東洋医学を取り入れた運動療 法プログラムで、地域の介護 予防に取り組む

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健康運動指導士・華学和博氏は、10年来、
「運動で病気
を治す」ことをめざして介護予防事業に取り組み、ツボ
などの東洋医学や気功法を生かしたロコモティブシン
ドローム改善、認知症予防の運動療法プログラムなどを
ひざ
開発。高齢者に多い膝や腰などの運動器の痛みを積極的
に改善する運動療法指導は、大きな成果を上げている。
に基づいた治療と、気功法の動作を
シン4台を置く。ツボなど東洋医学
まざまなデータも取っていた。
プログラムの中心になると考え、さ
業のほか、宇治市や城陽市など自治
華学氏は、現在、指圧治療院の事
利用者は、市内在住者などで、利
体の介護予防の地域支援事業を受託
基にした運動療法が特徴である。
用料は2回分チケット1200円で
健 康 教 室 を 多 く 手 が け る と と も に、
し、ロコモや認知症の予防・改善の
め、
長く続けている人が多いと言う。
教室終了者の自主サークルの指導な
歳以上が半数以上を占
華学氏が介護予防事業に取り組ん
どを行っている。自主サークルの育
1回 分。
だのは、介護保険制度実施前の 年
65
祉・ 介 護 関 連 事 業 を 始 め る に あ た
か ら だ。 当 時 勤 め て い た 会 社 で 福
割の一つ」
と話す。
康運動指導士の果たすべき大切な役
成・ 支 援 は 運 動 継 続 に 重 要 で、
「健
マネジャーの資格を持っていたため
企画段階から参加。フィットネス事
業部で 年から介護予防を担当する
年に二次予防事業
( 当 時、
のまま事業を引き継ぐことになりセ
会社が同事業から撤退。華学氏がそ
を抱えており、満足に運動ができな
参加者は膝・股関節・腰などの痛み
特定高齢者施策)
がスタートしたが、
平成
華学指圧治療院健康運動推進セン
ンターを開設し、健康運動指導士の
セ ン タ ー は、 指 圧 治 療 院 の 1・2
開院、 年に院内に健康運動推進セ
和博氏が、平成8年に指圧治療院を
の資格を持つ健康運動指導士・華学
などの
「オリエンタルエクササイズ」
が あ っ た。 気 功 法 や ヨ ガ、 太 極 拳
取り入れて治療した経験とノウハウ
は、運動器疾患の患者を運動療法も
いう強い思いがあり、指圧治療院で
は な く、 運 動 で 改 善 で き な い か 」と
華学氏はもともと
「病気を治療で
をつかみ足首を曲げて手前に引き寄
のせて膝を伸ばし、伸ばした足の指
るいすストレッチは、いすに片足を
た。たとえば、座骨神経痛を緩和す
基に痛みを改善する体操を開発し
そこで華学氏は、気功法の動作を
を改善することが優先課題だった。
能向上トレーニングでは、まず痛み
した。
ン タ ー( 以 下、「 セ ン タ ー」
)を 開 設
18
の有酸素性運動マシン3台、油圧マ
90
たい きょく けん
階にあり延べ床面積は約 ㎡。各種
がフィットネスのこれからのシニア
い人が少なくなかった。運動器の機
こ
ターは、京都府宇治市の住宅街の一
資格も取得した。
ことになった。しかし、程なくして
気功法を取り入れた体操で
膝や腰などの痛みを改善
り、あん摩マッサージ指圧師とケア
16
角にある。あん摩マッサージ指圧師
18
華学指圧治療院 健康運動推進センター代表
健康運動指導士 華学和博氏
介護予防のため、
指圧治療院に
健康運動推進センターを併設
60
18
東洋医学を取り入れた運動療
法プログラムで、地域の介護
予防に取り組む
座骨神経痛を緩和する
「いすストレッチ」
(上)
と
華学和博氏
8
健康づくり 2015.10
また、腰痛を緩和するストレッチは、
せ、そのまま2分間姿勢を維持する。
回程度、毎日行うことで痛みを短期
チ は 自 宅 で も で き、「 自 宅 で 1 日 2
膝痛 名についても、VAS判定が
結 果 が 見 ら れ た( 図 1 参 照 )。 ま た、
点から 点で改善率 %、JKO
%となっており、どちらも改善
年 度 か ら は、 要 支 援 1・2 対 象
が見られた。
率
22
に改善できる」と話す。
87
M評価は 点から 点に減少し改善
29 34
いすストレッチを行うように
るとともに、自宅で1日数回
動 療 法 )の 個 別 指 導 を 実 施 す
理( 痛 み 改 善 体 操 と 後 述 の 運
み改善の個別指導が重要な要素にな
ニングとともに、参加者に応じた痛
れからは集団で行う筋力向上トレー
当 者 も 少 な く な い。 華 学 氏 は、
「こ
になんらかの痛みを抱えたロコモ該
業に移行した。対象者には、運動器
で押圧しながら、足を前後に振って
と膝裏にあるツボをそれぞれ両手指
サージは、椅座位でこの結節を膝頭
き て い る こ と が 多 い。 セ ル フ マ ッ
(しこり)
がで
膝周辺に筋や腱の結節
者が市町村の介護予防の地域支援事
実際に痛みがどの程度軽減
る。事業の運営・指導を行う健康運
適 度 な 刺 激 で ほ ぐ す。 膝 頭 の 周 辺、
けん
たとえば、
変形性膝関節症の場合、
できたのか、華学氏は、腰痛
動指導士は、参加者個々の運動疾患
の太ももの上で転がして大腿四頭筋
15
10
ツボ+運動の
ロコモ運動療法を開発
75∼80
は、参加者自身が行えるツボを刺激
み 改 善 の 運 動 療 法 が 大 切 」。 華 学 氏
合、その状態に合わせて積極的な痛
「高齢者が足腰に痛みを感じる場
タ運動、長座位で患側の足を浮かし
にかかとでしりをたたく足のバタバ
足上げ、うつぶせで寝て両足で交互
下肢の血液循環を促す。椅座位での
行って、膝の可動域制限を緩和して
ログラムを開発した。
てかかとを突き出す、足の甲を伸ば
するセルフマッサージと運動療法プ
レ、 下 肢 や 膝 関 節 の ス ト レ ッ チ を
運動療法では、大腿四頭筋の筋ト
絡マッサージ)。
を緩め、
膝部への血液循環を促す
(経
だいたい
るようスキルを上げる必要がある」
してもらっている。
はVAS(痛み評価)とJLE
膝裏と行い、次にラップの芯を患側
両手指で膝頭と膝裏のツボを押し、結節をほぐす
に適切に、かつ積極的に対応ができ
表 )、 膝 痛 は V A S と J K O
と話す。
点 へ 軽 減、
20
いすの後ろに立って両手で背もたれ
名で
ロコモ予防の運動教室は1クール
週1回6か月間。参加者 ~
参加者の状態に応じた個別プログラ
ムを作成している。集団指導
分間の痛み管
23
Q( 腰 痛 症 患 者 機 能 評 価 質 問
の中で1人約
55
78
M( 変 形 性 膝 関 節 症 患 者 機 能
評 価 尺 度 )を 用 い て、 教 室 参
加者の開始前と6か月後の評
価を行った。その結果、腰痛
点から
名については、VAS判定
は平均
25
VAS
27
15
名が痛みが減ったと評価し
33
30
JKOM
VAS:Visual Analogue Scale
(痛み評価)
JLEQ:Japan Low Back Pain Evaluation Questionnaire
(腰痛症患者機能評価質問表)
JKOM:Japanese Knee Osteoarthritis Measure(変形性膝関節症患者機能評価尺度)
を持ち、両足の指先を浮かせ、かか
10
10
26.8
25.1
26.8
点に軽減、改善率は
35
70∼75
32.8
35.4 35.4
35.3
40
た。 J L E Q 評 価 は 平 均
点から
45
知も
症テ
ス意
トのな
点数
%で、いず認れ
有
改善
健康づくり 2015.10
9
10
10
(歳)
80∼85
26
65∼70
0
運動経験のない二次予防教室参加者
(点)
50
34
5
運動継続している二次予防教室OB
46.5
56
30
27
73
20
22
20
29
30
26
30
34
40
34
33
40
0
と立ちになって腰を少し曲げ、足の
50
膝の痛み n=23
腰の痛み n=30
6か月後
開始前
50
6か月後
開始前
55
(点)
60
56
(点)
60
JLEQ
VAS
0
裏側を伸ばす。これらいすストレッ
図1●教室参加前後の痛みの変化
点だと思う」と華学氏。「健康運動指
ケーションの思想が、病気治療の原
体は自分で治すというセルフメディ
が 宇 治 市 内 に 6 団 体 あ る。「 自 分 の
ける人が多く、OBの自主サークル
名。「調子がよい」と教室終了後も続
業で運動指導した高齢者は約700
華学氏が、これまでに介護予防事
をよくする。スワイショウは、両足
でマッサージし、頭部や全身の血流
面を頭部からかかとまでを手のひら
サージでは、身体の側面、背面、前
う ツ ボ を 刺 激 す る。 ま た 経 絡 マ ッ
の後ろの髪の生え際にある風池とい
会とその前後左右にある四神聡、耳
行う。ツボ刺激は、頭頂部にある百
上げスイング、腸腰筋の筋トレなど
しての腹横筋への刺激、膝上げや膝
導士の勝負」
と期待する。
組 み な ど、
「これからが健康運動指
次予防における認知症予防への取り
段階での運動が重要と指摘する。一
確率の高い軽度認知障害(MCI)の
く な る 」傾 向 が あ り、 認 知 症 移 行 の
が低いほど、認知症発症リスクが高
の軽減につながることが示唆された
がよく、運動の継続が認知症リスク
す足首の前後運動などを行う。
導士は、これからは病気をかかえる
を肩幅に開いて楽に立ち、両手を前
ふう ち
だけの腕振り体操で、毎回 分間行
う。これまでもロコモ教室で行って
華 学 氏 は、「 高 齢 者 で は 身 体 活 動
地域密着な指導と
多職種連携が必要
15
(歳)
80∼85
認知症の予防には、運動習慣が有
の対策が必要」と華学氏。
「 名以下
対応できる地域に密着した小集団で
み で は な く、
「利用者一人ひとりに
の一次予防のような集団での取り組
担当部署と相談し、事業者登録する
また、市町村事業を受託する場合は、
向 上 し 合 う 場 に も し て い る と 言 う。
どとネットワークをつくり、互いに
ムが組織できるよう多職種の
名ほ
一つになった。華学氏は、認知症改
効とされている。華学氏は、運動経
なら広い場所も必要がなく、いつで
る」という人が多いと言う。
善プログラム「プレコグ体操」を開発
験のない二次予防対象高齢者
( 名)
ことを勧める。さらに、ヨガや気功、
徴で、体幹筋トレ+ツボマッサージ
がら動作を行うデュアルタスクが特
して週1回以上の運動を実践してい
た。OBのほとんどは3年以上継続
認知症テストの点数で比較、検証し
管理栄養士など、さまざまな健康関
の運動指導者や看護師、歯科衛生士、
う と き に カ ギ と な る の は、
「フリー
健康運動指導士が個人で事業を行
えば、漢方+運動など新しい取り組
士がもっと目を向けることで、たと
宝 庫 と 考 え て い る。
「健康運動指導
イズは、健康づくりのための知恵の
めいそう
+気功法のスワイショウ(瞑想)から
る人で、運動内容は教室参加時と同
構成されている。
体幹では、たとえば大腰筋を鍛え
ることに重点を置いて、呼吸を意識
その結果、各年代ともOBの成績
様である。
みが生まれ、活動の幅が広がってい
10
連職種の人と連携するネットワーク
改善が地域支援事業の主要テーマの
し、今年から市町村の運動教室で実
もどこでもユビキタスに対応でき
5
と、教室終了後も運動を継続してい
10
施している。プレコグ体操は、2時
認知症テストの点数
20
太極拳などのオリエンタルエクササ
二次予防対象者の場合、これまで
32.8
る」
。そうした場と機会が必要だ。
図2●二次介護予防高齢者における運動継続が認知機能に与える影響
る教室OB( 名)を、5歳階級別に
お り、 教 室 の O B に は、「 忙 し く て
(図2参照)。
対象者もターゲットにした運動指導
後に振り、何も考えないようにする
し しんそう
をする必要がある」と話を重ねる。
認知症改善プログラムを
地域支援事業で推進する
0
JLEQ
VAS
0
10
くはずだ」
と提案している。
27
もスワイショウだけは毎日続けてい
10
10
75∼80
20
20
70∼75
65∼70
0
10
健康づくり 2015.10
開始前
50
間の運動プログラムで、頭を使いな
制 度 改 正 に よ り、 認 知 症 の 予 防・
25
30
26
30
26.8
25.1
26.8
30
VAS
JKO
VAS:Visual Analogue Scale
(痛み評価)
JLEQ:Japan Low Back Pain Evaluation Questionnaire
(腰痛症患者機能評価質問表)
JKOM:Japanese Knee Osteoarthritis Measure(変形性膝関節症患者機能評価尺度)
29
34
40
34
33
40
35.4 35.4
35
35.3
40
膝の痛み n=23
腰の痛み n=30
6か月後
開始前
50
運動継続している二次予防教室OB
46.5
45
55
(点)
60
56
(点)
60
運動経験のない二次予防教室参加者
(点)
50
10
をもつこと」
。 華 学 氏 自 身 は、 チ ー
52