[7-35] H27 農業農村工学会大会講演会講演要旨集 衝撃弾性波によるトンネル背面空洞探査に関する実験 Experiments on applicability of detection of cavities behind tunnels by impact elastic-wave method 茨田 匠 ○ 浅尾 瞳 澤田 豊 河端 俊典 IBATA Takumi, ASAO Hitomi, SAWADA Yutaka, KAWABATA Toshinori 1. はじめに 水路トンネルなどの覆工コンクリートは,アーチ型 の断面形状を持つことで地圧に耐えうる構造となって 地山 いる.このような構造物におけるコンクリート背面空 洞の存在は,構造物の機能低下や突発性の崩壊を招く として適切な検査が実施される必要がある.一般的に 背面空洞の探査には電磁波レーダ法が用いられる が,有筋構造物を対象としたとき探査が著しく困 空洞 コンクリート 打撃(電磁式) 弾性波経路 受信 センサ 探査面 難になる.それに対し,衝撃弾性波法は用いる音波の 波長帯域が低く鉄筋の影響を受けにくいとされる. 筆者らは衝撃弾性波を探査媒体として,Fig. 1 を探 Fig. 1 衝 撃 弾 性 波 法 に よ る 測 定 Measurement of shock elastic wave method 査のイメージとする背面空洞探査実験を行い,コンクリート中の鉄筋の有無にかかわらず突発性崩 壊の対策として有効である空洞深さ 250mm での探査が可能であり,探査に最適な受信周波数が 20kHz であることを明らかにした. 一方, 背面空洞の面積に関する評価はほとんど行われていない. また,背面空洞内には崩れた地山が存在することも多いが,この場合の測定の可否も明らかでない. そこで本研究では,衝撃弾性波法の実構造物への適用へ向けて,空洞面積や空洞内の崩落土の影 響を考慮した背面空洞探査実験を実施し,そのときの測定の可否,測定精度を評価した. 2. 異なる面積における背面空洞探査実験 本実験では,木枠とけい砂を用いて Fig. 2 のよう な空洞を土槽内に作製し,その上にコンクリート試 験体を載せることで Fig. 1 の状況を模擬した.空洞 の 面 積 は 500×500mm , 250×250mm と し , 深 さ は 250mm と し た . コ ン ク リ ー ト 試 験 体 は 縦 横 1000×1000mm であり,厚さは 242mm,無筋の試験 体と有筋の試験体を用いた. 測定には電磁ハンマーと受信センサーを使用し た.電磁ハンマーを用いることにより,機械的に測 定面から垂直かつ打撃強さが一定の波動エネルギー Fig. 2 背 面 空 洞 The model of back cave を入力可能であり,同一測点上における繰り返し測定も容易に行うことができる.計測時 の受信周波数は既往の研究で得られた値である 20kHz とした. Fig. 3 にそれぞれの空洞面積において有筋の試験体を用いたときの測定波形を示す. 試 験体中の鉄筋の有無による測定波形への影響は全く見られなかった.図中の 1 本目の線分 は弾性波がコンクリート試験体を透過するのに要した時間の計算値,2 本目は地盤から の反射波を捉えた時間を示す.Fig. 3 よりいずれの空洞面積においても 地盤からの反射 神 戸 大 学 大 学 院 農 学 研 究 科 Graduate School of Agricultural Science, Kobe University キーワード:非破壊検査・衝撃弾性波・背面空洞 − 742 − 出力電圧(mV) 800 1.54 空洞面積250×250mm 空洞面積2502mm2 400 0 -400 推定空洞深さ 243mm -800 0.13 0 1 2 800 出力電圧(mV) 波 を明瞭に受信することができることがわ かる. また,得られた値から試験体の透過時間 を除き,往復時間であるため 2 で除し,空 洞内の音速(気中の音速 345m/s)を乗じる ことで推定空洞深さを算出することができ る.得られた推定空洞深さを Fig. 3 の赤枠 内に示す.このとき設定空洞深さは 250mm であることから ,いずれの空洞深さにおい ても非常に正確な推定が可能であることが 明らかになった. 1.58 400 3 時間(ms) 4 5 6 空洞面積500×500mm 空洞面積2502mm2 0 -400 推定空洞深さ 250mm -800 0.13 0 1 2 3 時間(ms) 4 5 6 Fig. 3 異なる空洞面積における出 力 電 圧 の 変 化 Changes of output voltage in different dimension 3. 崩落土の影響に関する背面空洞探査実験 背面空洞内部には地山の一部が崩落し堆 積することがある.本実験ではこの状況を 模 合板 模擬崩落土 擬崩落土を用いて再現し,より実構造物に近 単管 い状況での測定の可否,測定精度を評価した. コンクリート試験体 受信 打撃 試験体,計測機器は先の実験と同一である. クランプ ~ ~ 用いた模型を Fig. 4 に示す.コンクリート なお,空洞深さは 300mm とした.本実験で は試験体の下から測定を実施した ため,模擬 崩落土を設置しない状態 の測定を行い,土槽 を用いた実験と整合性があることを確認した Fig. 4 上で模擬崩落土を設置した実験を行った. 模擬崩落土の影響に関する実験の模式図 Pattern diagram of the examination on influence of collapse soil 結果を Fig. 5 に示す.グラフから模擬崩落 れていることがわかり,赤枠中に示した推定 空洞深さも設定空洞深さ に対して非常に精度 800 出力電圧(mV) 土の有無に関わらず,地盤の反射波を捉えら の良いものである. 1.86 0 -400 -800 0.13 0 推定空洞深さ 298mm 1 2 また,この結果は矢板工法により施工され 能であることを示している. 4. まとめ 800 出力電圧(mV) 空洞内部に矢板が存在する場合にも適用が可 面空洞探査は実構造物の状況に近い環境 を 模擬した場合も有効であることが明らかに 3 時間(ms) 4 1.82 5 6 崩落土あり 400 0 -400 -800 0.13 0 以上の結果から,衝撃弾性波法による背 崩落土なし 400 推定空洞深さ 292mm 1 2 3 時間(ms) 4 5 6 Fig. 5 崩落土に関する出 力 電 圧 の 変 化 Changes of output voltage in the examination about collapse soil なった. 参考文献 池 田 和 彦 ,秋 鹿 為 之:土 木 分 野 に お け る 衝 撃 弾 性 波 に よ る 非 破 壊 測 定 ,土 と 基 礎 ,287,pp.39-43,1981. 茨田 匠,浅尾 瞳,澤田 豊,河端俊典:衝撃弾性波を用いたコンクリート構造物の背面空洞深さ測 定 に 関 す る 実 験 , H26 度 農 業 農 村 工 学 会 大 会 講 演 会 講 演 要 旨 集 , 2014. − 743 −
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