渋井川・善川・吉田川・七北田川

平成 27 年 9 月 23 日
平成27年9月関東・東北豪雨による宮城県の被害調査報告(速報)
1. 調査概要

調査日
2015 年 9 月 19 日(土曜)~9 月 21 日(月曜)

調査メンバー
渡辺一也(秋田大学工学資源学科)
,松林由里子(岩手大学工学部)

調査対象
・渋井川被害調査
・善川被害調査
・吉田川被害調査
・七北田川被害調査
2. 調査結果
2.1 渋井川
遊水池
大江川
渋井川
多田川
図 2.1.1 渋井川調査地点(国土地理院の地図に筆者が追記)
調査日は 9/19 であり被災から 1 週間が経過している.大崎市西荒井地区ではボランティ
ア活動が活発に行われていた.西荒井地区では水害の被害を受けていたが,大江川の上流
には図 2.1.1 に示すように遊水池
(写真 2.1.1)
があり,
浸水の痕跡(写真 2.1.2~写真 2.1.4)
が多くみられた.写真 2.1.5 は上流側より撮影した越流堤である.写真 2.1.6 に示すよう
に堤の上段にまでに水が上がっていたことが分かる.河道側を見ても洪水痕跡がはっきり
と残っていた(写真 2.1.7)
.写真 2.1.8 の痕跡からは越流堤を越えて遊水池内に水が流れ
こんでいたことが植物の倒伏の状況からも明らかであった.
写真 2.1.1 遊水池(親水公園)概要 写真 2.1.2
写真 2.1.3 浸水痕跡(階段)
写真 2.1.5 越流堤(上流側より撮影)
遊水池の浸水状況(ビオトープ池)
写真 2.1.4 浸水痕跡(ビオトープ池)
写真 2.1.6 洪水痕跡(越流堤)
流下方向
流下方向
写真 2.1.7
大江川の浸水痕跡(河道)
写真 2.1.8
大江川の浸水痕跡(河道)
この遊水池により,大江川の流量が低減し,浸水範囲の減少に役立ったものと考えられ
る.
2.2 善川
調査地点
②
①
善川
図 2.2.1 善川調査地点(国土地理院の地図に筆者が追記)
吉田川へ合流する一級河川である.図 2.2.1 に赤枠で囲まれている部分が今回の調査領
域である.中央部の古舘橋を中心に浸水箇所について調査した.写真 2.2.1 は古舘橋から
下流に向かって撮影した写真である.植生の倒伏が見られ,高い位置まで水位が上昇して
いたことが分かる.地図に①で示される左岸側の領域では地図上でも明らかなように田ん
ぼになっているが,
写真 2.2.2 のように排水のために堤防が低くなっている箇所があった.
そこから流れが田んぼへと流れ込み,写真 2.2.3,4 に示されるような水路の破壊が見られ
た.現場での水準測量から堤防との高低差は 284.6cm であった.
町営駐車場
町営第 2 駐車場
流下方向
流下方向
写真 2.2.1 善川の浸水痕跡(河道)
写真 2.2.2 善川左岸の浸水痕跡
写真 2.2.3 水路の破壊状況
(善川左岸より田んぼ方向)
写真 2.2.5
善川右岸の浸水痕跡(上流)
写真 2.2.4 水路の破壊状況
(上流より下流方向)
写真 2.2.6
善川右岸の浸水痕跡(下流)
(陥没した道路とガードレールに貯まった稲) (洗掘により破壊されたガードレール)
写真 2.2.7 流れ方向の変化(下流)
写真 2.2.8 流れ方向の変化(下流)
写真 2.2.5,6 に示されるように右岸でも道路を越えるほどの大きな被害があった.道路
を越えた流れは写真 2.2.7 のように小高く盛土された所から右岸堤防方向へと流れを変え
て,写真 2.2.8 のように田んぼを通って流下したことが植生の方向から分かる.右岸にお
いても図の②の地点で水門との接続(写真 2.2.9)のために堤防が低くなっていた.現場で
の水準測量から堤防との高低差は 374.5cm であった.
写真 2.2.9 右岸,水門との接続部
図 2.2.2 流れのまとめ
以上の結果をまとめると図 2.2.2 になる.左岸,右岸ともに堤防よりも低い部分から,
田んぼに水が流れ込んでいる.特に,右岸では県道 261 号を越えて道路に浸食被害をもた
らした.
2.3
吉田川
②
①
吉田川
図 2.3.1 吉田川調査地点(国土地理院の地図に筆者が追記)
図 2.3.1 に吉田川の調査地点を示す.①で示した部分では畑が浸水していた.住民の方
が作業をしており,その方の話によるとこの辺りは無堤地区であり,住民の方の家のある
左岸では水が腰まで来たとの事だった.また,畑も水没したために,何とか持って帰れそ
うな牛蒡を取りに来たとの事だった.現地は,写真 2.3.1 に示されるように畑が砂で埋ま
っている.また,写真 2.3.2 のように上流からコンテナが流れ,橋脚で止まっていた.
また,構造物の被害も写真 2.3.3,4 に示されるように顕著であった.
写真 2.3.1 右岸,畑の被害状況
写真 2.3.2 橋脚で止まったコンテナ
写真 2.3.3 農作業用道路の破壊
写真 2.3.3 農作業用道路の破壊
写真 2.3.4 コンクリート構造物周辺の洗掘
写真 2.3.5 遊水池の状況
写真 2.3.6 洪水痕跡
次に図の②の地点において調査を行った.ここには公立黒川病院が有り,報道によると
駐車場が浸水している(河北新報 2015.9.20)
.調査の際には既に洗浄されて綺麗になって
いたが,隣に遊水池があったためにそちらの調査も行った.貯水池の状況を写真 2.3.5 に
示す.大きな貯水池が有り,写真 2.3.6 のようにかなりの水深まで水が来ていたことが分
かる.この隣が病院であるため,遊水池.によりかなりの流量の低減が図られたものと考
えられる.病院と遊水地の北方向に洞堀川があり,調査地域周辺は吉田川と洞堀川からの
氾濫によって被害が生じたと報道されている.
2.4 七北田川
赤生津大橋
七北田川
図 2.4.1 七北田川調査地点(国土地理院の地図に筆者が追記)
図 2.4.1 に七北田川の調査地点を示す.写真 2.4.1 のように橋脚に竹が引っ掛かり,残
されていた.写真 2.4.2 のように右岸の高水敷にも水が上がっていた様子が見られ,写真
2.4.3 ように田んぼを流れ,ごみが残されていることを確認した.
写真 2.4.1
橋脚に残された竹
写真 2.4.2
浸水の状況(下流より上流を望む)
写真 2.4.3 田んぼを流れた痕跡