可変速機を用いた周波数変換装置の製作 E02001 青木 亮 1. はじめに 指導教員 藤田吾郎 固定子の二次側には炭素ブラシが取り付けてあり,回転 近年,地球温暖化防止の対策として温室効果ガスの削 子にはスリップリングを通して励磁電流を流す構造とな 減が求められているが,二酸化炭素(CO2)を排出しない っている。DFM機は通常の三相誘導発電機を応用して製 新エネルギーの一つとして大規模導入可能な風力発電が 作した。 注目されている。現状として新エネルギーは2002年度実 績で日本の全エネルギー供給量のうち1.3%を占めてお り,経済産業省は2010年を目標に3%程度に増大させる ことを目指している。このうち風力発電は北海道や東北 地域で導入が現在進んでおり,我が国の導入実績は2004 年3月末現在で735基超,出力約67.7万kWとなっている。 しかし世界第一位のドイツにおける風力発電の導入実 績の約1,461万kW(2003年末時点)に比べると我が国の立 ち遅れは否めず,経済産業省は導入拡大を目指し2010年 図1 までに5倍近い300万kWに増やす目標を立てている。 DFM機 風力発電は発電出力が不安定であるため先に述べたよ うな大規模導入に伴い電圧変動,周波数変動などの電力 2.3 三相交流アンプ 品質の低下 [1][2]を招く恐れがあるため,本研究では出力 本研究では制御ソフトであるLabVIEWを用いることで 安定化装置として可変速機を用いた回転型周波数変換装 フィードバック制御を行っている。しかし,LabVIEWか 置を提案し,装置の実機製作・測定・検証を行う。 らの信号は微弱であるため三相交流アンプ(Three-phase AC Amplifier)を用いて増幅する必要がある。昨年までは 2. 回転型周波数変換装置の概要・構成 電圧制御による二次励磁を行っていたが,今年は電流制 2.1 実験装置の概要 御に変更することとした。図2に提案した三相交流アン 本装置は,同期電動機(Synchronous Machine)にDFM機 プの回路図を示す。 を軸連結させた構造である。ウィンドファームからの発 まず,改良における昨年との大きな変更点はオペアン 電電力を同期電動機によって回転エネルギーに変換し, プを追加することでフィードバックによる比較を行い制 軸連結したDFM機を回転させることによって電力に逆変 御をすることである。信号入力を1[kΩ]と4[kΩ]で分圧 換する。ここで本研究においては可変速機の発電出力側 し,検出抵抗1[Ω]の電流と分圧した電流とをオペアンプ を1次側,励磁を行う入力側を2次側と定義する。このと を2つ用いて比較することで2[A]まで出力可能なように き,DFM機の二次側励磁,つまり二次巻線電圧を制御す 設計を施した。また実際の回路においては抵抗値を, ることによって出力の安定化を図る。DFM機の二次側か R1=1[kΩ],R2=0.1[kΩ],R3=3.9[kΩ]とすることで分圧 ら励磁周波数を変化させて交流励磁を行うことで,すべ 比を実現している。これにより,5[V]の入力に対し1[A] りを変化させることが可能となり,結果として出力電圧 となり同様 にして 10[V]の入力 に対 し2[A]とな るため と周波数の制御が可能となる。 LabVIEWの入出力範囲は·10[V]であることより,2[A] 2.2 可変速機(DFM機) まで出力が可能である。 DFM機は同期可変速技術の発展で,巻線型誘導機と同 電流制御の方式に移行した理由としては周波数変動に 一構造であり,ローターの回転数と一次側回転磁界の速 より回転子のインピーダンス成分が変動するため三相不 度差をローター内の二次巻線回路で補う仕組みとなって 平衡の状態になり逆起電力を考えなければならず,結果 いるため,回転数によらず一定の周波数で電力の出し入 として三相交流アンプへの負担が大きくなり故障の原因 れが可能である。この二重に給電するということから二 の一つとなるためである。また回路製作においては実験 重給電機(Doubly-Fed Machine)と呼ばれる。 における制御性の向上も考慮し,同時に妥当性の検討[3] DFM機を図1に示す。二次励磁をするためにDFM機の を行った。 R11 0.1[Ω] R14 0.1[Ω] Bridge diode 810 TS4B05G R10 0.1[Ω] R7 1[kΩ] R12 270[Ω] R13 0.1[Ω] R9 270[Ω] 220[pF] C6 390[pF] C7 C5 Laminating ceramic capacitor 390[pF] 50[V] 0.1[kΩ] C4 Electrolytic capacitor 1500[μF] 35[V] 1[kΩ] C3 Electrolytic capacitor 1500[μF] 35[V] R1 R2 C1 Ceramic capacitor 104 0.1[μF] 50[V] C2 Ceramic capacitor 104 0.1[μF] 50[V] 図2 三相交流アンプ 3. 励磁・発電電圧測定 この測定より一次側と二次側の電圧比率を求め制御電 DFM機の特性を調べるために励磁電圧に対する発電電 圧を測定する特性試験を行った。測定方法はインバータ 圧の検討を行った結果,7[V]から9[V]の間が制御に適正 な励磁電圧であると考えられる。 を用いて誘導機を回し,軸連結したDFM機を回転させて 2次側から励磁を行う。実験配線図を図3に示す。 また,各励磁電圧における発電電圧を測定し測定結果 をDFM機特性曲線・一次/二次電圧比率として図4に示す。 4. 今後の展望 三相交流アンプを改造したので改めてDFM機の特性を 詳細に調べたいと考えている。電圧比率としてではなく 特性試験において電流値に対する発電の精密な計測を行 いたい。またFFT解析による脈動トルクや振動のパワー DHT DHT スペクトル分析,更には回転体部位の固有振動数測定に IM INV Open DFM よる検証も必要であると考えられる。 5.参考文献 [1] DC Power Supply INV:インバータ 郎・柿木哲郎,「ウィンドファーム向け回転型系統 連系装置の検討」,平成12年電気学会電力・エネル IM:誘導電動機 ギー部門大会論文集,No.241,(2000-8) DHT:デジタルハイテスター 図3 小柳薫・小松貴彦・舟橋俊久・奈良秀隆・藤田吾 [2] DFM機特性試験 江崎公太・藤田吾郎・中野孝良・舟橋俊久・横山隆 一・小柳薫,「周波数品質改善を目的とした回転型 風力発電出力安定化装置の制御」,平成14年電気学 primary/secondary 100 90 80 70 60 10 9 8 7 6 50 40 30 20 10 0 5 4 3 2 1 0 0 2 4 6 8 会 電力 ・ エ ネ ル ギ ー 部 門 大 会 論 文 集 , No.505 , primary/secondary primary output voltage [V] line voltage [V] 10 excitation voltage [V] Result of No-load test 図4 DFM機特性曲線・一次/二次電圧比率 (2002-8) [3] 矢野満明・菅 敏・田中 博・川畑敬志・田中 武・小寺正 誠,「電子デバイス ―物性からICまで ―」,産業図書,(2003)
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