[第3回]熱性けいれん

こどもの病気【第3回】
熱性けいれん
けいれん(ひきつけ)は大きく 2 つに分かれます。
有熱性のけいれん・・・熱性けいれんや髄膜炎・脳炎などの中枢神経感染症を原因とする。
無熱性けいれん・・・てんかん、代謝性疾患などを原因とする。
無熱性けいれんや中枢神経感染症による有熱性けいれんは別の機会にまわして今回は熱
性けいれんについて勉強しましょう。
Ⅰ.熱性けいれんとは
通常 38℃以上の発熱に伴って乳幼児期に生じるけいれん発作をさし、中枢神経系の感染
症や代謝異常などの病気に伴って発生したけいれん発作は除きます。日本では小児の 7~
8%に起こり発症年齢は6ヵ月から 5 歳でピークは 1 歳代、6 歳までにその 90%は消失し
ます。一部のこどもはてんかんになる場合があります。3 分の 2 くらいは生涯で 1 回だけ
ですが、6 から 7%では繰り返し発作を起こします。原因ははっきりしていませんが遺伝傾
向があります。
典型的な熱性けいれんは、乳幼児(好発年齢 1~2歳)が 38.5℃以上の高熱に伴い、数
分間の短い全身性のけいれん発作(突然体を硬直させ、顔色が悪くなり、手足を細かくあ
るいはガクガクとふるわせる発作)をきたします。熱発初期に急激な体温の上昇によって
起こるのが大部分で、けいれん発作の後に始めて親が発熱に気づくことも少なくありませ
ん。発作の後は比較的元気であり、中枢感染症で見られるような嘔吐や意識がはっきりし
ないこともありません。多くの場合は、発作は数分で終了し、体の力が抜けて呼吸が回復
しそのまま眠ってしまいます。目が覚めると意識ははっきりしており麻痺を残すことはま
れです。
Ⅱ.けいれんに気づいたときは
まず落ち着いてください。あわててもけいれんはとまりません。まず、時計を見て始ま
った時間を確認してください。吐いたりすることがあるので体を横にして、顔も横を向け
て吐いたものなどが気管に入らないようにしましょう。着ている物をゆるめたりして呼吸
がしやすくします。けいれんの様子(手足がどうだった?目はどちらを向いていた?など)
をよく観察してください。けいれんがとまったら、時間を確認してください。顔色や全身
の色が悪くなり、呼吸が止まっているように見えますが、死亡や脳の障害を起こす恐れは
まずありません。けいれん自体で舌を噛み切ったりすることはありません。人工呼吸や無
理に口開けさせものをかませるなどはしないでください。年齢的に歯が生えている子も多
く無理に口を開けさせたときに歯が折れ、折れた歯が気管に入り窒息することもありえま
す。また、口の中が切れ、その血が気管につまることもありえます。けいれんが 10 分以上
続いている時や何度も繰り返すとき、意識がはっきりしない時、麻痺が残る時などは急い
で病院を受診するようにしてください。
Ⅲ.けいれんの予防
一番大切なのは、けいれんを予防することです。そのためには、発熱の原因となってい
る病気を治すことが第一です。また、発熱時には薄着にし、からだを冷やすなどして熱を
下げる努力も必要です(詳しくは第 2 回発熱を参照してください)。解熱剤は発熱の原因と
なっている病気を治すわけではないので、効果が切れれば再度熱が上がる可能性があり、
熱性けいれんが体温の上昇するときに起こりやすいことを考慮するとけいれんを誘発する
可能性があるので、なるべく使わないほうが良いでしょう。発熱時にけいれん予防の坐薬
を使うことも有効です。一般的な使い方としては、発熱(37.5℃を目安)に気づいたら指
示されているけいれん予防の坐薬(ジアゼパム坐薬、商品名:ダイアップ坐薬)を使用し
ます。8 時間後に 37.5℃以上の発熱(下の図では 38.0℃とありますが 37.5℃で良いと思い
ます))があったら 2 回目の坐薬を使用します。この処置でけいれんの好発時期はけいれん
がおきにくい状態を維持できますから、原則としてその後も発熱が持続していたとしても
3 回目の投与はしません。
(副作用として、眠くなったりふらふらしたりすることがありま
す。)詳しくは、実際に小児科医にご相談ください。
行徳総合病院小児科 佐藤俊彦