代数学基礎補充問題 1 略解答 栗原 将人 2015 年 1 月 8 日 1.(1) id が 1 個、(2, 1, 1, 1) 型が 10 個、(2, 2, 1) 型が 15 個、(3, 1, 1) 型が 20 個、(3, 2) 型が 20 個、(4, 1) 型が 30 個、(5) 型が 24 個であり、類 等式は 120 = 1 + 10 + 15 + 20 + 20 + 30 + 24 となる。 (2) 共役類をあわせて群となるものを選ぶ。id は必ず入る必要がある。共役 類をとってきて、120 の約数になったとしても、群であるかどうか確か めないといけない。たとえば、id, (2, 2, 1) 型, (3, 2) 型, (5) 型をあわせ ると 1 + 15 + 20 + 24 = 60 となり、120 の約数になるが、これは群で はない。すべての可能性を考えると、{id}, A5 , S5 だけが正規部分群と なる。 (3) A5 は {id} と (1) の (2, 2, 1) 型、(3, 1, 1) 型、(5) 型の元からなる。(2, 2, 1) 型の元は S5 の中で共役だが、A5 の中でも共役である。(3, 1, 1) 型の 元は S5 の中で共役だが、A5 の中でも共役である。(5) 型の元はふた つの共役類に分かれる。A5 の中で (1, 2, 3, 4, 5) と可換な元は 5 つある ので、(1, 2, 3, 4, 5) の A5 の中の共役類は 60/5 = 12 個の元からなる。 もうひとつの共役類は (1, 2)(1, 2, 3, 4, 5)(1, 2) = (1, 3, 4, 5, 2) が入る共 役類である。類等式は 60 = 1 + 15 + 20 + 12 + 12 である。 2. G を位数 65 の群であるとする。Sylow 5 部分群の数を s5 とすると、Sylow の定理により、s5 ≡ 1 (mod 5) であり、s5 は 65 の約数なので、s5 = 1 である。したがって、G は位数 5 の正規部分群 H をもつ。同様に、 Sylow 13 部分群の数を s13 とすると、Sylow の定理により、s13 ≡ 1 (mod 13) であり、s13 は 65 の約数なので、s13 = 1 である。したがっ て、G は位数 13 の正規部分群 K をもつ。H の生成元を σ, K の生成 元を τ とする。H は σ で生成される巡回群、K は τ で生成される巡 回群であり、それぞれ Z/5Z, Z/13Z と同型である。H, K は共に正規 なので、τ στ −1 σ −1 は H にも K にも入る。#H と #K は互いに素だ から、H ∩ K = {1} となる。よって、τ στ −1 σ −1 = 1、 つまり τ σ = στ となる。したがって、τ σ は位数が 65 となる。よって、G は τ σ で生 成される位数 65 の巡回群である。 1 3. G の Sylow p 部分群の数を sp とすると、Sylow の定理により、sp ≡ 1 (mod p) であり、sp は 2p の約数なので、sp = 1 である。したがって、 G は位数 p の正規部分群 H をもつ。H は位数 p の巡回群なので、そ の生成元を σ とする。また、Sylow の定理により、G には位数 2 の 元 τ も存在する。τ ∈ H に注意する。H は G の正規部分群だから、 τ στ −1 = σ i と書ける。問題 4 (2) の写像 ϕ を使うと、ϕ(τ)(σ) = σ i で ある。ϕ は準同型写像なので、ϕ(τ 2 ) = ϕ(e) = id が成り立つ。これは、 (σi )i = σ を意味する。故に、i2 ≡ 1 (mod p) となり、i ≡ ±1 (mod p) である。i = 1 のとき、τ σ は位数 2p の元なので、G は位数 2p の巡 回群となる。i = −1 のとき、G は Dp (位数 2p の 2 面体群) に同型で ある。 4.(1) 最後の ϕ の準同型性だけ証明する (他の部分は各自定義に従って検証 せよ)。 ϕ(g1 g2 )(x) = = ig1 g2 (x) = g1 g2 x(g1 g2 )−1 = g1 (g2 xg2−1 )g1−1 (ig1 ◦ ig2 )(x) = (ϕ(g1 ) ◦ ϕ(g2 ))(x) となる。よって、ϕ(g1 g2 ) = ϕ(g1 ) ◦ ϕ(g2 ) であり、ϕ は準同型写像で ある。 (2) H は G の正規部分群であるから、g ∈ G, x ∈ H に対して、gxg −1 ∈ H と なることに注意する。したがって、ig,H は H から H への写像となる。全 単射準同型であることも (1) と同様に確かめられる。ϕ : G −→ Aut(H) が準同型写像であることも (1) と同様に確かめられる。 (3) Z/pZ の 0 でない元全体が乗法に関してなす群を (Z/pZ)× と書く。 (Z/pZ)× = {1, ..., p − 1} である。ϕ : Aut(G) −→ (Z/pZ)× を ϕ(f ) = f (1) で定義する。ϕ は群の準同型写像であり、全単射であることが示 せる。したがって、(Z/pZ)× に位数 p − 1 の元があることを証明すれ ばよい。 Z/pZ には加法だけでなく、乗法も定義することができ、Z/pZ は体 となる。体の上では、n 次方程式は n 個以下の解しか持たない。今、 (Z/pZ)× に位数 p − 1 の元がないとすると、Abel 群の基本定理によ り、p − 1 の約数 d で d < p − 1 であり、すべての x ∈ (Z/pZ)× に対 して xd = 1 をみたすものが存在する。しかし、これは d 次式に p − 1 個の解が存在することになり矛盾である。以上により、(Z/pZ)× には 位数 p − 1 の元が存在する。 5. n の (正の) 各約数 d に対して、位数 d の部分群は {1, σ d , σ 2 d , ..., σ (d−1) d } n のひとつしか存在しない。 2 n n
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