金地金の販売業者に対して業務停止命令(3か月)

平成27年10月22日
生 活 文
化
局
金地金の販売業者に対して業務停止命令(3か月)
-短期間で利益を得ることが確実であるかのように勧誘-
本日、東京都は、将来の利益が不確実であるにもかかわらず、「2、3か月おいておくだけで
40万円位必ず儲かります。」、「短期間で30万円儲かる。」などと、短期間で利益を得ること
が確実であるかのような嘘を告げて、30年の分割前払いによる金地金の売買契約を締結させてい
た事業者に、特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)第8条に基づき、3か月
の業務一部停止を命じました。
1
事業者の概要
事業者名
代表者名
本店住所
設
立
資 本 金
業務内容
売 上 高
従業員数
タキオン株式会社
代表取締役 松田 直哉
東京都港区麻布台二丁目3番5号NOAビル8階
平成23年8月1日
3,000万円
金地金等の訪問販売(分割前払い)
約5億1,398万円(平成26年度)
19名(役員含む)
2
勧誘行為等の特徴
(1)消費者の勤務先等へ、
「以前、親身になって相談に乗ってもらった。仕事の都合で香港に行く
ことになったので、その前にご挨拶に伺った。」などと嘘を言って、勧誘目的を明示しないまま
訪問する。
(2)金の売買について消費者が勧誘を断っているにもかかわらず、勧誘を続ける。
(3)金地金の相場は変動し、将来の利益は不確実であるにもかかわらず、
「2、3か月おいておく
だけで40万円位必ず儲かる。」などと、嘘を告げる。
(4)30年間の分割前払いで、契約額は数百万円から数千万円に及ぶ契約であるにもかかわらず、
「あくまでも預かった金額だけでやる。」
、
「最低限の1口40万円だけでも協力してもらえませ
んか。」などと、あたかも契約額は当初の預り金のみであるかのように嘘を告げる。
3
業務の一部停止命令の内容
平成27年10月23日(命令の日の翌日)から平成28年1月22日までの間(3か月)、特定
商取引法第2条第1項に規定する訪問販売に係る次の行為を停止すること。
(1) 契約の締結について勧誘すること。
(2) 契約の申込みを受けること。
(3) 契約を締結すること。
【問合せ先】
生活文化局消費生活部取引指導課
電話 03-5388-3074
4
業務の一部停止命令の対象となる主な不適正取引行為
不 適 正 な 取 引 行 為
「以前親身になって相談に乗ってもらった。仕事の都合で香港に行くこ
とになったので、その前にご挨拶に伺った。」などと告げ、勧誘に先立って、
契約の締結について勧誘をする目的である旨を明らかにしていなかった。
勧誘をするに際し、「いらない。」「金取引はしない。」などと、契約を締
結しない旨の意思を表示した消費者に対し、なおも勧誘を続けていた。
契約書面に、書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載し
ていなかった。
また、契約の申込みの撤回又は契約の解除があった場合において、商品
の代金が支払われているときは販売業者は速やかにその全額を返還するこ
と、及び商品の引渡しが既にされているときはその引取りに要する費用は
販売業者の負担とすることについて、記載していなかった。
金地金の価格は相場動向により変動し、将来の利益について不確実であ
るにもかかわらず、「2、3か月おいておくだけで40万円位必ず儲かり
ます。」、「短期間で30万円儲かる。」などと、短期間で利益を得るこ
とが確実であるかのように、不実を告げていた。
「抽選枠」は存在しないにもかかわらず、
「抽選枠で金の権利が取れ・・・
現在の相場より安くお分けさせて頂きます。」などと、他の購入者より特
別に有利であるかのように、不実を告げていた。
契約は前払式割賦販売契約であり、契約金額は数百万円から数千万円に
及ぶものであるにもかかわらず、「あくまでも預かった金額だけでやりま
す。」、「最低限の1口40万円だけでも協力してもらえませんか。」、
「積立しなくてもいい。」などと、あたかも契約金額は当初の預り金のみ
であるかのように、契約金額について不実を告げていた。
5
特定商取引法の条項
第3条
勧誘目的不明示
第3条の2第2項
再勧誘
第5条第1項
契約書面記載不備
第6条第1項
不実告知
今後の対応
業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して特定商取引法第70条の2の規定に基づき2年
以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては特定商取引法
第74条の規定に基づき3億円以下の罰金を科する手続きを行う。
(参考)東京都における当該事業者に関する相談の概要(平成27年10月21日現在)
平均年齢
平均契約額
相談件数
24 年度 25 年度 26 年度 27 年度
合計
約540万円
約64歳
(30 歳~85 歳) (最高:2,100 万円)
5件
12件
13件
3件
33件
消費者へのアドバイス
・「以前お世話になった。」などと言って訪問し、契約を迫る業者がいるので注意しましょう。
・
「短期間で必ず儲かる。」などの業者のセールストークを鵜呑みにせず、その場で契約しないで家
族や知人等に相談するなど、十分検討しましょう。
・契約書面を読んでもよく分からないからといって、業者の話だけ聞いて曖昧な契約をしないよう
にしましょう。特に「契約金額」と「解約手数料」の金額はしっかり確認しましょう。
◆同様の契約をしてしまい不安に思ったら、すぐに最寄りの消費生活センターにご相談ください。
<参考>
東京都消費生活総合センター 03-3235-1155(相談専用番号)
悪質事業者通報サイト http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/tsuho/honnin-form.html
参考資料
【事例1】
平成26年4月、甲の経営する事務所に当該事業者従業員Aが訪ねてきて、
「学校の後輩でAで
す。以前親身になって相談に乗ってもらった経緯があり、仕事の都合で香港に行くことになった
ので、その前にご挨拶に伺いました。」と言った。Aが「金地金に興味がありますか。」と尋ねて
きたので、「そういう事には興味が全くなく、むしろ嫌いである。」と断った。
5月に、Aから「香港に転勤することになったので挨拶に伺いたい。
」と電話があり、来訪して
来た。Aは「金は今買えばイラク情勢もあり絶対に上がります。先物ではなく現物なので、確実
に儲かります。80万円だけでいいので、付き合って欲しい。
」と言った。甲は、同窓のよしみも
あり契約することを決めた。翌日Aは上司のBを連れて訪問してきた。甲が「お盆の前に必要な
お金なので、それまでに解約したい。損しないか。」と言うと、Bは「大丈夫です。確実に儲かり
ます。預り金だけの契約です。中途解約は絶対に出来ます。」と言ったので、甲は契約した。
6月に、Bが理由を言わないまま、訪問したいと連絡してきた。会うとBは、
「○○○万円追加
契約して頂ければ、前の契約分についても、グラムあたり単価をお安くします。普通は、こんな
値段では売れないのですが、上司に連絡をとって了解を得た。
」と言った。甲が「お盆前に解約す
るのに、本当に損をしないですね。」と尋ねると、Bは「大丈夫です。確実に儲かります。
」と言
った。そこで甲は追加契約を承諾した。
甲が金地金売買契約書を確認すると、「毎月積立てを行い、30年後に満期になる。」と書かれ
ていたので、その違いを質問した。するとBは、
「短期の契約にしてしまうと、売りたい時期が変
わってしまっても売らなければならなくなる。この契約書にはそういった事を考慮して長期の契
約内容になっているが、今回の契約内容は違うから大丈夫です。毎月の積立ても無いし額もこん
な金額ではないです。甲さんが早く解約することも分かっています。あくまでも預かった金額だ
けでやります。中途解約が出来ます。確実に儲かります。」と言ったのでBを信用して契約書にサ
インした。
甲は、7月にBに解約を申し出た。するとBは「今、売ってしまうとかなり損をしてしまう。」
と言った。数日後、Bから「手数料○○%は総契約金額に対してかかる。
」と説明を受けた。甲は、
総契約金額に対して手数料がかかるとの説明を受けていなかったし、
「預り金だけの契約である。」
と言われていたので、支払った分だけの契約と思っていた。この時になって初めて巨額な損失が
出ることを認識した。契約の仕組みを知っていれば絶対に契約はしなかった。
【事例2】
平成27年1月、乙の経営する会社に当該事業者従業員Cから電話があり、
「以前、お世話にな
った皆様に、ご挨拶に回っています。2、3日中にお伺いしたい。」と言った。
数日後、乙が自宅に居ると、見覚えがない顔のCが突然、訪ねて来た。Cは、
「数日前、電話を
させて頂きましたCと申しますが、以前お宅に訪ねて来た時に、親切にして頂き、感謝していま
す。私も出世して係長になり、今度香港支社に転勤となりますので、ご挨拶に来ました。」と言っ
て、名刺を差し出した。そしてCは、金の上がり下がりを表にしたグラフを見せ、パンフレット
とあわせて、
「現在の金の市場はこういうものです。」
と乙に金に興味を持たせるような話をして、
10分位居て帰った。
数日後、Cから電話があり、金相場が上がっているといったことや、抽選枠がとれたら乙にも
何口かお分けすると言ってきた。その2、3日後、Cは、連絡もなしで突然上司のDを連れて来
た。Cは、
「乙さんをびっくりさせるため、抽選枠で金の権利が取れたことを連絡しないで、突然
来ました。乙さんに親切にして頂きましたので、現在の相場よりもお安くお分けさせて頂きます。」
と言った。乙は相場よりも安く分けてくれるという話に興味を持ち、近くの飲食店で話を聞くこ
とにした。
Dは、金相場グラフを見せて、今、金を買えばいかに儲かるかという説明をし、
「乙さんに損を
させるようなことはありません。」と言った。
更にDは、
「金は世界中、何処にいっても下がらない。1.5口120万円で購入することがで
きます。金は値上がりしています。金は絶対に儲かる。金相場に応じて、何時でも中途解約する
ことが出来る。乙さんには、Cがお世話になったので、売値が一番高いとき連絡します。2、3
か月で勝負してもいいし、1週間でも勝負できる。一番上がっている時に売れば、120万円で
契約して、元金と儲け分を合わせ150万円は返金できる。短期間で30万円儲かる。」と言った。
乙は、「120万円位の現金であれば用意できます。
」と言って契約することにした。この時、D
は、ただ儲かるトークを述べるだけで、中途解約した場合は手数料がかかる等のリスクについて
も一切説明はなかった。その後、乙は、Dの言動等に疑念を感じ、契約を止めるメールを送った。
【事例3】
平成25年2月、丙が会社に居ると、当該事業者従業員Eが突然訪ねて来た。Eは「あなたの
知人から紹介を受けて来た。
」と言って名刺を出した。Eは「金取引をやっている会社に勤めてい
ます。重要な財産になるのでお勧めしています。」と言ってきたが、丙は、断った。この翌日から、
Eは毎日のように電話で勧誘してきたが、丙は、
「金は上がったり下がったりして不安があるから
金取引はしない。」と言って断り続けた。
平成25年3月、Eが「上司にこういう風に頑張っているという状況を見せたい。あなたの仕
事に対する考え方を上司と一緒に聞きたい。」と電話してきた。数日後、EとFが会社に来た。
Fは、
「今まで金地金のお客さんは皆儲かっている。今金は上がっています。今このタイミング
を逃すと損をしますし後悔します。」と言ったが、丙は断った。するとFは、「実はEは目標を達
成することを条件としてシンガポールへの赴任が内定している。だから助けると思って最低限の
1口40万円だけでも協力してもらえませんか。そうしないと彼は人生を棒に振ることになる。
それで、あっちこっちにお願いしています。普通80万円が理想だけど。
」と言ってきた。丙は、
Eがかわいそうに思えてきて40万円なら契約してもいいと思ったが、すぐに返事はしなかった。
数日後、Fから電話があり、「40万円の件は手配してしまった。すぐ送金してもらわないと、
困る。そうしないと取引分の手数料と消費税が合計7、8万円かかります。
」と言った。丙は「じ
ゃあ、お金を送るから、きちんとした契約書をください。」と告げた。Fが、
「入金を確認したら、
契約書を持って行きます。」と言ったので、丙は40万円を送金した。
入金の翌日、丙はFと飲食店で会って「金地金取引に関する重要事項の交付書面」を見せられ
たが、この交付書面の内容については何の説明もなかった。丙は、交付書面に「80万円以上」
という文字が見えたので、その件で尋ねた。Fは、
「社内手続きだけの問題ですから、無視して下
さい。契約書が全てですから。
」と言った。
次に、Fは契約書を出してきた。契約書の1枚目に、書面の内容をよく読むべき旨を赤枠の中
に赤字で記載されなければいけないところ、その記載がなかった。また、Fから、クーリング・
オフの説明はなかった。
丙はFに、「契約書にサインして下さい。」と言われたので、契約書に署名押印した。丙は、契
約書に既に購入代金が○○○万円と記載されているのを見て、
「購入代金が○○○万円になってい
るが、私が買ったのは40万円だけですよ。」と問いただした。Fは、「全体の中の一部を買って
いるだけですよ。最低単位の値段で、会社の中の手続きです。
」と言って、40万円と記載してあ
る箇所を指し、「1口40万円です。もし追加で買う場合は、○○○万円まで一人で買えますし、
ローン返済できます。
」と、あくまでも1口40万円の金地金の契約書という話をした。そして、
「金は、グラム○千○百円ですから。これ以上になればいつでも売っていいですから、連絡下さ
い。」と言って帰って行った。店には10分位しかいなかった。
Fは、その後、
「1口80万円をイレギュラーの40万円でやっているので、あと40万円追加
してくれないか。」と何度か言ってきたが、丁はその都度断った。