第 回 耐用年数

平成27年10月
第
篠藤 敦子
回 耐用年数─独自の耐用年数による減価償却
公認会計士・税理士 税法は、減価償却資産の耐用年数を画一的に定めています。企業が、独自の耐用年数により償却限度額を計算することは、原則として
税法は、減価償
認められません。
食料品製造設備を取得し、使用を開始しました。食料品製造設備の法定耐用年数は10年ですが、過去における設備の更新
食料
実績等から、この設備の使用可能期間は7年と見積もることができます。会計上は、使用可能期間である7年を耐用年数と
実績等
して減価償却を実施します。税務上の償却限度額は、どのように計算するのでしょうか。
して減
減
税務上は、法定耐用年数である10年で償却限度額の計算を行うことになります。耐用年数を7年として償却限度額を計算
税務
務
することはできません。ただし、耐用年数の短縮が認められる特定の事由に該当する場合には、所轄国税局長の承認を受け
するこ
こ
ることにより、短縮した耐用年数を適用することができます。
ること
解説
税務上、償却限度額の計算に用いる耐用年数(法定耐用年数)は、取得した資産の種類や構造等により画一的に定められています。
1 法定耐用年数とは
適正な減価償却費を計算するためには、各企業が実態に応じて、自主的に耐用年数を見積もるべきです。しかし、耐用年数の見積りは
企業にとって負担が大きいこと、また、見積りに恣意性が介入する余地もあることから、税務上は、画一的に定められた耐用年数を適用
して償却限度額を計算します。この画一的に定められた耐用年数を、法定耐用年数といいます。
法定耐用年数が実態に合わない場合には
法定耐用年数は、減価償却資産の種類や構造等に基づいて定められているため、実際の使用実態に合わない場合もあります。そこで、
各企業の実態に近づける方法として、「増加償却」や「耐用年数の短縮」といった制度が設けられています。
制度を利用できる場合
増 加 償 却
耐用年数の短縮
…
…
機械及び装置の実際の使用時間が平均的な使用時間を超える場合
特定の事由により、減価償却資産の使用可能期間が法定耐用年数よりも著しく短い場合
「耐用年数の短縮」とは
「耐用年数の短縮」は、次の表のいずれかの事由により、減価償却資産の使用可能期間が法定耐用年数に比べて著しく(おおむね10%
以上)短いこととなった場合に適用することができる制度です。
この制度を利用するには、一定の書類を添付した「耐用年数の短縮の承認申請書」を所轄税務署長経由で所轄国税局長へ提出し、承認
を受けることが必要です。承認を受けると、承認を受けた日の属する事業年度以後、短縮した耐用年数で償却限度額を計算することがで
きます。
「耐用年数の短縮」を申請できる事由
❶
その資産の材質又は製作方法が、同種類及び同構造の他の減価償却資産と著しく異なること
❷
その資産が存する地盤が隆起又は沈下したこと
❸
その資産が陳腐化したこと
❹
使用場所の状況により、その資産が著しく腐食したこと
❺
通常の修理や手入れをしなかったため、その資産が著しく損耗したこと
❻
その資産の構成が、通常の構成と著しく異なること
❼
機械及び装置である場合、その資産の属する設備が旧耐用年数省令別表第二に特掲されていないこと
❽
①から⑦に準ずる事由
耐用年数は、減価償却費の計算における重要な計算要素であり、課税所得の計算に長期にわたって影響を及ぼします。
税務調査で耐用年数の誤りについて指摘を受けると、償却計算を遡って訂正しなければならないため、耐用年数の適用
は慎重に行う必要があります。
また、最近では企業の実態に合った減価償却費を計上するため、会計上の計算に独自の耐用年数を用いることも珍し
くありません。会計上と税務上で適用する耐用年数が異なる場合には、税務調整で対応することになります。
しの とう
あつ こ
篠藤 敦子(公認会計士・税理士)
著者紹介
名古屋市出身。津田塾大学卒業後、平成
北区堂島)開業。平成20年
年公認会計士登録。大手監査法人を経て平成
年に篠藤公認会計士事務所(大阪市
月より甲南大学大学院社会科学研究科会計専門職専攻教授。企業の監査役を兼務している。