日本建築学会大会学術講演梗概集 (東 海) 2003年 9 月 21175 地震時における基礎の相互作用地盤ばねを用いた基礎形式別の応答評価 固有周期 建物応答 相互作用 動的問題 杭の水平抵抗 正会員 ○小林 恒一 *1 同 細野 久幸 *4 同 大場新太郎 *2 同 平松 昌子 *5 同 *3 本田 周二 2. 解析概要 1. はじめに 2.1 解析モデル 兵庫県南部地震では基礎形式の違いによる被害の差異が 建築基準法の改正では限界耐力計算法が制 多く見られた 。 図 観測事例の結果3)を参考に相互作用地盤ばねを算出し, 定され, 計算例2)では建物と地盤の相互作用地盤ばねを考慮 1 の 4 階建 RC 造共同住宅(短辺 12m(連層耐震壁)×長辺 した地震力の評価法が示されている。建築基礎指針では基 48m(純ラーメン) :1 × 6 スパン)短辺方向について,図 2 礎に作用する荷重を地盤と基礎の動的相互作用を適切に評 に示すモデル地盤上で基礎形式別に時刻歴応答解析を行な 価することで求めるとしている。筆者らは基礎形式の違い う。検討する基礎形式は,直接基礎,地盤改良を施した直 による建物応答の差異を示すために,スウェイ・ロッキン 接基礎,支持杭,杭の先端抵抗を考慮した摩擦杭1,およ グモデル(以下 SR モデル)を用いて,支持杭における地盤 び摩擦抵抗のみを考慮した摩擦杭2とした。それぞれの杭 1) 形式の総杭本数を表 1 に示す。なお,杭本数は長期許容支 3) 様々な基礎形式で ばねの妥当性について検討 すると共に, の地盤ばねの推定を報告 した。本報では低層建物を例に, 持力と杭に作用する軸力から算出した。 基礎形式の違 2.2 地震動と地盤ばねの評価 4) モデル地盤で設定した工学的基盤に入力する地震動は, いによる相互 1995年兵庫県南部地震で観測されたJMA神戸波を基盤に下 の評価と,SR ろした地震波を用いた。地盤ばねを算定する時の地盤のせ 12,000 作用地盤ばね モデルによる ん断剛性低下率は,SHAKE による一次元等価線形解析に よって評価した。なお,G/G0- γ,h- γ曲線は告示第 1457 号 地震時におけ る建物応答の 48,0 12 00 0 ,00 第七別表の値を用いた。また,各層の有効ひずみは0.3∼0.7 %であった。基礎と地盤の相互作用地盤ばねの評価は,地 差異について 図1 解析モデル(4 階建 RC 造) 考察する。 震時における地盤剛性の低下を考慮し,底盤については コーンモデルによる手法,杭基礎の鉛直ばねについては平 表1 杭基礎形式別杭本数 支持杭 PHC杭φ400 摩擦杭1 φ440-300 摩擦杭2 φ440-300 抵抗ばねにより求めた 2)。杭による水平抵抗地盤ばねは,弾 100 136 236 Vesic の式を拡張 5)し,地震による地盤剛性の低下を等価的 杭本数 直接基礎 0m 均変位の仮定による杭先端ばねとRandolfの方法による摩擦 N値 支持杭 直接基礎 (地盤改良) 摩擦杭1 性支承で支持される杭から求め,弾性支承ばねの剛性は に評価 6)して求めた。地盤ばね(水平・回転)は,基礎形式 摩擦杭2 に応じて底盤と杭の抵抗割合から評価し,杭基礎は杭によ る水平抵抗と振動方向の杭幅分を除いた底盤による抵抗の 和とした。ただし,支持杭については引張側底盤部分の抵 粘土 10m 抗を除いた。地震動の加速度応答スペクトルを図 3 に,算 N=3 qu=37kN/m2 定した水平地盤ばねと回転地盤ばねの比較結果を図 4,5 に Vs=100N1/3 =144 (m/sec) ρ=1.5 (t/m3) ν=0.48 4 ねは基礎形式毎に 20m 細砂 N=20 Vs=80N1/3 =217 (m/sec) ρ=1.8 (t/m3) ν=0.45 示す。水平地盤ば 加速度応答(Gal) 10 少しづつその差異 1000 が見られるが,回 地盤の卓越周期 TG=0.713(sec) (Vsより算定) 100 転地盤ばねについ JMA神戸NS観測波 ては直接基礎が杭 JMA神戸NS基盤波 30m 砂礫 N=50 Vs=400(m/sec) =1.8 (t/m3) ρ=1.8 =0.45 ν=0.45 図 2 地盤モデル モデル地盤地表面波 10 0.01 0.1 基礎に比べかなり 1 10 周期(sec) 図 3 地震動の加速度応答スペクトル 小さい。 Estimation of Structrure Response for Type of Foundation considering Soil-Structure interaction Spring for Earthquake. KOBAYASHI Koichi, OHBA Shintaro, HONDA Shuji, HOSONO Hisayuki, HIRAMATSU Masako . ̶349̶ 直接基礎 直接基礎 直接基礎(地盤改良) 直接基礎(地盤改良) 支持杭 支持杭 摩擦杭1 摩擦杭2 5 0 5 10 6 6 1 10 2 10 6 2 10 6 短辺方向 1次(sec) 直接基礎 0.490 直接基礎 (地盤改良) 0.414 摩擦杭1 支持杭 0.322 摩擦杭2 摩擦杭1 0.288 摩擦杭2 0.250 6 3 10 表 2 固有周期結果 3 10 5 108 0 1 109 水平地盤ばね(kN/m) 2 109 回転地盤ばね(kNm/rad) 図 4 水平地盤ばねの比較 図 5 回転地盤ばねの比較 1次固有周期(sec) 加速度(Gal) 1000 0.7 0.6 直接基礎(地盤改良) 0.5 max 1172.3(Gal) (直接基礎) 500 直接基礎 直接基礎(地盤改良) 支持杭 摩擦杭1 摩擦杭2 直接基礎 0 -500 -1000 20 25 30 35 40 45 50 55 加速度(Gal) 0 0.3 -500 支持杭 -1000 0.2 20 摩擦杭1 25 30 35 40 45 50 55 加速度(Gal) 摩擦杭2 0.1 max 540.9(Gal) (摩擦杭2) 500 60 時刻(sec) 1000 基礎固定時(0.087秒) 0.0 max 1007.8(Gal) (地盤改良) 500 60 時刻(sec) 1000 0.4 0 0 2000 4000 6000 8000 10000 水平地盤ばね(kN/mm) -500 -1000 図 6 建物固有周期−水平地盤ばね関係 20 25 30 35 40 層 50 60 時刻(sec) R 直接基礎 支持杭 摩擦杭1 摩擦杭2 地盤改良 基礎固定 3.1 水平地盤ばねと建物固有周期の関係 各基礎形式毎の固有周期を表 2 に示す。各基礎形式の回 55 層 R 3. 解析結果 45 図 7 建物頂部加速度応答波形 4 4 3 3 転地盤ばねを固定し,水平地盤ばねを変化させたときの建 物固有周期に与える影響を図 6 に示す。建物の剛性に比べ 地盤が軟らかい場合に地盤ばねが建物固有周期に大きな影 響を与えることが見られ,僅かな水平ばねの差異で固有周 直接基礎 支持杭 摩擦杭1 摩擦杭2 地盤改良 基礎固定 2 期の値が変わる傾向が見られる。 3.2 基礎形式別応答解析結果 1 図 7 に建物頂部(短辺方向)の加速度応答波形を,図 8, 応答値は,直接基礎が最も大きく,支持杭,摩擦杭の順で 小さくなる。これらの結果から,直接基礎を地盤改良する ことにより建物の剛体回転を抑制する効果や,低層建物 (地盤剛性より建物剛性が固い場合) では摩擦杭などが建物 全体の剛体回転を抑えられる可能性が見られる。また,基 礎固定としたときの値に比べ,全ての基礎形式で大きな応 答を示しており,建物に比べ地盤の剛性が小さい場合,地 盤ばねを考慮する必要がある。 4. まとめ 低層建物で地震時の地盤剛性が建物に比べ小さくなる場 合の基礎形式毎の応答特性について比較を行ない,地盤ば ねを考慮する重要性について示した。今後,杭基礎の底面 抵抗の影響について実測を踏まえ定量化していきたい。 *1 ジオトップ *4 *2 大阪工業大学 *5 *3 日建ソイルリサーチ 安井建築設計事務所 大成建設 500 1000 1500 加速度応答(Gal) 1 0 10000 20000 30000 40000 層せん断力(kN) 図 8 加速度応答比較 9にはそれぞれ最大加速度応答値と層せん断力値を示す。建 物の減衰は 2%,地盤ばねの減衰は 20%とした。これらの 0 2 図 9 層せん断力 謝辞 本研究は,日本建築学会近畿支部摩擦杭設計技術 研究委員会(委員長:永井興史郎 摂南大学教授)の活動の 一環として行ったものであります。ご助言をいただきまし た関係各位に厚くお礼申し上げます。 参考文献 1)金井、小椋、須見:摩擦杭基礎の地震に対する安全性、基礎工、pp6973、1996.11. 2)国土交通省住宅局建築指導課他編集:2001年版限界耐 力計算法の計算例とその解説(平成 13 年 3 月) 、pp.217-248、2001.3. 3)細野、大場、本田、小林、平松:地震時における地盤−基礎相互作 用モデルのばね定数の評価、第 38 回地盤工学研究発表会(投稿中) 2003.7. 4)日本建築学会近畿支部摩擦杭設計技術委員会:摩擦杭の設 計−考え方と課題−、日本建築学会近畿支部、2003.3. 5)岸田、中井: 地盤反力−変位関係の非線型性、土と基礎 25-8、pp.21-28、1977.8. 6) 護、長谷川:場所打ちRC杭における降伏曲げ耐力と最大応答塑性率の 関係、構造工学論文集 Vol.48B.pp327-333、2002.3. *1 GEOTOP Corporation *4Yasui Architects & Engineers Inc. *2 Osaka Institute of Technology *5 Taisei Corporation *3 NIKKEN SOIL RESEARCH LTD ̶350̶
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