SummaryⅣ-4 タイの経済開発に伴う交通問題 タイの経済開発に伴う

SummaryⅣ
SummaryⅣ-4 タイの経済開発に伴う交通問題(調査報告)
タイの経済開発に伴う交通問題(調査報告)
福井大学大学院工学研究科
福井大学大学院工学研究科博士前期課程
工学研究科博士前期課程
(1)
夏目充
はじめに
近年、タイを含む ASEAN 諸国の経済開発は急速に進行している。特にタイ経済は 1980
年代後半から 90 年代前半にかけて、直接投資の急増に伴い高度経済成長を遂げた。そして
現在、このような外資系企業による工業化が先進国をはるかに上回るスピードで、短期間
に圧縮された形で、充分な予備対策をとることなく開発が行われてしまった。その為にバ
ンコクへの一極集中を生み、周辺地域では交通渋滞,大気汚染,ゴミ問題,水質汚濁,ス
ラムの形成などの様々な都市問題に直面することになっ
た。中でも深刻なのが世界最悪であると言われている交
通渋滞である。(図1)交通渋滞は社会活動や経済活動の元
となる人の移動に影響を及ぼす深刻な問題である。そこ
で私は都市問題にまで発展したバンコクの交通問題に焦
点を絞り、深刻な交通問題を引き起こしてしまう原因と
その解決の試みについて考察した。
図 1 BTS(スクムビット線)周辺
(2) 鉄道網が少ないバンコク
渋滞緩和に効果的だと考えられるのが車以外の公共交通機関の充実である。
図2はバンコクの路線図である。現在は「地下鉄ブルーラ
イン線」と「BTS スクンビット線」と「BTS シーロム線」
のみが開通しており、その他の点線で描かれた路線は開発
途中や計画中の路線である。これらの公共交通機関相互の
コネクションが極端に悪く、鉄道の駅・長距離バスターミ
ナル・BTS の駅など,公共交通機関のハブが直結されてい
るところが無いことから利用客も少ない。これらから分か
るように鉄道網の拡張だけでなく、料金や駅周辺施設の充
図2 バンコク路線図
実といったことも考慮して開発を進めていかなくては利用者が増えることはない。
(3)
まとめ
現在タイ政府は環境にやさしい持続可能な交通(EST)の実現を目指している。EST を
推進するためには、交通に関する公的交通機関の能力の強化と、効果的な管理体制などが
必要である。またこれらを実現するためには政府の計画や制度も重要であるが、もっとも
重要であるのが現地の人々の都市問題に対する意識の高さである。今回の調査でタイの
人々は交通渋滞やゴミ問題に関してはあまり関心がないように感じられた。これはタイの
国柄と関係が深いのかもしれないが、今まで以上に当該問題に対して真剣に考えるべきで
ある。