第三者意見 「シスメックス あんしんレポート2015」 を読んで 神戸大学大学院 経営学研究科教授 國部 克彦 様 本業における社会課題の解決について シスメックスでは、さまざまな検査測定装置を市場に提供することで、検査を受ける患者、検査を 行う技師の両者の負担を軽減させています。さらに 「特集1」 で書かれているように従来品よりも 省スペース化を進めることにより、機器の普及を側面から支援しています。より苦痛や手間の少ない 検査を、少しのスペースで行えるようにすることで、より多くの人の痛みや苦しみを取り除くことが できます。このような目的をもって新しい製品を開発していくという姿勢は、本業におけるCSR活動 であると高く評価されます。 グローバルCSR活動 シスメックスはグローバル企業であり、世界各地に拠点があります。本業でのCSR活動やボラン ティア活動など、地域ごとに独自の活動をされている様子が紹介されています。グローバルの 従業員が自発的に、取り組みを行っていることはとても素晴らしいことです。地域に見合った活動を 行うことも重要ですが、グローバル企業として地域を連携した 「シスメックス」 としての取り組み、 シスメックスの基本方針を象徴するような協同的な取り組みがあれば、さらに大きな力となるのでは ないかと思います。 マテリアリティと指標化 シスメックスにおけるCSR活動は、ステークホルダー別に整理されて開示されています。関心の 深い分野の情報にアクセスしやすいというメリットが感じられますが、一方で重要性や優先順位など が見えづらくなっているように感じます。 「Sysmex Way」 を推進するために、シスメックスが考える 重要性と社会の要請を鑑み、シスメックスにおけるマテリアリティを開示していくことが次の課題では ないかと思われます。またその課題に沿って指標 (KPI:主要な活動指標) を公表することが進捗度を 示すことになり、シスメックスのCSR経営の状況が外部からわかりやすくなると思われます。 ダイジェスト版を 「統合報告」に CSR報告の世界では,財務報告とCSR報告を統合した簡潔な報告書として、 「統合報告」 が注目 されています。シスメックスの 「ダイジェスト版」 はCSRのみですが、財務情報も取り入れられて、 「統合報告」 に進化させる方向を目指すべき時期に来ているのではないでしょうか。そのためには、 機関投資家を念頭においた編集方針が必要になりますが、CSR情報開示のレベルを格段に向上 させることにつながります。 110
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