第1学年 国語科学習指導案 指導者 1 2 単元名 文学二 「少年の日の思い出」 ( 新しい国語1 T1教諭 T2講師 上杉 百々 成子 哲史 東京書籍 ) 指導にあたって (1) 単元について 本単元は,登場人物や情景の描写に着目して読み深め,文学的な文章の主題を捉え交流してそ の思考を深める言語能力の育成をねらいとしている。単元を貫く言語活動を「登場人物とその思 いについて,考えたことを交流して深めよう」と設定し,学習指導要領第1学年【C読むこと】 の次の内容に力を入れ指導するものである。 指導事項 (1)ウ 場面の展開や登場人物などの描写に注意して読み,内容の理解に役立てること。 (1)エ 文章の構成や展開,表現の特徴について,自分の考えをもつこと。 (1)オ 文章に表れているものの見方や考え方を捉え,自分のものの見方や考え方を広くす ること。 〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕 (1)イ (イ) 語句の辞書的な意味と文脈上の意味との関係に注意し,語感を磨くこと。 この作品の特徴として大きく3点が捉えられる。 大人になった主人公が少年時代の出来事を回想するシーンが「額縁構造」(第1部と第3部の 物語が外枠としての額縁をなし,第2部が内の絵に該当する文章構造。ここでは第3部に当たる 後書きがないため半額縁構造と考えられる。)で示され,場面の移り変わりも明確で,小説の構 成について捉えやすくなっている。 そして,細やかな情景描写が物語全体の伏線として本文全体の要所要所を締めていることも, 作品の主題を捉えるのに大きな役割を果たしている。 最も大きい特徴は,主人公が読み手である生徒達と同世代であり,特に『僕』を語り手とする 後半の場面では,その言動に感情移入して物語を読むことができるということである。主人公が 少年の日に夢中になったチョウの標本を指で粉々に押し潰してしまった『僕』の心情に迫ること は,自分の内なる子ども時代を探り,数多くの殻を脱ぎ捨てて大人になっていく,人の営みの哀 しさを見いだすことに他ならない。従って『僕』と『エーミール』という2人の人物像や人間関 係を読みとり,特に『僕』の変化を捉えることは主題を捉える大きな鍵となると考える。同じく 主人公の精神的な成長が描かれている既習の「さんちき」と比べると,この『僕』の成長は将来 の希望や夢とは全く違うところにある。むしろ, 「一度起きたことは二度と取り返しがつかない」 という諦めや絶望の悟りといった観がある。また,情景描写も「闇に沈む」 「不透明な青色」等, 過ちを語る場面にふさわしく暗い色調を帯びている。懐かしく楽しい思い出としてではなく「チ ョウを指で押し潰した」少年時代の出来事の意味を考え,人の心の深さ,ひいては大人になると いうことの一面を考えさせられる小説である。 (2) 生徒の実態(男子14名,女子14名 計28名) 4月に実施したNRTでは【文学的な文章を読むこと】を問う設問において,正答率が全国平 均より上回っていた。しかし,詳しい分析結果によると,文章の構成や細部の読み取り,討論に 課題が見られた。 そこで,「さんちき」では登場人物像をその根拠となる会話や描写部分から丁寧に抜き出させ たり,題名がつけられた理由を考え主題に迫らせる等の読み取りを行うために交流場面を設定し た。その結果,「話合いにより意見の深まりがみられた」「人の意見を聞いて自分も読み取りを 頑張りたい」という自己評価が増加した。 また,全体的に読書への興味は高いが,傾向としてライトノベルに偏りがちなので,今回の授 業を契機に,自分と主人公の生き方を重ね,人間や社会の様々な様相について自分の考えをもつ 読み取りを大切にさせ,かつ読書の幅を広げさせたいと考える。 国語学習に対する意識アンケート 項 目 一部抜粋 H 26・9・26 26 人回答 生 徒 の 回 答 はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 自分の考えを広げたり深めたりするな ど友達と学び会おうとしているか。 11人 11人 3人 1人 友達との話合いは自分の考えを広げた り深めたりするのに役立っているか。 14人 11人 1人 0 人の話を最後まできちんと聞き,理解 しようとしているか。 13人 11人 2人 0 その場に合わせた声の大きさで自分の 考えを分かりやすく述べているか。 9人 13人 3人 1人 国語で付けたい力を次から二つ選び なさい。 ひと月の読書量はどれくらいか。 ア話す・聞くこと(9人) イ話し合うこと(10人) ウ書くこと(3人) エ音読朗読(3人) オ文章の読み取り(11人) カ創作すること(2人) キ言語事項(漢字・文法含む)(10人) クその他(知識)(1人) 0冊 2人 1~2冊 14人 3~4冊 6人 5冊以上 4人 (3) 指導の着眼 生徒の実態等から以下の点に指導の着眼を置き,学習を進めていく。 ① 長文であるため,音読回数の確保ができず,内容の把握が難しい。そこで,場面を分けて指 導する。 ② 額縁構造による場面の展開(しかも後書きがない)に注目させ,その効果を考えさせること で主題に迫らせたい。前書きの情景や昆虫採集に夢中になっている情景を分析し,登場人物の 気持ちが暗示されていることに気付かせ,表現の効果,巧みさを味わわせる。 ③ 作品から読み取ったことをもとに交流させ,自分のものの見方や考え方が広げられるよう言 語活動を工夫する。 ④ 支援が必要な生徒に関して,個別に声を掛けながら目標をもたせる。少しでも読み取りがで きるよう励まして援助を続ける。 3 研究主題との関連 研究主題 『自ら考え,豊かに表現する生徒の育成』 ~「学び合い」を取り入れた授業づくりを通して~ 〔視点1〕 単位時間の授業づくりの工夫 (1) 学習課題の設定の工夫 ① 本教材では,後半の語り手が『僕』であるがゆえに,生徒は自然に『僕』の気持ちにより添 い『エーミール』を嫌な少年と捉える一方的なものになるおそれがある。『エーミール』の立 場から見た『僕』の姿を想像するという課題を設定し,人物像の掘り下げを行う。 ② 最後の「僕がチョウを潰した」場面から,チョウと共に潰したのは「何」だと想像されるか 考えさせ,主題に迫る読み取りを行う。 (2) 学び合いを取り入れた学習過程の工夫 ① 指導要領で求められる「思考力・判断力・表現力」を押さえ,『自ら考え,豊かに表現する 生徒』を育てるために,互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる(言語 活動の充実に関する指導事例集 第1章(4)イ⑥)学習活動を設定する。また,事前アンケー トの結果から〈話し合うこと〉 〈文章の読み取り〉の力を伸ばしたいという生徒の願いがあり, 本単元の言語活動として自分の意見や考えを深めるための交流の場を設定する。 ② 交流の実際の活動では,感想や考えを発表し気付いたことを確かめるという活動がほとんど であった。交流を「対話」「討論」まで引き上げ,他者と異なった価値観のする合わせをする というところまでなかなか至らない。そこで,思考の過程に承認・評価を与えることで生徒が 安心して発言できる場をつくるために,めあての振り返りシートに自己評価を書かせ,それに 可能な限りコメントし返却するという指導を行った。特に,T2の的確な励ましは生徒の自信 と意欲付けにつながっている。 ③ 活動の際には「身に付けたい力に対して,個の学習に生きてくるグループ活動」「自発的な 問答ができる活動」でありたい。そのため昨年の反省を生かし以下のような工夫を行う。 ア 「オープンクエスチョン(思考を広げ深める質問シート)」を活用する。 1 ~というと? 5 具体的にどんな感じ? 2 どんな感じ? 6 どんなイメージ? 3 もう少し詳しく教えてください 7 エピソードを教えてください 4 たとえば? 8 他には? ◎相づちの例 うんうん へえ~ わかるわかる イ 「ペア学習」「立ち歩き話合い」「ワールドカフェ」(メンバーの組合せを変えて話し合 う形態)等学習形態をめあてに応じて工夫する。 ウ 授業のはじめに,お題に即してペアで話し合う場を設定する。その後,相手から聞き取 ったことを発表するという練習を行っている。 〔視点2〕 単元づくりの工夫 (1) 単元構想表の作成(指導者用・生徒用は学習計画表) 別紙参照 何のためにこの学習をするのかを生徒自身が常に意識できるように,学習計画表で単元を貫 く言語活動の確かめを行う。また ,めあてを明記させ,本時の学習が目指す到達点を意識させ る。さらに,授業の振り返り欄を設け,自分の学びをメタ認知できるようにする。 (2) 指導体制の工夫(少人数,TTなど) ① 単元を通した意図的なTTの関わりを工夫する。 発問で生徒がどう動いたかを観察し,指示や発問が適正かどうかを確かめる。例えば,交流 での学級全体や各グループの動きを見る。また,異なるタイプの生徒を抽出し,その変容(個 別に生徒の思考の深まり)を観察し,対象生徒のつぶやきや行動を分析する。 ② 学習状況に応じた支援を行う。 評価規準Cの生徒にはアドバイスを,Aの生徒には追加の資料を提示する。また,普段,発 言の少ない生徒の感想や考えを確かめ,次時に生かす。 ③ 場合に応じてT2がグループの中に入り話合いを活性化させる。 「読書は個人の営みである。しかし,独力で読んだ場合よりも,熟達レベルの高い者と読ん だ方が感想の幅も広がり,次の読書への足掛かりとなる。」と大村はまの実践例を引いて藤井 知弘氏(岩手大学教育学部)は述べている。 4 指導目標 (1) 場面の展開及び心情や情景を表す語句に注意して読み,内容の理解を深めようとする。 【国語への関心・意欲・態度】 (2) 作品から読み取ったことをもとに自分の考えをもち,交流して自分のものの見方や考え方を 広げることができる。 【読むこと】 (3) 語句の辞書的な意味と文脈上の意味との関連に注意し,語感を磨くことができる。 【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】 〈単元の評価規準〉 国語への関心・意欲・態度 ① 5 読 む 能 力 描写に注意して文章を読 んだり,立場の違う人と文 章について話し合ったりす ることを通して,自分のも のの見方や考え方を広げよ うとしている。 言語についての 知識・理解・技能 ① 『僕』と『エーミール』との描 ① 登場人物の描写について 写に注意して読み,2人の共通点 語句の文脈上の意味を捉え や相違点などを整理している。 た上で,文章中ではどのよ (ウ) うな意味で使われているか ② さまざまな角度から登場人物に を考えている。 ((1)イ(イ)) ついて考えることで,文章に表れ たものの見方や考え方を捉え,自 分のものの見方や考え方を広げて いる。(オ) 指導計画(6時間扱い)・評価規準 本時 時 ねらい 学習活動 数 ・ 作 品 を音 読し , 初発 の 5/6 評価の観点 おおむね満足でき 努 力 を 要 す る 生 関 読 言 る(B) 徒の指導(C) ・学習計画,課題を確認する。 ・文章を通読して, ・難語 句の意 味調 感 想 を書 くこ と がで き ・全文を通読する。 印象に残ったこと ベを 行わせ ,授 る。 ・初発の感想を書く。 や疑問点を書こう 業で はあら すじ 1 ・難解語句を教科書やワークで 〇 〇 確かめ文脈上の意味を捉え としている。 ・「 非 の 打 ち 所 がな る。 を大 きく捉 えさ せる。 い」等の難語句の 意味を文脈の中で 想像している。 ・ 客 が 思い 出を 語 るこ と ・語り手の転換に注意し,時間 に し た心 情の 変 化を 考 の経過に従って起きた出来事 えることができる。 ・客の気持ちを想像 している。 を簡単に確かめる。 す言 葉を探 させ る客 の思い が感 ・ 額縁構造で後書きがないこと 1 ・ 時間の経過が示 じら れる箇 所に や,情景が暗示している部分 線を 引かせ ,そ に気付く。 こか ら客の 思い ・少年時代の思い出に対する客 〇 を想像させる。 の思いを捉える。 ・ 僕のチョウ集めに対す ・年齢や行動,時を表す言葉等 る 思 いが どれ だ け強 か に着目して僕の気持ちを捉え ョウ集めへの思い かる 部分を 探さ っ た か理 解す る こと が 出来事の中心にチョウへの熱 を理解している。 せ自 分の小 学時 できる。 情があることに気付く。 ・少年の日の僕のチ ・僕の 気持ち が分 代と 比べて 想像 させる。 1 ・ 僕 と エー ミー ル では 考 ・僕とエーミールの人物描写を え 方 や性 格に ど んな 違 ベン図を利用して整理する。 根拠となる部分を 対す る態度 の違 い が ある か捉 え るこ と ・2人の共通点と相違点をまと 見付けて2人の人 いに着目させる。 が で きる 。 める。 ・心情を表す表現等 ・2人 のチョ ウに 〇 ・宝石と宝物,欠陥と欠点のよ 物像をまとめてい る。 うに2人の対照的な様子が分 かる言葉に着目する。 ・ ク ジ ャク ヤマ マ ユを め 1 ・「噂を確かめに行ったとき」 ぐ る 僕の 気持 ち の変 化 「ヤママユを盗んだとき」「返 を捉えることができる。 そうとしてヤママユが潰れて ・ 僕 が チョ ウを 押 し潰 し た 思 いに 迫る こ とが で ・心情を表す表現等 ・3つ の段階 を示 ○ 根拠となる部分を し, 僕の気 持ち 見付けて僕の気持 が表 れてい ると いたとき」の僕の気持ちの変 ちの変化を捉えて ころ を探す よう 化を確かめる。 いる。 指示する。 ・僕の告白に対する母の反応を 捉える。 ・最愛のチョウを潰 ・エー ミール との さなければならな 会話 部分を 見付 1 きる。 ・エーミールから見た僕を想像 本 し,つぶやきにまとめてみる。 時 かった僕の気持ち ◎ を想像している。 ・なぜ,僕は最後に自分のチョ けさせる。 ・ 僕のチョウに対 する 気持ち はど ウを潰すという行動に出たの うだ ったか を振 か,その意味を僕の心情に沿 り返らせる。 って考える。 ・ チ ョ ウを 潰し た 僕と 現 ・潰したのはチョウだけか。そ 在 の 客と して の 姿と の の裏に象徴されていることを 方などについて自 どん な感じ を受 違 い を考 える こ とが で 考えさせる。(少年の日の思 分の考えをもって ける か考え させ きる。 い出等) いる。 る。 ・ 前書きに戻り,伏線と 1 ・主題や人間の生き ・最後 の場面 から な っ てい る部 分 を探 し 表 現 の工 夫に つ いて 確 認する。 ・ 少年の日の思い出から僕が悟 ◎ 〇 ったことは何か考える。 ・伏線となっている ・前半 の伏線 が後 部分と対応してい ・「 人は苦い思い出を経験しな がら大人になってゆく」「少 半部 分のど こと る部分を探してい 対応 してい るか る。 探させる。 年期に感ずる熱情が大人社会 で挫折する現実」等主題を自 分の言葉で表現する。 6 本時の指導 (1) 題材名 (2) 「少年の日の思い出」 ヘルマン・ヘッセ作 ねらい 僕がチョウを押し潰した思いに迫ることができる。 高橋健二訳 【読むこと】 (3) 本時の視点 本時は研究の視点1「単位時間の授業づくりの工夫」に焦点をあて,学習課題の設定の工夫を 行い,主題に迫りたいと考える。 ここでは「エーミールから見た僕の姿を想像する」「なぜ,僕は最後にチョウを潰したのか」 という課題を設定し,僕の変化が主題につながることを読みとらせたい。 個人で考える時間を大切にし,一人一人の読みから4人グループで交流し,自分の考えを深め させる。言語活動の充実の工夫として「詩歌や物語などを読み,内容や表現の仕方について感想 を交流すること 第2学年 ア」の例を具体化して,他者の読み取りから気付いたことを自分の考 えの深化に役立たせるようにする。 (4) 準備物 教科書・ワークブック・ワークシート・国語辞典 (5) 評価 最愛のチョウを潰さなければならなかった僕の気持ちを想像している。 【読む能力】 学習過程 ・エ ーミー ルへの △共感 ・▲疑 問(反 発) 段 階 学習活動 ・予想される生徒の反応 教師の働きかけ T1 1 捉 え る 3 分 前時の学習を想起する。 少 年の日 の思い 出 ヘルマ ン ヘ ・ッ セ 高橋健 二訳 学習 課題 「 登場す る人物像と その思い について 、考えた ことを 交 流して 深めよ う」 今 日の めあて 「『 僕 』 が な ぜ チ ョ ウ を 押 し 潰 し た の か 考 え 、 交 流 を 通し て深め よう」 (7) 僕 がエー ミール に分か って欲 しいこ と エ ーミー ルから 見た 僕への つぶや き ↓ あなた方 の二人へ の共感 疑 ・ 問(反発 )をまとめよう ・僕 への△ 共感・ ▲疑問 (反発 ) 板書計画 大事 にして いたチ ョウを 押し潰 したの はな ぜか。 (6) 形 態 T2 指導上の留意点と ○評価【観点】 〈方法〉 1 単 元 課 題 も 1 意欲をもて 一斉 確認させる。 るように何人 2 ヤママユが潰れたところか 2 声 を 揃 え て かの前時の振 ら母に打ち明けたところまで 読むように指 り返りを紹介 全員で音読する。(1分) 示する。 する。 3 本時のめあてを確認し,学 3 本 時 の め あ 習の見通しをもつ。 てを確認させ る。 ◎ 本時の学習のめあて 「僕がチョウを押し潰した時の気持ちを考え,交流して 深めよう。」 * 単元を貫く言語活動 「登場する人物像とその思いについて,考えたことを交 流して深めよう。」 4 2人音読する。(2分) 4 エーミール 僕がチョウを潰すきっかけ に告白する場 になった場面から2人の気持 面を音読させ ちを考えながら読み進める。 る。 5 全員で確認する。 5 誰の目から ・ 僕の視点 見て書かれて ・ 僕から見て いたか。 一斉 1 努力を要す 読みの表現が豊か な生徒を意図的に指 名する。 6 ・ 考 え る 22 分 挙手して発表する。 6 僕がエーミ る生徒のそば ワークシートの課 盗む気もヤママユを壊す気 ールに分かっ で,課題を確 題を確かめさせる。 もなかった。すぐ返そうと思 て欲しかった 認する。 った。実際数分後に戻したの ことを発表さ だ。 せる。 ・ チョウを大切に思う気持ち は誰よりも強いが,ついこん なことになってしまって申し 訳ない。許して欲しい。 7 発問① 個人で読みとった,エーミー ← 視点 1 ( 1) 学 習 課 題 ルから見た僕の姿(エーミール 設定の工夫 のつぶやき)と,僕がエーミー つぶやきを書く際 ルに分かって欲しかったことを の観点①本文に沿っ もとに,2人のものの見方・考 て書く。②僕の視点 え方について,共感するところ では書けないものを や疑問に思う(反発する)とこ 書く。ワークシート ろを交流しよう。 の記入が観点に沿っ 8 今 日 は 前 後 3 相手が休ん ペア ているか。発表で確 でのペアと指 だ生徒とペア かめる。 示する。 9 机 間 指 導 , 4 机間指導 気付いたこと,新た 理解を確認す 自分が気付 に分かったこと,根 る。 かなかったこ 拠等簡単に覚え書き とをワークシ 程度のメモを書かせ, ートにメモし 発表に生かす。 ているか。声 掛けをする。 7 発表する。(エーミールに 10 指 名 し て 3 一斉 黒板に吹き出し用 共感するか疑問に思うか自分 人程度発表さ 意 の意見も添えて) せる。 ここでは,特にエ ・ エーミールに共感 ーミールのものの見 ~さなぎからかえすまで苦労 方考え方を想像させ, したのに壊された。しかも他 共感するか,疑問に の子もほしがる珍しいチョウ 思うか全体で思考を だったのに,かわいそう。僕 広げさせる。僕の心 はいつもチョウを丁寧に扱っ 情はエーミールと表 ていないばかりか盗んで壊し 裏一体なので簡単に た。怒って当たり前。僕は謝 触れるのみとする。 っていない。謝りに来たくせ にこっちがチョウの扱い方を 指摘したら,すごい勢いでに らんできた。本当に反省して いるのか。謝れば済むと思っ ている子どもだ。 ・ エーミールに疑問(反発) ~冷たすぎる。子どものくせ に偉そう。皮肉を言ってグサ ッとくる。世界のおきての代 表でもするかのように僕を侮 るなんて何様だ。もう少し, 僕の気持ちを分かってくれて もいいのに。威張ってる。勇 気を振り絞って謝りに来たの に僕がかわいそう。 ワークシートでの予想回答 僕への△共感・▲疑問(反発) △子どもの頃は好きなことに没頭していれば幸福だった。チョウの美しさに魅 せられている。チョウへの熱情だけは誰にも負けない。エーミールには分かって もらえないと感じつつも,説明したら分かってもらえるかもしれないと思ってい る。猫の仕業と言われてごまかすこともできたのに告白を選択。大切にしていた チョウで償おうとしており,自分の罪を反省している。 ▲盗みよりチョウの美しさを損なったことに苦しんでいる。チョウの扱い方が 雑で未熟。自分のチョウヘの熱情を否定されると,謝りに来ているという立場を 忘れてかっとなる。子供っぽさ,幼さが見られる。チョウへの熱情まで否定され ると怒る。おもちゃで解決しようとした。謝っている場面がない。 エーミールへの△共感・▲疑問(反発) △努力家。僕が人の苦労も知らず標本を壊した言い訳をしていることに怒るの は無理もない。僕はチョウ集めの資格がない,謝るどころか,にらんできた。 ▲僕の気持ちを理解せず軽蔑すべき人間と決めつける。冷淡。おもちゃも大切 なチョウも全部やるという申し出を断り,チョウの扱いについて皮肉を言う。世 界のおきてを代表でもするかのように,冷然と,正義を盾に,侮るように,僕の 前に立っていた。 8 ・ ・ ・ 発表する。 怒る。 大声で怒鳴る。 詰め寄る。 9 ・ 挙手で発表する。 エーミールの性格だから。 大人みたいな模範少年だった んだ。 ・ 怒られればそれも償いの一 つになる。僕がそれで償いは 済んだという気になってしま うのが悔しい。僕は楽になる ことを許されない。 11 補助発問 自分がエーミールならどう するか。 12 補助発問 一斉 なぜ,エーミールは激し たり,怒鳴ったりしなかっ たのか。 5 努力を要 する生徒に 課題を確認 させる。 「僕」と一緒に,生徒に気付いて欲しいところ 僕はエーミールから見ると幼く,未熟な少年である。,それでも母に言われ僅か な勇気をかき集めエーミールに告白したが,望むようにはいかなかった。エーミ ールと向き合うことで気付かざるを得なかった大人への階段を捉えさせたい。 社会の規範(ルール)に照らして許されないこと,償いのできないことが世の 中にはあることに気付く。 「こどもだけが感じることのできる,あのなんともいえぬ,むさぼるような,う っとりした感じ」 こどもにのみ許されていたことがあり,いつか社会の壁にぶつかったとき,は じめてその特権の大きさに気付くことになる。 前よりエーミール だけでなく僕の人柄 についても理解が深 まったか発言から確 かめる。 10 深 め る 20 分 ワールドカフェで交流す る。時間は5分3分3分。 13 発問② 僕が最後にチョウを潰したの ← 視点1 ( 1) 学 習 課 はなぜだろう。 題設定工夫 また,その時の気持ちを 1 つ 個 付箋紙にメモをさ の言葉でまとめてみよう。 せる。話合いで同じ ような内容はまとめ る。もとの班になっ 小集 たらホワイトボード 団 に大きくキーワード を書いて,発表する とき説明する。 14 11 ・ グ ル ー プ で 6 特に努力を ← 視点2 (2)TT方式 交流させる。 要する生徒の ○ 最愛のチョウを 場所を移動 いる班に入 潰さなければなら して別なグル る。 なかった僕の気持 ープで話し合 ちを想像している。 う。司会とも 【読む能力】 う1人を残し 〈ワークシート・ 観察〉 て,残りの2 別な班で交流した 人は(新しい ことから学んだこと 司会者の所で をもち帰るよう指示 次の班を作る。 する。 もとの班で, 視点1 ( 2) 学 び 合 もち帰ったこ 小集 い学習過程 とを報告し再 団 度交流しあう。 班ごとに発表する。 15 発表したこ 後悔・・・チョウを見ると とを全体で確 自分の罪を思い出す。耐えら かめあう。 れない。(罪悪感) ・ 別れ・・・もう純粋にチョ ウと向き合う喜びは味わえな い。 ・ 資格・・・チョウを集める 資格を失った。 ・ 怒り・・・自分とエーミー ルに対して。八つ当たり。 ・ 決意・・・二度とこんな過 ちは繰り返さないぞ。 ・ 償い・・・できることとで きないことがある。(代償) ・ 社会の規則・・・許しては もらえない。償いができない。 一生抱えていかなければなら ないこともある。 ・ 封印・・・チョウとの別 れ。本当に好きなものを自分 で汚してしまった。 視点1 一斉 ( 2) 学 び 合 い学習過程 ま と め る 5 12 今日の学習の振り返りを行 16 次 時 の 予 告 7 本時の話し 個 気付きの深まりを う。交流したことで気付いた を 行 う 。「 作 合いの評価を 学習計画表の振り返 ことや意見が深まったこと, 者の思い(主 行う。 一斉 りに記入させる。 また,自分の意見が変わった 題)について 次時の最後の一文 理由等を発表する。 考えよう。」 につなげる。 分 *参考「言語指導の充実の関する指導事例集~思考力,判断力,表現力等の育成に向けて~ 中学校版」文部科学省 「国語科授業にスリルとサスペンスを」河野庸介著 教育出版 「文学の授業づくりハンドブック~授業実践史をふまえて~」浜本純逸監修 渓水社 「単元構想表が活きる!中学校国語科授業&評価GUIDE BOOK」冨山哲也編著 明治図書 「言語力を育てる授業づくり」梶田叡一 甲斐睦朗編著 図書文化 「対話がクラスにあふれる!国語授業言語活動アイデア42」石川晋著 明治図書 「平成24年度版 観点別学習状況の評価規準と判定基準 中学校国語」北尾倫彦監修 図書文化 学習計画表【少年の日の思い出】 時 学 習 活 動 1年( 学 習 の め あ て )組( )番氏名( ) 振 り 返 り 登場人物とその思いについて、考えたことを交流して深めよう 1 ・ 「少年の日の思い出」を読む。 ・時間の経過に従って起きた出来事を, 簡単に確かめる。 ・心に残った場面や疑問に思ったこと をまとめる。 ア 聞くこと イ 発言 ウ ノート等書くこと エ めあての達成度 一言( A A A A B B B B C C C C D D D D 2 ・文章の構成を捉える。 ・前半の登場人物「客」と後半の「僕」 について,その様子や特徴を捉える。 ア 聞くこと イ 発言 ウ ノート等書くこと エ めあての達成度 一言( A A A A B B B B C C C C D D D D ・登場人物の会話や描写部分を整理し, 人物像を捉える。 ア 聞くこと イ 発言 ウ ノート等書くこと エ めあての達成度 一言( A A A A B B B B C C C C D D D D ・3,4場面を貫く出来事を大きく3 段階に分けて,僕の気持ちの変化を 捉える。 ア 聞くこと イ 発言 ウ ノート等書くこと エ めあての達成度 一言( A A A A B B B B C C C C D D D D 5 ・僕という人物像を客観的に捉え,結 末に至る心情について考える。 ア 聞くこと イ 発言 ウ ノート等書くこと エ めあての達成度 一言( A A A A B B B B C C C C D D D D 6 ・作品の主題 について,自分の言葉で まとめる。 ア 聞くこと イ 発言 ウ ノート等書くこと エ めあての達成度 一言( A A A A B B B B C C C C D D D D 3 4 単元構想表【少年の日の思い出】 指導事項 文脈の中における語句の意味を的確 に捉え,理解すること。 【語句の意味の理解】 イ 文章の中心的な部分と付加的な部 分,事実と意見などとを読み分け,目 的や必要に応じて要約したり要旨を捉 えたりすること。 【文章の解釈】 ウ 場面の展開や登場人物などの描写に 注意して読み,内容の理解に役立てる こと。 【文章の解釈】 オ 文章に表れているものの見方や考え 方を捉え,自分のものの見方や考え 方を広くすること。 【自分の考えの形成】 エ 文章の構成や展開,表現の特徴につ いて,自分の考えをもつこと。 【自分の考えの形成】 カ 本や文章などから必要な情報を集め るための方法を身に付け,目的に応じ て必要な情報を読み取ること。 【読書と情報活用】 関連する 〔伝統的な言語文化と国語 の特質に関する事項〕 (1)イ(イ) 登場人物とその思いについて、考えたことを交流して深めよう ア 学習活動 重点化 評価規準 「少年の日の思い出」を通読し,語 句の辞書的な意味を理解するととも に,文章の中での意味を捉える。 留意点 他 ワークブックで予習させる。 文章の構成や語り手などの文章の ・客の気持ちを想像している。 文章が大きく2つに分けられるこ 特徴を確認する。 ・少年の日の僕のチョウ集めへの思 と,それぞれの語り手が違うことを いを理解している。 理解させる。 ◎ 登場人物の会話や描写を整理し, 人物像を把握する。【学び合い】 時 1 2 ・心情を表す表現等根拠となる部分 を見付けて2人の人物像をまとめて ベン図で言動や会話を抜き出し整 いる。 理することで,登場人物の気持ち 3・4 ・心情を表す表現等根拠となる部分 を確かめさせる。 を見付けて僕の気持ちの変化を捉 えている。 ◎ ・最愛のチョウを潰さなければなら チョウを押し潰した僕の気持ちを考 なかった僕の気持ちを想像してい えて,交流し深める。【学び合い】 る。 ○ ・主題や人間の生き方などについて 前書きの情景が後半を暗示してい 自分の考えをもっている。 「言葉の力」で練習させ,伏線に着 ることや,主題に迫る伏線の意味を ・伏線となっている部分と対応して 目させる。 理解する。 いる部分を探している。 6 翻訳小説やドイツ文学,ヘッセの 他の小説等,図書館を利用して調 べるよう促す。 6 文章に出てくる事柄について理解を ・発展教材としていろいろな本を読 深めるために,関連した情報を集め もうという気持ちが高まっている。 ながら読む。 最後の場面につながる心情の変 化を捉えさせ,作者の思いに迫 る。 「非の打ちどころがないという悪徳 語句の辞書的な意味と文脈上の意味との関係に注意 ・「非の打ち所がない」等の難語句 をもっていた」等の言葉のアイロ し,語感を磨くこと。 の意味を文脈の中で想像している。 ニーが使われていることに気付か せる。 国語への関心・意欲・態度に関する評価 ・文章を通読して,印象に残ったこと 観察やワークシート,交流の場面 や疑問点を書こうとしている。 から評価する。 5
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