屋外自然空間を用いたレクリエーション4症例の効果 若野貴司、末吉勝則

屋外自然空間を用いたレクリエーション療法 4症例の効果
若野貴司・末吉勝則・石川
治
仁寿会石川病院
e
m
a
i
l
:r
e
h
a
b
i
l
i
@
i
s
h
i
k
a
w
a
h
p
.
o
r
.
j
p
Be
n
e
f
i
to
fO
u
t
d
o
o
rS
p
a
c
eE
x
i
s
t
i
n
gNa
加r
eo
nC
o
n
v
a
l
e
s
c
e
n
tR
e
h
a
b
i
l
i
t
a
t
i
o
n
TakashiWAKANO,KatsunoriSUEYOSHIandOsamuI
S
H
I
K
A
WA
I
s
h
i
k
a
w
aH
o
s
t
i
t
a
l
S
町 田n
ary
Thep
u
r
p
o
s
eo
fr
e
h
a
b
i
l
i
t
a
t
i
o
nc
h
a
n
g
e
sbys
t
a
g
e
so
fi
n
j
u
r
i
e
s:Acutes
t
a
g
e,s
u
b
a
c
u
t
es
t
a
g
e,
c
o
n
v
a
l
e
s
c
e
n
c
es
t
a
g
e
,a
n
dm
a
i
n
t
a
i
n
i
n
gs
t
a
g
e
.I
nt
h
eUS
,o
c
c
u
p
a
t
i
o
n
a
lt
h
e
r
a
p
yandp
h
y
s
i
c
a
lt
h
e
r
a
p
y
a
r
en
o
to
n
l
yp
r
o
f
e
s
s
i
o
n
sωsupportp
a
t
i
e
n
t
si
nt
h
e
s
es
t
a
g
e
s
,b
u
tt
h
e
r
a
p
e
u
t
i
cr
e
c
r
e
a
t
i
o
n(
T
R
)w
h
i
c
h
,i
sw
i
d
e
l
yu
s
e
d
.T
h
i
sp
a
p
e
rp
i
c
k
e
dupf
o
u
rp
a
t
i
e
n
t
swho
u
s
er
e
c
r
e
a
t
i
o
na
si
n
t
e
r
v
e
n
t
i
o
no
ft
h
e
r
a
p
y
p
a
r
t
i
c
i
p
a
t
e
dTRp
r
o
g
r
a
m
su
s
i
n
gp
l
a
n
t
sa
n
dna
加r
ei
nh
o
s
p
i
t
a
lA i
nJ
a
p
a
nt
os
t
u
d
yt
h
ee
f
f
e
c
to
fTR
c
o
g
n
i
t
i
o
no
fimprovementbyt
h
e
i
r
programwhichu
s
ep
l
a
n
t
sonc
o
n
v
a
l
e
s
c
e
n
c
er
e
h
a
b
i
l
i
t
a
t
i
o
nまe
u
t
t
e
r
a
n
c
ea
n
db
e
h
a
v
i
o
r
si
n1
)p
h
y
s
i
c
a
lf
u
n
c
t
i
o
n
a
lu
s
e,2)c
o
g
n
i
t
i
v
ef
u
n
c
t
i
o
n
a
lu
s
e
,3
)p
s
y
c
h
o
l
o
g
i
c
a
l
,4
)s
o
c
i
a
lp
e
r
s
p
e
c
t
i
v
ea
n
d 5) a
b
i
l
i
t
yt
op
r
a
c
t
i
c
er
e
c
r
e
a
t
i
o
nwereu
s
e
df
o
re
v
a
l
u
a
t
i
o
n
p
e
r
s
p
e
c
t
i
v
e
i
t
e
m
s
.Ast
h
er
e
s
u
l
t
s
,a
l
t
h
o
u
g
ht
h
enumbero
fc
a
s
e
swasl
i
m
i
t
e
d
,
programp
r
o
v
i
d
e
smores
t
i
m
u
l
iwi
出
e
x
i
s
t
e
n
c
eo
fp
l
a
n
t
sandi
n
t
e
g
r
a
t
e
de
f
f
e
c
t
sf
o
rb
o
也m
e
n
t
a
landp
h
y
s
i
c
a
la
r
ep
r
o
m
i
s
e
d
Keywords:a
b
i
l
i
t
yt
op
r
a
c
t
i
c
er
e
c
r
e
a
t
i
o
,
np
h
y
s
i
c
a
la
n
dc
o
郡i
t
i
v
e釦n
c
t
i
o
n
s
,p
s
y
c
h
o
l
o
g
i
c
a
lands
o
c
i
a
l
白,出e
p
e
r
s
p
e
c
t
I
v
r
a
p
e
u
t
i
cr
e
c
r
e
a
t
i
o
n
認知機能面,レクリエーション遂行能力,精神機能面,セラビューティックレクリエー
1
ション,身体機能面,社会機能面
緒
雷
え,レクリエーションを媒体としたレクリエーショ
ン療法(セラピューティック・レクリエーション:
リハビリテーションとは,人間にとってふさわしく
(望ましく)ない状態におかれた時に,それを再び人聞
にふさわしい状態に戻すことを意味する全人的復権で
あり,単に機能回復訓練をさし示すものではない(上
田
, 1
9
9
9
)。しかしながら医療現場では,このような
ミッションに基づいて遂行されることが少ないのが現
性期をへて回復期,維持期へ
状である。急性期・亜急J
と
, リハビリテーションはそのステージごとに目的が
変化する。日本では,入院による医療費の拡大抑制と
在宅復帰の促進のために
回復期リハビリテーション
0
0
0年に制度化され専門病棟が新設された。
が2
アメリカとカナダでは,この期を支える専門職とし
て作業療法(以下 OT),理学療法(以下 PT)などに加
T
h
e
r
a
p
e
u
t
i
cR
e
c
r
e
a
t
i
o
n以下 TR)がある。国家資格と
C
e
r
t
i
f
i
e
d
同等の認定レクリエーションスペシャリスト C
T
h
e
r
a
p
e
u
t
i
cR
e
c
r
e
a
t
i
o
nS
p
e
c
i
a
l
i
s
t:以下 CTRS)と呼
ばれる有資格者が存在し,現在約 3
0
0
0
0人 (NCTRC,
2
0
ω
)が医療・福祉・教育等の様々な分野で TRプログ
ラムを実践している。回復期リハピリテーションでは
CTRSが行う TRプログラムは医療保険の診療報酬対
象となっている。
アメリカのリハビリテーシヨン病院が提供する TR
プログラムの種類は多岐にわたり,多いところでは
1
0
0種類を超えるところも珍しくない。患者は,屋内
であればゲーム,
トランフ¥陶芸,絵画,音楽など,
屋外であれば,散策,園芸,サイクリング,水泳,登
山などを自分の趣味歴や好み・興味によって,多様な
2
0
1
0年 6月 2
8日受付. 2
0
1
0年 1
2月 2
7日受理.
人間・植物関係学会雑誌 1
0
(
2
):
2
7
3
3,2
0
11.論文(原著).
レクリエーションから選択することができる。 CTRS
の仕事は,退院後も患者の生きがいにできるようなレ
ションも行っているが,本調査では,病院花壇や病院
クリエーションプログラムをリハビリテーション開始
近郊の公園等の植物が存在する屋外空間で TRを実施
と同時に提供し心身両面の全人的なケアをすること
,b,c
,d
)。
した事例 4名を選んだ (A群 a
である O
リハビリテーションでは TRと近い領域である OT
がある。 TR発 祥 地 の ア メ リ カ に お い て も OTと TR
2
. 評価の基準と調査方法
アメリカにおいて, TRを実施する目的の一つは,
の区別は現在も論議されている。日本のリハビリテー
レクリエーション活動を通して心身機能を回復し,各
ションにおいて OTと TRの異なる点は,プログラム
人が可能な限り自立して生きがいや趣味活動を達成す
に含まれる訓練的要素と楽しむ要素の比重の違いであ
るための技術,知識,情報,態度,環境設定の支援
ろう。 OTではレクリエーション的なプログラムを通
0
0
4
)0 そ の た め に ① 身
で あ る (Peterson.Stumbo,2
して,多くの場合は立位,歩行等の基本動作や日常生
体機能の回復,②認知機能の向上③精神的安定,④
活動作の獲得やその維持・向上を目指しているが, TR
社会性の向上の視点からレクリエーションプログラ
では訓練的な要素は少なく
ム の 評 価 が 必 要 で あ る と し て い る (Carterら
, 2
0
0
3
;
本人が楽しめることを重
視し,それを趣味や生きがいにつなげていくことを目
Peterson.Stumbo,2
0
0
4
;吉田・茅野,
2
0
0
7
)。
Coyleら (
1
9
91)による文献調査では,多様な分野に
的としている。
具体例を挙げると, OTでは退院後の生活を考え調
わたる TRプ ロ グ ラ ム の 効 果 を 示 し そ れ ら の エ ビ デ
r
r
理訓練を実施する場合があるが, TRでは本人の意欲
ンスを「身体機能回復・健康維持J 認知機能の回復・
があれば,楽しみとして調理活動を実施する。その活
向上 J 心理社会的機能の回復 J 人間成長と発達の促
動を通して意欲向上や自己実現を促し趣味や生きが
進J 人生の満足感の向上 J 医療福祉サービスの適切
いにつながるよう支援していく。この二つの領域の境
な利用と依存傾向の減少」に分類している。これらの
界線と協業は,これから日本でも論議されていくべき
分類項目は, TRの目標達成に向けて,人を四つの観
課題と考えられる。
点から評価する上記の①
2
0
0
9
)は
,
上回 (
r
人聞は
疾患や障害をもったとして
r
r
r
④のそれぞれに対応してい
るといえる。
も,自己の人生の専門家であり,自己決定権を行使し
前述のように TRの最終目的が趣味活動・生きがい
なければならない。 Jと述べているが,日本に限らずア
の達成であることから,患者の日々の記録を四つの視
メリカでも,人は疾患や障害を被った時点で,生きる
点を通して総体的に評価することが必要と考えた。そ
意欲を失うのが現実である。しかしアメリカでは,そ
こで TRの目的とされる①身体機能向上,②認知機能
の期聞をできるかぎり短くし再び生きがいを見出す
向上,③精神機能向上,④社会機能向上を,そのまま
ためにレクリエーションを活用している(ピーターソ
評価項目とし⑤レクリエーション遂行能力の向上を
ン・ガン, 1
9
9
6
)。この視点から, TRは重要なリハビ
リテーション介入方法であるが,
日本ではレクリエー
ション療法という言葉を使わずむしろ“生きがいづく
り"を目的とした“生きがい療法"と意訳したほうが,
Table1
.F
i
v
ea
s
p
e
c
t
so
fr
e
c
r
回 I
t
i
o
nt
h
e
r
a
p
yz
.
第 1表.患者の観察記録 (SOAP)を分類した五つの評価軸 z
評価の側面
①身体機能
内容
頚部動作,体幹動作,左右上肢動作とその耐久性,
左右上肢の巧綴性,左右上肢の協調性,左右上
肢の俊敏性,左右下肢動作とその耐久性,視覚・
聴覚・味覚・触覚動作,歩行動作,補助具を使
用しての移動動作,走る・跳ぶ等の高レベルな運動,
日常生活の規則化,痔痛の軽減,全身の持久力,
②認知機能
判断力,自己決定力,構成力,問題解決カ,空間
認知力,注意持続力,注意配分力,注意転換カ,
短期・長期記憶,コミュニケーションカ,左右識別
能力,学習能力,環境への適応力(時間・人・場
欧米での TRサービスの意味に近い。
本報では,屋外空間(ここでは植物が存在する空間)
に出て,個別 TR介 入 を 実 施 し た 4症例を取り上げ,
回復期リハビリテーションをになう A 病 院 で の 個 別
TRプログラムが患者にどのような効果を及ぼすかを
食欲
解析したものである。
所の見当議)
調査の方法
1
. 調査の対象
A病院は, 1
8
0床の入院施設をもち,回復期の脳血管・
運動器・呼吸器疾患および¥心大血管疾患を有する患者
に手術後のリハビリテーションを実施している。在院
5%と
日数は平均約 3-6か月であり,自宅復帰率が 7
いう亜急性期・回復期リハビリテーション病院である。
A 病院のリハビリテーション室では,個別 TRプロ
グラムとして屋内レクリエーションも屋外レクリエー
③精神機能
抑うつ状態,苦悩・不安,緊張状態,睡眠阻害,
消極的思考,幻覚言動,感情失禁(不適切な笑
い声,泣く),身体イメージ認識,疾患・障害への
態度,自己効力感・自己達成感,ストレスに対する
耐性,リラックス,楽しむ経験,意欲,自発性
④社会機能
対人交流カ,協調性,アイコンタクト,集団環境で
の対応,孤立化防止,コミュニケーション機会,他
者への関心(共感・理解)
⑤レクリエーション地域社会資源の認知,地域での移動能力,レクリ
遂行能力
工ーション活動への態度・知識・基本的動作能力,
金銭管理能力,安全管理能力,年齢に適したレク
リ工ーション活動能力,自由裁量時間の有効活用
Z
R
o
b
e
r
tP
a
r
k
e
rによる評価法 ComprehensiveE
v
a
l
u
a
t
i
o
ni
n
R
e
c
r
e
a
t
i
o
nT
h
e
r
a
p
y
P
h
y
s
i
c
a
lD
i
s
a
b
i
l
i
t
i
e
s(
P
a
r
k
e
r, 2002)に
補足し,改定したものである.
28
新たに加えた。レクリエーション遂行能力とは趣味
毎回のカルテ記載は各患者に応じてレクリエー
活動や生きがいの具現化"のために必要となる具体的
ションによる関与を実施し,観察記録にもとづき解
な技術・知識・情報の取得と行為と言いかえることが
析を行った。観察記録は SOAP形式とした。 SOAP
できる。
とは, S
u
b
j
e
c
t
i
v
e (患者自らが発する言葉や言動),
ハビリテーションでの TR
介入ではしばしばレクリエー
ション遂行能力の向上を目指した TR介入が実施され
ジを考え,患者によっては回復期の入院中から継続的
る。それは次の維持期の福祉施設・自宅復帰等のステー
な趣味活動や生きがいの実現に向けての技術・知識・
情報の取得と行為が必要だからである O 具体的には,
園芸の播種・収穫・水やり・間引き・肥料のやり方等
の実際園芸で使う技術を獲得可能であったかをレクリ
エーション療法士が判断し評価している。
実施手順として,病室に CTRSが対象患者を迎えに
行き,その後,植物のある屋外空間での散策,花壇の
回 1時間を一度のセッションとした。各々のセッショ
水やり,播種,収穫を実施した。基本的に週 5回
,
ンにおいて項目① ⑤の効果を目指したプログラムが
者らの観察をもとに評価した。
可能であったかを,第 l表の項目内容を参考にした筆
第 1表は,身体障害をもっ人への TRプログラムの
結果および考察
1
. 効果の多面化と総合的リハピリテーション
身体・認知機能のみならず,精神的・社会的,さら
テ記載が全ての症例 a,b,c,dに認められた(第 l図
)
。
にレクリエーション遂行能力の評価項目を満たすカル
これらの効果は TRプログラムのみならず, PT,OT,
T
h
e
r
a
p
y
P
h
y
s
i
c
a
lD
i
s
a
b
i
l
i
t
i
e
s
J(
P
a
r
k
e
r,2
0
0
2
)とアメリ
'デトロイトの亜急性期・回復期リハビ
カ・ミシガンナ1
リテーション病院において使用している TRプログラ
ム評価分類と項目を参考にしたものである。デトロイ
トの病院では,患者のカルテにセッションの様子を記
載すると共に,その内容からどの分野で効果が認めら
れたかを検証するために使用している。
lltjIlli--m1lill1h一
E
i=
li
-JJ1
│圃
ムT
回
ー一
J 一圃一ー一
⋮
剛 一 ・ ・ 一 J一 圃 一
室闘=圃・-二・・一・-・
・-・-の=・・一⋮一国圃一一一聞一一一周一一
盤面││由市平l
im色紙面│││京事│!上聞一
リ
.
I
τ
F
J
E
E
-
叫⋮
-----EF
------E E
、/=・・一.一・・・一山一・一⋮一・・一一
ヨ=・・-.-・・・・一.-・-.-・・-目
、ン=・・・一日一・・・・一・一・・一・一・・一一
圃圃・-・-・圃・・・・・・
・ ・----圃
申申由1lL剛一
主面申申!申蹴⋮↑圃││甲掴掴布⋮函││甲l
lお二
果住=圃圃圃圃一⋮一圃圃圃圃里⋮一圃闇一⋮一圃圃圃一一
助数一一圃園田園一⋮一 E ・ E ・ 周 一 ⋮ 一 圃 圃 一 ⋮ 一 回 圃 圃 一 一
Z⋮
耳目=・ー園田│圃 l
園町・戸園田園│圃圃官二闘圃
圃 1圃 闘 ﹄ 回 一
圃訓=一・・・・・一♂一圃圃圃闇圃一♂一圃圃一中二・
・・・一一
事ヨ=・・圃園周-・-・・・・・-ニ・'
E
--、ン=・・・・・一・一・・・・・一⋮一・・・・
・一・一・・・・一一
7=・圃・・・・町・-・・・・・-ニ・圃圃圃
-・-圃・圃・-主函岡田園田﹂凹⋮函ー岡田ー固岡﹂出⋮函田園田﹂四二岡田岡田﹂一
2 -・・・・・-ニ・・・・・---・・圃・一歩九=・・圃・・ -・
れ=・・・・・一一一・・・・・一⋮一副圃・・・一⋮一・・圃闘一一
、hJ=・・圃・圃一・一回闇聞闘幽一一一-----一・一・・・・一め=・・・・・一一一国岡幽圃・一⋮一・・・・・一⋮一・・・・一一
てT
一園田h
園
田
園一
“F
一担
圃圃
闘
圃
圃
て
一
圃
闘
圃固園
一m
一
認=田園凹
E
・-E
﹄
十
回
EE
IL
L
EF
r
p
h
L
E
m
F
M
a
F
一
品川一面薗画面面・面画面面面・面面面面面“面面画面面一
副田-離陸行"能障能能行・能能障能行"能能能能行一
一周一暢峨欄錨地⋮一向柵棚錨惜⋮開峨柑錨惜⋮糊欄柵鍋惜一
(一身盟輔社し⋮身龍輔社レ身盟輔社し一身語帽社 L一6 自 1 自 5 ⋮お目 1 目 5 ⋮6 目 1 E 5 “ 6 目 1 目 5 一
切一位項 9
項 3 ⋮1項 9 項 3 ⋮世項 9 項 3 ⋮ ロ 項 9 項 3 一
ア 跡 一 町 動 町 知 U ⋮S動 U 知町山⋮町動計 υ知 シ ⋮ / 動 町 知 ⑥ 一
コ達一 6 運 4 認 2 ⋮叩還 7 認 3 ⋮5 還 2 認 2 ⋮ 持 運 2 認 2 一
ス一"・一
M F一6 自 │ 目 5 ⋮6 目 │ 自 5 ⋮6 目 目 -3 “ 6 目 1 目 5 一
l
MM
項⑤項官一
円 棋 一 世 項 ⑥ 項 官 ⋮ MM項 ⑥ 項 官 ⋮ MM項 ⑥ 項 官 ⋮
u ⋮ U動向町知山山一
明
一 W動助知加⋮町山動中知山首⋮ W動リ州知 m
J一6
運 4認 2 ⋮9 運 6 認 3 ⋮4 運 2 認;⋮ 4 運 1 認 ; 一
0
o
⋮。⋮
o
o
o
.-n
一仰棺
セ一花水ト週計⋮花野裁選計⋮色屋週計⋮釣船植屋週計一也効
⋮
と醐一九一⋮札の⋮⋮風初判一
容の一入り⋮入物⋮⋮
1水 一
内ン一手コグ回⋮手巣回一歩目立ム-九歩回一
R 4一 の 肌 わ 回 1⋮ の や 回 1⋮ 肌 散 回 1 ⋮ 小 一 替 散 回 1一
丁、に一壇や 4 . 5 2⋮壇菜培 5 2一塗外 52"り ゲ え 外 一
0
・-““
所間一
o
-c1
o
よお癌
3
η
に宙博
Gj
CM
場内一⋮⋮・一
⋮
⋮
⋮
屋
一
一
加
一⋮ヒ⋮⋮
一一相グ
i
比期一活⋮割}⋮活⋮醐活一間加
mK
即時一賦期⋮充制期⋮斌期⋮例賦期一
M始 一 し の 寺 ⋮ の 関 寺 ⋮ し の 時 ⋮ し レ の 寺
t一d T
MM
開 一 促 掛 川 ら 査 ⋮ 活 の M ら量⋮促動川、ち量⋮促川動んも開一加と
ゴ入一の i A l か 町 一 生 と 介Jか 尉 ⋮ の 活 介 ヵ 附 ⋮ の レ 活 ︿Iヵか一 s綿
症 一
震か⋮床神症か山床一体神
症か⋮棟者
而介一床神
nU
nm
a詳
一離精 T発 4⋮ 病 他 明 発 3⋮ 離 精 而 発 1⋮離身精 T発 1一回の
説一穴に療に下⋮日に痕⋮叙骨に害⋮
一歳るる⋮歳る⋮歳自る⋮歳るん引切
3
符一)よよ・
3ょ ・
3観 よ ・
t図
例一性塞麻症低⋮性塞麻⋮性骨悪障⋮性塞麻
症一男梗方膜力⋮女梗片⋮女座増行⋮女梗片引
1
.a脳左綿視⋮ b 脳 左 ⋮ c左 炎 歩 ⋮ d 脳 左 町 、 第
29
1
O
b
j
e
c
t
i
v
e (患者の言動から客観的に判断される事象),
Assessment (上記に対する評価), P
l
a
n (実施前と実
施後の計画)からなる記録方法である。
この形式は,明確に問題対処を示し,効率的にその
効果を記録し,次のセッションにつなげる方法として,
アメリカでの医療現場で浸透している記録方法である
(
K
e
t
t
e
n
b
a
c
k,1
9
9
5
)。日本の臨床現場でも医師,看護
師をはじめ,リハビリテーションの分野まで広く使わ
れ,観察記録に共通の視点を用いることで各職種が情
報共有をしやすくしている(岩崎ら, 2
0
0
5
)。
評価は,各セッションにおいて SOAPの記載をもと
に第 1表評価項目と照らし合わせ,評価① ⑤の 5項
目それぞれに関連する発話・行動が認められた回数を
数え,セッション全体数に対する割合(%)で表示した。
たとえば症例 C の場合, 2
1回の TRセッションのす
べての回に身体機能面に関わる行動が認められている
1回÷セッション回数 2
1回 x 1
0
0=
ので,効果あり 2
100%となっている(第 1図
)
。
この⑤を加えた理由は次のとおりである。回復期リ
評価ツール r
C
o
m
p
r
e
h
e
n
s
i
v
eE
v
a
l
u
a
t
i
o
ni
nR
e
c
r
e
a
t
i
o
n
∞
T
a
b
l
e2
. I
n
d rando
u
t
d
o
o
ru
t
t
e
r
a
n
c
eo
fcasea,b,c,d
.
第 2表. 症例 a
,b,c
,dにみる屋内と屋外の発語概要.
症例屋内
a
屋外
一 「ここどこや.家内や娘にこ
一 自発的に過去の思い出を語る 「昔はな,目が見えている時はよく海に行ったもんやサザエやハマクリ
こにいることを知らせなあか
をとって網焼きしたんや j
一 散策において釣りや,畑の話を自ら発する. ぎょうさん野菜作つてな近所にあげとったんやで 持つ
んなJ
.
こんなに眠いのになんで起
.
てきたろうかJ
.
一 「このトマトには肥料ゃったん.家からもってこさそうか J 冷たい水でトマト冷やしてな,ょう食べたわ.
きなあかんの J
あんたが代わりにしてくれへ
うまいで J 昔これでもは畑ょう耕してたんやでイ士事やめてから,土地借りでな,ょうやったわ j
この赤い花きれいやな,ょう咲いとるな,ほんまやね.今日は,ょう見えるわ J
.
んかJ
水やりに行かなあかん 今
肥料のやり方を積極的に説明. この苗,種から育てたん.りっぱゃな,キーンと冷えたトマトはおいしいで,
日は,もう水やりしたんか j
.
ほんまにJ
そうやろ,トマトだけに氷をやってもな,他がかわいそうゃから J
「いや,あんたに水かけるのはええけど(笑う),他の人にかけるのはまずいやろ J
r
-r
-r
-r
b
-r
一
-r
一
葱やエンドウを植えたらわ J
ー
して,楽しみにしている様子
言語の先生,イチゴ狙って
たでJ
一 屋内で,エンドウ豆のツルの
ための道具を提案し,セラピ
ス卜に説明.
「その柵ちょうどええやん.紐
で伝っていきJ
一 「私が風邪ひいてでも,水や
りするんやでJ
一 自宅での畑仕事について自
発的に回想,ネギの苗につ
いて同室の患者と交流「こ
の人な,葱ほしいみたいよ.
連れて行ってあげて J
一 園芸についての自発的な会話があり人に何かを教えるということについて喜びを感じている様子. 水
ー
一
一
一
ー
一
一
一
一
一
d
r
一 他のリハビリでも園芸の話を
-r
C
r
r
-
r
はよどっかに連れてってえ
「ここゃったら,色んなもん植えられるな
r
はな,朝・タにやったらええんよ J
プランターにビニールを被せることを自発的に提案. 冬で、寒いから何か被せてやったらわJ
水やりのタイミングや肥料の作り方,肥料を加える時期を説明し,今後の花壇での作業工程について
自発的に語る. [もうこんだけ大きなったら,そないに水ゃらんでええな .3日l
こいつぺんくeらいで‘ええわ.
あと花がついたら肥料もつかいやりな J
季節によって適切な野菜や植えるときの注意点在説明.
週末の不安を話す,豆の発芽で声を上げて喜ぶ. この病院退院なったら,どうなるんやろ J
. わぁでた,
でたなJ
収穫時期であることを知らせ,野菜を使った料理の話をする.
「ゃった,ええのが獲れたねJ
. ネギは細葱ゃから,こんなもんやろ,心配しなくてええよ J
花屋の庖員と話す機会があり,普段ないような言葉の使い方や野菜の話,笑顔が認められた 「
こ
れ
,
今の時期でも育つん.知らんかったな J
肥料を播く時期や実がなる時期を説明
苗を植える場所とその間隔,石灰の混ぜ具合等をセラピス卜に説明. 石灰はちょっと前に混ぜといて
土を作っとかなあかんでJ
. それじゃ.近すぎやわ.もう少し話して植えなJ
自身がしていることを夫に積極的に説明. 今な,この先生,実エンドウ買って植えとんねん.もう遅い
.
かな J
r
r
r
r
r
r
r
r
一 手をたたいて喜ぶ姿,積極的な発言が認められた「楽しいな.生きてるって感じがするわ J
なJ
一 「外のほうが好きや,ここで
は色んな人に会うから嫌い
やねんJ
一 「またここかいな,もう歩かへ
んでJ
一 家族のことを思い出して肯定的な会話. r
家族でな祭りにでかけて,あの頃はほんまに楽しかったわ J
一 散歩中に積極的に花を指差し,賞賛する発言.
やっぱり,ここへ来るとほんまに気持ちがええな j
- r
ー カレンダーと季節感から季節惑を考慮した発言. r
もう秋ゃな過ごしゃすい季節は好きや J
ー 冗談や昔の思い出話. r
外にでられることが幸せ J
一 「外に連れてってくれるのJ
外は寒いか,日和か j
一 屋外に出ると自発話が増加傾向. あれ電車かいな
-r
ー いつもと比べて大きな声で積極的な発言.
一 自発的な発言があり屋外散歩を楽しむ.rあっ,すず‘めが.おるな.かわいいなあ.Jr私は秋の空が大好きや.
すがすがしいなJ
.
r
ー どこかに連れてってと発言.
一 r
(トマトが枯れて)楽しみがな
くなったJ
一
一
一
一
一
一
一
一
r
J あれはスピッツって犬ゃなJ
釣った魚の料理を説明,自分の地域の魚の名前を紹介花や野菜に対して感想を言い,時折,笑顔
が認められた「こんなに寒いのにょう咲いとるな j
花壇と屋外の両方に行きたいと発言があり,屋内よりも会話が自発的.
花や電車等の周りの環境への自発的な会話.
作業中は自発的な会話が認められ,花のことを質問.
野菜の観察で,自発的に質問. これ何植えてんの.今の時期育つんかJ
屋外では自発話が増加,顔を上げていろいろなものに反応しコメン卜する. (アロ工の花が)きれいに
咲いてきているな J
.
屋外散歩では自発話が多く,花や車を指で指す. 車がようさん止まっとる J
.
正月の門松を見ながら竹や南天の実に対して感想を述べる. きれいな, f
)っぱな門松ゃん J
. この竹
どうしたん採ってきたんか J
花壇では,ネギやエンド、ウを指差し,よく成長していることを指摘. ょう延びとるゃんか.たいしたもんやJ
病棟生活等の様々な要因が背景にあると考えられる。
r
r
r
症例
r
r
r
bで も 同 様 に 五 つ の 項 目 に 関 わ る 言 動 が 認 め ら
TRプ ロ グ ラ ム が 園 芸
れ,特にプログラム中に野菜を育て,セラピストに育
活動や屋外散歩等の植物が存在する自然空間を介在さ
て方を教える役割への意識が向上し,結果的に片麻療
せることによって身体的な機能レベルに固執すること
でも紐を結ぶ方法,種袋を開ける方法等を習得した。
ただ,効果の種類に着目すると
なく多面的で、総合的なプログラムが提供可能なことを
第 l図 は 示 唆 し て い る 。
具体的に,症例
aで は 全 て の 項 目 で の 言 動 が 認 め ら
症 例 C では,
a, bと 比 較 す る と レ ク リ エ ー シ ョ ン 遂
行面が低いものの,複数の項目で効果がみられた。こ
れは他のリハビリを拒否していたため,
TRプ ロ グ ラ
れ,特に屋外花壇での水やり活動では立位保持時間の
ムが趣味活動というよりも退院後の生活を考え,身体
延長が認められると同時に,現状の視力と立位バラン
面に重点を置いたプログラムメニューを優先的に提供
ス能力で可能な限り自立した水やり技術を獲得した。
していたからと考える。
それが身体機能面とレクリエーシヨン遂行面に表れて
いる。
症例
dは
, レクリエーション遂行能力での言動が認
められなかったが,その他の項目では認められた。こ
30
の症例はレクリエーションに関する技術を獲得したい
屋外での TRプログラムを実施した A病院は,自然
というわけではなく,屋外に出て野菜や花を観賞した
環境を介在させることによって,患者の基本的動作や
いということにとても意欲を示しており,屋内での
ADL (日常生活動作)を促進するだけではなく,園芸
ゲームよりも屋外での環境刺激を受け,発話の増加が
活動や屋外散歩での様々な自然環境刺激を通して患者
認められた例である。
の身体・認知・精神・社会・レクリエーション遂行能
上回・鶴見 (
2
0
0
3
)は,リハビリテーションとは,単
力面に働きかけていることを少なくとも 4症例から示
なる機能回復ではなく,受傷後の新しく創ってゆかな
唆している。総合的に働きかけている屋外での TR介
ければならない人生の具体像を示すことでなければな
入は,上田 (
1
9
9
9
)のいう全人的な統合的リハピリテー
らないと述べ,心と体の両方が,ともに活性化し,生
ション実践につながる可能性があることを示している。
きがいをもって活動できなければ,真のリハピリテー
評価 5項目の効果の表れ方に,何らかの傾向がある
かどうかについて検討した(第 3表)。毎回 TRセッショ
ションにはならないことを述べている。
この考え方は TRの最終日標である趣味や生きがい
ン後に記載した
SOAPをもとに第 1表の五つの評価軸
を達成することと共通している。すなわち,身体・認知・
と照らし合わせて,①
⑤に関連する言動が一つでも
精神・社会・レクリエーション遂行能力の項目を基本
患者に認められた場合を数え. TR介入の実施時期と
として,自分のしたい趣味や生きがいを達成すること
効果の関係性について,初期,中期,後期に分けて検
が TRの最終目標であり,それは受傷後の生活を創っ
討した。
効果の表れ方に顕著な傾向はみられなかったが,わ
ていく重要な一部分になるからである。
その支援を患者のニーズを考えながら,上記の 5
ずかながら中期は効果の表れが逓減している。これは,
項目どの部分の効果も望めるような TRプログラムを
患者およびセラピストが初期と比べ屋外から受ける刺
P
T
.O
T
. STやリハビリテーシヨンに関わるコメデイ
激が少なくなっている(慣れてくる)ためと考えられ
カルスタッフとともに提供が必要なのである。そして,
る。一方,後期は時間経過によって,植えた植物が育
自然環境を活用するプログラム(ここでは屋外散歩や
つことや,季節が変化することが視覚的に確認できる
闇芸活動)は,そのような全人的な TRプログラムを提
ので,それが新しい刺激となって,効果を押し上げて
供するのに有効な環境だといえる。
いくものとみられる。
T
a
b
l
e3
.R
a
t
i
oo
fe
宵e
c
t
sb
yTR百vea
s
p
e
c
t
sandt
h
et
r
a
n
s
i
t
i
o
n
o
fe
官e
c
t
s
.
第 3表. TR5評価軸による各 TRセッション項目別効果の推移
と言動が認められた割合 (
%
)
Z
.
全体
言動が 盲動が 盲動が 言動が
あった
あった
あった
あった
割合(%)割合(%)割合(%)割合(%)
l期
評価軸
H期
川期
身体機能
100
86
100
95
認知機能
7
1
43
57
67
精神機能
43
7
1
7
1
62
社会機能
43
43
43
43
100
レクリエーション遂行
86
100
95
全体
66
7
1
75
身体機能
7
1
57
76
b
86
認知機能
57
7
1
57
29
100
精神機能
100
100
100
7
1
社会機能
7
1
7
1
7
1
レクリエーション遂行
100
100
100
100
全体
83
7
1
89
100
身体機能
c
100
100
100
認知機能
7
1
O
33
29
精神機能
7
1
57
67
57
14
社会機能
43
43
33
レクリ工ーション遂行
14
14
19
29
全体
60
5
1
63
100
身体機能
100
100
100
d
認知機能
43
57
62
86
精神機能
7
1
7
1
76
86
43
社会機能
29
43
38
O
O
レクリエーション遂行
O
O
54
全体
49
63
z 第 1衰の評価① ⑤の 5項目それぞれに関連する発話・行動が
認められた回数/セッションの回数(1期 7回)x100と計算
した.
a
3
1
2
. 屋外での発語の増加
浅野・高江洲 (
2
0
0
8
)は,風景の中に人聞を癒す力が
あることを論じている。また松尾 (2005)は,人間と植
物のかかわり方には,五感を使う感覚体験と,体や頭
を使う動作体験があると述べ,園芸にはこの双方の行
為が含まれ,人間らしい創造性と本能の両方を満たす
行為であるという。
本症例らは,すべて回復期リハビリテーションとい
うステージで治療を受けるので,まず中途疾病や障害
と向き合いながら,訓練にも前向きに取りくまなけれ
ばならない。「受傷後も人生は,何一つ変化しない」と
いうことを示し「今までと同じようにレクリエーショ
ンができる」ことを,患者に提示することこそが,回
復期リハビリテーシヨンの重要な精神的サポートであ
る。しかしすべての人聞が,受傷後すぐに気持ちを切
り替え強く生きることはむずかしいと考えるのが妥当
であろう。
患者の発話を調査すると,屋外での患者の発話は自
発性にとみ,またその発話内容は屋外花壇での植物や
野菜,病院近郊での天候・草花等の環境刺激に関する
ものである。また屋外の発話に消極的な内容は少なく,
上記の刺激を通して患者の積極的な姿勢や話す機会も
時間も多かった(第 2表)。それに対し屋内での発話
は消極的な内容, もしくは屋外へと出て行きたい願望
が伺えた。発話の回数と内容に関しては,屋外での発
体的な技術等が認められ,屋内の発話よりも多様的な
定感,他者への配慮などがみられ,自発的行動を誘発
することはもとより精神性"や"社会性"を向上
発言が伺えた。
させる結果となったといえる。たとえば,セラピスト
話回数が屋内よりも多く,その内容も症例の回想、や具
r
症例らは,まず病室から出て,散策をし,花壇や病
に対し冗談を交え. あんたに水かけるのはええけど,
院近郊の公園に出かけた。五感から五感へと刺激を受
(
a
)という配慮の言
他の人にかけるのはまずいやろ。 J
け,やがて車椅子から手を出し,花摘みや水やり,播
種という動作体験へと行為が移行していった。これら
葉や,育った植物に対し「冬で寒いから,なんか被せ
(
b
)と,自分のことだけではなく,
てやったらええわ。 J
のことは,次の言葉からも伺うことができる。 r
(昔は)
植物への気遣いをみせる言葉に,精神性や社会性が確
(
a
)
ぎょうさん野菜を作っててな,近所にあげとった。 J
と,過去を想起しこれらの過程の中で障害という現
認できる。
人間は,その進化の段階から自然に抱かれ,自然か
実に少しずつ目を向けた発話や「ゃった,ええのが採
らの多様な刺激を統合的に感受しながら,ヒトから人
(
b
)という発言に
れたね。 J
になるプロセスを進んできた。立ち上がり,二足歩行
自己の肯定感や新たな生
きがいの可能性をわずかに見出している。「楽しいな,
を始め,言語を獲得した。自然の移ろいの中から,時
(c)という中に,疾患や
生きているって感じがするわ。 J
間の存在に気づいた。また他者がいることで,自己を
障害を,やっと前向きにとらえようとする姿勢が生じ
認識しその他者のために食物を分ける利他性という
てもいる。さらに自然の移ろいに対する繊細な感情の
9
8
6
)。そこに
社会性も目覚めた(ポパー・エクルス. 1
(
d
)からも伺え
変化は. きれいに咲いてきているな。 J
は自然による多様な刺激が存在したのである。
r
る。またこの発話内容の背景には『患者とセラピスト j
人が緑の中に安らぎを感じるのは,人間の進化が,
との関係のみではなく. 自然からの刺激(環境刺激)を
r
L
e
w
i
s
.1
9
9
6
)が
,
緑の中で進められたことに起因する (
患者とセラピストが受ける』という関係が成立すると
このことは C の事例にもみることができる。すなわち,
考えられる。それらの環境刺激を患者とセラピストが
C は TR以外のリハビリテーションをすべて否定して
共有できることにより,屋内では認められない発話の
いたが,車椅子で外に出られ,緑を身近に感じられる
多様化,そこから生まれるセラピストとの会話が精神
ことの幸せを「やっぱり,ここへ来ると,ほんまに気
的賦活,社会性の促進, レクリエーション遂行能力の
向上,特にここでは園芸に関わる技術の獲得につなが
持ちがええ。」と言った。
また bでは他者に何かを伝えたいという欲求は,高
ることが第 2表より伺える。そして,患者が TRプロ
次脳機能障害があっても衰えることはなく,園芸活動
2
0
0
3
)の否定する
グラムに向かう姿勢は,上田・鶴見 (
の説明や石灰の混ぜ方などを「もうこんだけおおき
一昔前の辛い"訓練としてのリハビリテーション"で
なったら,そない水やらんでええな。三日に,いっぺ
はなく,患者の自発的なリハビリテーション,すなわ
ち"内発的リハビリテーション"となっていることが
わかる。
んぐらいでええわ。あと花がついたら肥料ももっかい
(
b
)と,きちんと言葉を使って説
(もう一度)やりな。 J
明しようとする。季節変化を五感で感じとり「もう秋
(
c
)と,時間の推移
ゃな,過ごしやすい季節は好きや。 J
を計る言葉もつぶやかれる。
まとめ
ヒトから人への進化の重要項目である身体発達,言
リハビリテーションは,患者個々のために目的を設
語認知機能,自己認識および社会性は. TRがリハビ
定し,セラピストが関与しそれが刺激となって患者
の行為や感情を誘発することである。本調査は植物が
リテーシヨンの中で目標とする効果と一致する。すな
わち疾病や事故によって失った機能の再獲得や代替機
存在する屋外空間での TRプログラムが,どれだけリ
能を求めるリハビリテーションとは,人間の進化の中
ハピリテーションとして多面的な効果があったかを検
証 Lょうとするものであった。
が自然からの刺激の中で進んでいったように,自然か
TRは受傷後の患者の生きがいを引き出すーっの手
らの刺激によってリハピリテーションがより促進され
段としてその実現への道をつなぐリハビリテーション
であると説明したが,プログラムによって,その効果
ることは,想像に難くない。それは上記の A 病院の事
例にも見られる。
で得た機能の再獲得作業であるといえる。ヒトの進化
A病院での植物が存
事例は少ないが,植物が存在する屋外空間の介在に
在する屋外空間での刺激には,自然や植物を基本とし,
よってプログラムの刺激が多様になり,心身への統合
時間・天候・季節,その場に居合わす他者など多様な
的効果が期待できることを検証できた。今後は,植物
要素が含まれていて. CTRSのみでは創り出すことが
できないほど多くの種類と量であった。
を介在するレクリエーションが,回復期リハビリテー
ションに,有効で、あることについてさらに検証をすす
めてゆきたい。
には差異があることがわかった。
これらが,患者の心身に働きかける統合的な刺激と
なり,その結果,症例らの言葉の中に,多くの自己肯
32
描
要
急性期・亜急性期をへて回復期,維持期へとリハピ
リテーションはそのステージごとに目的が変化する O
アメリカでは,この期を支える専門職として作業療法,
理学療法などに加え,レクリエーションを媒体とした
レクリエーシヨン療法(セラピューティック・レクリ
h
e
r
a
p
e
u
t
i
cR
e
c
r
e
a
t
i
o
n以下 TR)がある O
エーション:T
植物が存在する屋外空間で TRを実施した A病院 (4名)
を取りあげ,患者のリハビリテ}ションにどのような
影響を及ぼすかを解析した。①身体機能向上.②認知
機能向上③精神機能向上,④社会機能向上⑤レク
リエーション遂行能力の向上を評価項目に設定した。
事例は少ないが,屋外での自然環境による刺激により
プログラムの刺激が多様になり,心身への総合的効果
が期待できることを検証できた。
引用文献
D
a
v
i
s,C
O
.P
h
i
l
a
d
e
l
p
h
i
a
,U
SA.
.A
.1
9
9
6
.Greenn
a
t
u
r
ehumann
a
t
u
r
e:The
L
e
w
i
s,C
meaningo
fp
l
a
n
t
si
no
u
rl
i
v
e
s
.U
n
i
v
e
r
s
i
t
yo
f
I
l
1
i
n
o
i
sP
r
e
s
s
.I
l
l
i
n
o
i
s,USA.
松尾英輔 2
0
0
5
.園芸にみる人間らしさとは何か.人間・
植物関係学会雑誌 4(
1
'
2
):3
8
.
NCTRCo
f
f
i
c
i
a
lwebs
i
t
e
.2
0
0
9
. CTRSb
r
o
c
h
u
r
e,
N
a
t
i
o
n
a
lC
o
u
n
c
i
lf
o
rT
h
e
r
a
p
e
u
t
i
cR
e
c
r
e
a
t
i
o
n
C
e
r
t
i
f
i
c
a
t
i
o
n,http://wwwn
c
t
r
co
r
g
/
d
o
c
u
m
e
n
t
s
/
L0
8
1
8
0
9p
d
f
,2
0
1
0
.6
.
1
9
.
C
T
R
S
P
r
o
f
i
l
e
0
9
F
I
N
A
.2
0
0
2
. Comprehensive e
v
a
l
u
a
t
i
o
ni
n
Parker,R
r
e
c
r
e
a
t
i
o
n therapy -p
h
y
s
i
c
a
ld
i
s
a
b
i
l
i
t
i
e
s,
p
p
.
3
4
2
3
5
2
.I
n:
,
JB
urlingameandT
.B
l
a
s
c
h
k
o
(
E
d
s
.
)
. Assessmentt
o
o
l
sf
o
rr
e
c
r
e
a
t
i
o
n
a
l
d
.
)
.I
d
y
l
lArbor,
t
h
e
r
a
p
ya
n
dr
e
l
a
t
e
df
i
e
l
d
s(
3rd e
I
n
c
.W
a
s
h
i
n
g
t
o
n,USA
ピーターソン, C.
A
.
・S
.L.ガン(谷紀子・水上和子・
9
9
6
. 障害者・高齢者のレクリエー
師同文男訳). 1
ション活動:セラビューティック・レクリエーショ
浅野房世・高江洲義英. 2
0
0
8
. 生きられる癒しの風景
一園芸療法からミリューセラピーへ.人文書院.
京都.
C
a
r
t
e
r,M.
J
,
.G
.E
.VanA
ndelandG
.
M
.R
o
b
b
.2
0
0
3
.
r
T
h
e
r
a
p
e
u
t
i
cr
e
c
r
e
a
t
i
o
n:Ap
r
a
c
t
i
c
a
la
p
p
r
o
a
c
h,3d
e
d
.WavelandP
r
e
s
s
.I
l
1
i
n
o
i
s, US
A
.
C
o
y
l
e,C
.
P
.,W
.
B
.Kinneyand,
JW.S
h
a
n
k
.1
9
91
.A
summaryo
fb
e
n
e
f
i
t
scommont
ot
h
e
r
a
p
e
u
t
i
c
r
e
c
r
e
a
t
i
o
n
.p
p
.
3
5
3
3
7
8
.I
n:C
.
P
. Coyle,W.B.
K
i
n
n
e
y,B
.R
a
i
l
e
ya
n
d,
JW.S
hank(
e
d
s
.
)
.B
e
n
e
f
i
t
s
o
ft
h
e
r
a
p
e
u
t
i
cr
e
c
r
e
a
t
i
o
n:A c
o
n
s
e
n
s
u
sv
i
e
w
.
a
s
h
i
n
g
t
o
nS
t
a
t
e,US
A
.
I
d
y
l
lArbor,W
岩崎テル子・小川恵子・小林夏子・福田恵美子・松房
0
0
5
.標準作業療法学・専門分野・作
利憲(編), 2
東京.
P
e
t
e
r
s
o
n,C
.A
.a
ndN
.
,
JS
t
u
m
b
o
.2
0
0
4
.T
h
e
r
a
p
e
u
t
i
c
r
e
c
r
e
a
t
i
o
nprogram d
e
s
i
g
n:p
r
i
n
c
i
p
l
e
sand
p
r
o
c
e
d
u
r
e
s
.P
e
a
s
o
nE
d
u
c
a
t
i
o
n
.C
a
l
i
f
o
r
n
i
a
,U
SA.
ポパー, C.
R
.
'J,c.エクルス(大西裕・西脇与作訳).
1
9
8
6
. 自我と脳(下).思索社.東京
9
9
9
. リハビリテーション.メデイカ出版.
上田 敏. 1
大阪
上田 敏. 2
0
0
9
. ICFの理解と活用. p
p
.
31.ぎょうさ
れん.東京.
上田
0
0
3
. 鶴見和子・対話まんだら
敏・鶴見和子. 2
(上田敏の巻):患者学のすすめー“内発的"リ
ハピリテーション.藤原書店.東京.
吉田圭一・茅野宏明. 2
0
0
7
. レクリエーション活動援
業療法評価学.医学書院.東京
nd
K
e
t
t
e
n
b
a
c
k
,G
.1
9
9
5
.W
r
i
t
i
n
gSOAPn
o
t
e,2 e
d
.F.
A
.
33
ン・プログラムのっくり方・基本と応用.学苑社.
助法. ミルヴァ書房.京都.