バンコクの都市交通 おり、幹線道路もネットワーク化されておら ず、幹線を一歩外れると細い路地となってお 1.アジア2位の渋滞都市 り、行き止まりや一方通行も多い。やむなく 公共交通機関が一部整備されてきたという 幹線道路へ迂回すると渋滞に巻き込まれる。 ことでほのかな期待もあったがバンコクの交 ラーチャダムリ通りに面する JETRO 事務所か 通渋滞は、より一層ひどくなっているようで ら直線距離でわずか 500mの距離にあるアテ ある。 ネタワーの福井銀行バンコク駐在員事務所に 移動するにも、渋滞を避け、細い路地を通り 抜けて行こうとするとけっこうな時間がかか る。 通勤・通学者がこの渋滞を抜ける便利なの がバイクタクシーである。オレンジ色のベス トを着用し、渋滞の車列を右へ左へ、センタ ーラインを反対車線にはみ出し縫うように走 る。しかし、客はヘルメットを着用せず、ス バンコク市内の渋滞 カートの女性はシートにまたがらず、滑り落 ちそうな横座りである。スマホに興じる女子 タイへの日系自動車産業の集中立地により、 高校生もいる。料金は 10B(40 円)程度であ 2013 年の自動車生産台数は過去最高の 246 万 るが、危険きわまりない。東南アジアの他都 台で世界 9 位となり、普及率は 16.8%になっ 市:ジャカルタやホーチミンがバイク社会と ている。バンコク市内は完全に自動車社会で いうならば、バンコクのバイクタクシーは交 ある。しかし、バンコク中心部の道路面積率 通渋滞による車社会からの退行現象といえな は 7.1%と、世界最大の渋滞都市ジャカルタ くもない。 の 7.3%とほぼ同じであり、東京 23 区の 18.4%の半分以下、上海の 12.0%、台北の 14.9%など、他のアジア主要都市と比較して も極端に少ない。また、自動車に代わる公共 交通機関が十分に整備されていないので、わ ずか 10 分ほどの距離で 1 時間もかかることが 珍しくない。ホテルからスワンナプーム国際 空港方面へはアソーク・モントリー通りを北 進し高速道路に乗るのが最も近いルートで、 わずか 2km ほどだが、ほとんど車は動かない。 バイクタクシーに料金を支払う女性 さらに、バンコクは日本の都市のように戦 ところで、バイクタクシーにも営業権があ 災や震災もなく古いまちがそのまま残されて るようで、インラック前政権(タクシン派) 時はバンコク都により登録・管理されていた クルンテープ駅から西の方へ延伸中であり、 が、軍事政権に変わったことにより、陸運局 道路の掘削工事が行われている。 に権限が移され、マフィアがらみの営業権も 大きく変動しているらしい。ドライバーはタ クシン派時代に好意的なようである。 2.公共交通機関の整備 バンコクの公共交通機関でまず注目される のは 1999 年末に開通した BTS(スカイトレイ BTS の車内(握り棒が高い?) ン)である。車輌はドイツから輸入したハイテ ク車両でエアコンもよく効く。 しかし、いずれも路線はバンコク中心部の みに留まっているため、公共交通利用者全体 の 70%はバスを利用している。渋滞する道路 交通から鉄道への移動を促進するには軌道の ネットワーク化・延伸が必要不可欠である。 現在、円借款でバンコク都内のバンスーと北 部ランシットを結ぶ大量輸送鉄道「レッドラ イン」(高架・地上 8 駅、26km)を建設中で、 バンコク首都圏の渋滞緩和を目指している。 元々、この路線は「ホープウェル計画」とし チケット販売機(コインを投入) 運行時間は通常 5~6 分間隔で、サヤーム・ て香港資本が、高架上に六車線の高速道路も 建設する、総延長 60km、総額 3,200 億円もの スクエアを分岐点に 2 系統が運行されている。 野心的な計画を立て、1993 年に着手されたが、 料金は距離制で 10~40B であるが、我々はホ アジア金融危機により 1997 年に計画は頓挫 テル近くのナーナー駅からサヤーム駅までの してしまった。 3 駅間を移動し、25B を支払った。発車時にベ ルは鳴るが、日本のように目の前でいきなり ドアが閉まることはなく多少時間的余裕があ るように思えた。車内はかなりの混みようで あるが、差席に座る利用者の 5 人中 4 人はス マホを触っている。ここも日本と同じスマホ 社会である。 もう一つ 2004 年に運行を開始した、日本の 円借款を利用して建設が進められた地下鉄線 (MRT「ブルーライン」)がある。現在も国鉄の イタリア企業が建設する「レッドライン」・ 手前がアジア金融危機で建設が放棄された 橋脚 現在、建設が進められている「レッドライ 公共交通の主要な手段として路線バスがあ ン」は当時の建設が放棄された橋脚は使わず、 るが、冷房のないバスと冷房付きバスが走っ その横に新たな橋脚を建設して進められてい ている。渋滞がかくもひどいと定時性という る。建設の一部はイタリア資本が請け負って 公共交通の目的からはかけ離れてしまう。 いるようだ。 (和田龍三) 3.その他の公共交通 バンコクはチャオプラヤ川の湿地を埋め立 てて建設されたため、従来のバンコクでは川 や運河を利用した水上交通が主要な交通手段 であった。道路の渋滞を避けるには運河ボー トが便利である。 また、ジャカルタや中国:天津などでも多 く見かけた三輪車タクシー(トゥクトゥク) も公共交通の1つとなっている。但し、自動 車があまりにも多いので片隅に追いやられ肩 身が狭い思いをしているようである。 三輪車タクシー(トゥクトゥク) 冷房付きバス
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