名古屋大学地球水循環研究センター 共同研究報告書

別紙様式2
名古屋大学地球水循環研究センター
共同研究報告書
平成 27 年 3 月 10 日
名古屋大学地球水循環研究センター長 殿
申請者(研究代表者)
所属機関 気象研究所 __________
職
台風研究部第1研究室室長 ___
氏名
青梨 和正 _________
e-mail
[email protected] ___
下記の共同研究について、別紙の通り報告します。
1 研究課題
衛星による高精度降水推定技術の開発とその水文学への利用の
研究企画のための集会
2 研究組織
氏名
所属
職
分担研究課題
代表者
青梨和正
気象研究所
室長
降水リトリーバルアルゴリズム開発
分担者
牛尾知雄
重尚一
久保田拓志
可知美佐子
小山亮
高橋暢宏
岡本謙一
広瀬正史
石橋俊之
沖理子
瀬戸心太
大阪大学
京都大学
JAXA
JAXA
気象研究所
NICT
鳥取環境大学
名城大学
気象研究所
JAXA
長崎大学
准教授
准教授
開発員
主任開発員
准教授
降水リトリーバルアルゴリズム開発
降水リトリーバルアルゴリズム開発
降水リトリーバルアルゴリズム開発
降水リトリーバル検証
降水リトリーバルアルゴリズム開発
降水物理モデル
降水物理モデル
降水物理モデル
降水データの同化
降水リトリーバル検証
水文学的利用技術開発
准教授
降水リトリーバルアルゴリズム開発
研究官
総括プランニングマネージャー
教授
准教授
主任研究官
研究領域リーダー
センター対応教員
増永浩彦
名古屋大学
3 研究内容 (別紙)
別紙
研究課題: 衛星による高精度降水推定技術の開発とその水文学への利用
の研究企画のための集会
共同研究者名(所属)
青梨和正(気象研究所)、牛尾知雄(大阪大学)、重尚一(京都大学)、
久保田拓志(JAXA)、可知美佐子(JAXA)、小山亮(気象研究所)、高橋暢
宏(NICT)、岡本謙 一(鳥取環境大)、広瀬正史(名城大)、石橋俊之(気
象研究所)、沖理子(JAXA)、瀬戸心太(長崎大学)
センター対応教員 増永浩彦(准教授)
研究目的
近年、地域的な降水特性(強さ、タイプ、頻度)の変動や、強雨や干ば
つなどの極端な事例が世界的に注目されている。また、全球的な降水情報
は、大気、海洋、陸面などの間の様々な時間・空間スケールの相互作用の
理解のために不可欠なパラメータの1つでもある。全球的にある程度の時
間・空間分解能の降水情報を与える観測手段として、衛星リモートセンシ
ング技術が近年注目されている。これは、稠密な降水観測システム(地上
雨量計や降水レーダ)が利用できる地域は地球のごく一部であり、海上や
極域、人口過疎地域等では、観測がほとんどないためである。
我々の開発した、GSMaP アルゴリズムは、ある程度の時間・空間分解能
と精度をもつ降水データを作るために、各種リモートセンシングの情報を
組み合わせて使うアルゴリズムの1つである。このアルゴリズムは、まず、
マイクロ波放射計から降水強度をリトリーバルする。次に、このデータを
可視赤外放射計のデータを用いて移流と強度補正をすることで、1時間毎
約 10 km の時空間分解能の降水強度を推定する。 また、GSMaP アルゴリ
ズ ム は 、 マ イ ク ロ 波放 射 計 か ら 降 水 強 度を リ ト リ ー バ ル す る際 に 、 TRMM
衛 星 搭 載 の レ ー ダデー タ を 元 に し た 降水物 理 量 の モ デ ル を使っ て い る の
が特徴である。
本研究集会の目的は、GSMaP アルゴリズムに関連した研究について、現
状のまとめを行い、今後の中期的な課題を明確にし、研究の取り組み方を
考えることである。
別紙
研究内容
以下の4つの研究領域に関係する研究者によって、現状のまとめと、今
後の研究の方向性についての発表を行なう:
(1) 降水物理量の解析および降水リトリーバルアルゴリズムの開発
(2) 降水リトリーバルデータの検証
(3) 降水データの数値予報モデルへの同化
(4) 降水データの水文学的利用技術開発
また、研究者間での議論を通して、今後の中期的な課題と、研究の取り
組み方をまとめる。
研究成果
研究集会を 2015 年 3 月 2 日(月) ~3 日(火)に、名古屋大学環境総
合館レクチャーホールで開催した。今回の GSMaP 研究集会は、GPM 主衛星
の打ち上げ 1 年後に開催されたため、「GPM の研究&開発」を主な議題と
した。このため、GSMaP アルゴリズム開発に限らず、広い範囲での GSMaP
に関連した研究成果が発表された。また、前回と同じく、衛星シミュレー
タ研究会との合同研究集会の形をとった。更に、フロリダ州立大の劉國勝
教授による、特別講演「How to Model Solid Precipitating Particles in
Microwave Radiative Transfer Simulations」を行なった。
成果発表
今回の研究集会では、以下のような研究成果の報告があった:
「次期静止気象衛星ひまわり 8 号について」
守伸隆(気象庁)
「次期静止気象衛星ひまわり 8 号観測データから算出される雲プロダク
トの開発」
鈴江寛史、今井崇人、毛利浩樹 (気象庁)
「気象衛星ひまわりの品質評価における衛星シミュレータの利用」
村田英彦、奥山新、吉野良子、田端将、高橋昌也(気象庁)
「シミュレート衛星画像による台風 Halong(2014)の急発達の検証」
別紙
山口宗彦、青梨和正、岡本幸三(気象研)、田島知子(RESTEC)
「GPM/DPR 反射因子に対する、JMA-NHM との比較と同化初期結果」
岡本幸三、青梨和正(気象研)、久保田拓志(JAXA)、田島知子(RESTEC)
「Evaluation of NICAM Using Microwave Simulators.」
Woosub Roh、Masaki Satoh(東京大)、Guosheng Liu(フロリダ州立大)
「衛星降水観測データの全球大気モデル NICAM への同化に向けて」
三好建正、小槻峻司、寺崎康児、Guo-Yuan Lien、富田浩文(理化学研究所)、
佐藤正樹(東京大)、Eugenia Kalnay(メリーランド大)
「衛星観測データの雲物理学的解析(2)」
久芳奈遠美(東京大)、端野典平(台湾中央研究院)、鈴木健太郎(JPL)、
清木達也(海洋研究開発機構)、佐藤正樹(東京大)
「Joint Simulator の AMPS への適用」
端野典平(台湾中央研究院)
「巻雲シミュレーションに必要な鉛直解像度の検証」
清木達也、小玉知央(海洋研究開発機構)、端野典平(台湾中央研究院)、
佐藤正樹(東京大)、萩原雄一朗、岡本創(九州大)
「GPM/DPR プロダクトの現状と今後の予定」
久保田拓志(JAXA)、瀬戸心太(長崎大)、井口俊夫(NICT)、沖理子(JAXA)
「DPR アルゴリズムで用いる k-Ze 関係の再検討」
瀬戸心太、木下卓哉(長崎大)
「NICT における GPM/DPR 検証について」
高橋暢宏、花土弘、中川勝広(NICT)
「GPM-GSMaP の状況と今後の計画」
可知美佐子、久保田拓志(JAXA)、荒井頼子、田島知子、東上床智彦(RESTEC)
「次世代のマイクロ波イメージャ降水リトリーバルアルゴリズム開発」
青梨和正、小山亮、石橋俊之、岡本幸三、石元裕史、小田真祐子(気象研)
「GSMaP 陸上降雨推定精度の向上に向けた検討」
山本宗尚、重尚一(京都大)
「GPM/DPR 観測に基づく GSMaP 降水プロファイルデータベースの構築」
濱田篤、高薮縁(東京大)
別紙
「レーダーアメダスを用いた GSMaP Gauge の検証」
妻鹿友昭、牛尾知雄(大阪大)
「TRMM PR 降水気候データセット開発のための PR 冗長系切替の影響評価」
金丸佳矢、久保田拓志、可知美佐子、沖理子(JAXA)、井口俊夫(NICT)、高
藪縁(東京大)
「TRMM 衛星による降水と陸面射出率のトレンド分布」
古澤(秋元)文江、増永浩彦(名古屋大)
「GPM/DPR の初期評価:レーダー感度と降水地域特性の関連性」
豊嶋紘一、増永浩彦、古澤(秋元)文江(名古屋大)
「GPM-DPR を想定した主成分分析を用いた対数正規 DSD モデルの検討」
渡邊祐里子、下舞豊志、古津年章(島根大)
「静止気象衛星降雨ポテンシャルマップによる暖かい雨の検出」
広瀬民志、樋口篤志(千葉大)、妻鹿友昭、牛尾知雄(大阪大)、山本宗尚、
重尚一(京都大)、濱田篤(東京大)
「山岳域における降水の局所的特徴に関する比較研究」
岡田啓太、広瀬正史(名城大)
「モンスーン期における大山脈での降水と高度の関係」
南方悠里、重尚一、山本宗尚(京都大)
「低緯度域における水蒸気変動と降水特性に関する研究」
安永数明(富山大)
今後の問題点
今回の GSMaP 関係の発表を大まかに分類すると以下のようになる:
1) GPM/DPR アルゴリズムと初期検証結果
2) GSMaP マイクロ波放射計アルゴリズムの開発と検証
3) GSMaP データなどを用いた降水特性の研究
衛星シミュレータ関係の発表を大まかに分類すると以下のようになる:
1)ひまわり8号の初期観測成果
2)衛星シミュレータ等を使ったデータ同化の研究
3)衛星シミュレータ等を使った雲物理研究
別紙
今回の研究会で、衛星シミュレータを使った衛星、数値モデル、及びデ
ータ同化コミュニティ間の交流が広がっていることが分かった。即ち、実
際の衛星観測値と、数値予報システムの出力からの衛星シミュレータ計算
値との差を使って、数値予報モデルなどの検証を行なうことが出来る。一
方で、同化システムやリトリーバルアルゴリズムなど、衛星観測値の逆問
題を解くときにも、衛星シミュレータは不可欠である。また、数値予報シ
ステムと衛星シミュレータを使って、今存在しないセンサーの擬似的観測
値を作ることが出来る。この擬似的観測値を解析することで、将来的な衛
星リモートセンシングセンサーの開発などに貢献することが出来る。
課題として、特に GPM/DPR のプロダクトが専門外のものにとって理解が
難しいことが指摘された。また、今後の GSMaP アルゴリズムの開発の柱の
1 つとして重要である、高緯度の固体降水のリトリーバルについて、残念
ながら発表がなかった。