TPPについて考える 米 ました。これは、農業者のみならず日本国内でも消費 者や企業など、様々な活動に影響がでてくるものです。 新たな輸入枠「海外産が1割増」 最大の焦点であった、米につい て、ミニマムアクセス (最低輸入機 会) に従い年間77万トンを無関税で輸入するほか、 TPPでは、 これに加え、ミニマムアクセスの枠外でアメリカとオースト ラリアに計 7.84 万トンの輸入枠 (SBS 方式) を新設しました。 米の無関税輸入枠イメージ TPPによる新枠 (最低輸入量) ミニマムアクセス + (オーストラリア枠 0.84 万トン/アメリカ枠7万トン) 輸入枠は発効から3年間はアメリカ5 万トン、オーストラ リア 0.6 万トンとし段階的に拡大。13 年目以降はアメリカ7 万トンとオーストラリア 0.84 万トンとします。 両国から米の市場開放を迫られる中、日本は 778%の高 7.84万トン アメリカ 7 万トン オーストラリア 0.84 万トン ( ) 77 万トン (主に加工用米) うち10万トン (主食用) 価は下落している中、輸入米の増加が国内の米農家に打撃 で海外産の米が約1割増えることになります。 を与えないよう、政府は新たな輸入枠で国内に入る米と同量 国内では米の1人当たりの消費量が 1972 年のピークから の国産米を備蓄米として買い入れ、価格への影響を抑える 半減し、年間 57キロになっています。米の在庫が増え、米 ことを検討しています。 について考える 私たち農業者や、日本で生活する国民にとって大きな影響を及ぼす TPP 問題。交渉は10月 今回の特集では、TPP 交渉や大筋合意、政府が打ち立てた新たな対策やJAとしての今後の 方向性を見直し、私たちにできること、今後すべきことを考えていきます。 てみよう! ちょっと復習し 輸入品価格下落で国産販売価格が懸念 洋経 済 TPP(環太平 連携協定)とは 小麦と大麦は、国内の需要と供 19.2 万トン、7 年目以降は25.3 万トンになります。 給と価格を安定させるため、国が 大麦もTPP参加国を対象にした輸入枠を設けることにな 一括で輸入して国内業者に販売する 「国家貿易」 を行っていま り、協定発効時は年間 2.5 万トン、9 年目以降は 6.5 万トン す。業者に販売する際には、国内の生産者を保護する為の事 になります。 囲む 12 か国が参加し、農産品や工業品を輸入する際 にかける関税をなくしたり、投資や貿易をしやすくす 実上の関税 (マークアップと呼ばれる)を輸入価格に上乗せし 小麦粉調整品には 6 万トンの輸入枠を設定し、スパゲッ ています。 ティ―やマカロニの関税も60%削減。麦芽は現行の無税輸 TPPでは、現行の国家貿易制度を維持しますが、事実上 入枠の中に、アメリカとオーストラリア、カナダを対象とし の関税は9 年目までに45%削減となります。 た国別の輸入枠を設けます。 (協定発効時 18.9 万トン→ 11 小麦は特別輸入枠 (アメリカとカナダ、オーストラリアを 年目以降 20.1万トン) 牛肉 下げられ、現在、関税は 38.5%で は、実質的解禁の時点から最長 5 年間不適用となります。 (当 すが、協定発効時に27.5%にまで引き下げることになりまし 該条項により、米国・カナダには最長 2018 年1月末月まで た。さらに、協定発効から10 年で20%に、16 年目以降は9% 不適用) に段階的に引き下げます。 目までは 20%に戻す 「セーフガード」 を設定。16 年目以降の セーフガード税率は、18%から毎年1%ずつ削減 (セーフガー ドが発動されれば次の年は削減されない) 、4 年間発動がな ければ終了となります。 ぽらー の 花 巻 ◉ 2 0 15 .12 多様な農業の共存を目指し、10 年間にわたり粘り強 現在 27.5% にわたって規制・制度の変更を求められる、極めて自 由化度の高い包括的協定です。 (右図参考) TPPの協定文書は全 30 章で構成されており、関税 の撤廃・引き下げを決める 「物品の市場アクセス」だけ でなく、 「金融サービス」 「投資」 「知的財産」 「環境」 「労働」 牛肉の関税 38.5% 発効時 などテーマは幅広くあります。そのため、関税撤廃によ る農林水産業への打撃により、地域経済・社会や国の 食料自給率に大きな影響が及ぶだけでなく、医療、食 10年目 20% WHO、FTA(EPA)、TPPの違い 関税 削 減 交渉 WTO 世界貿易機関 16年目 9% の安全・安心などの仕組み・制度が変更を余儀なくされ、 私たちの生活が一変してしまう可能性があります。TP Pは日本国民にとって大きくかかわる問題です。 関税 撤 廃 交渉 例外的措置 加盟国共通のルールづくり (関税削減率。国内補助金の 削減、輸出補助金の撤廃) 多様な農業の共存 非常に高いレベルの自由化 FTA・EPA 自由貿易協定 経済連携協定 153カ国・地域が加盟 外のない関税撤廃を原則とするとともに、幅広い分野 家畜疾病により輸入が 3年以上実質的に停止された場合に 際に、4 年目までは38.5%、以降11年目までは30%、15 年 です。 ジア諸国などとの FTA・EPA とは違い、TPP は、例 牛肉にかかる関税は大幅に引き 経営が悪化する懸念があるため、政府は輸入量が急増した る共通のルールを作り、経済の結びつきを強める協定 の国の経済発展を尊重し合うかたちで合意してきたア 外国産価格は安いが国内産との品質による差別化を 引き下げで外国産との価格競争が激しくなり、畜産農家の 日本やアメリカ、オーストラリアなど太平洋を取り く交渉を続けてきた WTOドーハ・ラウンドや、お互い 対象に国ごとの輸入枠) を設け、協定発効時には合わせて 05 TPP 5日に閣僚会合で大筋合意され、日本農政は新たなステージを迎えました。 い関税を維持することになりました。しかし、新たな輸入枠 麦 TPP交渉大筋合意 Special Issue 筋合意の TPP交渉大 12 か国は、アトランタでの閣僚会合で大筋合意をし どう TPなる P に開放 「聖域」が大幅 内容 10 月 5 日、TPPをめぐり、交渉に参加している 特集 Special Issue する どうPP T 特集 矛盾 2国間または複数国間で行う 関税撤廃・ルール統一交渉 「事実上すべての貿易(一般 的には90%以上と解釈)に ついて、 原則として10年以内 の関税撤廃とガット第24条 で規程 TPP 環太平洋連携協定 太平洋をとりまく12カ国間のFTA 12カ国で行う関税撤廃・ルール統一 交渉 非常に高いレベルの包括的な自由化 を追求 様々な分野の制度・仕組みを統一 TPP交渉参加国(12カ国) ・アメリカ ・ペルー ・オーストラリア ・シンガポール ・ニュージーランド ・マレーシア ・チリ ・ベトナム ・ブルネイ ・メキシコ ・カナダ ・日本 参考:全国農業協同組合中央会「考えてみよう!TPPのこと」TPPから日本の食 と暮らし・いのちを守るネットワーク 2 0 15 .12 ◉ ぽらー の 花 巻 04
© Copyright 2024 ExpyDoc