社 正会員 山田不二彦
明 星 大 学 理 工 学 部 正会員 鈴 木 博 之
1.はじめに
近年,鋼構造物の経年劣化の進展により効率的・効果的な修繕・補強方法が課題となっている.ワンサイ
ドボルトは,ナット側からのみで作業ができるため,狭隘箇所や閉断面におけるボルト継手や当板補強が可
能であり,作業の安全性向上にも寄与できる有効な方法である(図-1).
しかし一方で,ボルト側接触面の素地調整が十分にできないことか
ら,腐食が進んだ凹凸の大きな母材を高力ワンサイドボルトで締め付
けた場合に,継手や当板補強が要求する耐力を満足するか,締付力の
低下・弛緩が発生しないか等が懸念される.そこで,接触面が腐食し
た鋼板を高力ワンサイドボルトにより締め付けて加振試験を行い,接
ワンサイドボルト
触面が弛緩に与える影響を検証した.
図-1 ワンサイドボルト使用例
2.高力ワンサイドボルトの概要
今回使用した高力ワンサイドボルトは,製品名:MUTF20-50,設計締付軸力:131KN,導入軸力範囲:
136~159KN(常温 10~30℃),131~166KN(常温以外 0~60℃),
規定軸力発生時の換算トルク:約 240N・m である.高力ワ
ンサイドボルトの構成部品を表-1 に,構成図を図-2 に示す.
締結断面
表-1 高力ワンサイドボルトの構成部品
部品名称
Core Pin
Bulb Sleeve
Grip Sleeve
Shear Washer
Bearing Washer
Nut
規格番号
名
称
JIS G4105
クロムモリブデン鋼鋼材
AISI(米 国鉄鋼規格 ) 中炭素鋼(JIS S17C~ 20C)
JIS G4105
クロムモリブデン鋼鋼材
JIS G4105
クロムモリブデン鋼鋼材
JIS G4105
クロムモリブデン鋼鋼材
JIS G4105
クロムモリブデン鋼鋼材
鋼 種
SCM 440
1018
SCM 430
SCM 430
SCM 430
SCM 430
図-2 高力ワンサイドボルト構成図
3.試験概要
腐食・凹凸のある試験片を高力ワンサイドボル
表-2 加振試験の仕様
トにより締め付け加振試験を行った.加振試験は,
加振ストローク
加振振動数
基づいており,仕様を表-2,試験機を図-3 に示す. 衝撃ストローク
試験は,60 秒間継続加振しボルト弛緩等の変状 加振枠体加速度
加振打ち切り
NAS3350/3354(米国航空規格)ねじゆるみ試験に
を確認し,再度 60 秒加振し弛緩するまで最大 17
11mm
1780c.p.m
19mm
19.56G
1020sec
回継続する.試験片は腐食・凹凸のある鋼材 5 種類と腐食・凹凸の無い鋼板 1 つを
用い,材質はいずれも SS400 材である.なお,試験片は外径 50mm、内径 21.5mm で,
図-3 加振試験機
凹凸がある側が形成されるボルト頭との接触面になるようにセットした(図-4).
キーワード:高力ワンサイドボルト
ボルト側接触面素地調整
連絡先:大阪市淀川区西中島 3-9-15
℡06-6195-6134
加振試験
Fax06-6195-6136
-149-
ボルト頭部
E-mail [email protected]
土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)
Ⅵ-075
№0 試験片
板厚 Max9.0mm
Min9.0mm
△t0.0mm
№2 試験片
板厚 Max9.0mm
Min5.4mm
△t3.6mm バリ残存
図-4 試験片
試験片(抜粋)とその諸元
№5 試験片
板厚 Max8.2mm
Min6.3mm
△t1.9mm バリ除去
4.試験結果と考察
(1)凹凸のない試験片(№0)は,17 分間の試験を 5 回繰り返し実施した
が,ナットの回転は認められなかった
ナットの回転は認められなかった.
(2)腐食した試験片(№1,2)においては,
,板厚調整用座金に SS400 材を用
いた.試験後座金には変形が生じたが
試験後座金には変形が生じたが,ナットの回転は認められな
図-5 形成されたボルト頭部
かった.
(3)腐食した試験片(№1~3)ではバリは除去せずに試験を実施
ではバリは除去せずに試験を実施した.№3 では僅かでは
では僅かではあるがナットの回転が
認められたが,№1,2 では認められなかった.また,腐食した試験片(№4,5)ではバリを除去してから試験を
では認められなかった
ではバリを除去してから試験を
実施した.№4 では僅かではあるがナットの回転が認められたが,№5
では僅かではあるがナットの回転が認められたが,№ では認められなかった
では認められなかった.
(4)腐食した試験片№3~5 では,板厚調整座金に高張力鋼を用い
板厚調整座金に高張力鋼を用いた.試験後に変形は生じなかったが
試験後に変形は生じなかったが,№3,4
ではナットの回転が僅かではあるが生じた
るが生じた.なお,ナットの回転は 5 度程度であった
度程度であった.
(5)形成されたボルト頭部側の接触面に
に凹凸があっても形
成されるボルト頭部は容易に変形し
し,十分に馴染むこ
とがわかった.締付後のボルト頭部
締付後のボルト頭部の状況を図-5 に示
す.また、試験片の最大板厚差とボルト頭部の
ボルト頭部の凹凸量い
わゆる馴染み量の測定結果を表-3 に示す.
に
(6)以上から,本試験ではボルト接触面のバリの
面のバリの有無や
表-3 ボルト頭部の凹凸
ボルト頭部の凹凸(馴染み)量
試験片№ 最大板厚差(mm) ボルト頭部凹凸量(mm)
1
2.4
2.1
2
3.6
1.9
3
1.3
0.7
4
2.7
1.4
5
1.9
0.9
凹凸が弛緩に与える影響は確認できなかった.
が弛緩に与える影響は確認できなかった.
5.おわりに
接触面のバリや凹凸の存在が高力ワンサイドボルト
高力ワンサイドボルトの弛緩に影響することは確認でき
することは確認できなかった.これは,
ボルト頭を形成するバルブスリーブが容易に変形することから
を形成するバルブスリーブが容易に変形することから,接触面の凹凸に追随し馴染む
凹凸に追随し馴染むためであると
考えられる.高力ワンサイドボルトを使用す
高力ワンサイドボルトを使用する場合,裏面側接触面の
素地調整に特別な配慮の必要性は小さく,
は小さく,補修・補強に極めて有効な
材料のひとつであると言える.例えば
例えば,橋マクラギ式の上路鉄道橋で,
上フランジのリベットが弛緩や腐食し
した場合に行うリベットの HTB
置換補修では,上フランジ上側接触面
接触面のケレン不要となり,効率的・
効果的でかつ安全な作業が可能となる
能となることが期待される(図-6).
最後に,加振試験はハードロック工業株式
試験はハードロック工業株式会社のご厚意で実施させ
て頂いた.ここに記して謝意を表する
記して謝意を表する.
参考文献:鈴木他
図-6 橋マクラギ式上路鉄道橋の一例
高力ワンサイドボルトを用いた遅れ破壊ボルト取替え工事報告、土木学会第 66 回年次学術講演会
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