1 城北病院検査科の児玉美紀です。 本日は、皆さんの血液で調べている

城北病院検査科の児玉美紀です。
本日は、皆さんの血液で調べている検査についてお話をさせて頂きます。
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リウマチの血液検査の主な項目を示します。
大まかに3つに分けられます。関節リウマチの診断のための検査、症状の程
度や治療効果をみる検査、そして治療に用いる薬剤による副作用をチェック
する検査があります。
診断のための検査には、主にリウマチ因子(RF)と抗環状シトルリン化ペプチ
ド抗体(抗CCP抗体)があります。
また、症状の程度や治療効果を見るための検査項目としては、赤血球沈降速
度(赤沈)、C反応蛋白(CRP)、マトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)等
があります。
治療薬の副作用チェックのための検査としてスライドに示すような、肝機能検
査や、腎機能検査、さらに貧血、糖尿病、肺障害、感染症の有無を調べる多
くの検査項目があります。
この様にリウマチ科では、血液検査から様々な情報を確認しながら診療を
行っています。1つ1つの検査については、また後でご説明します。
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採血管についてお話します。 様々な検査を行う必要のあるリウマチ患者
様では、最低でも3本、多い時には6~8本ぐらい採血させて頂くことがあり
ます。糖尿病や心疾患で通院されている患者様に比べると、格段に多く辛
いところです。
採血管には検査の項目によって写真に示すように採血管が決まってい
ます。これは、各検査項目毎に採血管の中に入っている薬剤が異なるため
です。本数は多いですが、1本あたりの採血量はわずかですので、合計しても
20~30mlです。一般的な献血は400ml採血ですので、それに比べて1/20
程度です。時々、こんなに採血したら貧血になるのでは?と心配される声
を聞きますが、血球成分は常に骨髄で作られていますので、ご安心下さい。
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これが当院でお渡ししている検査結果報告書です。結果値の横に正常範
囲より高い場合は、“H(High)”、低い場合は、“L(Low)”と表示されます。
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ここで、基準値についてお話します。
当院の結果報告書では正常範囲と表示していますが、現在では基準値
と呼ばれることが多くなりました。基準値とは、健康人の95%が入る値のこと
です。すなわち、健康な人が100人いたら、95人は基準値内となりますが、
残りの5人は健康ですが基準値外となります。
基準値より低い場合は、英語で「低い」を意味する“LOW”の頭文字をと
って“L”と、基準値より高い場合は「高い」を意味する“HIGH”の頭文字
の“H”と検査値の横に表示されます。
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基準値から外れる場合のレベルを3段階に分けて説明します。
レベルⅠは経過観察で様子をみる段階です。この段階は、基準値から外
れても軽度である場合や、一日の中での値の変動や年齢による生理的変
動が考えられます。また、検査項目の中には基準値から外れても、すぐに
特定の疾患と関連しない検査もあります。これらの場合は、医療行為の必
要性まではなく、定期的な検査で経過観察となります。
レベルⅡの要医療は、医療行為が必要な段階です。このままでは、重篤
な状態になる可能性があり、精密検査や治療が必要となります。
レベルⅢのパニック値は、生命の危険を示唆する値です。救命への早急
な医療行為が必要な段階です。
皆さんの検査結果から、主治医は基準値から外れた項目は、どのレベル
かを判断し必要な対応を行ってます。
また、検査室では、早急な対応が必要な異常値の場合は、主治医にすぐ
に連絡しています。
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ここで、前記しました疾患への特異性の低い検査項目の代表であるクンケル反応(ZTT)につ
いてお話します。
ZTTは、血液中のたん白に異常が起こった時、その血液に試薬を 混ぜることより生じる混濁
や沈殿の程度を見る検査です。主に肝臓病のスクリーニング検査や経過観察に利用されま
す。また、他の疾患でも蛋白に異常が生じる慢性感染症や膠原病でも高値となることが多い
検査です。健康であっても高くなることが多い検査と言えます。
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それでは、ここからリウマチ科でよく依頼される検査項目について説明し
ます。
まず、リウマチの診断のための検査です。
皆さんにお渡しする検査結果表では、○で囲んだ項目です。
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リウマチとは、免疫のしくみの一部が狂ってしまい、自分自身の体に向か
って攻撃をしかけてしまう自己免疫疾患の1種です。この自分自身の体を
攻撃するものを自己抗体といいます。そして、自己抗体は、病気によってい
ろいろな種類があります。
リウマチの診断のための自己抗体検査で、代表的なものには、リウマチ因子
(RF)と抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)があります。
リウマチ因子は、免疫グロブリンG(IgG)の一部分を認識する自己抗体
です。関節リウマチ患者の80~90%で陽性となります。リウマチ患者でも陽
性とならない人もあります。また、関節リウマチ以外の病気や健康な人でも
陽性となることもあります。リウマチ反応が陽性であっても必ずしも関節リウ
マチというわけではありません。関節リウマチ早期では陰性のこともあります。
抗CCP抗体は、関節リウマチ患者の60~80%で陽性となります。RFよりも早
期から陽性になるとされており、診断のつかない早期例には抗体CCP体が検
査の適応となります。またリウマチ因子と違い、関節リウマチ以外で陽性となる
ことは少ないです。
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抗核抗体とは、細胞の核に対してできる自己抗体のことです。自己免疫
疾患があると陽性になることがあり、関節リウマチで20%が陽性となります。
一般的に蛍光色素を用いた蛍光抗体法を用いて検出され、染色形態から
いろいろな自己免疫疾患を推測します。
リウマチの患者様の中には、他の自己免疫疾患を合併されている場合が
あるために検査をします。
蛍光染色で染めたものを顕微鏡で見て検査します。
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病気によって、染色パターンが異なり診断の参考とします。
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抗核抗体の染色パターンと主な関連検査・陽性疾患です。
関節リウマチは、speckled型(斑状型)のパターンになります。
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次に症状の程度や治療効果をみる検査です。
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赤沈は炎症の度合いを示す検査項目です。関節リウマチの炎症が強いほ
ど、赤沈の値が高くなり病状の度合いが強いことを示します。
スライドは実際の赤沈検査の採血管です。このように赤沈とは、赤血球が1
時間で何mm沈殿したかを調べています。重症の場合は100mm以上、軽症の
場合は20~30mm程度の値になります。
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CRPも炎症の度合いを示します。急性の炎症を反映します。関節リウマ
チでは関節炎が強いときに上昇します。
しかしリウマチに限らず、風邪など感染症の場合にも上昇します。
MMP-3は、関節破壊の指標となる検査です。リウマチの活動性の評価
や関節破壊進行の予後予測に有用です。
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リウマチの治療薬と、主な副作用について示しています。
消化器・腎臓・肝臓などいろいろな副作用に注意が必要です。特に免疫を
抑える治療薬では、本来の免疫力まで低下してしまうので、感染症にかか
りやすくなります。そのための検査をして副作用が出現してないかチェック
していくことが重要となります。
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治療薬の副作用のチェックのための検査は、スライドに示すようにいろいろ
あります。
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まず、肝機能検査です。
肝臓は、様々な栄養素(糖質・脂質・蛋白質・アミノ酸)を作ったり貯蔵したり、
胆汁酸を作って排泄したり、解毒作用などがあります。とても重要な臓器です。
この肝機能検査の代表がASTとALTという酵素です。肝細胞が壊れるとこれら
が血中に出てきます。骨格筋、心筋、赤血球が壊れても高くなります。リウマ
チでは、薬の副作用で肝臓に障害が起きることが少なくないので、定期的に
繰り返しチェックします。
ASTは肝臓以外の組織にも多く存在することから、ASTのみが高い値の場
合、肝疾患以外にも骨格筋疾患や血液疾患などが疑われ、ASTとALTが共
に高い場合やALTが単独で高い場合は、肝疾患が疑われます。
また、赤血球中にもある程度存在していますので、溶血性貧血などの溶血性
疾患などでも値は上昇します。
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次に腎機能検査です。
クレアチニンはたんぱく質が筋肉でエネルギー源として使われた後にできる
老廃物です。筋肉量が減ると減少します。腎臓の働きが低下すると値は高く
なりますが、早期の腎臓の障害はつかまりません。それを補うため、現在では
推算糸球体濾過量(eGFR)が使われています。eGFRは、クレアチニンの値と
年齢、性別から計算でもとめた腎機能です。
筋肉量の少ない人は、クレアチニンの値が低くなり腎臓の機能を正確に把
握できません。そのような患者様には、シスタチンCを測定します。シスタチン
Cでも計算によってeGFRcysを算出します。
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貧血検査についてです。
赤血球は、貧血や多血症の診断に用いられる基本的な検査です。
ヘモグロビン(Hb)は血色素の量であり、赤血球とあわせて貧血の診断基
準になります。Hbが10g/dl以下なら男女を問わず貧血です。リウマチは持
続的な慢性の炎症性疾患であるため、貧血がある場合がほとんどです。関
節炎が落ち着いているのに貧血があるのは、関節の痛みを抑える非ステロ
イド抗炎症剤の副作用で胃や十二指腸からの出血も疑われますので注意
が必要です。
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ステロイドの副作用に糖尿病があります。
グルコース(血糖)は、糖尿病の基本的検査です。食事の前後での変動
が大きいです。
それにひきかえ、ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、食事に影響されない指標
です。過去1~2ヶ月の血糖のコントロール状況を反映します。
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肺の障害をみる検査には、シアル化糖鎖抗原(KL-6)があります。
抗リウマチ薬の副作用で生じる間質性肺炎の指標の検査です。
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感染症をみる検査項目です。
CRPと赤沈は、リウマチの程度や治療効果をみる検査ですでにご紹介し
ましたが、風邪等感染症の場合にも高値となります。
白血球は、細菌が体内に侵入した場合や白血病など骨髄が異常増殖を起
こした場合などに増加します。ステロイド投与中は増加を認めることがあり
ます。リウマチの薬の中には逆に白血球を減少させる薬が多いので注意が
必要です。
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β-Dグルカンは、真菌感染(特に血流を介して全身的に感染する深在性
真菌症)の有無の検査です。ニューモシスチス肺炎でも上昇します。関節リ
ウマチでは、リウマトレックスや生物学的製剤を使っている時にニューモシ
スチス肺炎が発症することがあるため測定します。
Tスポットは、結核の感染の有無を調べる検査です。結核菌感染で反応
する免疫を調べています。
肝炎ウイルス検査は、肝炎ウイルスの感染歴がある場合、リウマチの治療
で用いた免疫抑制剤によって、肝炎が再発することがあるので、リスクのあ
る場合は定期的なチェックが必要です。
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繰り返しになりますが、検査の基準値というのは、健康な人100中、95人が
あてはまる数字です。
皆さんが、受け取る検査結果に基準値から外れる“LやH”がついている
場合、医師は他の検査項目や症状等を総合的にみて、何らかの対応が必
要な場合は皆さんにお伝えしています。また検査室からは、レベルⅡ・Ⅲ
に該当する検査結果は早急に医師に連絡しています。
もし、検査結果が基準値から外れていても、特に主治医からのお話がな
い場合は、レベルⅠに該当し経過観察で大丈夫という判断だと考えられ
ます。
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最後になりましたが、これは、当検査室の血液検査測定機器の一部です
。10年以上経っても頑張って働いている全自動血液分析装置、酵素・脂質
などを検査する生化学分析機、そして血糖とHbA1cの分析機になります。
私達の仕事の1つには、この分析器が正しい値を出すように、キチンと精度
管理することも含まれます。私たち臨床検査技師は、直接お目にかかる機
会は少ないのですが、皆さんの診療の一翼を影ながら支えています。
また、診療所採血室では私達検査技師が皆様から直接採血させて頂い
てます。当検査科では検査に関する1から10の全てのことに責任を持つとい
うポリシーの下、日々業務に励んでいます。
検査に関してどんな些細な事でも疑問・質問等ありましたら、いつでもお気
軽にお声掛け下さい。
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