APNIC40参加報告書 山形大学 理学部物理学科 3年 髙木 萌 1. 参加したセッション・チュートリアル及びソーシャルイベントの一覧 9月8日(火) Opening Ceremony and Keynotes APOPS1 APOPS2 IANA Stewardship Transition Disaster preparedness BoF DNS Variant Management BoF 9月9日(水) IRR Tutorial and RPKI Demo Internet - Mobility Nexus: Are We Ready for Real Mobile/Wireless Broadband? Hypes? Fanfares? Fads? Wading through the muddy IPv6 puddle Security Session 9月10日(木) Policy SIG 3 AMM 参加したソーシャルイベント 9月8日(火) Newcomers Luncheon Conference Opening Reception 9月9日(水) Women in ICT Luncheon Meet the APNIC EC Cocktail Fellows Dinner …… Fellow向けプログラム 9月10日(木) Mentoring …… Fellow向けプログラム APNIC Closing Dinner 三日間で合計19ものセッション,チュートリアルそしてソーシャルイベントに参加しました。 2. 特に印象に残ったセッション ・Disaster preparedness BoF このセッションの存在を事前にAPNIC40のWebサイトで知ってから,必ず参加しようと決めて いました。その理由は,東日本大震災によって私自身が実際にインターネット通信から遮断され た経験があったからです。 セッションでは複数のスピーカーがインターネットを利用した災害対策や災害発生時の情報通 信対策についてお話しなさっていましたが,その中でも最も印象に残っているのは,Vanuatuの災 害復興に関するプレゼンテーションです。ハリケーン・パムによるVanuatuの被災状況についてこ のセッションに参加して初めて知り,とても驚きました。 このセッションへの参加は,改めて自分自身が被災した時の状況を考え直すきっかけとなりま した。東日本大震災発生時,実際に2∼3週間ほど情報通信から遮断されたことを思い返すと,日 本もまだまだ災害発生時の通信手段について対策を進める必要があると気がつきました。これか ら様々な環境における災害時の情報通信について知識を増やし,未来に起こる自然災害に備えた ネットワーク環境について考えていきたいと思うようになりました。 今回このセッションを担当なさっていたAPNICの方とコネクションを作ることもできたので, ぜひ連絡をとり東日本大震災を経験した立場から日本の災害時の通信について情報発信ができた ら思います。 ・IRR Tutorial and RPKI Demo 私は今まで勉強会などにも一度も参加したことがなかった為,「チュートリアルに参加する」 ということもAPNIC40での目標の一つでした。実際に参加してみると,メインのセッションでは 内容が難しくスクリプトを追うので誠意一杯だったのに対し,チュートリアルではその場で理解 できる内容が少なからずあったのではないかと思います。 このチュートリアルでは,ルーティングの基本的なことから解説があり,以前勉強していた内容 の復習にもなりました。また,自分で調べた際にはきちんと理解できなかったIRRやRPKIについ ても改めて学ぶことができました。 このチュートリアルに参加したことで,以前BGPによるIPv4経路制御の実験に挑戦した際に, うまくルーティングができなかった箇所の原因が恐らく判明しました。チュートリアル中にこれ が分かった時,参加して本当に良かったと強く感じました。 このチュートリアルで学んだことは,今回参加したプログラムのうち以前から知りたいと思っ ていたことに最も直結するような内容でした。 3. 全体を通しての所感 カンファレンス参加初日は難しく感じる内容が多く,今のレベルでは来るべきでなかったかも しれないと不安になりました。しかし,四苦八苦しながらも色々なセッションに参加し,なるべ く多くの人とコミュニケーションをとろうと挑戦していくにつれ,「本当に数多くのことを発見 し,学ぶことができている」という実感がわいてきました。APNIC40カンファレンスでの経は, 普段大学では出会うことができないようなものばかりで,1日目が終わる頃には大学三年生という 立場でもこういったことが経験できるとは,本当に良い機会に恵まれた,と参加支援プログラム 対象者として選んでいただいた喜びを噛みしめました。 APNIC40カンファレンスでは,純粋にインターネットに関する技術や団体についての知識が増 えたことが嬉しかったです。もちろんセッション参加中は英語が難しく,そのプレゼンのキーワー ドを拾うのが精一杯なことも多くありました。しかし,セッション後にはセッションの映像やト ランスクリプトをAPNIC40のWebサイトで見ることができたので,改めて時間をかけてセッショ ンを振り返ることができました。このビデオやトランスクリプトなどのサービスには非常に助け られています。 カンファレンス期間中で,学ぶことのない時間は一切ありませんでした。APNIC40カンファレ ンスには常に発見と学びがあり,本当にたくさんの刺激を受けることができたと思います。 ソーシャルイベントでは自分の英語力に不安を感じながらも,なんとか会話をしていましたが APNIC40で出会った方々は皆様,私の英語がどんなにむちゃくちゃでも真剣に聞き意味を取ろう としてくださりました。このことに気がついてからは,あまり臆さずに自ら話しかけることがで きるようになりました。もちろん話しかけるときはいつも緊張しましたが,自分から積極的に行 動することで様々な出会いを作り,より多くの経験を積むことができたように思います。 しかし,一方で自分の言いたいことをうまく伝えられなかったり,とても興味のあるセッショ ン内容だったにもかかわらず全く内容を理解することができなかったりと,悔しい思いをする場 面も多々ありました。もっと英語ができたら,知識があったら,と思うと日々の学習の大切さを 痛感しました。 4. APNIC40に参加して学んだこと及び,得た経験を今後どう生かしていきたいか 今回APNIC40カンファレンスに参加することで,コミュニケーション,人と人のネットワーク 作りというものを初めて経験し,それらの大切さを学んだことが私にとって最も印象に残ってい ます。 今までカンファレンスや勉強会などに参加したこともなく,人との繋がりについて特に意識し たことがありませんでした。しかし,APNIC40カンファレンスで本当に多くの方々と名刺を交換 し,会話をしていく中で,もうすでに挨拶だけでは終わらずその場で今後の約束ができていくのが 分かりました。以前から「コミュニケーションの大切さ」というものを言葉上では理解していた つもりでいましたが,APNIC40カンファレンスで人ととの繋がりがなぜ重要か,そしてひとつひ とつの出会いが様々な次のチャンスを作るのだ,ということを身を持って学びました。 また,セッションに参加したり,APNIC40内で開催されていたソーシャルイベントで積極的に 会話していく中で,自分の今の英語能力が具体などの程度なのかを把握することもできました。 今までTOEICなどでの英語力評価はしていましたが,実際にカンファレンスなどに出席したら, 自分がどれだけリスニング,スピーキング,リーディングができるかどうかを確認したことはあり ませんでした。APNIC40に参加したことで,今の自分はどの程度プレゼンが聞き取れるのか,ま たどの程度英語で会話ができるのかが分かった為,これから何をどのように学習すべきかがクリ アになりました。 このAPNIC40カンファレンスで得られたネットワークを大切にすることが,さらなる人との ネットワーク拡大につながり,またそれには当然英語のコミュニケーションも含まれるため,同 時に英語力の強化にもなるのではないかと思います。 カンファレンスを通して新たに多くのシステムやコミュニティについて知ることができました。 特にAPNIC40で新たに知った脅威分析ソフトウェア「MATATABI」は非常に興味が湧きました。 実際に私が所属する山形大学Linux研究会の活動のひとつとして,2015年10月よりLinux研究会 サーバーに導入し脅威分析を行っていくことを計画しています。 また,大学1年生でルーティングに挑戦した際はIPv6については強く意識していなかったので, IPv6については全く取り組みませんでしたが,今回IPv6に関するセッションを多く聴いたことで, IPv6についてもっと技術的な知識を身につける必要があると思うようになりました。 以前から経路制御の実験に再挑戦したいと考えていたので,IPv4とIPv6との共存技術464XLAT について知ることができたのも大きな収穫でした。 こういったAPNIC40で知ることができた技術的な情報は,積極的に山形大学Linux研究会で共 有し学んでいきたいと思っています。 所感でも述べましたが,セッション中はその場では詳細までは理解できなかったことがほとん どでしたが,参加したことに何の意味もなかったと言えばそんなことはなく,セッション中に新 たなシステムや技術,団体などの名前だけでも数多く知ることができたので,後で改めて調べ,結 果的に様々なことを学べました。今後コミットしていきたいと思うものも沢山みつかりました。 APNIC40に参加したことは,自分の中の「インターネット」への意識改革にもなりました。イ ンターネットユーザーはユーザーでありながらインターネットを構成していく者でもあるのだと思 うようになりました。 私自身は大学でネットワークやそれに関連することを専攻しているわけではありません。周り にもハードウェアやソフトウェア開発に興味がある人はいますが,インターネットそのものに興味 を持っている人が少ないように感じます。当たり前に存在しているものだからこそ,あまりその存 在自体を意識する機会が少ないのかもしれません。 インターネットに関するお話をしてくださるという方にAPNIC40で出会うことができたので, 大学内でもインターネットについて知り,考えることができる場をセッティングできたらと思って います。 5. 参加支援プログラムに対する所感 フェローシップ委員の皆様には本当にたくさんの方々をご紹介いただきました。もし,この参 加支援プログラムのフェローとしてではなく,また別の立場で参加していたらお話しするチャンス がなかったかもしれない方々も多くいらっしゃったと思います。カンファレンス参加中もいつも お気遣いいただき,何をしていいかわからないという状況に陥らずに安心して全てのプログラムに 参加することができました。大変お世話になりました,本当にありがとうございます。 自分には難しすぎるかもしれないと最初は支援プログラムへの応募をためらっていましたが,本 当に応募してよかったと思います。これを逃したら経験する機会はなかったかもしれないことばか りでした。 また新たな支援プログラムをやっていただけるならば,そのとき応募資格がある人は応募する 他はないのでは,と私は思います。Linux研究会の後輩にも参加することを強く勧めたいです。
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