附中研究紀要57_p.58

5 音楽
音楽活動を支える基礎的な能力をはぐくむ -思考ツールをいかした授業の工夫-
森 美幸
本論の要旨
「美しいものを見て,美しいと感じる」,そんな当たり前に思える感情を,日々忙しく過ごしている現
代の子どもたちは,どれくらい持っているのかと疑問を持つ。その中で,授業における音楽活動を通して,
感動できる場を多く作り,豊かな情操へと繋げたいと考える。中学校音楽科の目標にも「豊かな情操を養
う」と示されている。目標の内容は,主に4つの部分で示されており,音楽活動を通して,その4つ(音
楽を愛好する心情・音楽に対する感性を豊かに・音楽活動の基礎的な能力・音楽文化の理解)を総合的に
作用させ,それが豊かな情操を養うことに通じると考える。
キーワード
思考ツール,思考力,判断力,表現力
りに持った「思い」や「意図」を実際にいろいろ試
す中で「このように演奏したい」と「判断」するこ
とである。「B 鑑賞」の場合は,知覚・感受したこ
とに「思い」や「意図」を持って,そのよさを自分
なりに判断して批評文を書くことである。最後に「判
断」したことを表現する表現力には二種類ある。思
考・判断したことを言葉で表現する「言語表現」と,
思考・判断したことを技能で表現する「音楽表現」
の二つである。
思考力・判断力・表現力がみがかれる(はぐくま
れる)ことで,音楽に対する知識・理解が増えてい
く。それと平行して,主体的に取り組む態度も養わ
れる。そうすることで,学習指導要領の目標にある
「生涯にわたって音楽を愛好する力」が育まれ,
「音
楽を愛好できる力」が生まれるのではないかと考え
1.研究主題によせて
る。
1はじめに
㻌 音楽科で身に付けたい豊かな情操は,歌唱表現・
学習指導要領における「音楽活動の基礎的な能力」
器楽表現・創作表現・鑑賞といった活動そのもので
とは,①主体的に取り組む態度,②思考力・判断力
はなく,活動を通してはぐくまれるものである。生
・表現力,③基礎的な知識及び技能である。音楽活
涯にわたって楽しく豊かな音楽活動ができるための
動で身に付けさせたい力は,表現や鑑賞,創作等の
基になる能力を伸ばすためには,音楽を形づくって
活動そのものではなく,活動を通して何がはぐくま
いる要素が,「知覚」・「感受」することと結びつ
れたかである。
くことが最も重要だと考える。その音楽を形づくっ
思考力・判断力・表現力について,音楽活動の過
ている要素は,学習指導要領に新設された〔共通事
程では,まず思考力が働く。「思考」は,音楽を知
項〕に示されている。「知覚」「感受」したことに
覚(聴き取り)・感受(感じ取り)し,それをどの
自分なりの「思い」や「意図」を持つこと,つまり
ように表現するのか,自分なりに「思い」や「意図」
「思考」する力である「思考力」,思考したことを
を持つことである。次に思考したことを「判断」す
試すことで自分はこう演奏したい,こう批評すると
る判断力が働くが,「A 表現」の場合,まず自分な
「判断」する力である「判断力」,判断したことを
—音楽
58 —
表現する力である「表現力」,この三つをキーワー
ドとし,音楽活動の基礎的な能力をはぐくむための
研究を実践していきたいと考える。また,授業にお
いて,思考→判断→表現を段階的によりわかりやす
く考えるための思考ツールを作成し,活用していく
授業を研究実践していきたい。
(2)研究のねらい
「以前のワークシート1」
これまで実践してきた学習プリントの様式は,穴
埋め問題形式や,学習した曲を聴いての感想などを
また,ステップごとに記入し結びつけていくので
1つの枠に書いていくものであった。そうすると生
矢印を付けるなど生徒なりの工夫も見られたが,振
徒は,穴埋めの部分のみが重要と捉え,感想には「よ
り返って見るとどう結びついているのかが大変わか
かった」等の漠然とした感想が多くなる傾向にあっ
りにくいものとなっていた。
た。
そこで,思考ツールを使用し記入方法を工夫する
ことで視覚的効果があり,生徒の頭の中で繰り広げ
られている「思考→判断」がわかりやすく整理され,
豊かな「表現力」へと繋がるのではないかと考えた。
また,「表現力」への繋がりとして,第2次の創作
活動にいかしていけると考えた。まずは音楽の仕組
みに気付き,それを創作の際に活用できることが大
「以前のワークシート2」
切である。例えば,音が徐々に上昇していくことで
走っている様子を表し,音が大きく高い音へと飛ぶ
そこで,考えたのが同心円チャートを使用するこ
ことで一気に浮かんでいく様子を表すなど,イメー
とである。しかし,同心円チャートをそのまま使用
ジしたことを音楽表現に変化できる力をつけたい。
すると今回の学習過程において4つの項目に絞るこ
とができないため,三枠目から線を足し,オリジナ
(3)研究仮説
ルの同心円チャートを作成した。
音楽の学習において,あらゆる分野での思考ツー
ルの活用において,「思考→判断→表現」の過程を
段階的に進めることにより,視覚的にも整理され,
生徒も思考しやすくなり,思考・判断したことを表
音
現へと繋げ,音楽活動の基礎的な能力がはぐくまれ
ると仮説する。また,これを繰り返すことで身に付
けた力により,他の題材においても表現の幅が広が
ると考えられる。
楽
(4)研究方法
これまでの鑑賞では,曲を聴いて「○○のようだ」
同心円チャート(オリジナル)
など,感じたことを答えたり,「力強い音が鳴って
いる」など,音楽の仕組みを答えたりと,2種類の
同心円チャートを用いることで,聴き取らせたい
答え方が入り交じってしまうワークシートを使用し
ポイントを絞り,何について考えさせるのかを順序
ていた。
立てて行うことができるため,感じ取りと音楽の仕
そこで,感受と知覚を分けて考えさせ,書かせる
組みの関係が明確になると考えた。また,同心円チ
ことができないかと考えた。以前に作成したワーク
ャートは感受と知覚が混同することなく記入できる
シートは,横並びに書いていくものであった。順序
ため,生徒は自分が何について考えているのかがわ
通りに枠があるのだが,自分の考えと他者の考えが
かりやすくなり視覚的な効果も生まれると予想し
混同し,順番に記入しても見にくいものとなり,個
た。
人の評価に繋がりにくくなっていた。
思考ツールを使用する授業において,板書はせず
—
59—
音楽
に実物投影機を使用し,教師はプリントに同時に記
入していく。そうすることで,生徒はどこに何を記
映画「ジョーズ」から「ジョーズのテーマ」や映画「E
入するのかが一目瞭然となる。
T」から「フライングテーマ」は誰もが知っている曲であ
る。この題材では,映画音楽をその場面とかかわらせ,音
楽を形づくっている要素に着目して言語化させる言語表
2.授業実践
現を行うことで,要素・仕組みを聴き取り〔知覚し〕,そ
㻔1㻕題材名,対象学年,授業時数
の働きを生み出すよさなどを感じ取る〔感受する〕という
イメージをもたらす音楽の秘密を探ろう
過程が音楽的な感受となり,感性を高め,思考・判断し表
映画「ジョーズ」から“ジョーズのテーマ”
現することへとつなげていきたい。 映画「ET」から“フライングテーマ”
第1学年 全3時間
3学習目標
イメージをもたらす音楽の秘密を探ろう
2題材によせて
2年前から現行の教育課程が実施され,音楽科において
も中学校学習指導要領において目標や内容が改善されて
4学習計画
第1次 映画音楽の場面や感情に合った音楽表現の
いる。
豊かさや音楽の効果から,音楽を形づくって
そのなかに指導のねらいや手だてを明確にし,生徒が感
いる要素を知覚・感受している。
性を高め,思考・判断し,表現する一連の過程を重視した
1時間
学習を充実することが求められており,このため内容の全
第2次 イメージしたことを音楽の仕組みと関わらせ,創
作表現する。 体構造を見なおし,表現及び鑑賞に関する能力を育成する
上で共通に必要となる〔共通事項〕が新たに示された。
そこで,この題材では映画音楽を鑑賞教材とし,学習指
1時間
第3次 創作作品を発表する。 1時間
導要領の内容は,「B鑑賞」(1)鑑賞の事項ア(音楽を
5本時の目標 〔第1時〕
形づくっている要素や構造と曲想とのかかわりを感じ取
音楽表現の効果から,知覚・感受したことを音楽的
って聴き,言葉で説明するなどして,音楽のよさや美しさ
な根拠をもって自分の言葉で表現する。
を味わうこと),〔共通事項〕では,音色,リズム,速度,
強弱,などを扱っていく。
6評価規準
1年生は音楽を愛好する心情が育っており,表現活動に
①映画音楽を,物語の流れや背景と関連させ,自己のイメ
おいてもとても力を持っている。しかし,鑑賞の分野にお
ージを広げながら聴く学習に主体的に取り組もうとして
いては,要素や構造の働きによって生み出される曲想との
いる。
関わりを感じ取って聴く活動の積み重ねが,あまりできて
②イメージしたことを音楽の仕組みと関わらせ,創作表現
いないのが現状である。よって,このような学習を深めて
することに意欲的に取り組もうとしている。
【関心・意欲・態度】
いくことが音楽をより主体的に聴き味わうことにつなが
ると考え,鑑賞の能力を育てることでさらに表現力の拡大
③ジェットコースターの動きからイメージする動きに,音
へとつなげたい。
楽を形づくっている要素〔音色・リズム・速度・旋律・強
弱〕と関わらせて創作している。 【音楽の感受】
④自分のイメージと音楽の要素とを関わらせて創作表現
する技能を身に付けている。 【表現の技能】
⑤場面や感情に合った音楽表現の豊かさや音楽の効果な
どから,音楽を形づくっている要素〔音色・リズム・速度
・強弱〕を知覚したり雰囲気を感じ取っている。
【鑑賞の能力】
—
60 —
音楽
7.本時の学習過程(第1時)
学習内容・学習活動
導 1.音楽の持つ効果について考える。
入
○指導・◆評価・★論理的思考を促す具体的な方策判・ゆ・ツ
○身の回りの音楽効果について考えさせ,主に映像音楽について話し
合わせる。
展 2.本時の課題を知る。 開
映画音楽から感じ取ったことを,音楽の要素と結びつけて考えよう
3.「ET」「ジョーズ」の画像を見た ○2種類の画像を見せ,絵からくる印象を発表させる。
印象を発表する。
◆>音楽への関心・意欲・態度①@
ツそれぞれの曲を聴いて思い浮かんだイメージを図や文章でワ
ークシートに書かせる。
4.2つの映画の音楽を聴き,感じ取ったこ
とをまとめる。
判★感じ取ったことは,
音楽のどのようなところからイメージしたの
かを〔音色・リズム・速度・強弱〕などの要素と結びつけて考えさせ
5.感じ取ったことを,音楽の要素と結びつ る。
けて聴き取る。
ゆ★ジョーズの速度について再度考えさせる。
ま
6.6.音楽の要素とイメージとの結びつきにつ ○音楽から知覚・感受したことをまとめさせる。
と いてまとめる。
め
8授業の実際の様子と考察
で音楽はあらゆるところに使用されていることを考
映画「ジョーズ」の“ジョーズのテーマ”や,映
えさせた。「スーパーマーケット」「駅(お知らせの
チャイム)」「CM」「ドラマ」「映画」と,このよう
ている曲である。この題材は映画音楽をその場面と
に挙げていくときりがないくらいであることに気づ
関わらせ,音楽を形づくっている要素に着目して言
く。例えばサッカー関係の番組で使用されている曲
語化させる言語表現を行うことで,要素・仕組みを
を例に挙げると,オペラ「アイーダ」の「凱旋行進
聴き取り,その働きを生み出すよさなどを感じ取る
曲」や「勝利の歌」が流れていることが多い。生徒
過程が音楽的な感受となり,感性を高め,思考・判
に「凱旋行進曲」をピアノで弾いて聴かせると,誰
断し表現することへとつなげることができる。
もが「あぁ~!知ってる」という反応を見せる曲で
これらの過程で思考ツールを活用していくことに
ある。しかし,なぜその曲が使用されているのかは,
ほとんど知らない状態である。その曲のタイトルや
との関わりを,考えやすくさせていると感じた。同
場面の説明をすると,
「なるほど!」という反応を見
心円チャートは,内側に記入されていることに対し
せ,意味のある曲なんだとわかり,その後はまた違
て広げて考え,的を絞り,そこからさらに展開して
った聴き方になる。
また,普段何気なく耳にしている音でも,気にし
また,思考ツールは今回のように思考するための
て聴いてみると,よく考えられているものである。
ツールのみならず,整理を行うツールにも活用でき
例えば,京都の地下鉄で電車の到着を知らせる音は,
る。これまでのワークシートといえば,重要項目の
箏の音色である。いかにも「和」を思わせる音色で
穴埋めや一つの枠内に感想を記入するパターンが多
あり,古都である京都に合っていることに気がつく。
かったが,例えば,Yチャートを活用することで,
このように効果的に使用されている音楽や音には
作曲者や楽器の特徴など,ポイントを絞って記入す
意味があることに気づかせた後,今回の題材目標で
ることができ,その項目において何が重要なのかが
ある「イメージがもたらす音楽の秘密を探る」こと
明確になるため,生徒も理解しやすくなった。
であると伝え,導入とした。まず,
「E.T.」
「ジョ
本題材での授業は,まず初めに,生活している中
—
61 —
音楽
楽
より,要素や構造の働きによって生み出される曲想
いくことを可能にした。
音
画「E.T.」の“フライングテーマ”は誰もが知っ
ーズ」をイメージするそれぞれの画像をスクリーン
音が暗い夜,
「広がっていく」に対し,音がだんだん
に映し,印象を発表させた。
大きく,だんだん高音に,スピードが速い,
「宇宙」
どちらも有名な映画であるが,
「E.T.」については
に対し,一瞬止まるかのような時がある,高い音の
半数の生徒が観ており,
「ジョーズ」においては観た
連続で星が流れているような,など,抱いたイメー
ことがない生徒がほとんどであった。画像を見るだ
ジは見事に音楽の仕組みによるものであると生徒は
けではあるが,イメージするには十分なようであっ
気づかされる。
た。
「E.T.」に対するイメージ
・自転車が空を飛んでいる!
・エイリアン?
・月がきれい
「ジョーズ」に対するイメージ
・恐い
・食べられそう
・緊迫感
上記の意見などが挙がった。
映画の詳しい内容を知る生徒も知らない生徒も,
「ジョーズ」では,クレッシェンドの効果や,高い
音楽だけを聴いてどのようなイメージを持つのか,
音域のところでも低い音がかすかに聴こえるなど,
作曲者の意図するイメージを持つのか,そうでない
恐怖を表すための音楽効果を聴き取っていた。
のかがとても興味深いものとなる前段階の内容とな
った。
この曲においては,ほとんどの生徒が「だんだん
速くなっているから迫ってくると感じる」と答えて
まず同心円チャートのワークシートを配り,1枠
目に映画のタイトルを記入させる。
いるが,最後にもう一度冒頭を聴き確認すると,実
際はそうではなく,同じリズムでだんだんと音を短
次に,音楽を聴いて,その音楽から頭に浮かんだ
くしているだけであることに気づく。この発見は生
イメージを同心円チャートの2枠目に思いつくだけ
徒にとって大きな発見であった。
書かせる。多数の生徒が挙げる4つのイメージにし
また,この4枠目では,自分の考えと他者の考え
ぼり,机間支援している間にあらかじめ発表者を決
とが入り交じった記入とならないよう,点線で半分
めておき,発表させる。
自 の枠には自分の考えを記入し,残
に分けておき,○
りの半分には他者の考えを記入させた。
「E.T.」 「ジョーズ」
・宇宙 ・迫ってくる
1 枠目には「感受」
,4 枠目には「知覚」
,と段階
・広がっていく ・ドキドキ
を経て考えさせることで,普段から曲を聴き自然と
・夜景 ・海底
「感じ取っている(感受)」ことは,音楽の仕組みに
・壮大 ・恐怖感
よるもので,その仕組みを細かく「聴き取って(知
どのクラスも上記のようなイメージが挙がってき
覚)
」みると,様々な法則に気づくことができる。そ
た。その他,夢の中・美しい景色や戦い・冒険など
の「気づき」を鑑賞のみで終わらせることなく,仕
が出ていた。
組みを利用し,創作活動へと繋げる授業展開を工夫
一つの音楽に対するイメージは,ほとんどの生徒
していきたいと考える。
が同じものを持つことがわかった。というのも,前
〔新たな発見や気づき〕
段階での画像が大きく関わっていると言える。
・音の高さや大きさの組み合わせ次第で変わる。
「E.T.」
「ジョーズ」
,それぞれの音楽を聴いて
・音楽には,速くなったと感じても,実はテンポ
出たイメージは,音楽のどのようなところからくる
が一緒だということもある。
ものなのかを考えさせ,同心円チャートの4枠目に
・曲にはいろいろな楽しみ方がある。
記入させる。その際,もう一度曲を聴かせる。
・曲には想像をふくらます力がある。
「E.T.」では「壮大」に対し,低い音から高い
・音楽で風景や心情がわかる。
音への差が大きい(メロディーに違う楽器が使われ
・音を短くすることで速く聴こえさせる。
ている)
,クレッシェンドがついている,「夜景」に
・曲を意識して聴くと,いろいろなことがわかっ
対し,鉄琴の高い音がキラキラ輝く星のよう,低い
てくる。
音楽
—
62 —
・身近な曲の楽しみ方が増えた。
ていく。このようにツールを使用することで,重要
・音楽の仕組みには様々な可能性がある。
語句のみを覚えるのではなく,関連する言葉を交え
・人には感じ方の違いがある。
ながら重要語句を身に付けることができる。
授業の振り返りより
〔思考ツールを使用して〕
・考え方を広げることができる。
・思いを整理しやすかった。
・まとめやすかった。
・自分と友だちの考えをうまくまとめられた。
・考えやすかった。
授業の振り返りより
9研究を通してのまとめ
音楽では「言語表現」と「音楽表現」の2種類が
バッハについてワークシート
ある。今回の研究過程で,「言語表現」からの「音
楽表現」をより充実したものにするためには,ワー
クシートの工夫が必要であった。各グループでの生
徒の話し合いを聞いていると,とてもおもしろい創
意工夫を考え出しているのだが,それをワークシー
トに残す過程において,うまく進んでいないと感じ
ていた。やはり,「思考」を充実しないと「判断」
へと繋がらないため,聴き取り・感じ取りしたこと
を,いかにわかりやすく,考えやすくその後の「判
断」へと繋げるか,そのポイントとなるのが,思考
ツールを活用することであると考える。同じ事を考
ベートーヴェンについてワークシート
えさせても,書き方を変えるだけで生徒の持つ能力
また,すべて自分で記入しているため,記憶にも残
合わせた思考ツールの活用,また,思考ツールをオ
りやすく,効果的であると考える。
リジナルに工夫した使い方を考え実行し,今後の研
本来思考ツールは,思考過程が見えるツールとな
究にいかしていきたい。
るものであるが,このように整理するためにも利用
今年度の授業において,これまで使用してきたプ
できる。
リントの形式をやめ,全てにおいて思考ツールを使
今年度を通して思考ツールの使用を試み,題材に
用することを試みた。これまでの授業で多数のプリ
合うツールを考え使用してきたが,まだまだ試行錯
ントを使用してきたが,プリントに文字がほとんど
誤が必要だと考える。生徒にとっては「思考しやす
はわからないが,使い方がわかると各自で工夫しな
ていきたい。その結果,普段音楽に対して苦手意識
がら記入することもできる。今回載せた同心円チャ
を持っている生徒でも,
「わかった」と実感したり「そ
ートは思考の段階がわかりやすく記入するものであ
うなんだ」と発見することをたくさん積み上げるこ
ったが,例えば鑑賞においての作曲者を紹介する時
とで,音楽に対する自信につなげていきたい。
に使用したツールは,
「思考ツール」と言うよりも,
【使用資料】
「整理ツール」として活用できた。
「整理ツール」は右記のように,紹介する人物や
■中学生の音楽1CDより
楽器などが持つ特徴の数に応じてXチャートやYチ
映画「ジョーズ」から“ジョーズのテーマ”
ャートを使い分け,キーワードを挙げて説明をして
映画「ET」から“フライングテーマ”
いく。その際,生徒は板書のみではなく話の中から
■「ジョーズ」DVD,「ET」DVDより
重要だと判断した部分をわかりやすいように記入し
各ジャケット写真
—音楽
63 —
楽
「記入しやすい」ツールを,教師にとっては「思
使われていないものを使用するのは初めてであった。 い」
考の段階がみえる」
「評価がみえる」ツールを考案し
ワークシートを見ただけでは何を記入すべきなのか
音
の引き出し方に大きな違いが出るため,その題材に