アルツハイマー病の克服に向けて [PDF 195KB]

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脳の健康を維持するにはどうしたらよいでしょうか?
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わが国は世界一の長寿大国です。その背景には、医療技術の進歩や、生活
習慣病に対する意識の向上があります。ずっと健康でいられるといいのですが、
残念なことに 80 歳を過ぎると認知症を患う方が急増します。認知症とは、獲
得された知的な能力が失われ、社会的な生活や日常の生活を独立して営めな
い状態を示します。2012 年の時点で、わが国の認知症患者は 460 万人と推計
され、その約7割に相当する方々がアルツハイマー病患者と考えられています。
アルツハイマー病の特徴は、脳の中で、
①老人斑とよばれるシミ、
②神経原線
維変化とよばれる糸くず状のもの、
③神経細胞の脱落、の三つがあげられます。
老 人 斑と神 経原線維変化は、それぞれアミロイド
Aβの蓄積
ベータ( Aβ)とタウとよばれるタンパク質からできて
います。先に Aβが脳に蓄積し、その後タウによる神
タウ
経原線維変化と神経細胞の脱落が起きると考えられ
ています(図1. アミロイドカスケード仮説)。
私達の研究プロジェクトでは、このアミロイドカス 神経細胞脱落・機能不全
ケード仮説にそって、それぞれの段階における病態の
分子的理解をすすめるとともに、それに基づく治療・
認知症
予防法開発を目指しています。
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Aβは、アミノ酸が 700 個以上つながってできたアミ
ロイド前駆体タンパク質(APP)とよばれる長いタンパク質が、
βセクレターゼ
とγセクレターゼというタンパク質分解酵素で切断されて生じるアミノ酸 40 個
ほどのタンパク質断片です。近年、私達は副作用なく Aβがつくられることを
阻止できる方法を見つけました。講義では、記憶のしくみとアルツハイマー病
の発症のしくみ、アルツハイマー病の克服への同志社大学での取組みを紹介
する予定です。