マーケット分析レポート S&P 500 2015年7月

マーケット分析レポート
S&P 500®
2015 年 7 月
S&P500 月例レポートで
は、S&P500 の値動きから
米国マーケットの動向を解
説します。市場全体のトレ
ンドだけではなく、業種、さ
らには個別銘柄レベルで
の分析を行い、米国マー
ケットの現状を掘り下げて
説明します。
S&P ダウ・ジョーンズが提
供する指数に関する詳細
はこちらをご覧ください。
(日本語サイト)
http://www.japanese.spdji.com/
S&P 5 00 月例レポート
執筆者
ハワー ド・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・
インデックス
シニア・インデックス・アナリス
ト
mailto:howard.silverblatt@spdj
i.com
本翻訳は、英文原本から参照用の目的で S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。
SPDJI は、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するも
のではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
HTTP://WWW.SPINDICES.COM/RESOURCE-CENTER/THOUGHT-LEADERSHIP/MARKET-COMMENTARY/
S&P 500 ® 月例レポート (2015 年 8 月配信)
企業決算のことで頭がいっぱい
大都会ニューヨークに対する想いを歌ったビリー・ジョエルの名曲「New York State of
Mind」風に言えば、ウォール街について歌った曲の題名は「I’m In An Earnings State
of Mind(企業決算のことで頭がいっぱい)」とでもなるでしょうか。ティーンエージャー
さながらに、この金融街を行き交う人々はひっきりなしにスマートフォンを操作し、グ
ーグル検索に追われていました(少なくとも株式取引をしている人、NetFlix、Amazon、
Chipotle といった大きく値上がりした銘柄を保有している投資家はそうでした)。ギリ
シャや中国、イランの問題で気分が滅入りがちだった株式市場は、決算シーズンに
入って関心が国内材料に向かいました。指数構成銘柄の 4 分の 3 を上回る企業が
決算発表を行い、業績内容が相場を再度下支える展開となりました。後掲の基本統
計のセクションでも触れている通り、決算発表がスタートしてから株価は 1.97%上昇
しましたが、これは年初来上昇率の 2.18%にほぼ匹敵します。ニューヨーク証券取引
所(NYSE)で取引システムに障害が発生し、8 日の午前 11 時 32 分から午後 3 時 10
分まで取引不能となる事態になっても、市場機能が損なわれることはありませんでし
た。市場は効率的に機能し、売買は他の取引所に場を移して執行され、ほとんど影
響はありませんでした。ギリシャでは銀行が営業を再開しましたが、取引には制限が
課せられています。また、同国のアテネ証券取引所は 8 月 3 日(月曜日)に再開され
る見通しです。個人的な話になりますが、通りには高揚感も溢れていました。その場
にいなければ(あるいは、1886 年以降、今回を除いて 205 回開催されたイベントに 1
回でも参加したことがなければ)、こうしたイベント自体や、イベントの際に湧き上がっ
てくる感情を表現するのに適切な形容詞は思い浮かばないでしょう。ここで言う通り
(ストリート)は、ウォール街ではなくブロードウェイを指し(確かにこの 2 つの通りはダ
ウンタウンで交叉しています)、そこで行われたイベントは 206 回目となるニューヨー
ク市で紙吹雪が舞う祝賀パレードでした。「英雄たちの峡谷(“Canyon of Heroes”パ
レードが行われるブロードウェイの通称)」で、ワールドカップで優勝した女子サッカー
チームによる凱旋パレードが行われたのです。この日は株式市場だけでなく、正午に
行われるイエレン FRB 議長の演説でさえ(パレードは午前 11 時から)、この最高潮
の盛り上がりを見せるイベントを前に、隅に追いやられた格好となりました。こうした
パレードの高揚感については私自身の経験から話しています。私が初めて見たパレ
ードは 1962 年 3 月 1 日にジョン・グレン氏の宇宙からの帰還を祝して行われたもの
です(父の職場がブロードウェイの市庁舎の真向かいにあったのです)。私はこの伝
統を受け継ぎ、息子に 2009 年の(私にとっては 5 回目となる)ニューヨーク・ヤンキー
スの優勝パレードを見せてやりました。
1
マーケット分析レポート:MARKET ATTRIBITES | S&P 500®
M&A 市場では活発な取引が続き、10 億ドル規模の案件が相次いで成立しています。医療保険会社の
Anthem(ANTM、7 月は 5.6%安)と同業 Cigna(CI、11.2%安)の間での買収交渉は、何度か物別れとなった末
にようやくまとまり、取引総額 540 億ドルの案件として決着しました。石油精製会社の Marathon Petroleum
(MPC、8.8%高)は、MLP 大手の MarkWest Energy Partners L.P.(MWE)を 158 億ドルで買収すると発表しまし
た。バイオ医薬品会社の Celgene(CELG、14.0%高)は、バイオテクリサーチの Receptos(RCPT)を現金 72 億
ドルで買収することを明らかにしました。資源開発の Halliburton(HAL)による同業の Baker Hughes(BHI、4.9%
安)の買収には、米国司法省が難色を示しています。ホームセンター大手の Hope Depot(HD、4.8%高)は、16
億ドルで保守・修理サービスを手掛ける Interline Brands を買収すると発表しました。英 Pearson PLC は、傘下
の FT Group(フィナンシャル・タイムズ紙の発行主)を日本経済新聞社に 13 億ドルで売却することを発表しまし
た。後発医薬品メーカーの Teva Pharmaceutical(TEVA)は、Allergan(AGN、8.4%高)から 405 億ドルで後発薬
事業を買い取ることを明らかにしました。金融サービスの McGraw Hill Financial(MHFI)は SNL Financial を 22
億ドルで買収すると発表しました。
世界の経済関連のニュースでは、中国の株式市場で安定化の動きが続きました。市場のボラティリティは低下
しましたが、依然として高水準にあり、上海市場は 7 月に 14.3%下落しました。中国の 6 月の輸出は予想を上
回る伸びとなりました(前年同月比 2.8%増、事前予想は同 0.5%増)。米国では、生産者物価指数と鉱工業生
産がいずれも事前予想を若干上回りました。7 月の NAHB 住宅市場指数は 2005 年 11 月以来の高水準となり
ました。6 月の住宅着工件数と許可件数も予想を上回りましたが、新築住宅販売は出遅れました。FRB が開催
した連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文からは、米国経済(雇用と設備稼働率)は改善しているものの、リ
スクは依然として残っており、低インフレが引き続き懸念されるとの見解が示されました。重要なのは、FRB が
今年中の利上げに向けた道筋から外れていないということです。毎週公表される新規失業保険申請件数は引
き続き低位で推移しており、41 年ぶりの低水準を記録しました。第 2 四半期の雇用コスト指数は前期比 0.2%
と、過去 33 年間で最も低い伸び率となりました。低成長の影響から、賃金の伸び、ひいては消費者の支出能
力が疑問視されています。FRB はシステム上重要な金融機関(SIFI、別名「大き過ぎて潰せない」銀行)である
大手米銀 8 行に対して適用される新たな準備資本要件を公表しました。対象となる 8 行は、Bank of America
(BAC)、Bank of New York Mellon(BK)、Citigroup(C)、Goldman Sachs(GS)、J. P. Morgan(JPM)、Morgan
Stanley(MS)、State Street(STT)、そして Wells Fargo(WFC)です。
個別銘柄では、業績発表を材料に株価が変動しました。Amazon.com(AMXZ)は 23.51%(年初来は 72.76%
高)、Google(GOOGL)は 21.75%(同 23.90%高)、Chipotle Mexican Grill(CMG)は 22.68%(同 8.43%高)、そ
れぞれ値上がりしました。一方でエネルギー関連銘柄は値下がりし、Freeport-McMoRan(FCX)は 36.90%安
(同 49.70%安)、Newmont Mining(NEM)が 26.50%安(同 9.15%安)、ENSCO(ESV)は 25.55%安(同 44.64%
安)、そして Exxon Mobil は 4.80%安(同 14.32%安)となりました。注目銘柄についてみると、7 月は Apple
(AAPL)が 3.29%安(同 9.89%高)、Microsoft(MSFT)が 5.78%高(同 0.54%高)、Facebook(FB)が 9.61%高
(同 20.49%高)となりました。
金利は 7 月に低下し、米国 10 年債利回りは 2.18%で取引を終えました(6 月末は 2.36%、2014 年末は
2.17%、2013 年末は 3.03%)。また、30 年債の利回りは 2.91%となりました(同 3.13%、2.75%、3.94%)。為替
市場では 1 ユーロに対してドルは 1.0984 ドル(同 1.1114 ドル、1.2098 ドル、1.3756 ドル)、英ポンドに対しては
1.5522 ドル(同 1.5708 ドル、1.5582 ドル、1.6564 ドル)、円は 1 ドルに対して 123.89 円(同 122.50 円、119.80 円、
105.2 円)となりました。金は 1,195.00 ドル(同 1,172.10 ドル、1,183.20 ドル、1,204.80 ドル)となり、原油価格は
46.99 ドルに下落し(同 59.09 ドル、53.27 ドル、98.70 ドル)、ガソリン価格は 2.835 ドルに上昇して(同 2.812 ドル、
2.299 ドル、3.271 ドル)7 月の取引をそれぞれ終えました。VIX 恐怖指数は 12.12 で 7 月を終えました(同 18.23、
19.20、13.72)。
2
マーケット分析レポート:MARKET ATTRIBITES | S&P 500®
S&P トータルリターン: 累積
2015年 7月
年初来
3カ月
6カ月
12カ月
3年
5年
10年
15年
S&P トータルリターン: 年率
12カ月
3年
5年
10年
15年
S&P 500 S&P MidCap 400 S&P SmallCap 600 S&P Composite 1500
2.10%
0.14%
-0.85%
1.84%
3.35%
4.34%
3.28%
3.44%
1.41%
0.57%
1.71%
1.35%
6.55%
5.52%
7.02%
6.49%
11.21%
11.30%
11.97%
11.25%
62.55%
67.11%
67.57%
63.13%
112.26%
112.70%
117.33%
112.57%
110.43%
141.03%
127.07%
113.41%
96.62%
275.40%
306.83%
111.60%
11.21%
17.58%
16.24%
7.72%
4.61%
11.30%
18.67%
16.29%
9.20%
9.22%
11.97%
18.78%
16.79%
8.55%
9.81%
11.25%
17.72%
16.28%
7.88%
5.12%
Dow Jones
Industrial
0.52%
0.55%
-0.22%
4.29%
9.34%
46.35%
91.92%
115.43%
141.15%
9.34%
13.54%
13.93%
7.98%
6.04%
出所:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス 2015 年 7 月末現在。表は図示する目的のためだけのものです。過去の運用実績は将来の運用成果を保証す
るものではありません。この表は、仮説に基づく過去の実績を反映している可能性があります。
S&P Dow Jones Indices
7月
3カ月
1年
2年
3年
5年
10年
15年 2000年以降
年初来
(7/31/2015)(6/30/2015~)(4/30/2015~)
(12/31/2014~)(7/31/2014~)(7/31/2013~)(7/31/2012~)(7/30/2010~)(7/29/2005~)
(7/31/2000~)
(12/31/1999~)
S&P 500
2,103.84
1.97%
0.88%
2.18%
8.97%
24.80%
52.53%
90.98%
70.46% 47.04%
43.19%
一般消費財
635.81
4.71%
6.45%
11.01%
21.76%
35.20%
84.48% 156.92% 132.25% 145.41% 112.43%
生活必需品
515.20
5.30%
3.77%
3.13%
16.16%
21.03%
39.89%
85.34% 113.33% 168.54% 147.64%
エネルギー
508.05
-7.81%
-15.73%
-13.39%
-27.72%
-16.36%
-2.99%
26.02%
40.10% 134.46% 138.83%
金融
338.84
3.01%
4.19%
1.66%
12.25%
22.81%
71.62%
71.20% -15.63% -2.86%
5.32%
ヘルスケア
884.71
2.73%
6.74%
11.71%
25.60%
49.89%
98.87% 167.28% 140.35% 133.48% 170.74%
資本財・サービス
467.04
0.14%
-2.55%
-4.00%
4.62%
19.54%
50.10%
77.70%
65.64% 74.36%
70.84%
情報通信
712.03
2.92%
0.44%
2.90%
11.03%
39.81%
52.66% 101.39% 117.11% -10.11% -11.82%
素材
288.24
-5.03%
-8.76%
-5.58%
-6.17%
13.07%
31.04%
48.91%
63.85% 142.75%
80.20%
電気通信サービス
151.71
-1.14%
-5.23%
-0.55%
-6.52%
-3.20%
-2.25%
37.76%
21.49% -39.31% -53.00%
公益事業
223.22
6.01%
-0.61%
-7.05%
6.61%
11.92%
15.95%
44.97%
36.51% 31.50%
56.72%
S&P アジア50指数
3,578.18
-6.73%
-13.10%
-0.32%
-6.87%
6.70%
10.69%
19.87%
64.74% 97.89%
88.28%
S&P ヨーロッパ350指数
1,614.34
4.05%
-0.20%
15.19%
17.02%
31.93%
50.71%
53.93%
36.26%
1.43%
3.15%
S&P グローバル1200指数
1,946.71
1.24%
-1.49%
2.58%
2.00%
15.92%
38.72%
53.83%
48.97% 36.08%
28.98%
S&P LAC 40指数(米ドル)
2,688.84
-8.89%
-15.23%
-15.16%
-30.52%
-24.77%
-34.65% -40.55%
42.24% 135.18% 140.54%
S&P TOPIX 150指数(日本円) 1,389.51
1.47%
3.44%
17.70%
28.50%
44.77% 124.96%
91.25%
40.75%
6.53%
-8.93%
S&P/TSX 60指数
853.40
0.66%
-3.74%
-0.17%
-3.50%
19.41%
28.24%
24.58%
45.87% 33.69%
72.10%
S&P/ASX 50指数
5,855.65
4.41%
-1.38%
5.25%
0.88%
12.12%
34.61%
29.62%
35.48% 76.14%
87.11%
出所:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス 2015 年 7 月末現在。
7 月は中国の株価下落よりも好調な企業決算に注目が集まり上昇
ギリシャ、イラン、中国を巡る問題が過去のものとなり(中国は少なくとも 7 月開始時点では)、株式市場は上昇
して下半期のスタートを切りました。世界的なコモディティ価格下落が懸念され始めたものの、企業決算が株価
の支援材料となりました。その後、中国の株式市場は政府の株価対策が試される中、下落し始めました。市場
の関心が、中国の株式市場下落が同国経済に及ぼす悪影響に移ると、懸念は世界中に広がりました。中国は
大量の製品(最終製品と部品)を輸出し、製品(およびサービス)コストの大部分を占めるサービスを提供してい
るため、これは特に重要です。輸出が反落あるいは変動すれば企業の最終利益、ならびにコモディティ需要に
直接影響が及びます。その結果、株価は世界的に下落しました。直撃を受けたのはアジアで、欧州もそれほど
深刻ではないものの下落し、米国は下落圧力にさらされましたが、限定的な影響に留まりました。米国では市
場の関心は依然として企業決算に集中していました。決算結果は総じて事前予想を上回ったものの、依然とし
3
マーケット分析レポート:MARKET ATTRIBITES | S&P 500®
て強弱混在する内容でした。7 月の中国株式市場は、上海総合指数が前月比 14.34%下落し、月中には一日
で 8.51%下落した日もありました。そして 2015 年 6 月 5 日の直近高値から 27.06%下げています。一方、米国
の株式市場は、値動きは激しかったものの 1.97%上昇となりました。
恐怖指数に「恐怖」は反映されませんでした。先月の 18.23 から月間の最低水準に近い 12.12 まで下げて月を
終えました(月中には 20.05 まで上昇)。しかしボラティリティは上昇し、取引レンジ(高値/安値)は先月の
3.58%から 4.34%に上昇しました。とはいえ 1 年平均の 5.73%を依然として大幅に下回る水準です。指数構成
銘柄レベルでは、7 月は 49.8%の銘柄が 5%以上変動し(150 銘柄が値上がり、100 銘柄が値下がり)、年初
来では 52.8%の銘柄が 10%以上変動しました(139 銘柄が値上がり、126 銘柄が値下がり)。
7 月の S&P 500 は、決算が(再び)市場を左右する中、1.97%上昇して 2,103.84 で取引を終えました。この上昇
で、S&P 500 は 2015 年 5 月 21 日に付けた終値ベースでの最高値(2,130.82)を 1.27%下回る水準となりまし
た。最高値更新が話題に上らなくなり、市場の地合いは若干弱含んだものの、依然として楽観的でした。年初
来の騰落率は 2.18%上昇となり、1 年間のリターンは 8.97%となりました。
7 月は 10 セクター中 7 セクターの月間騰落率がプラスとなりました(これに対して 6 月はわずか 1 セクター)。
金利低下の恩恵を受けた公益事業セクターが最も好調で 6.01%上昇しましたが、同セクターは年初来では依
然として 7.05%下落しています。生活必需品が 5.30%の上昇でこれに続き(先月は 0.46%の上昇で唯一の上
昇セクター)、年初来では 3.13%上昇しています。エネルギーセクターが最も振るわず、7.81%下落しました。原
油価格の下落が続き、高水準の供給に対して需要が低調だったことが背景にあります。同セクターは年初来で
13.39%の下落と、パフォーマンスは最下位です。ヘルスケアセクターは上昇を続けて 2.73%上昇し、年初来の
上昇率は 11.73%と、唯一 2 桁台の上昇率を付けています。
7 月は値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回りました。6 月は 142 銘柄しか値上がりしませんでしたが 7 月
は 292 銘柄が値上がりし、平均上昇率は 5.85%となりました。10%以上値上がりした銘柄数は 39 銘柄と、6
月の 7 銘柄から増加しました。一方、月間の値下がり銘柄数は 6 月の 359 銘柄に対して 208 銘柄で、平均下
落率は 7.25%となりました。このうち下落率が 10%以上となったのは 40 銘柄で、6 月の 24 銘柄から増加しま
した。
8 月に企業業績以外でまず注目されるのは小売売上高でしょう。「雇用、賃金の伸び、原油安で消費者の懐が
潤っているなら、なぜ消費は増えないのか?」という景気を巡る難問の一つに対する答えがある程度見えてくる
でしょう。雇用統計とインフレ統計も重要なカギを握ります。低調な指標が続けば、FRB は 9 月 16、17 日の
FOMC で利上げを見送るというのが大方の見方だからです。8 月は夏季休暇シーズンが本格化し、蒸し暑い毎
日が続き、市場は概して閑散とします - とはいえ、ウォール街は常に熱気に包まれています。
4
マーケット分析レポート:MARKET ATTRIBITES | S&P 500®
S&P 500
構成銘柄の騰落状況
上昇/下落
2015年 7月 平均パーセント
変化 (%)
3カ月
平均パーセント
年初来
変化 (%)
平均パーセント
変化 (%)
上昇
292
5.96
262
8.47
259
13.91
下落
10%以上の上昇
208
-7.25
236
-11.47
239
-13.72
39
14.84
84
17.03
137
21.97
10%以上の下落
40
-20.44
95
-21.62
127
-21.50
25%以上の上昇
2
27.96
9
31.46
36
37.68
25%以上の下落
8
-37.69
29
-35.17
36
-36.01
50%以上の上昇
0
0.00
0
0.00
3
86.39
50%以上の下落
2
-57.51
2
-55.76
3
-55.24
出所:S&P ダウ・ジョ ーンズ・インデックス 2015 年 7 月末現在。
S&P Dow Jones Indices
S&P500騰落率ベスト10とワースト10: 2015年7月
ティッカー
CB
会社名
Chubb Corp
2013年
2012年
1999年
7月 年初来 12月以来 12月以来 12月31日以来 セクター
30.68% 20.16%
28.67% 65.07%
341.58% 金融
TE
TECO Energy
25.25%
AMZN
Amazon.com Inc
23.51% 72.76%
34.44% 113.49%
604.30% 一般消費財
CMG
Chipotle Mexican Grill
22.68%
8.43%
39.31% 149.52%
一般消費財
メキシカン・ファーストフードレストラン
NFLX
NetFlix Inc
21.80% 134.23%
117.34% 762.44%
一般消費財
オンライン娯楽サービス
GOOGL
Google 'A'
21.75% 23.90%
情報技術
GOOG
Google 'C' (non-voting)
20.19% 18.85%
情報技術
インターネット検索/広告サービス
インターネット検索/広告サービス
UA
Under Armour
19.04% 46.29%
一般消費財
ブランド・パフォーマンスウェア製品開発
CVC
Cablevision Sys'A'
17.88% 36.72%
57.39%
88.89%
-53.67% 一般消費財
ケーブルテレビ運営
CCE
Coca-Cola Enterprises
17.59% 15.51%
15.75%
60.98%
153.81% 生活必需品
コカ・コーラ最大のボトリング会社
ティッカー
NI
会社名
NiSource Inc*
2013年
2012年
1999年
7月 年初来 12月以来 12月以来 12月31日以来 セクター
-61.70% -58.84% -46.90% -29.85%
-2.32% 公益事業
EBAY
eBay Inc*
-53.32% -49.89%
-48.77%
-44.88%
79.70% 情報技術
オンライン取引サービス
BAX
Baxter Intl*
-42.69% -45.31%
-42.37%
-39.87%
27.62% ヘルスケア
病院用/臨床用医療製品製造・販売
FCX
Freep't McMoRan Copper&Gold'B' -36.90% -49.70%
-68.87%
-65.64%
11.24% 素材
インドネシアにおける探査・採掘
QRVO
Qorvo
-27.81%
JOY
Joy Global
-27.04% -43.23%
-54.85%
-58.59%
NEM
Newmont Mining
-26.50%
-9.15%
-25.45%
-63.03%
-29.92% 素材
金鉱:探査、開発、生産
ESV
ENSCO Plc Cl'A'
-25.55% -44.64%
-71.00%
-72.03%
-27.47% エネルギー
海洋掘削請負
CNX
CONSOL Energy
-24.01% -51.14%
-56.57%
-48.54%
230.40% エネルギー
石炭採掘(米国)
URI
United Rentals
*株式分配は未調整。
-23.54% -34.33%
-14.06%
47.17%
291.30% 素材・サービス
機械レンタルサービス
7.96%
28.31%
17.34%
31.98%
19.16% 公益事業
85.38%
127.56% 283.22%
情報技術
主な事業内容
損害保険
持株会社、タンパ電力会社
オンライン書籍小売り
主な事業内容
公益持株会社:天然ガス/電力
集積回路開発
資本財・サービス 採掘装置製造、販売
出所:S&P ダウ・ジョ ーンズ・インデックス 2015 年 7 月末現在。
INVESTORS TAKEAWAY:投資家が押さえておくべきポイント




中国の株安は海外市場にも波及するかもしれませんが、これまでのところ影響は限定的です(ただし、
ギリシャ問題よりも影響は大きくなっています)。
7 月に VIX 指数は低下しましたが(6 月終値の 18.23 から 12.12)、個別材料に株価が反応し、銘柄レベ
ルではボラティリティがはるかに高くなっています。
現在米国株式市場は、全てのタイプの銘柄が一方向に動くような上昇基調にも下落基調にもなく、個
別銘柄レベルで取引される、銘柄物色相場となっています。
決算サプライズ:これまでに決算発表を行った S&P 500 構成銘柄のうち、EPS が事前予想を上回った
企業は 71%でした(通常は 67%)。
5
マーケット分析レポート:MARKET ATTRIBITES | S&P 500®

S&P 500 構成銘柄の 20%超が株式数を前年比 4%以上減らしており、株式数の減少によって EPS が
押し上げられた過去 6 四半期のトレンドが現在も続いています。とはいえ、M&A が活発化する中(発表
がさらに続いてます)、株式数が増加している企業もかなりあります。
考えのメモと注目のポイント:



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
コモディティ
中国の政策:中国株式市場に大きな注目が集まっていますが、中国では大量の製品とサービスが生
み出されており、中国の労働力、政府による支援および消費の変化は多くの米国企業の利益にとって
重要です(影響を受けるのは売上高だけではありません)。
6 四半期にわたり自社株買い戻しによる株式数の大幅な減少(前年同期比4%以上)が続いた後、
M&A が活発化していますが、その理由は様々です。ヘルスケアセクターでは業界再編が動機づけとな
っています。低成長の環境下で売り上げを拡大する必要性も背景的な要因となっています。そして、言
うまでもなく、結果論からあれこれ口を出す人々、別名アクティビストも相変わらず大きな声を上げてい
ます(社外からではなく取締役会を通じて主張する場合もあります)。
M&A の増加により投資銀行の第 2 四半期の収益が押し上げられたことに満足している向きは、米司
法省の動向に関係なく(司法省が待ったをかけることは少ないとみられます)、下半期にも大きな期待
を抱いて良いでしょう。
米大統領選で、ドナルド・トランプ候補とバーニー・サンダース候補が支持を集めています(トランプ候
補の出身地クィーンズ区とサンダース候補の出身地ブルックリン区という、隣り合った区の悪ガキが顔
を合わせれば、何かしら騒ぎが起こらずには済まないでしょう)。両候補が支持を集める根底にある共
通の理由は、両氏が大統領選に勝てなくとも、一部の国民の間で現状に対する不満が高まっているこ
とにあると考えられます。また地方レベル、国レベルで他の候補も両候補と同じ道をたどることができる
のでしょうか?あるいは、同じ道をたどろうとするのでしょうか?
 「私は非常に憤っている。これ以上我慢できない」-> では、あなたは叫ぶ以外に何をす
るつもりなのか?
基本統計:




7 月の S&P 500 は、ギリシャ、イラン、中国の問題が過去のものとなり(中国の場合、実際にはそうで
はなかったようです)、また決算内容が全体的に事前予想を上回ったことも好感され、月初から 20 日
の日中にかけて 3.38%上昇しましたが、その後はコモディティ価格の下落や中国市場の動向に注目が
集まる中、28 日までに 3.06%値を下げました。月末は良好な決算発表を手掛かりに値を上げ(中国の
状況も幾分か落ち着きを取り戻しました)、前月から 1.97%上昇して取引を終えました。
上海総合指数は 7 月に 14.34%下落し、今年 6 月 5 日の直近高値から 27.06%、また 2007 年 10 月 6
日につけた終値での過去最高値から 39.86%低い水準にあります。
S&P 500 構成銘柄の 4 分の 3 以上で決算発表が終了しましたが、第 2 四半期の営業利益は前年同
期比 3.0%減となっています。ただし、同 58.5%減のエネルギーセクターを除けば同 2.6%の増益です。
売上高が引き続き問題となっており(M&A を促す要因となっています。売上高を伸ばすことが無理なら
ば、それを買えということです)、第 2 四半期は同 3.1%の減収が予想されています(前期比では 3.7%
増)。S&P 500 構成銘柄のボラティリティが高まっています。7 月は構成銘柄の 49.8%が 5%以上変動
し(150 銘柄が値上がり、100 銘柄が値下がり)、年初来では 52.8%の銘柄が 10%以上変動しました
(139 銘柄が値上がり、126 銘柄が値下がり)。
S&P500 は過去 1 年間に 8.97%上昇しましたが、同期間に 27.72%下落したエネルギーセクターを除く
と上昇率は 13.35%となります。
8 月のフューチャー・ショック
過去の実績を見ると、8 月は 59.8%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は 3.94%、下落した月の
平均下落率は 4.05%で、全体の平均騰落率はプラス 0.73%となっています。
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マーケット分析レポート:MARKET ATTRIBITES | S&P 500®
2015年 8月
3
3
3
3
4
5
5
5
5
6
6
7
11
11
12
13
13
13
14
14
17
18
19
19
20
20
24
25
25
25
26
26
27
27
28
毎水曜日
毎水曜日
毎水曜日
イベント
6月の個人所得。
7月のマークィット製造業PMI(午前9時45分発表)
7月のISM製造業景況指数(午前10時発表)。
6月の建設支出(午前10時発表)。
6月の製造業受注・在庫(午前10時発表)。
7月のADP全米雇用報告。
6月の貿易収支。
7月のマークイットサービス業PMI(午前9時45分発表)。
7月のISM非製造業景況指数(午前10時発表)。
イングランド銀行金融政策委員会。
7月のチェーンストア売上高。
7月雇用統計。
7月の鉱工業生産、設備稼働率。
6月の卸売売上高(午前10時発表)。
6月のJOLTS(Job Openings and Labor Turnover Survey、求人労働異動調査)(午前10時発表)。
7月の小売売上高。
7月の輸出・輸入物価統計。
6月の企業在庫(午前10時発表)。
7月の生産者物価指数。
6月の消費者信用残高(午前10時発表)。
8月のNAHB住宅市場指数(午前10時発表)。
7月の住宅着工件数。
7月の消費者物価指数。
FOMC議事録(午後2時公表)。
7月の中古住宅販売件数(午前10時発表)。
7月の景気先行指数(午前10時発表)。
8月のマークィット製造業PMI速報値(午前9時45分発表)。
6月のFHFA住宅価格指数。
6月のS&Pケース・シラー住宅価格指数。
7月の新築住宅販売件数(午前10時発表)。
7月の耐久財受注。
8月のマークイットサービス業PMI速報値(午前9時45分発表)。
2015年第2四半期の国内総生産(GDP)改定値。
7月の中古住宅販売仮契約指数(午前10時発表)。
7月の個人所得。
週間住宅ローン申請指数。
EIA週間石油在庫統計(午前10時30分発表)。
週間新規失業保険申請件数。
FOMC の会合:
9 月 16-17 日※、10 月 27-28 日、12 月 15-16 日※、2016 年 1 月 26-27 日、3 月 15-16 日※、4 月 26
-27 日、6 月 14-15 日※、7 月 26-27 日、9 月 20-21 日※、11 月 1-2 日、12 月 13-14 日※
※議長の記者会見が通常、米東部時間午後 2 時に行われます。また、四半期ごとの経済見通しの改定も発表
されます。
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マーケット分析レポート:MARKET ATTRIBITES | S&P 500®
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