将来推計人口の精度検証

将来推計人口の精度検証
―北関東3県を対象として―
筑波大学 赤澤邦夫
東京工業大学 小林隆史
筑波大学 大澤義明
1
目的
人口推計の精度検証
1.人口推計と実人口の誤差の大きさを数値的に把握する.
2.どのような市町村で過大推計・過小推計
となっているのかを吟味する.
対象:北関東(茨城県・栃木県・群馬県)3県
2
人口推計手法
3
人口推計手法
トレンド型モデル
年齢別
男女別に
見積もる
構造型モデル
0
400000
350000
300000
250000
200000
150000
100000
50000
0
1995
2005
2015
2025
○○市の2030年までの人口推計
過去の人口の増減の傾向から
将来の人口を考える
10,000
20,000
95~
90~94
85~89
80~84
75~79
70~74
65~69
61~64
55~60
50~54
45~49
40~44
35~39
30~34
25~29
20~24
15~19
10~14
5~9
0~4
20,000
10,000
0
○○市の2010年の人口ピラミッド
変化の起こる
要因や構造に着目する
男性
女性
4
人口推計手法
トレンド型モデル
年齢別
男女別に
見積もる
構造型モデル
0
400000
350000
300000
250000
200000
150000
100000
50000
0
1995
2005
2015
2025
○○市の2030年までの人口推計
過去の人口の増減の傾向から
将来の人口を考える
95~
90~94
85~89
80~84
75~79
70~74
65~69
61~64
55~60
50~54
45~49
40~44
35~39
30~34
25~29
20~24
15~19
10~14
5~9
0~4
10,000
20,000
国立社会保障・
人口問題研究所の
将来人口推計
↓
20,000
コーホート
要因法
10,000
0
○○市の2010年の人口ピラミッド
変化の起こる
要因や構造に着目する
男性
女性
5
コーホート要因法の考え方
加齢
社会移動
自然増減
6
コーホート要因法の考え方
加齢
自然増減
社会移動
年齢層があがっていく
2010年
2020年
0
20,000 10,000
15~19歳の層
現在15歳
10,000 20,000
0
25~29歳の層
25歳
20,000
2030年
0
10,000
10,000
20,000
0
35~39歳の層
35歳
2040年
0
20,000 10,000
10,000 20,000
0
45~49歳の層
45歳
7
コーホート要因法の考え方
加齢
自然増減
社会移動
他自治体との転出入
2014年
2024年
0
何人出たか
何人来たか
都市間の移動
20,000 10,000
0
20,000
8
コーホート要因法の考え方
加齢
自然増減
社会移動
出生と死亡による人口変化
2020年
2010年
0
10,000
20,000
死亡による減少
0
15歳~49歳
最低年齢層
20,000
10,000
0
出産可能
女性数
↓
20,000
出生率
10,000
× (女性1人あたり何人子供を産むか)
0
10,000
20,000
9
活用事例
特徴:年齢別,男女別に分かる
20xx年
100~
95~99
90~94
85~89
80~84
75~79
70~74
65~69
60~64
55~59
50~54
45~49
40~44
35~39
30~34
25~29
20~24
15~19
10~14
5~ 9
0~ 4
高年齢層に着目
老人福祉施設の整備計画
幼稚園や保育園,
小中学校等の整備計画
低年齢層に着目
地域の総人口予測
人口ピラミッドの合計
年金財政の計画
10
使用データと分析方法
• 将来人口推計データ:
「日本の市区町村別将来推計人口(平成15年12月推計)」
(2000年度国勢調査を元に算出)
• 上記データの2010年将来人口と2010年度国勢調査での実人口を
比較する.但し,人口増減が安定せず推計誤差も大きい群馬県上野村は
分析から除外した.
①
②
変数
記号
絶対差
𝛂
𝛂 = |𝐩′𝟎𝟑 − 𝐩′𝟏𝟎 |
比率
𝛃
𝛃 = |𝐩′𝟎𝟑 − 𝐩′𝟏𝟎 | 𝐩′𝟏𝟎
比率
𝛄
𝛄 = 𝐩′𝟎𝟑 𝐩′𝟏𝟎
人口変化率
𝐑
財政力指数
𝐅
算出式
𝐑 = (𝐩′𝟏𝟎 − 𝐩′𝟎𝟎 ) 𝐩′𝟎𝟎
2010年財政力指数
𝑝′03 : 2003年推計値
(2010年将来推計人口)
𝑝′10 :2010年実測値
𝑝′00 :2000年実測値
11
1.推計誤差の大きさ
12
県別 推計誤差の大きさ
●絶対差𝛼最大自治体
水戸市・宇都宮市・高崎市 各県の人口最大市町村
●比率𝛽最大自治体
茨城県城里町・栃木県茂木町・群馬県玉村町 地方部
𝜶 = |𝒑′𝟎𝟑 − 𝒑′𝟏𝟎 |,
3県
絶対差𝛼
茨城県
比率𝛽
絶対差𝛼
𝜷 = |𝒑′𝟎𝟑 − 𝒑′𝟏𝟎 | 𝒑′𝟏𝟎
栃木県
比率𝛽
絶対差𝛼
群馬県
比率𝛽
絶対差𝛼
比率𝛽
平均
1,820
0.038
2,105
0.038
2,219
0.040
1,134
0.036
中央値
1,128
0.030
1,562
0.031
1,337
0.036
447
0.029
最大値
14,021
0.122
8,546
0.117
14,021
0.099
6,903
0.122
市町村数
106
44
27
35
誤差の絶対差𝜶は自治体規模が大きいほど大きく,
比率𝜷は規模が小さいほど大きくなる傾向
13
自治体規模別 推計誤差の大きさ
1万人以下の自治体では5%程度の誤差
10万人の自治体まで10%程度の誤差団体あり
𝜶 = |𝒑′𝟎𝟑 − 𝒑′𝟏𝟎 |,
1万以下
絶対差𝛼
3万以下
比率𝛽
絶対差𝛼
𝜷 = |𝒑′𝟎𝟑 − 𝒑′𝟏𝟎 | 𝒑′𝟏𝟎
10万以下
比率𝛽
絶対差𝛼
10万以上
比率𝛽
絶対差𝛼
比率𝛽
平均
319
0.056
838
0.046
2,009
0.036
3,646
0.019
中央値
373
0.050
691
0.037
1,481
0.030
2,854
0.021
最大値
558
0.096
2,738
0.117
7,168
0.122
14,021
0.039
市町村数
11
29
45
20
自治体規模が大きくなるほど推計が正確である.
自治体規模によるコーホート推計の誤差の生じやすさは.
移動1に対するインパクトの大小.
14
2.推計誤差自治体の特徴
15
推計誤差の地域的傾向
●過大推計(比率𝜸 > 𝟏. 𝟎𝟏)…70市町村(全体の66.0%)
●過小推計(比率𝜸 ≦ 𝟎. 𝟗𝟗)…22市町村(全体の20.8%)
●過小推計自治体
比率𝜸の値 𝜸 = 𝒑′𝟎𝟑 𝒑′𝟏𝟎
都市部
TX沿線,水戸近隣,鹿行地域
宇都宮市,小山市周辺
高崎市
地方部
那須塩原市,草津町他
主要都市ほど過小推計,地方部ほど過大推計の傾向.
過大推計の自治体数が多い.
16
比率𝛾
人口変化率と推計誤差の比較
1.20
人口減少地域で
過大推計に
R² = 0.37
1.10
人口増加地域で
過小推計に
1.00
0.90
-0.3
-0.2
-0.1
0
0.1
0.2
0.3
人口変化率𝑅
競争力のある自治体で過小推計になり,
一般的な地方部では過大推計の方向へ
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比率𝛾
財政力指数と推計誤差の比較
1.20
財政力のない地域で
過大推計に
R² = 0.15
1.10
財政力のある地域で
過小推計に
1.00
東海村
0.90
0
0.5
1
1.5
2
財政力指数𝐹
財政力の弱い自治体ほど過大推計の傾向
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まとめ
• 将来人口推計の精度を数値的に明らかにした.
2010年時点(2003年推計)では,
0.03-0.04の誤差比率であることがわかった.
自治体規模が大きいほど推計が正確である.
• 過大推計自治体が多く,特に地方部で目立つ.
人口減少や財政力の弱さなど地方過疎地域と
関連する指標と過大推計に一定の相関が見られた.
都市部への人口流出が加速しており,
コーホート要因法を用いても
将来の人口を正確には予測できていない.