小瀬 知洋

応用生命科学部 環境工学研究室
こ
せ
ともひろ
小瀬 知洋(助教)
研究分野
我々を取り巻く河川などの水環境や、家や学校
などの生活環境において、有害な化学物質が、ど
のような発生源からどのように生じているかを
明らかにし、人間の生活を豊かにしてくれる化学
物質と巧く付き合う(つまり化学物質を毒物とし
て取り込むことなく、安全に使用する)ための技
術の研究を行っています。
講義題目「循環型社会における化学物質管理:化学物質とどう付き合っていくか」
講義内容
化学工業の進歩に伴い、我々は多くの新たな化学物質を手にし、生活を豊かにしてきました。その一方
でそれら化学物質や、化学物質を作った際に生じた不純物によってダイオキシンや環境ホルモン、アスベ
ストなどの様々な問題に直面してきました。これらの物質はいずれも人体に非常に有害なものですが、様々
な理由で我々の生活する環境から完全に排除することはできません。
ダイオキシンは非常に様々な発生源を持つ物質です。代表的な発生源としては塩素を含む物質が燃えた
ときに生じたり、塩素を含む物質を合成した際に副生したりします。このためゴミを燃やしたときに発生
したり、塩素を含む農薬や難燃剤(火事を防ぐためにプラスチックなどに添加される薬品)に含まれる場
合があります。ゴミを燃やすことをやめればゴミ処分場はすぐに埋まってしまいますし、農薬を使わない
農業で全人類を養うのに十分な食料は作れません。
環境ホルモンと呼ばれる物質は様々なものがありますが、これらの物質は内分泌と呼ばれる生物の体内
における重要な作用(男女の分岐を初めとする様々な体の生長に関
わります)を攪乱する物質で、フタル酸エステル類、ビスフェノー
ル A 等が知られています。これらの物質は食品用ラップに柔軟性を
持たせるために使われて、問題となったこともあり(今は使われて
いません)、テレビや携帯電話の筐体プラの原料として未だに使われ
ていますが、プラスチックの無い生活というものも今日では考える
ことはできません。
このように有害性が問題となった化学物質であっても、有害性以
上に有用性があり、代替が効かない場合は、どうやってその化学物
質と付き合っていくかを考えなければなりません。上の例も含めて
環境分野の先端でどのような化学物質がなぜ問題になり、どのよう
に管理されているのかの事例を紹介します。
図 ダイオキシン類化合物