進路指導室から第42号

平成 27 年 12 月 8 日
進 路 指 導 部
はじめに
第3回考査が終わり、学校も年末モードへと移行しています。私が子どもの頃には、12 月といえば、いたると
ころに霜が張り冬のイメージがありましたが、最近は温暖化の影響でしょうか、この季節に霜を見ることも珍し
くなったような気がします。
霜といえば、小倉百人一首の中に、中納言家持(大伴家持)の歌に以下のような歌があります。
かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける
この歌は、
「かささぎが、架け渡したといわれる天の川の橋、その橋にたとえられる宮中の御橋に白い霜がおり
ているのを見ると、もうすっかり夜もふけてしまったことだ。
」の意味で、私の好きな歌の一つです。
中国の伝説によると、
「かささぎ」という鳥は、たなばたの夜、織姫が彦星と一年に一度会うためにわたる橋を
天の川にかけるとされていました。いっぽう、宮中は「天上」と呼ばれていたため宮中の御殿に渡した階段は天
の川に見たてられていたと言われています。この歌は、天上と現実の世界を調和させた、家持ならではの歌とい
われています。
ところで、皆さんは、
「かささぎ(鵲)
」という鳥を知っていますか。かつて基
町高校におられた「鳥先生」によると、「かささぎ」は、
「さぎ」とついています
が、スズメ目カラス科に分類され、
「カチカチ」という鳴声から、カチガラスとも
言われています。黒いカラスに比べてひと回り小ぶりで、胸と腹が白い点が特徴
です。また、
「かささぎ」の仲間は北半球の広い範囲に分布していますが、なぜか
日本では、そのほとんどが佐賀平野を中心とした狭い範囲にしか生息していませ
ん。このように、地域性豊かな鳥であることから、生息地を定めた国の天然記念
物に指定され、佐賀県の県鳥にも定められています。
また、日本には大きく分けて2種類の「カラス」が生息していることも教えて
もらいました。この記事をまとめながら、そんなことを教えてもらったことを思
い出し、少し懐かしく思いました。
2016 年度大学入試センター試験志願者数確定(河合塾発表資料から)
2016 年度(平成 28 年度)大学入試センター試験(以下、センター試験)の確定志願者数が発表されました。確
定志願者数は 563,765 人で、前年より 4,663 人増加しました(前年比 100.8%)。
■ 志願者は前年並み、現役生は増加、既卒生は減少
発表された確定志願者数の内訳をみると、現役生が 462,332 人(前年よりも 6,940 人増)、既卒生が 101,443
人(同 2,307 人減)と、対照的な動向となっています。
既卒生の減少は、2015 年度入試で入学率が上昇した影響とみられています。一方、現役生は僅かとはいえ増加
しました。来春の高校卒業者見込者(現高3生)は、1,065,287 人と前年から約 5,300 人減少します。(前年比
99.5%)。それにもかかわらず増加したのは、センター試験の現役志願率(センター試験現役志願者数/高校卒業
見込者)が上昇したことによります。近年は国公立大の推薦・AO入試でセンター試験を利用する大学が増えて
いることなども現役志願率の上昇につながっているのかもしれません。
男女別にみると男女とも増加しているものの、女子の増加が目を引きます。
〔男女別の状況〕
区 分
2015 年度
2016 年度
前年差
前年比
全 体
559,132
563,765
+4,663
100.8%
男
313,851
314,285
+434
100.1%
女
245,281
249,480
+4,199
101.7%
■ センター試験現役志願率は過去最高を更新
センター試験の現役志願率は 43.4%となりました。2015 年度から 0.9%上昇し、過去最高値を更新した。現役
志願率はセンター試験導入以降上昇が続いており、2009 年度に4割を超えて以降は 41~42%前半で推移してきま
したが、2016 年度は一気に 43%半ばまで上昇しました。
■ 今後のセンター試験関連スケジュール
今後のセンター試験に関連するスケジュールは以下の通りです。
・ 受験票の交付
12 月上旬~中旬
・ 大学入試センター試験(本試験)実施・正答等の発表
1 月 16 日(土)・17 日(日)
・ 平均点等の中間発表
1 月 20 日(水)予定
・ 得点調整実施有無の発表
1 月 22 日(金)予定
・ 国公立大出願期間
1 月 25 日(月)~2 月 3 日(水)
・ 平均点等の最終発表
2 月 4 日(木)予定
大学受験に向けて
3年生にとっては、いよいよ大学受験が近づいてきました。以下のことについて、準備を進めてください。
(1)募集要項の入手について
三者懇談で出願についての確認が行われますが、募集要項を年内に必ず入手してください。なお、国公立大学
については、センター試験後、最終的に出願についての確認が行われますが、センター試験後の取り寄せは混み
あって時間がかかります。現時点で受験の可能性のある大学についてはすべて入手しておくようにしてください。
(2)宿泊先の手配について
ある調査によると、宿泊先の手配の時期については、センター試験が終わり、志望大学が最終的に確定するこ
との多い 1 月が約30%と最も多く、続いて多いのが約20%を占めた12月でした。宿泊先を選ぶ際にあたっ
て最も重視されているポイントは、「交通の便の良さ」です。条件の良いところから埋まっていきますので、早
めに確保してください。
(3)出願について
私立大学の出願も既に始まっていますが、出願期限が「必着」なのか「消印」なのかをしっかりと確認し、余
裕をもって出願するようにしてください。
「私なりに輝く」今ここで
11月30日(月)の毎日新聞朝刊に、精神科医の香山リカさんの「ココロの万華鏡」に以下のような記事が
掲載されていました。
余波が続くパリ同時多発テロ事件。
「いったいどんな人たちが自爆テロや銃撃を?」と特定された実行犯の写真を見
ると、まだあどけなさの残る青年もいる。同じアパートの住人が「きれいで感じがいい」と思っていた女性も自爆犯
に加わっていたそうだ。
彼らの中には、たまたま過激派組織「イスラム国」
(IS)の勧誘動画をネットで見て関心を持ち、SNSなどを通
してメンバーと接触した人もいるとのことだ。それまではごくふつうに働いたり学校に行ったりしていたという話を
聞くと、日本で 1990 年代に起きた「オウム真理教事件」を連想する。
あの事件でも、大学を出て企業で働いたり弁護士や医師などの専門的な仕事についたりした人たちが、
「ここは自分
の居場所ではない」と行き場を求め、過激な修行で知られる教団にたどり着いたといわれる。そこで新しい名前や役
割を与えられ、教祖から「これはきみしかできない」と期待されて、それにこたえることで生きがいを見いだしたの
だろう。
「もっとすごいことをやって教祖から認められたい」と思ううちに、自分がやっていることが大量殺人につな
がることが見えなくなってしまった人もいたのだろうか。
「イスラム国」はどうなのだろう。スペインやカナダなど中東から離れた国からも加わる若者があとを絶たないと
伝えられるが、彼らもまた「オウム真理教事件」の加害者のように「自分の居場所を見つけたい」
「自分にしかできな
いことがしたい」と思ったり、社会からはじき出されているように感じたりして、不満をつのらせていたのだろうか。
そして、日常を忘れさせてくれるような戦闘訓練を続けるうちに、自分が行うことが多くの人たちを傷つけ、悲しま
せることも忘れてしまうのだろうか。
「私も輝きたい」というのは、いまを生きる若者であれば当然、一度は抱く夢であろう。しかし、その輝きとは「誰
よりも目立つこと」や「他人からうらやましがられるような成功をおさめること」ではない。身近な人と関係を築き、
助け合って自分なりにできることをする。それも十分、
「私なりに輝くこと」だと思う。逆にそれがなければ、どんな
に富や名声を手に入れてもむなしさから心のバランスを崩すことは、多くの偉人たちが教えてくれている。遠くに旅
立たず、過激な道に走らず、今この場所で私なりに輝くこと。その価値を若者に伝えるにはどうすればいいのだろう。
終わりに
これから一段と寒くなります。年末にかけて、どうぞご自愛のほどを。
(文責:進路指導部 池本 邦彦)