88 健康運動指導士・華学和博氏は、10年来、 「運動で病気 を治す」ことをめざして介護予防事業に取り組み、ツボ などの東洋医学や気功法を生かしたロコモティブシン ドローム改善、認知症予防の運動療法プログラムなどを ひざ 開発。高齢者に多い膝や腰などの運動器の痛みを積極的 に改善する運動療法指導は、大きな成果を上げている。 に基づいた治療と、気功法の動作を シン4台を置く。ツボなど東洋医学 まざまなデータも取っていた。 プログラムの中心になると考え、さ 業のほか、宇治市や城陽市など自治 華学氏は、現在、指圧治療院の事 利用者は、市内在住者などで、利 体の介護予防の地域支援事業を受託 基にした運動療法が特徴である。 用料は2回分チケット1200円で 健 康 教 室 を 多 く 手 が け る と と も に、 し、ロコモや認知症の予防・改善の め、 長く続けている人が多いと言う。 教室終了者の自主サークルの指導な 歳以上が半数以上を占 華学氏が介護予防事業に取り組ん どを行っている。自主サークルの育 1回 分。 だのは、介護保険制度実施前の 年 65 祉・ 介 護 関 連 事 業 を 始 め る に あ た か ら だ。 当 時 勤 め て い た 会 社 で 福 割の一つ」 と話す。 康運動指導士の果たすべき大切な役 成・ 支 援 は 運 動 継 続 に 重 要 で、 「健 マネジャーの資格を持っていたため 企画段階から参加。フィットネス事 業部で 年から介護予防を担当する 年に二次予防事業 ( 当 時、 のまま事業を引き継ぐことになりセ 会社が同事業から撤退。華学氏がそ を抱えており、満足に運動ができな 参加者は膝・股関節・腰などの痛み 特定高齢者施策) がスタートしたが、 平成 華学指圧治療院健康運動推進セン ンターを開設し、健康運動指導士の セ ン タ ー は、 指 圧 治 療 院 の 1・2 開院、 年に院内に健康運動推進セ 和博氏が、平成8年に指圧治療院を の資格を持つ健康運動指導士・華学 などの 「オリエンタルエクササイズ」 が あ っ た。 気 功 法 や ヨ ガ、 太 極 拳 取り入れて治療した経験とノウハウ は、運動器疾患の患者を運動療法も いう強い思いがあり、指圧治療院で は な く、 運 動 で 改 善 で き な い か 」と 華学氏はもともと 「病気を治療で をつかみ足首を曲げて手前に引き寄 のせて膝を伸ばし、伸ばした足の指 るいすストレッチは、いすに片足を た。たとえば、座骨神経痛を緩和す 基に痛みを改善する体操を開発し そこで華学氏は、気功法の動作を を改善することが優先課題だった。 能向上トレーニングでは、まず痛み した。 ン タ ー( 以 下、「 セ ン タ ー」 )を 開 設 18 の有酸素性運動マシン3台、油圧マ 90 たい きょく けん 階にあり延べ床面積は約 ㎡。各種 がフィットネスのこれからのシニア い人が少なくなかった。運動器の機 こ ターは、京都府宇治市の住宅街の一 資格も取得した。 ことになった。しかし、程なくして 気功法を取り入れた体操で 膝や腰などの痛みを改善 り、あん摩マッサージ指圧師とケア 16 角にある。あん摩マッサージ指圧師 18 華学指圧治療院 健康運動推進センター代表 健康運動指導士 華学和博氏 介護予防のため、 指圧治療院に 健康運動推進センターを併設 60 18 東洋医学を取り入れた運動療 法プログラムで、地域の介護 予防に取り組む 座骨神経痛を緩和する 「いすストレッチ」 (上) と 華学和博氏 8 健康づくり 2015.10 また、腰痛を緩和するストレッチは、 せ、そのまま2分間姿勢を維持する。 回程度、毎日行うことで痛みを短期 チ は 自 宅 で も で き、「 自 宅 で 1 日 2 膝痛 名についても、VAS判定が 結 果 が 見 ら れ た( 図 1 参 照 )。 ま た、 点から 点で改善率 %、JKO %となっており、どちらも改善 年 度 か ら は、 要 支 援 1・2 対 象 が見られた。 率 22 に改善できる」と話す。 87 M評価は 点から 点に減少し改善 29 34 いすストレッチを行うように るとともに、自宅で1日数回 動 療 法 )の 個 別 指 導 を 実 施 す 理( 痛 み 改 善 体 操 と 後 述 の 運 み改善の個別指導が重要な要素にな ニングとともに、参加者に応じた痛 れからは集団で行う筋力向上トレー 当 者 も 少 な く な い。 華 学 氏 は、 「こ になんらかの痛みを抱えたロコモ該 業に移行した。対象者には、運動器 で押圧しながら、足を前後に振って と膝裏にあるツボをそれぞれ両手指 サージは、椅座位でこの結節を膝頭 き て い る こ と が 多 い。 セ ル フ マ ッ (しこり) がで 膝周辺に筋や腱の結節 者が市町村の介護予防の地域支援事 実際に痛みがどの程度軽減 る。事業の運営・指導を行う健康運 適 度 な 刺 激 で ほ ぐ す。 膝 頭 の 周 辺、 けん たとえば、 変形性膝関節症の場合、 できたのか、華学氏は、腰痛 動指導士は、参加者個々の運動疾患 の太ももの上で転がして大腿四頭筋 15 10 ツボ+運動の ロコモ運動療法を開発 75∼80 は、参加者自身が行えるツボを刺激 み 改 善 の 運 動 療 法 が 大 切 」。 華 学 氏 合、その状態に合わせて積極的な痛 「高齢者が足腰に痛みを感じる場 タ運動、長座位で患側の足を浮かし にかかとでしりをたたく足のバタバ 足上げ、うつぶせで寝て両足で交互 下肢の血液循環を促す。椅座位での 行って、膝の可動域制限を緩和して ログラムを開発した。 てかかとを突き出す、足の甲を伸ば するセルフマッサージと運動療法プ レ、 下 肢 や 膝 関 節 の ス ト レ ッ チ を 運動療法では、大腿四頭筋の筋ト 絡マッサージ)。 を緩め、 膝部への血液循環を促す (経 だいたい るようスキルを上げる必要がある」 してもらっている。 はVAS(痛み評価)とJLE 膝裏と行い、次にラップの芯を患側 両手指で膝頭と膝裏のツボを押し、結節をほぐす に適切に、かつ積極的に対応ができ 表 )、 膝 痛 は V A S と J K O と話す。 点 へ 軽 減、 20 いすの後ろに立って両手で背もたれ 名で ロコモ予防の運動教室は1クール 週1回6か月間。参加者 ~ 参加者の状態に応じた個別プログラ ムを作成している。集団指導 分間の痛み管 23 Q( 腰 痛 症 患 者 機 能 評 価 質 問 の中で1人約 55 78 M( 変 形 性 膝 関 節 症 患 者 機 能 評 価 尺 度 )を 用 い て、 教 室 参 加者の開始前と6か月後の評 価を行った。その結果、腰痛 点から 名については、VAS判定 は平均 25 VAS 27 15 名が痛みが減ったと評価し 33 30 JKOM VAS:Visual Analogue Scale (痛み評価) JLEQ:Japan Low Back Pain Evaluation Questionnaire (腰痛症患者機能評価質問表) JKOM:Japanese Knee Osteoarthritis Measure(変形性膝関節症患者機能評価尺度) を持ち、両足の指先を浮かせ、かか 10 10 26.8 25.1 26.8 点に軽減、改善率は 35 70∼75 32.8 35.4 35.4 35.3 40 た。 J L E Q 評 価 は 平 均 点から 45 知も 症テ ス意 トのな 点数 %で、いず認れ 有 改善 健康づくり 2015.10 9 10 10 (歳) 80∼85 26 65∼70 0 運動経験のない二次予防教室参加者 (点) 50 34 5 運動継続している二次予防教室OB 46.5 56 30 27 73 20 22 20 29 30 26 30 34 40 34 33 40 0 と立ちになって腰を少し曲げ、足の 50 膝の痛み n=23 腰の痛み n=30 6か月後 開始前 50 6か月後 開始前 55 (点) 60 56 (点) 60 JLEQ VAS 0 裏側を伸ばす。これらいすストレッ 図1●教室参加前後の痛みの変化 点だと思う」と華学氏。「健康運動指 ケーションの思想が、病気治療の原 体は自分で治すというセルフメディ が 宇 治 市 内 に 6 団 体 あ る。「 自 分 の ける人が多く、OBの自主サークル 名。「調子がよい」と教室終了後も続 業で運動指導した高齢者は約700 華学氏が、これまでに介護予防事 をよくする。スワイショウは、両足 でマッサージし、頭部や全身の血流 面を頭部からかかとまでを手のひら サージでは、身体の側面、背面、前 う ツ ボ を 刺 激 す る。 ま た 経 絡 マ ッ の後ろの髪の生え際にある風池とい 会とその前後左右にある四神聡、耳 行う。ツボ刺激は、頭頂部にある百 上げスイング、腸腰筋の筋トレなど しての腹横筋への刺激、膝上げや膝 導士の勝負」 と期待する。 組 み な ど、 「これからが健康運動指 次予防における認知症予防への取り 段階での運動が重要と指摘する。一 確率の高い軽度認知障害(MCI)の く な る 」傾 向 が あ り、 認 知 症 移 行 の が低いほど、認知症発症リスクが高 の軽減につながることが示唆された がよく、運動の継続が認知症リスク す足首の前後運動などを行う。 導士は、これからは病気をかかえる を肩幅に開いて楽に立ち、両手を前 ふう ち だけの腕振り体操で、毎回 分間行 う。これまでもロコモ教室で行って 華 学 氏 は、「 高 齢 者 で は 身 体 活 動 地域密着な指導と 多職種連携が必要 15 (歳) 80∼85 認知症の予防には、運動習慣が有 の対策が必要」と華学氏。 「 名以下 対応できる地域に密着した小集団で み で は な く、 「利用者一人ひとりに の一次予防のような集団での取り組 担当部署と相談し、事業者登録する また、市町村事業を受託する場合は、 向 上 し 合 う 場 に も し て い る と 言 う。 どとネットワークをつくり、互いに ムが組織できるよう多職種の 名ほ 一つになった。華学氏は、認知症改 効とされている。華学氏は、運動経 なら広い場所も必要がなく、いつで る」という人が多いと言う。 善プログラム「プレコグ体操」を開発 験のない二次予防対象高齢者 ( 名) ことを勧める。さらに、ヨガや気功、 徴で、体幹筋トレ+ツボマッサージ がら動作を行うデュアルタスクが特 して週1回以上の運動を実践してい た。OBのほとんどは3年以上継続 認知症テストの点数で比較、検証し 管理栄養士など、さまざまな健康関 の運動指導者や看護師、歯科衛生士、 う と き に カ ギ と な る の は、 「フリー 健康運動指導士が個人で事業を行 えば、漢方+運動など新しい取り組 士がもっと目を向けることで、たと 宝 庫 と 考 え て い る。 「健康運動指導 イズは、健康づくりのための知恵の めいそう +気功法のスワイショウ(瞑想)から る人で、運動内容は教室参加時と同 構成されている。 体幹では、たとえば大腰筋を鍛え ることに重点を置いて、呼吸を意識 その結果、各年代ともOBの成績 様である。 みが生まれ、活動の幅が広がってい 10 連職種の人と連携するネットワーク 改善が地域支援事業の主要テーマの し、今年から市町村の運動教室で実 もどこでもユビキタスに対応でき 5 と、教室終了後も運動を継続してい 10 施している。プレコグ体操は、2時 認知症テストの点数 20 太極拳などのオリエンタルエクササ 二次予防対象者の場合、これまで 32.8 る」 。そうした場と機会が必要だ。 図2●二次介護予防高齢者における運動継続が認知機能に与える影響 る教室OB( 名)を、5歳階級別に お り、 教 室 の O B に は、「 忙 し く て (図2参照)。 対象者もターゲットにした運動指導 後に振り、何も考えないようにする し しんそう をする必要がある」と話を重ねる。 認知症改善プログラムを 地域支援事業で推進する 0 JLEQ VAS 0 10 くはずだ」 と提案している。 27 もスワイショウだけは毎日続けてい 10 10 75∼80 20 20 70∼75 65∼70 0 10 健康づくり 2015.10 開始前 50 間の運動プログラムで、頭を使いな 制 度 改 正 に よ り、 認 知 症 の 予 防・ 25 30 26 30 26.8 25.1 26.8 30 VAS JKO VAS:Visual Analogue Scale (痛み評価) JLEQ:Japan Low Back Pain Evaluation Questionnaire (腰痛症患者機能評価質問表) JKOM:Japanese Knee Osteoarthritis Measure(変形性膝関節症患者機能評価尺度) 29 34 40 34 33 40 35.4 35.4 35 35.3 40 膝の痛み n=23 腰の痛み n=30 6か月後 開始前 50 運動継続している二次予防教室OB 46.5 45 55 (点) 60 56 (点) 60 運動経験のない二次予防教室参加者 (点) 50 10 をもつこと」 。 華 学 氏 自 身 は、 チ ー 52
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