社会的事象を主体的に考え、自分の思いや考えを

社会的事象を主体的に考え、自分の思いや考えを表現できる児童の育成
-
「ごみの処理と利用」における問題解決的学習を通して
大城小学校
鬼
-
頭
宏
之
社会科の学習において、施設見学や体験学習、他者と関わる場面などを教師が意図的に
設定すれば、児童が興味・関心を持ち、課題を自分の言葉や文章で表現し、他者に伝え合
うことで社会を多面的に捉えたり、公民的資質の基礎が養われたりするのではないかと考
えた。小学校4年生「ごみの処理と利用」において、生活に身近なごみが自分達の問題で
あると実感し、自分の思いや考えを表現できる児童を育成したいと願い、実践を行った。
社会的事象を主体的に考え、自分の思いや考えを表現できる児童の育成
-
「ごみの処理と利用」における問題解決的学習を通して
大城小学校
1
鬼
-
頭
宏
之
主題設定の理由
(1)
学習指導要領から
小 学 校 社 会 科 の 目 標 は 、「 社 会 生 活 に つ い て の 理 解 を 図 り 、 我 が 国 の 国 土 と 歴
史に対する理解と愛情を育て、国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形
成 者 と し て 必 要 な 公 民 的 資 質 の 基 礎 を 養 う 。」 こ と で あ る 。 さ ら に そ の 実 現 の た
めに、学習指導要領解説の社会科改訂の趣旨の中に「社会的な見方や考え方を養
い、身に付けた知識、概念や技能などを活用し、よりよい社会の形成に参画する
資 質 や 能 力 の 基 礎 を 養 う こ と を 重 視 し て 改 善 を 図 る 。」 と 明 記 さ れ て い る 。 地 域
の社会的事象に興味・関心を持ち、自ら進んで調べてみたいと思ったり、資料か
ら読み取ったことや見学などから感じたこと、理解したことを自分の言葉や文章
で他者に伝えたり、表現したりすることができる児童を育成していくことで、学
習指導要領の目標に迫ることができるのではないかと考え、主題を設定した。
(2)
児童の実態から
4月当初に4年生1クラス(27名)を対象に社会科に関するアンケート調査
を 実 施 し た 。「 社 会 科 は 好 き で す か 。」 と い う 問 い に 対 し 、「 好 き 」 と 答 え た 児 童
は 4 名 ( 1 5 % ) で 主 な 理 由 は 、「 3 年 時 の 校 区 探 検 が 楽 し か っ た か ら 。」、「 調
べ 学 習 が 楽 し か っ た か ら 。」「 見 学 で 工 場 の こ と が 分 か っ て 楽 し か っ た か ら 。」 で
あ っ た 。 逆 に 「 苦 手 」 と 答 え た 児 童 2 3 名 ( 8 5 % ) の 理 由 は 、「 考 え る の が 大
変 だ か ら 。」「 答 え が は っ き り し な い か ら 。」 な ど の 意 見 が 多 か っ た 。 こ の 結 果 か
ら、多くの児童が社会科にあまり関心がなく、見学することは楽しいが、そこか
ら見えてくる地域の特徴や働く人の工夫などを発見したり、考えたりする楽しさ
には気づいていないことが分かった。だからこそ、児童が地域の社会的事象に興
味・関心を持ち、そこから見えてきたものを自分の言葉で表現し、伝え合う活動
を通じて、社会を見る目を育てていくことが大切ではないかと考えた。
2
研究の方向性
(1)
めざす児童像
①
自ら進んで課題を見つけたり、解決したりする児童
②
社 会 的 事 象 か ら 分 か っ た こ と や 考 え た こ と を 、自 分 の 言 葉 や 文 章 な ど で 表 現 し 、
進んで他者に伝え合うことができる児童
(2)
研究の仮説
社会科の授業学習において、施設見学や体験学習、他者と関わる場面などを意
図的に設定することによって、児童が社会的事象を主体的に捉えたり、自分の考
えや思いを深めながら伝え合ったりすることができれば、公民的資質の基礎が養
われるだろう。
3
研究の計画と方法
(1)
研究の計画
(2)
研究の手立て
①
身近な施設の教材化
ごみ処理施設を見学することにより、自分たちが出したごみがどのように運
ばれ、どのように処理されているのかを実際に目にすることができる。また、
そこで働く人々の工夫や苦労にも気がつきやすく、児童が主体的に課題を捉え
たり、解決したりしやすい施設であると考える。
○
②
具体的方法:施設見学・インタビュー調査・体験学習
他者との関わりを大切にした学習活動や単元展開の工夫
社会的事象を読み取りやすいグラフや写真などの資料を効果的に用いたり、
児童が調べてみたいと思うような学習課題を設定し、個別に考える時間を確保
したりする。ペアや4人1組でのグループ、全体での話し合いにより、疑問や
困ったことを中心に話し合う中で課題を解決したり、考えを共有したりしなが
ら意見を深めていく場を設ける。
○
4
具体的方法:話し合い活動・調査活動・調べ学習
研究の実際
〔 出 会 う 〕《 ご み に つ い て 知 っ て い る こ と や 疑 問 を 考 え よ う 》
〈第1時〉
(第1~2時)
ごみについて知っている内部情報を出させるため、イメージマップ
作りを行った。初めはやり方が分からず戸惑う児童もいたが、慣れてくると要領を
得てできるようになっていった。そして、4人グ
ループになり、自分の書いたごみのイメージを伝
え合い、自分の考えになかったものは付け加えて
いった。全体での発表の場面では、前の人の発言
から連想するイメージを付け加えていき、さらに
膨らませていったことで、お互いの考えを共有することができ、ごみに対するイメ
ージを広げることができた。樹形図を描かせてみると児童たちは、ごみ袋が3種類
あることやリサイクルなどの言葉をすでに知っていることが分かった。ごみに対す
る イ メ ー ジ を 広 げ た と こ ろ で 、次 に 各 家 庭 の 1 週 間 の ご み を 調 べ る た め に 3 種 類( 可
燃物・不燃物・資源物)のごみ袋の数や粗大ごみなどについて調査を実施した。
各自で保護者にインタビューし、結果をワークシートにまとめさせた。
〈第2時〉
各個人に調査結果を発表させ、全体の集計結果から分かったことや
思ったこと、気がついたことを各グル
ープで話し合った。各グループでは、
ごみを出す曜日は決まっていることや
他の地区と比べると回収する曜日が異
なること、ごみ捨て場の様子などにつ
いても進んで話し合う様子が見られた。
これらの活動を通して、ごみのイメージを広げ、インタビュー活動や調査活動をし
たことで、児童のごみへの興味・関心が高まってきた。そこで、もっと知りたいこ
とや疑問に思っていること、調べてみたいことをノートにできるだけ書くように指
示した。普段の授業では意見を書くことが苦手な児童Dは、初めはやはり何も書け
ず に い た が 、先 ほ ど 発 言 し た 内 容 で も 良 い こ と を 伝 え る と 意 見 を 書 く こ と が で き た 。
全 員 が 書 け た と こ ろ で 意 見 を 集 約 し た 。 さ ら に 内 容 ご と に 分 類 し 、「 ご み に つ い て
のみんなのハテナ」と題し、全員の意見を載せたプリントを配付した。
〔 つ か む 〕《 ご み の 処 理 の 仕 方 を 調 べ よ う 》
〈第3時〉
(第3~9時)
ごみをどの種類の袋に分別して捨てるのかについては、知らない児
童が多かったので、副読本や小牧市のごみの分別表を使って、それぞれどこに運ば
れて処理されているのかを副読本を使って調べさせた。その結果、児童は可燃ごみ
・不燃ごみ・粗大ごみは「環境センター」へ、資源ごみは「エコハウス小牧」に集
められることを知り、ごみの種類によって運ばれる施設が異なることを理解するこ
と が で き た 。 す る と 、 児 童 の 中 か ら 、「 ど う し て 同 じ 場 所 で は な く 、 別 の 場 所 に 運
ぶ の か 。」 と 新 た な 疑 問 が 生 ま れ て き た 。
〈第4~5時〉
環境センターでの見学は、改修工事のため実施できなかった。
代わりに過去の見学の時の写真や、第2時でまとめた「みんなのハテナ」の解決に
つながるような内容を取り入れたスライドを作成し、それを映しながら作業工程や
施設の特徴について説明をした。また、デジタル教科書を用いて、他市のごみ処理
場や働く人へのインタビューの様子を動画で見せた。見学はできなかったが、処理
の様子を視覚的に捉えることがで
き、環境センターでのごみ処理の様
子や働く人々 の苦労、工夫につい
[新たな児童の疑問]
①「ごみをそのまま埋めればいいのに、どうして燃やして灰にするのかな。」
②「灰にしたあとはどうするのかな。」
③「環境センターの隣に温水プールがあるけど、何か関係があるのかな。」
て理解をすることができた。ワーク
① ・「生ゴミをそのまま埋めると臭くなって環境に悪いから燃やす。」
シートには、新たな疑問が 書かれ
ていた。これらの疑問を中心に話し
合い活動を行った。まず、自分の予
・「処理場で初めにパッカー車の重さを量っていたから、灰にすると重さが
軽くなるから。」
② ・「灰を地面に埋める。」・「灰を海に捨てる。」・「灰を肥料にする。」
③ ・「特に関係はない。」
・「学校のプールとは違って温水だからごみを燃やした熱を利用している。」
想を立てさせた。その後、全体で自
分たちの意見を話し合い、次時で検証することにした。
〈第6時〉
前時に出た疑問を中心にごみを燃やした後の工夫について副読本や
資料を使って調べさせた。ごみは不要なものと考えていた児童たちは、灰になった
ごみが舗装ブロックに生まれ変わっていることや、ごみを燃やす際に出るエネルギ
ーを利用して温水プールの水を温めたり、電気を作ったりしていることを知り、施
設 で 働 く 人 々 は ご み を 無 駄 に せ ず 、生 活 に 役 立 て て い る こ と に 気 づ く こ と が で き た 。
〈第7時〉
事前に調べたいことや質問したいことをワークシートに書かせてか
らエコハウス小牧を見学した。ここでは、処理場の施設概要や処理工程について施
設の方から説明を受けた。全ての資源ごみが集まってくるのではなく、空き缶や空
き瓶、ペットボトルを圧縮処理している施設であることや、磁石でアルミ缶とスチ
ール缶を分別したり、まだ使える粗大ごみを直して有効利用している施設している
ことを理解することができた。また、過去に資源ごみの中に混ざっていたガス缶や
ライターなどによって、機械が故障したり、火災が起きたことを教えていただき、
ごみをきちんと分別することの大切さを学ぶことができた。
〈第8時〉
見学の後、紙すき体験を行った。牛乳パックを水で溶かしてパルプ
を取り出し、はがき作りを体験した。また、館内には廃材を使った作品や、服や本
のリユースコーナーがあり、児童はこれらの体験や見学を通して、リサイクルのす
ばらしさや良さについて学ぶことができた。
〈第9時〉
見学のまとめとして新聞作りを行った。特に印象に残ったことや分
か っ た こ と 、疑 問 に 思 っ た こ と を 中 心 に 文 章 や 絵 で 表 現 さ せ た 。見 出 し を 付 け た り 、
レイアウトを工夫したりして、読み手を意識した見やすい作品作りに取り組んだ。
〔 広 げ る 〕《 ご み 処 理 の 仕 方 の 変 化 を 調 べ よ う 》
〈第10時〉
(第10~14時)
前時までに、授業や施設見学、体験学習からごみの分別やリサイ
クルする大切さについて学習してきた。しかし、どうしてこのような取組をするよ
うになったのかという社会的背景や経緯については、児童はまだ理解していない。
そこで、平成16年から平成24年までの小牧市のごみの量と人口の移り変わりの
表したグラフをペアに1枚配付した。児童はグラフからここ7年間で人口は増えて
い る の に 、ご み の 量 が 少 し ず つ 減 っ て き て い る こ と を 読 み 取 る こ と が で き た 。次 に 、
平成元年から平成16年まではごみの量はどうなっていたのだろうかと問いかけ、
予想を立てさせた。以下は児童の予想である。
A : ご み の 量 は 年 々 減 っ て い た 。( 1 4 人 )
B : ご み の 量 は ほ と ん ど 変 わ ら な か っ た 。( 4 人 )
C : ご み の 量 は 増 え て い た 。( 7 人 )
D : ご み の 量 は 減 っ た り 、 増 え た り し て い た 。( 2 人 )
そ の 後 、「 こ の 予 想 を 確 か め る た め に は ど う し た ら よ い だ ろ う か 。」 と 問 い か け る
と家の人に尋ねてみたいとの答えが返ってきた。そこで、再び調査活動を行うこと
にした。家庭でのインタビュー調
査の内容を全体で話し合った結果
家の人が子どもだった頃(約25年前)は、
① 家で出していたごみの量は今と比べてどうだったのか。
② ごみの捨て方は今と同じだったのか。
③ ごみ袋は今と同じだったのか。
は 資 料 4 の よ う に な っ た 。中 に は 、
「おじいちゃんにも聞いてもい
い?」という児童もいたので、聞
くことができる人は聞いてもよい
〔保護者が子どもの頃〕約25年前
① ごみの量は多かった。
② 分別などしておらず、同じ袋に入れて捨てていた。今と同じで、パッカー車で収集
していた。
③ 昔は、スーパーのレジ袋や黒色のビニール袋に捨てていた。
〔おじいちゃん・おばあちゃんの子どもの頃〕約50年前
① ごみは少なかった。物があまりなかったから。
② ごみは、ほとんど家の庭や畑で燃やしていた。
③ ごみ袋はなかった。
ことを伝えた。
〈第11時〉
調査活動の結果をまとめ、この結果を比べて気がついたことを話
し 合 っ た 。す る と 、ご み の 捨 て 方 は 約 5 0 年 前 は 家 で 燃 や し て 処 理 し て い た こ と や 、
約 2 5 年 前 は 分 別 を せ ず に ご み を 捨 て て い た こ と 、ご み 袋 は 市 の 指 定 の 物 で は な く 、
自由だったことなどがこの結果から分かってきた。ごみの量の変化を確かめさせる
ために、平成元年から平成24年までの小牧市のごみの量と人口の移り変わりを表
したグラフを4人グループに配布し、その移り変わりを確認させた。また、話し合
い の 中 で 「 ど う し て ご み の 量 が 増 え て き た の か 。」 と 言 う 新 た な 疑 問 が 生 ま れ て き
た。そこで、50年前と今の買い物の様子が読み取れる資料を提示し、資料から分
か る こ と を を 考 え さ せ た 。 す る と 、「 5 0 年 前 は 魚 や 肉 な ど を 新 聞 紙 な ど に く る ん
で い た が 、 今 は パ ッ ク や ト レ ー な ど に 入 れ て い る 。」「 5 0 年 前 は 、 買 い 物 か ご を
持 っ て 買 い 物 を し て い た が 、 今 は レ ジ 袋 を も ら っ て い る 。」 な ど の 違 い に 気 が つ く
ことができた。そこから、個人でごみの量が増えた理由をノートに書かせ、まとめ
させた。
〈第12時〉
ごみが増えると発生する問題点に
ついてインターネットや図書室の本、副読本など
を使って調べさせた。ごみが増えてくることで、
自分たちの生活環境や自然が汚れていくことや、
限りある資源が減っていくこと、ごみを埋め立て
る場がなくなっていくことなどの問題点(資料5)を捉えることができた。
〈第13時~14時〉
3Rの考え方や言葉を学習した後、ごみを減らす取組に
は実際どのようなものがあるのかをインターネットや教科書、副読本などを使って
調べさせた。その結果、3Rを行うことで小牧市だけではなく、無駄なごみやエネ
ルギーをできるだけ出さないようにしていることや、自分たちの生活環境をみんな
で良くしていこうと世界中で取り組んでいることに気がつくことができた。
〔 深 め る 〕《 ご み と こ れ か ら の 社 会 に つ い て 考 え よ う 》
〈第15時〉
(第15~16時)
小牧市ではごみ袋が有料化されており、可燃ごみの袋(35リット
ル)は1枚あたり約12円で売られている。第2時で行った家庭のごみ調べの結果
か ら 、 各 家 庭 で 毎 日 た く さ ん の ご み 袋 を 使 っ て い た こ と を 思 い 出 さ せ 、「 ご み を 減
ら す た め に ご み 袋 を 1 枚 1 0 0 円 に す る こ と に 賛 成 か 、 反 対 か 。」 と い う テ ー マ で
話し合いを行った。まず、この提案に対して賛成か反対かを挙手させ、自分の立場
を明確にし、それぞれの人数を集計した。すると、賛成6人、反対21人という結
果になった。次に、そう思った理由をワークシートに書かせた。机間指導をしてい
る と 、 反 対 の 立 場 の 意 見 に は 「 1 枚 1 0 0 円 は 高 い か ら 。」 と い う 内 容 が 多 か っ た
の で 「 ど う し て ご み 袋 の 値 段 が 高 い と 困 る の か 。」 と 問 い か け 、 さ ら に 掘 り 下 げ て
理由を書かせた。すると、資料6のような意見が出された。友だちの意見を聞いて
立場を変えても良いことを伝え、話し合いを行った。話し合いは、反対の意見から
始め、賛成の意見を出し合った。その際に、似たような意見や反対意見を教師がつ
なぎながら進めていった。話し合いの中盤で反対の立場の意見に偏りが見られたの
で 、「 不 法 投 棄 や 野 焼 き を す る こ と は 犯 罪 で あ る 」 と い う 資 料 や 、「 年 間 3 5 億
円の税金を使ってごみの処理をしている」資料などを児童に提示した。すると、今
ま で 「 絶 対 に 反 対 だ 。」 と 主 張 し て い た 児 童 た ち に 迷 う 様 子 が 見 ら れ た 。 そ こ で 、
ペアで相談する時間を取り、再び全体で話し合った。授業の振り返りの場面では、
最終的な自分の立場を確認した。すると、賛成12人、反対15人という結果であ
った。資料7は児童の授業の振り返りの抜粋である。
[反対の立場の主な意見]
・「100円にすると、ごみ袋は今のように簡単に使えなくなるから、昔みたい
にごみを家で燃やして処理する人が増えてくるから反対です。」
・「ごみ袋が高くなると、ごみを勝手に山に捨てる人が増えるから反対です。
・「お金を使いたくないから、ごみを埋める人が出てくる。」
[賛成の立場の主な意見]
・「値段を100円に上げることで、ごみ袋を大切に使うようになり、ごみが減
るから。」
・「出すごみの量を減らすために、進んでリユースやリサイクルをするように
なると思うから賛成です。」
・「ごみ処理場を使いすぎると壊れてしまうから。」
〈第16時〉
・ 「初めは反対の立場だったけど、勝手にごみを捨てると犯罪になることを知ったし、
ごみを燃やすと環境に悪いダイオキシンなどが出るから賛成の立場にした。」
・ 「ぼくの家はマンションだからごみを燃やせないから、ごみをなるべく出さないように
減らしていくことが大切だと思う。」
・ 「このままごみが減らないと埋め立て場がいっぱいになり、新しい埋め立て場を作ら
なければならなくなるとさらにお金や場所が必要になるという友だちの意見を聞い
てなるほどなと思った。」
・ 「1袋が100円というのはやっぱり高いと感じるから、すぐにごみを捨てなくなるとい
う意見を聞いて私と同じ意見だなと思って安心した。」
今までの学習を踏まえて、ごみに対するイメージマップを単元の
始めに行った時間と同じ5分間で再度書かせ、その後、始めに書いた物と比較させ
た。児童たちは、イメージマップの量が増えていたことや学習の中で学んだ施設名
や 言 葉 を 具 体 的 に 書 け て い た こ と に 驚 い て い た 。 そ し て 、「 こ れ か ら 自 分 は ご み を
捨てる際にどのようなことに気をつけていくのか」について自分の考えをワークシ
ートにまとめ、発表して学習を終えた。
5
考察
(1)
身近な施設の教材化
地域にあるエコハウス小牧という資源ごみの処理施設を見学したことで、ごみが
どのように運ばれ、どのように処理されているのかなどの事実を確認したり、そこ
から新たな発見や疑問を持ったりすることができた。また、施設で働く方にインタ
ビューし、話を聞くことができたことは児童の理解を深めることにつながった。さ
らに、牛乳パックを溶かして、はがきを作る体験活動を通して、リサイクルをする
良さや環境に与える影響などを考えたり、古本や着なくなった服を展示してあるコ
ーナーなども見学したりしたことで、ごみについて興味・関心を高め、無駄なごみ
を減らしていく現代社会の動きを自分の課題として捉え、考えることができたこと
からも有効な手立てであったと言える。
(2)
児童が主体的に取り組んだり、他者との関わりを大切にしたりする学習活動や単
元展開の工夫
単元の初めにごみについて知りたいことや疑問を表にまとめ、各自の疑問を必ず
1つ以上載せ、共有化したことで、最後まで高い学習意欲を保つことができた。見
学や課題に取り組む際には、必ず予想や自分の考えを持って取り組ませたことによ
り、児童が主体的に学習に取り組む様子が見られた。また、単元全体を通して、ほ
ぼ毎時間、ペアや4人グループ、全体での話し合う場面を取り入れてきた。特に単
元後半にこれまでの学習を活かせるような話し合いの場を設定したことで、どの児
童も学習課題に対して自信を持って自分の意見を持つことができた。さらに、賛成
・反対と自分の立場を明確にしたことによって、考える視点を定めることができ、
普段、話し合いにあまり参加できない児童も自分の意見を持て、積極的に参加する
姿が見られた。また、積極的に話し合う中で自分の意見を深めたり、新たな疑問を
生み出したりすることもできるようになった。また、第2時と第11時で行った調
査活動では、予想を立ててから調査をしたり、どんなことを調べたいのかを話し合
ったりしたことで、調べてみたいという意欲を高めることにつながった。そして、
調査結果が自分の予想した考えを裏付ける根拠となったり、グループや全体で結果
を共有したり、比較したりしたことで新たな課題を見つけることができたことから
も有効な手立てであったと言える。
6
研究の成果と今後の課題
今回の実践では、単元構成を意識し、学習の状況に応じて調査活動や施設見学、体験
活動、話し合い活動などを効果的に取り入れ、児童はごみの処理の仕方やごみの有効利
用の仕方、今後の在り方について自分たちの生活と結びつけながら主体的に学習に取り
組むことができた。本実践を通して、普段何気げなく捨てているごみが大きな社会問題
になっていることや、その問題に対して自分たちに何ができるのか、どうしたよいのか
を主体的に考え、話し合い活動で思いや考えを表現できたことは、これからの社会を創
っていく児童にとって有益な経験になったはずである。実践前の教室のごみ箱には、可
燃ごみの袋の中に資源ごみが混入していたことも多かったが、実践後にはきちんと分別
し て 捨 て ら れ て い た り 、「 こ れ は 何 ご み だ ろ う 。」 と 分 別 表 で 確 認 し な が ら 捨 て た り す
る様子が見られたことからも児童のごみに対する意識が高まり、社会科での学習を実生
活に活かすことができた。
課題としては、グラフや写真などの資料から適切な情報を読み取る力や、複数の資料
を 比 較 し 、違 い や 共 通 点 を 見 つ け る 力 の 育 成 が 必 要 で あ る 。ま た 、他 者 に 伝 え 合 う 中 で 、
自分の考えを深め、そこから様々な視点を持つ力も育てていければ、現代社会の抱えて
いる問題点を捉え、多面的に追究することができる児童が育っていくと考える。また、
児 童 に と っ て 学 習 課 題 が 生 活 の 中 で 切 実 な 問 題 で あ れ ば あ る ほ ど 、「 や っ て み た い 」「 話
し合いたい」と主体的に取り組むことができると考えるので、児童が興味を持てるよう
な学習課題を教師が設定し、社会的事象を主体的に考え、自分の思いや考えを表現でき
る児童を育成していきたい。
◎
参考文献
・小学校学習指導要領
文部科学省
・小学校学習指導要領解説 社会編
平成20年
文部科学省
平成20年
・中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会
配布資料1
文部科学省
平成19年
小学校・中学校社会科専門部会