【69】濃厚血小板の長期保存法の開発(第7報)

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濃厚血小板の長期保存法の開発(第 7 報)
◎龍 正樹 1)、黒田 真希 1)、坂根 潮莉 1)、山本 千尋 1)、菊池 亮 2)
熊本保健科学大学医学検査学科 4 年生 1)、熊本保健科学大学医学検査学科教員 2)
【目的】血小板の役割は“必要な時に必要な場所で活性化し
ってきた。その結果、GDP は保存中の血小板活性化の進行
て止血機能を発揮する”ことにある。活性化した血小板はア
を軽減し、血小板凝集能が保持される例を報告した。今回
ラキドン酸代謝が亢進し、血小板活性化作用を持つトロン
は、GDP の添加濃度を高めて検討した。【試料・方法】九
ボキサン A2(TXA2)や ADP などを放出する。TXA2 や
州ブロック血液センターより譲渡された採血後 2~4 日目の
ADP は周囲の血小板を活性化させる。アフェレーシス装置
で採取された濃厚血小板(PC)は遠心操作により活性化が
「ALT 落ち PC」を PO 製バッグに分注し、GDP 1, 2,
10mM(終濃度)添加し、22℃振盪保存下で継時的に血小板
惹起されている。また、22℃で振盪することにより多くの
凝集率と血小板活性化マーカー(P-セレクチン発現率;
酸素を要求し、酸素が不足するとエネルギー効率の悪い嫌
CD62P 陽性率)をフローサイトメーター(FCM)で測定した。【結果
気性代謝で ATP を産生しはじめ、その結果、乳酸が蓄積し
および考察】健常者静脈血からシリンジ採血した多血小板
て保存バッグ内の pH は酸性に傾く(血小板は pH6.4 以下
血漿(PRP)のコラーゲン刺激凝集率は 80%以上、
で不可逆性のダメージを受ける)。これらの理由により保
CD62P 陽性率は 3%未満である。PC は、GDP 無添加(生
存中に活性化が進行し、血小板機能は低下する。我々の以
食添加)では採血後 3 日目の凝集率は 60%前後であるが、
前の研究で、採取後 4~7 日目の PC は血小板細胞膜のスポ
保存経過とともに凝集率は漸減した。CD62P 陽性率は多く
ンジ状変性、細胞内顆粒の脱顆粒などを電子顕微鏡観察で
の PC で 35%以上を示しており、保存中に陽性率は漸増
確認している。したがって、なるべく活性化しない採血法
(活性化が進行)した。GDP 添加 PC の凝集率は、無添加
や活性化の進行の少ない保存法が望ましい。そこで、アラ
よりも高く保持される傾向が認められ、2 日間程度延長す
キドン酸代謝抑制効果と細胞膜保護作用をもつグリチルリ
る検体もみられた。その効果は GDP 濃度に比例する傾向が
チン酸二カリウム(GDP)に着目して GDP の添加実験を行
みられたが、10mM では減少した。TEL 096-275-2137