ハイスループット細胞毒性試験を可能とする灌流培養マイクロチャンバー

ナノプロセシング・パートナーシップ・プラットフォーム 独立行政法人 産業技術総合研究所
NanoProcessing Partnership Platform
平成22年度 トピックス
超微細加工領域における支援成果
ハイスループット細胞毒性試験を可能とする
イ
プ ト細胞毒性試験を 能とする
灌流培養マイクロチャンバーアレイチップの開発
産業技術総合研究所 幹細胞工学研究センター
杉浦慎治
【研究目的】
創薬における細胞毒性試験では薬剤の50%増殖阻害濃度(IC50)を求めるために、段階希釈系
列を用いた試験がしばしば行われる。このような試験を手作業で行うのは非常に煩雑であり、
分注ロボットを用いても時間がかかる。本研究では、段階希釈系列を自動的に生成するマイク
ロ流路ネットワークを設計し、このマイクロ流路ネットワークを灌流培養マイクロチャンバーアレ
イチップに組み込むことで、効率的な細胞毒性試験を可能とする実験ツールを開発した。
【成
果】
マイクロプレートサイズのチップ上に12 種類の薬剤溶液、希釈液、細胞懸濁液を導入するた
めのポートが設けられており、各ポートにはマイクロピペットで液を導入できる(Fig. 1a)。それぞ
れのポートは段階希釈マイクロ流路ネットワークと細胞培養のためのマイクロチャンバーに接
続している(Fig. 1b)。このチップ上には(12種類の薬剤) x (8段階の希釈系列) x (N = 4) = 384と
おりの細胞アッセイを行うマイクロチャンバーがアレイ状に配置されている。
段階希釈系列を生成するマイクロ流路ネットワークを組み込んだ灌流培養マイクロチャンバー
アレイを用いて e a細胞に対する ac ta e の細胞毒性試験を行った。培養された細胞は
アレイを用いてHeLa細胞に対するPaclitaxelの細胞毒性試験を行った。培養された細胞は
Paclitaxelの濃度依存的に異なる細胞増殖を示し、細胞増殖を蛍光観察により解析することが
可能であった。(Fig. 2)。個別に作製した4枚のチップを用いて細胞毒性の濃度依存性試験を
行ったところ(Fig. 3)、IC50が15.8 ng/mlと推算された。マイクロチャンバーアレイを用いて行った
細胞毒性試験の結果をマイクロプレートを用いて得られた結果と比較したところ、推算された
IC50はポリスチレン底面のマイクロプレートを用いて得られた結果(7.4 ng/ml)とは異なるが、
PDMSでコートされたマイクロプレートを用いて得られた結果(18.3 ng/ml)とはほぼ一致した。本
研究によって開発されたマイクロチャンバーアレイでは
研究によって開発されたマイクロチャンバ
アレイでは、マイクロ流路ネットワ
マイクロ流路ネットワークによる段階希
クによる段階希
釈系列の調整や培養液の導入方法は薬剤の毒性応答にあまり影響しないが、基材表面の性
質により薬剤の応答が異なることが確認された。
Fig. 2. Fluorometric dose response assay by
perfusion culture microchamber array chips
Fig. 1. Microplate-sized perfusion culture
microchamber array chip equipped with serial
dilution microfluidic network. (a) Liquid
introduction with micropipette. (b) The detail
of a microchamber array unit.
Fig. 3. Fluorometric dose response assay by perfusion
culture microchamber array chips
この成果は論文誌Anal.Chem.82,8278(2010)(IF:5.214,2009年度)および
Lab Chip11,212(2011)(IF:6.306,2009年度)に掲載された。