Untitled - 高知大学 地域連携推進センター

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case
01
有限会社アフロディア 西川きよ
❖ 平成25年度 Aコース受講
機能性を実証することで差別化できる
研究から見出した可能性
結果を研究成果としてまとめることが
市場分析の話にとても驚いた。自分
できた。これをきっかけに、グァバ
が知らなかった難しい世界だったが、
西川さんはエステサロンと化粧品
茶の売上を順調に伸ばした。
販売の会社を経営しながら、体の内
この研究過程でグァバ葉には美白
分かってくれればよい」という言葉を
側から健康を維持する 体内美容アイ
作用がある成分が含まれていること
頼りに一生懸命話を聞いた。その通
テム としてお茶の販売に取り組み始
を知った西川さんは、有機農法で自
り、講義を聞くたびに世界を見る目
めた。平成22年、当時グァバ茶が好
家栽培するグァバ葉を使用したオー
が変化するのを感じた。1年が経ち
評だったことに注目し、仕入れたグァ
ガニックコスメの開発を次の目標と
修了要件は満たしていたにもかかわ
バ葉をグァバ茶として加工・販売す
し、新規事業を興そうと、平成25年
らず、もう一度聞きたくなり、2年
る事業を開始、食品産業分野に新規
春に土佐FBC吉金特任准教授を再度訪
目の課題研究の合間に再び受講する
参入した。予想以上に販売が順調で、
ねた。検討している商品開発案につ
ため駆けつけるほどであった。
グァバ葉の仕入れ量が不足しはじめ
いて相談したところ、「土佐FBCを受
実習は、言うまでもなく楽しいも
たため、グァバの栽培から自分でやっ
講していただき一緒に研究していき
のだった。毎回、どんな結果が出る
てみようと自家農園を構え、100%自
ましょう」と誘いを受け、今度は自ら
だろうとワクワクした。自分が日頃
家農園産のグァバ茶の販売を開始し
が受講することを決めた。
行っている調理加工の科学的な意味
「1年間聞いているうちになんとなく
た。グァバ茶の販売を拡大するため
を理解でき、新たな発見のある時間
にも、その効果効能について検証す
であった。また実験技術は素人にも
る必要性を感じていたところに、知
人から土佐FBCを紹介され、社員を平
(Aコース)に派遣し
成22年度土佐FBC
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とくに最初の門田先生の授業では、
れている。商品は販売開始間もない
バをまるごと使い、グァバのすべて
こともあり反響はまだこれからであ
を有効に活用していくという新たな
てあげないといけないという気づき
るが、すでに手ごたえは十分にある。
目標が生まれた。
につながった。
というのも、化粧品業界では成分分
課題研究は、受講1年目の9月から
析の結果を公表し、機能性を科学的
根拠を示して差別化する
始めた。オーガニックコスメの製造
にアピールしている中小企業はほと
工程をできるだけ早く確立したいと
んどなく、それを強みとして営業で
いう気持ちがあったため、無理を言っ
きているからだ。国内のオーガニッ
て早めに取り組ませてもらった。グァ
クコスメの中で、主原材料を自家農
バエキスの機能成分を効率よく抽出
園で栽培し、成分分析から機能性を
売れる商品にはならない。きちんと
できる条件・工程を実験でコツコツと
検証し、かつその成果を学会で発表
目に見える根拠を示さなければ差別
調べ、1年がかりで最適条件を見つけ
している企業は日本では他にないと
化ができない時代になっている。し
ることができた。さらに、受講2年目
いう自信に支えられている。
かし、高知には土佐FBCがある。土佐
には、これらの成果を学会で発表し、
今はグァバ葉のみを原材料として
FBCで課題研究を行うことで機能性成
さらなる自信を得た。
商品化しているが、グァバには実や
分の根拠を見えるようにし、差別化を
種もある。未着手ではあるが、いず
図ることができる。根拠を出せば自信
れはこれらも利用して商品化への道
を持って売れる。西川さんはこれから
筋をつけたい、と期待に胸を膨らま
も土佐FBCと関わりながらその輪を広
せる西川さん。そのために今後も、
げ、研究成果をもとに根拠を示すこと
常に社員の誰かを土佐FBCに派遣する
のできる高知県内のすばらしい商品
土佐FBCを修了するころには、3ア
ことを検討している。1人でできる
を、共に全国へ発信していきたいと話
イテムの新商品を開発した。もちろ
ことは限られているが、土佐FBCに通
してくれた。
ん、この商品の中には土佐FBCの課
うことでネットワークが広がるから
題研究で得られた抽出方法が活かさ
でもある。そして最終的には、グァ
グァバのすべてを活用したい
——新しい目標が生まれる
——自信を持って
「いい商品」と言っているだけでは
CASE 01
——受講の動機
多く得るための焙煎時間や温度の検証
分かりやすく、親切なもので、自分
も仕事場でもっと分かりやすく教え
世界が大きく広がった
——座学や実験を繰り返しながら
て課題研究に取り組んだ。
土佐FBCを自ら受講することになっ
自社グァバ茶の機能性・特徴を調べ
た西川さんだったが、久しぶりの学
るうちに、自社グァバ茶が海外産や沖
生生活は刺激的なものだった。座学
縄産の他社製品に比べ、糖の吸収を阻
には素晴らしい先生が次から次へと
害する効能に優れていることが分かっ
登壇し、食品に関する基礎知識が得
た。さらに、グァバ茶の製造加工工程
られ、学びがたくさん詰まっている
の詳細な研究を行い、機能成分をより
ということを実感する日々だった。
自家農園産のグァバ茶 “ ジュジュグァバティー ”
2015年1月時点で20万包を売り上げた。
自家農園産のグァバを用いた商品を生産・加工・販売するアフロディア。そして、
きちんと目に見える根拠を示すため、土佐FBCの実験室に通い詰め、自他共に納得
できる商品へと育てていった。
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case
02
NPO法人日高わのわ会 安岡千春
❖ 平成21年度 Cコース受講
学びから仲間とつながり成長が生まれる
2012年には支援をいただいている先生の
勧めでモンドセレクションに応募。軽い
気持ちで応募してみたところ、結果は金
賞だった。先生からも「金賞はすごいよ!」
とお祝いの言葉をいただいた。賞状とメ
ダルは事務所に併設されている喫茶店に
今も大切に飾られている。
——受講の動機
ソースを売って欲しいとの声が出て
土佐FBC 2期生として講義を受け
くるようになった。
始めると、「グルタミン酸」などの食
そこで平成18年から、JAコスモス
品に関連する用語がスラスラと出て
トマト部会婦人部や日高村産業環境
くるようになり、トマトに含まれて
平成15年10月に日高村住民ボラン
課などと連携し、10軒のトマト農家
いる成分やその機能性の話ができる
ティアグループ「わのわ会」が誕生。
から2.5トンのトマトを購入し、瓶詰
ようになるなど、次第に商品を説明
会の名前は、「人の輪、平和の輪、話
めソースの製造販売を始めた。しか
する幅が広がっていった。
の輪」が広がるようにとの願いを込
し、思うようには売れない。また、
土佐FBCに通うことで仲間もでき
学びが生んだ新しい展開
——受賞が励みに
ン最優秀賞」を受賞するに至った。翌
また、昨年度から修了生に運営主
年には、県内の商談会に初めて出展。
体を移した土佐FBCのOB・OG会であ
その後、東京での展示会にも足を運
る土佐FBC倶楽部では、初代会長とし
めて付けた。そして、平成17年3月
原価計算・加工技術・食品表示など
た。ハッピーファームの萩野社長と
に特定非営利活動法人となった。
食品加工の知識も乏しく、不安を抱
はトマト加工という接点で親しくな
土佐FBC修了後の平成22年、産直感
ぶようになった。当初はなかなか選
て活動を支えるようになった。
「 土佐
わのわ会には福祉部門と収益部門
えながらの製造であった。次第に大
り、今も乾燥野菜製造でお世話になっ
覚では売れないことが分かった安岡
考に残ることができなかったスー
FBC倶楽部は、一緒に勉強した仲間
がある。収益部門では就労機会の場
量のトマトの在庫を抱えるようにな
ている。ハッピーファームの乾燥野
さんは、わのわ会の商品開発・流通
パーマーケットトレードショーの高
と会える場所。倶楽部を通じてみん
を広げようとトマト農家での軽作業
り、これは何とかしなければまずい
菜加工施設は設備が整っており、野
の状況を大きく変えていった。
知県枠にも、現在は3年連続で出展
なの頑張りを見聞きしていると、自
者派遣事業を行っている。トマト農
と思った時、中小企業家同友会のつ
菜の洗浄などの前処理もきちんとで
まず、食べ方の提案をしっかりし
できるまでになった。
園では規格外のトマトが大量に生ま
ながりで紹介されたのが土佐FBCで
きるため、安心して依頼することが
ないと商品は売れないと分かり、用
FBC倶楽部は、安岡さんにとってもモ
れ、中には消費されずに産業廃棄物
あった。
チベーションを維持するために必要
になるものがあることを知った。
「規格外品であっても日高村特産の
シュガートマトにかわりはない。こ
れを100%使った加工品ができないだ
ろうか」そう考えた安岡さんは、規格
外トマトを1軒の農家から分けても
土佐FBCで
飛躍の基礎をつくる
——売れる商品を目指して
分も頑張ろうと思える」と語る。土佐
できた。今では、わのわ会の食品加
途に合わせたトマトソースを3種類
工事業に欠かすことのできないパー
に増やした。併せて、これまで手作
トナーとなっている。
りシールを貼っただけの簡素な商品
平成21年度は、わのわ会にとって
パッケージを見直した。使いやすく
学び多き年であったと同時に、翌年
ゴミ処理も簡単な透明パックに充填
土佐FBCとの関わりが6年目となっ
度以降の飛躍を支える基礎を獲得し
し、女性が好む可愛らしい包装とな
た安岡さんだが、現在は土佐FBCで1
てくる。また、自分の熱意や成長度
た1年となった。
るよう工夫を施した。さらに事業が
時間の講義を受け持ち、教鞭をとっ
合いによっても、受け取り方が変わっ
今度は教え、支援する側に
——仲間を広げる
な場となっているようだ。
「土佐FBCの講義はその時の自分の
課題や関心事に応じて、同じ先生の
同じ講義でも全く違った情報が入っ
らい、知り合いのシェフに作り方を
平成21年度、まずは自信を持って
展開する中で、製造能力を向上させ、
ている。受講生の中には、昔の自分
てくる。ぜひ土佐FBCで共に学び、仲
習ってトマトソースの試作を始めた。
食品の製造販売ができる基礎知識を
衛生的な製造環境へと整備していっ
たちと同様に「何をどうすればいいの
間に加わって欲しい」――安岡さん
平成16年、こうして作ったトマト
獲得するとともに、売れる商品を開
た。
か」分からずに困っている方がいる。
自身の体験からのメッセージだ。
ソースをわのわ会の喫茶店メニュー
発をすること、販路づくりをするこ
その結果、平成22年度にはトマト
「自分が困ったことの解決方法をお話
とを目標に、1年間の土佐FBC Cコー
ジャムの商品が「四国銀行 食の商談
しすることで、何かの参考やヒント
スの受講を決めた。
会Ⅲ」において「パッケージ・デザイ
になれば」という思いで話している。
「期間限定 トマトスパ」に使用した。
これが地域の方々に好評で、トマト
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CASE 02
こんな商品づくりで
大丈夫やろうか
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case
03
株式会社坂田信夫商店 清藤浩文
❖ 平成23年度 Cコース受講
良き人を育てることが良き商品を育てる
身をもって知りたい
社員を分け隔てることのないコミュ
知り、視点の違いを学ぶことができ
ニケーションにより実現している。
た。しかし、生姜の加工品を購入す
坂田信夫商店にとって、人材育成と
平成20年度、商品開発の知識を得
る消費者は女性が中心であるが、営
商品開発は表裏一体であり、良き人
る良い機会と考え、商品開発担当だっ
業職の社員は男性ばかりで女性の視
を育てることが良き商品を育てるこ
た社員を土佐FBCの1期生として派遣
点を持ち合わせていない。この現状
とにつながっている。
した。
を変えるため、その後4∼5回ほど
人材には「4つの人材」がある。人
その後、若手社員を教育する場と
中島先生に営業研修を依頼した。そ
財・人材・人在・人罪だ。また、食
して土佐FBCの可能性を身を持って
の結果、営業活動によい影響が生ま
も同様に「4つの食材」がある。食財・
知りたいと思い、平成23年度に4期
れている。
業の発展に貢献する「人財」を育てる
土佐FBCの講義水準が社員では理解
ことで、おいしくて身体にも良い「食
目的を果たせないからだ。また、既
に分かっている事柄ばかりであれば
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人材から人財へ
財」を創っていきたいと考えている。
しっかり意味を伝える
——全員参加で改革する
「マスクをしなさい」だけでは、なぜ
つし、次にその人が後輩を育ててく
それをする必要があるのかが分から
れることにつながっていく。人材育
ないが、行為の理由をしっかり伝え
成とは、そのような小さなことの積
土佐FBCは、品質管理・商品開発と
ることで初めて意図が伝わる。意図
み重ねだと考えている。
いった技術職にあたる社員、現場の
が伝わると、社員の心掛けも変わり、
「上司と部下の関係であっても格差
管理職にあたる社員にも受講させた
その行為を順守するようにもなる。
なく接することが大切。役職は対外
い講義内容であるので、自らが受講
一つひとつの行為の根本的理由を
的な責任の違いにすぎない」と言う清
した平成24年度以降も受講希望者を
説明することは大変ではあるが、しっ
藤さん。分け隔てのないコミュニケー
募り派遣し続け、現在までに6名の
ションで人材育成を行っている坂田
社員が修了している。
信夫商店では、上司と部下の距離が
土佐FBCは異業種の方々とのコミュ
とても近い。
ニケーションにも魅力があり、大変
——これからの坂田信夫商店
人材から人財へ、そんな飛躍を社
刺激になっている。土佐FBCでの交流
員に願いながら、人材育成をはかろ
を通じて弊社への転職を希望し、現
うとしている。
在働いている人もいる。そのような
ことが起こるのも、土佐FBCにおいて
は全人格的な交流ができ、その中で
自社の事業や社風を包み隠さず伝え
られるからであろうと考えている。
これからも、若手社員を中心に背
中を押して受講を促していきたい。
食材・食在・食罪だ。今後とも、企
生として自ら受講した。なぜなら、
できないものであれば、人材育成の
かりと伝えることができれば人は育
CASE 03
——受講動機
中島和代先生からは、女性の目線を
若手社員の背中を押す
でその飛散を防ぐ目的がある。ただ
習う必要はない。会社の役員として、
坂田信夫商店の社是は「自考創心」。
土佐FBCがどの程度の講義水準であ
これは自分で創造し考えて積極的に
るかを確認し、今後の人材育成にど
行動することを意味している。慣習
う活かせるかを把握しておく必要が
を継続するより変革・改革を推進し、
人材育成に関する取り組みとして、
あった。
社員の自由な発想と積極性を大切に
その現場で行う作業の目的の根本か
実際に受けてみると、講義内容は
しようという思いの表れだ。
ら指導することが大事だと考え、実
難しいものもあったが、食品衛生学
この社是のとおり、坂田信夫商店
行している。
や食品化学など大変興味深く、また
は従業員が全員参加で商品開発に取
作業者の「マスクを着用する」とい
食品産業従事者の目線から見ても必
り組むのが特徴だ。新商品の開発や
う行為について例にあげると、マス
要な内容が網羅されていた。
既存商品の見直しは、役員をはじめ、
クをするのは会話をした時の唾の飛
講義以外にも予期せぬ収穫があっ
営業社員や事務職員、パート社員ま
散を防ぐだけではない。人間の口の
た。それは、講師との出会いである。
でが参加し、自由な意見交換を行う。
周りにはたくさんの黄色ブドウ球菌
マーケティングの講義担当であった
このような取り組みは、普段からの
が付着しているため、口を覆うこと
——人材育成のコツ
1947年創業、生姜づくり67年の実績のある坂田信夫商店。生姜の栽培・生産、製造・出荷、卸売までを自社一貫体制で行う。
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