名古屋大学地球水循環研究センター 共同研究報告書

別紙様式2
名古屋大学地球水循環研究センター
共同研究報告書
平成27年3月6日
名古屋大学地球水循環研究センター長 殿
申請者(研究代表者)
所属機関 _獨協大学 _________
職
_教授 ___________
氏名
_中村健治 ________
e-mail
[email protected]
下記の共同研究について、別紙の通り報告します。
1 研究課題 リモートセンシング・数値モデリングの利用と高度化による
メソ・マイクロスケール大気・海洋現象に関する共同研究
2 研究組織
氏名
代表者
所属
獨協大学経済学部
国際環境経済学科
分担者
センター対応教員
坪木和久、森本昭彦、
篠田太郎、大東忠保、
上田博
3 研究内容 (別紙)
職
教授
分担研究課題
降雨の衛星からのリモートセンシン
グに関する研究
(別紙)
課題:
降雨の衛星からのリモートセンシングに関する研究
研究目的
降水はメソスケールで大きな変動があり、メソスケールでの降水システムの構造は衛
星からの観測の精度に大きな影響を与える。また逆に衛星からの観測データがメソスケ
ール降水システムの構造の理解への一助となっている。昨年(2014 年)3月に全球降水
観測計画(GPM)の主衛星が種子島宇宙センターから打ち上げられた。本衛星には我が
国が開発した二周波降水レーダ(DPR)が搭載されている。このDPR による降水データの
地上検証について HyARC の MP レーダまた新規に整備される Ka 帯レーダのデータの
利用を検討する。
研究内容
全球降水観測計画(GPM)では JAXA は主衛星の打ち上げ、またそれに搭載される二周
波降水レーダ(DPR)を開発し搭載している。主衛星は昨年(2014 年)2 月に打ち上げられ
順調に稼働している。DPR には 35GHz帯レーダがあり、そのための地上実験も行われてい
る。名古屋大学地球水循環研究センターには今年度 35GHz帯のミリ波雲レーダが整備さ
れた。名大の雲レーダも同じ周波数帯であるため、その概要と利用方法を検討した。
DPRの検証ではまずは同期観測によるデータ確認が必要である。DPR の Kaレーダはそ
の走査幅は 125km と狭く同期観測の機会は少ない。また同期の時に降水がなくてはならな
いので観測機会は非常に限られる。1 か所で1回/月程度と予想される。国内には 35GHz
レーダは、名大で今回整備され同様のレーダが防災科研にも整備されて増えたとはいえ、
数が少ない。同期観測では衛星の飛来時刻は正確に分かり、またほとんど瞬時値のみが
必要であるので、仮りに他のミッションで観測中であっても5分から10分の中断観測で十分
である。むしろ特殊運用のための作業の方が問題となる。
同期観測からは降水の鉛直プロファイルの比較が目標となる。観測方向が上方/下方と
反対であるので、弱い降水では直接比較ができるが、強い降水では直接比較はできない。
しかしその場合でも降雨減衰の現れ方から検証ができよう。現在も同期観測を少し行って
いると聞いているが、継続を要望している。図は現在 JAXA が蔵王で行っている Ka レーダ
実験での例である。地面からの高度 2km 以下で降水があり、地上レーダ側に大きなバイア
スがあるが、衛星搭載レーダのプロファイルの形状とは定性的には合っていることがわかる。
このようなデータが数多く必要である。
実際の overpass 時の同時観測では、名大雲レーダは RHI を衛星の cross track 方向に取
ると衛星データとの対応に都合がよい。また X 帯のレーダの同時 RHI 観測も可能である。
これができると衛星搭載レーダは Ku/Ka 帯の2周波数なので、より多面的な比較ができると
考えられる。
DPR の地上検証では現在山形県の蔵王で融解層を目標とした地上の2台の Ka レーダ
実験が行われている。この実験では融解層を間に挟んだ観測を行っている。氷晶、乾雪か
ら湿雪、融解途中の雪、そして融解直後の雨、等の Ka 帯電波の散乱・減衰特性を観測から
求めることを目的としている。この実験では二つのレーダのビームを完全対向させることが
必要であるが技術上・観測上の制約から少しビームをずらせている。このずらしがデータの
質に大きく影響していることが判明している。名大の Ka 帯レーダは使用周波数が同じ Ka
帯であるが若干異なっているため同時使用ができよう。とはいえ RF 帯の LNA などは帯域
が広いと考えられるので検討は必要である。また名大レーダはアンテナの方位角・仰角は
0.1 度以下の精度で制御可能であるので、対向観測に使用できる可能性がある。名大レー
ダの距離分解能 75m は若干長いが余り問題にはならない。また偏波機能があるので、これ
は融解状態などへの貴重な付加情報となる。一方、名大雲レーダは3トン以上の重量なの
で、運搬・設置は十分に考える必要がある。
図
GPM/DPR の JAXA Ka レーダの同期観測時のレーダ反射因子の鉛直プロファ
イル。左:GPM/DPR。小さい点は補正前のデータ、大きい点は降雨減衰補正や地面
クラッタチェックが施された後のもの。右:JAXA Ka レーダによるプロファイル。
高度 5km 以上で一見エコーが強くなっているように見えるが、
これはノイズである。