セッション1:胃・要望

セッション1:胃・要望
セッション1 胃:要望
S1-1 良性陥凹型胃病変に観察される demarcation line の特徴
大阪府立成人病センター 消化管内科
〇金坂 卓、上堂文也、竹内洋司、石原 立
【背景】萎縮性胃炎症例では、上部消化管内視鏡検査において早期胃癌との鑑別を要する
小陥凹型病変が散見される。NBI 併用拡大観察では、背景粘膜との境界線 demarcation
line (DL) が存在することが上皮性腫瘍の特徴の1つと考えられている。一方で、非腫
瘍性病変には “ 背景粘膜の腺窩辺縁上皮で縁取られた内側に凸の明瞭な境界線 multiple
convex DL (MCDL)” がしばしば観察される。
【目的】MCDL の発生頻度および癌・非癌の鑑別診断における有用性を明らかにする。
【対象】過去に施行された多施設共同前向き臨床試験時に当院で発見された 1 cm 以下の
胃小陥凹型病変 144 病変中、画像評価が可能であった 138 病変(癌 18 病変、非癌 120
病変)。
【方法】記録された拡大内視鏡画像を見直し、DL および MCDL の有無を評価した。生検
病理診断を gold standard として、MCDL の非癌に対する診断能を評価した。また、2 名
の内視鏡医における DL および MCDL の検査者間一致率を評価した。
【結果】DL を認めた 100 病変(癌 16 病変、非癌 84 病変)のうち 34 病変(全て非癌)
に MCDL を認めた。MCDL の非癌に対する診断能は、感度 28%、特異度 100%、PPV
100%、NPV 17% であった。2 名の検査者間一致率(κ値)は、DL 0.55、MCDL 0.73 であっ
た。
【結語】MCDL は良性陥凹型病変に対して特異度が極めて高く、検査者間一致率も高かっ
た。今後、多数例の前向き試験での検証を行う意義がある。
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セッション1 胃:要望
S1-2 GIF-H290Z と GIF-H260Z の診断能の差を比較し得た一例
高知赤十字病院
〇小島康司、内多訓久、富永紫織、岩﨑 丈紘、川田 愛、中山 瑞、岡﨑三千代、
岩村伸一
従来から使用されている拡大内視鏡 GIF-H260Z はスコープ径が 10.8mm であり鎮静
なしでのスクリーニングとして使用するのは苦痛が強く不向きであるとされていた。し
かし昨年、拡大内視鏡で初めて 10mm を下回りフルズーム機能を搭載し従来機の GIF260Z とほぼ同等の性能をもつ GIF-H290Z が発売され、鎮静なしでもスクリーニングか
ら拡大内視鏡を使用できるようになった。当院では 2015 年 2 月に GIF-H290Z を導入し
主にスクリーニングに使用しその有用性を実感している。GIF-290Z と GIF-H260Z はほ
ぼ同等の性能とされているが、今回それぞれの画像を比較し診断能の差を実感した症例
を経験したので報告する。
症例は 67 歳男性、近医で胃癌を指摘され精査加療目的で当院紹介となった。初回
GIF-290Z を使用し観察したところ胃前庭部に指摘されていた 10mm 大の隆起性病変の
大弯側に 1mm 大の陥凹を認め、最大倍率で観察を行った。V.S classification system で
は S は absent であり評価ができず、V に関しては血管密度が上昇しているが regular か
irregular かの判定が困難であり質的診断に迷った。そこで鎮静を行い GIF-H260Z に入
れ替え再び最大倍率で観察したところ V は irregular と診断できたため後日主病変ともに
ESD にて一括切除を行った。病理結果では双方とも tubular adenocarcinoma であった。
GIF-H290Z は従来機の GIF-H260Z と比較して倍率は 85 倍とやや低くなっているものの、
分解能は 5.6μm と GIF-H260Z と同等とされている。しかしながら血管構築像の評価が
難しい場合もあり、精査や術前の範囲診断などには GIF-H260Z が適していると思われた。
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セッション1 胃:要望
S1-3 ルーチン検査において、質的診断に拡大 NBI 観察が有用であった早期胃癌の
1例
KKR 北陸病院 消化器内科 1)、金沢医科大学 病態診断医学 2)
〇増永高晴 1)、坂下俊樹 1)、武藤綾子 1)、湊 宏 2)
症例は 70 歳代 女性。糖尿病、脂質異常症にて当科通院している。腹部症状はなく、
定期検査目的で 2015 年 1 月に上部消化管内視鏡検査を行った。白色光非拡大観察にて
胃体上部前壁小彎よりに径 8mm 前後の陥凹所見をみとめた。非拡大超近接観察では焦
点があわず不鮮明であった。ズームレバーにより焦点を合わした弱拡大観察では周囲と
同色調のわずかの陥凹性病変を明瞭に認めた。陥凹底には自然出血点を伴っていた。背
景粘膜は LBC 認めることより腸上皮化生伴う萎縮胃底腺粘膜と判断した。NBI 観察では、
弱拡大観察にて陥凹底の中央部含む多くの部分がうすい粘液付着と粘膜白色不透明 WOS
のため NBI 上白色調を呈していた。このため微小血管構築像(MV)は透見できなかった。
一方、境界部近くの陥凹底辺縁部分では WOS を認めず、MV が透見できた。中拡大およ
び強拡大観察において、陥凹底中央部 WOS 付着部の表面微細構造(MS)は irregular で
あり、MV は absent であった。陥凹辺縁部分では MV は開放性や閉鎖性ループが混在し
大小不同、形状不均一で閉鎖性ループは吻合しネットワークを形成しており、irregular
MV と判定された。MS は absent であった。陥凹部に一致して明瞭な境界(DL)を認め、
全周をおえた (DL present)。以上の所見よりで癌と診断し、分化型癌と推測した。陥凹
底からの生検にて高分化腺癌(tub1)と診断された。後日 , 再度拡大 NBI 観察と EUS, 周
囲生検を行い、最終内視鏡診断を胃体上部前壁 0-Ⅱc 径 8mm 高分化腺癌 UL(-) 深
達度 M とした。ESD 後の切除標本では 0-Ⅱc 7x5mm tub2> tub1 pT1a(M) ly0 v0 UL(-)
HM0 VM0 であった。術前内視鏡での範囲診断で癌と診断した陥凹部に一致して癌を
みとめた。本例を通して、ルーチン観察時に拡大を併用することにより、生検前の質的
診断(癌の診断、範囲、組織型)にかなりの確信をもつことができた点、および、生検
の影響のない拡大所見を残せる点が有用と考えられた。
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セッション1 胃:要望
S1-4 WGA 陽性微小早期胃癌 0-Ⅱa の 1 例
戸畑共立病院 消化器病センター 1)、戸畑共立病院 病理部 2)
〇八坂太親 1)、宗 祐人 1)、森光洋介 2)、大津健聖 1)、武田輝之 1)
【背景】Doyama らは、NBI 併用拡大観察 (M-NBI) 所見において、腫瘍上皮下の白色の球
状を呈する 1mm 未満の微小な物体を white globe appearance (WGA) と命名し、病理組
織学的に壊死物質が貯留し、著明に拡張した腫瘍腺管に対応していたことを報告した。
さらに、癌と腺腫を鑑別診断するうえで特異度の高い所見であると報告した。今回、通
常観察では質的診断困難であった微小隆起癌に対して、M-NBI が有用で、かつ WGA の存
在が診断に寄与した症例を経験したので報告する。
【症例】60 歳代、男性。 ルーチンの上部消化管内視鏡検査を施行した。萎縮領域内の胃
体中部小彎に微小な隆起性病変を認めた。近接し観察すると、長径 2.5mm、淡発赤調か
ら同色調で丈の低い楕円形の隆起性病変として認識できるのみで質的診断は困難であっ
た。 また、隆起部口側辺縁に点状の白色域が観察された。 M-NBI では微小隆起部に一致
して明瞭な demarcation line (DL) を認めた。隆起部は irregular MV patten plus absent
MS pattern with a DL であり、分化型癌と判定した。さらに隆起部辺縁に 0.5mm 弱の
WGA を認め、確信をもって癌と判定した。隆起部肛門側辺縁より小さく生検し、Group
4 であり、ESD にて一括切除した。 切除標本の病理組織学的診断は、 Well differentiated
tubular adenocarcinoma with intraglandular necrotic debiris [IND]、0-IIa、2.5x2mm、
tub1、pT1a(M)、ly0、v0、pVM0、pHM0 であった。浸潤範囲は隆起部に一致し、粘膜表
層から粘膜深層にほぼ全層に発育した高分化腺癌の所見であった。腫瘍口側辺縁の上皮
直下に 320μm の intraglandular necrotic debiris (IND) を認め、M-NBI における WGA
に対応していた。
【考察】WGA の多くは腫瘍辺縁に存在しており、本症例も同様であった。 腫瘍内の WGA
は癌を強く示唆する所見とされ、重要な所見と考えられた。
【結語】微小隆起癌の質的診断に M-NBI は有用で、腫瘍内の WGA は癌に特異度の高い所
見と考えられた。
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セッション1 胃:要望
S1-5 スクリーニングの上部消化管内視鏡検査で発見され生検前に NBI 拡大観察が
可能であった胃底腺粘膜型胃癌の1例
福岡大学筑紫病院 内視鏡部 1)、福岡大学筑紫病院 消化器内科 2)、
福岡大学筑紫病院 病理部 3)、
〇別府孝浩 1)、長濱 孝 2)、八尾建史 1)、田邉 寛 3)、岩下明德 3)
症例は 60 歳代男性。近医でスクリーニング上部消化管内視鏡を受け、体上部大弯後
壁寄りに 8 mm 大の血管拡張を伴う褪色陥凹を認めた。NBI 併用拡大観察で、陥凹面に
一致して明瞭な demarcation line を認めた。陥凹内部の微小血管構築像は、不整なルー
プ状血管が主体で、個々の血管は形状不均一、分布は非対称、配列は不規則な所見を呈
した。腺窩辺縁上皮は弧状から多角形で、形状不均一は目立たず、腺窩辺縁上皮が不明
瞭化していた。VS classification: irregular MV pattern plus regular/absent MS pattern
with a demarcation line と判定した。生検で胃底腺型胃癌が疑われ当科に紹介。精査内
視鏡所見で、初回内視鏡時の生検の影響で病変口側部は微小瘢痕を認めた。体上部大弯
後壁寄りに、中心が褪色調の陥凹面を伴い、周辺がなだらかな隆起からなる病変を認め、
微小血管の拡張を伴っていた。色素散布強伸展により肛門側に軽度の伸展不良所見を認
めた。NBI 拡大観察では陥凹内部は初回内視鏡と同様であった。粘膜下層に浸潤した胃
底腺型超高分化腺癌を疑う肉眼型 Ⅱa+Ⅱc の所見で、また胃粘膜型も否定できないと考
えた。内視鏡治療を選択し、内視鏡的粘膜切開剥離術を施行した。病理組織学的診断は、
超高分化型腺癌(胃底腺粘膜型胃癌)深達度は SM1(about 300 μm)、脈管、リンパ管侵
襲は無く、断端陰性であった。免疫染色では、腫瘍細胞は Pepsinogen Ⅰ陽性、proton
pump,MUC6,MUC5AC, 部分的に陽性であった。ESD 標本では上皮の脱落を認め拡大観察
と1対1対応は不可能であった。そこで、生検標本の病理組織学的所見を詳細に検討し
たところ胃底腺から腺窩上皮に分化する胃癌を認め、その部位の腺窩が消失した部位が
あり、拡大観察で一部の腺窩辺縁上皮の認識できない部位に一致していた。以上陥凹型
胃底腺粘膜型胃癌の1例を報告する。
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セッション1 胃:要望
S1-6 内視鏡検診で生検病理診断より拡大内視鏡診断が有用であった早期胃癌の
1例
大野内科医院 1)、石川県済生会金沢病院 2)、金沢市医師会 3)、
〇大野秀棋 1,3)、代田幸博 2,3)
【背景】金沢市では 2008 年より対策型検診に胃内視鏡検診を導入し、センター方式の三
次判定を実施している。また当院では 2010 年より検診を含め約 9 割に NBI 併用拡大内
視鏡検査を実施している。今回拡大内視鏡と生検の診断結果に差異のあった検診症例を
経験した。ルーチン検査における拡大内視鏡検査を考える上で示唆に富む事例と考え報
告する。
【症例】60 歳代男性。2007 年に H. pylori 除菌療法を実施。2008 年より毎年当院にて
内視鏡検診を実施。2012 年胃体下部大彎に 10x5mm 大の発赤調の 0-Ⅱa 病変を認めた。
八尾らの VS classification では irregular MV + irregular MS pattern、DL(+) で癌を疑う
所見であったが、生検結果は Group 1 であり経過観察となった。11 ヶ月後の検診時の拡
大観察は、前回と同様の所見としながらも、一部 MV・MS 不整の軽い領域が混在していた。
生検結果も Group 1 であったため、再度経過観察となった。なお 2 回の検診判定は二次・
三次とも良性疾患の判定であった。23 ヶ月後の検査では、同 0-Ⅱa 病変は 10x10mm
大、拡大観察では MV・MS 不整が明瞭化していた。生検結果が Group 5 であったことか
ら内視鏡的粘膜下層剥離術を実施。0-Ⅱa、8x8mm、tub1、pT1a-M、UL(-)、ly0、v0、
pHM0、pVM0 で、intraglandular necrotic debris (IND) も認めた。
【考案】本例では拡大内視鏡診断が病変の実態を捉えていた。振返りになるが、11 カ月
後の時点から IND に対応する内視鏡所見で癌に特異的とされる white globe appearance
も認めており、内視鏡診断を重視すればより早期の治療に繋がったものと思われる。検
診に拡大内視鏡診断を導入することには異論もあるが、拾い上げ率の向上や不要な生検
の抑制効果など恩恵は大きい。また事例検討会を通じた拡大内視鏡診断学の普及に寄与
するものと考えている。
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セッション1 胃:要望
S1-7 NBI 拡大内視鏡の有用性と限界について - 当院での NBI 拡大内視鏡検査の
現状から 国立病院機構岡山医療センター 消化器科
〇古立真一、須藤和樹、坂林雄飛、若槻 俊之、福本康史、大藤嘉洋、松下公紀、
山下晴弘
【背景】Narrow band imaging(以下 NBI)併用拡大内視鏡による側方範囲進展診断など
術前精査としての有用性が報告されている。最近は胃癌スクリーニングに NBI 併用拡大
内視鏡の有用性を示唆する報告も散見されるが、一般臨床下での胃癌スクリーニングと
しての NBI 併用拡大内視鏡の有用性に関する報告はほとんどない。
【対象・方法】対象は 2015 年 1 月から 2015 年 6 月までに当院で施行した上部消化管
内視鏡検査(以下 EGD)のうち、胃の病変がわかっている症例、残胃例、拡大内視鏡(240Z、
H260Z)を使用していない症例等を対象とし、年齢、性別、背景胃粘膜の委縮(木村・
竹本分類を使用)、抗血栓薬の有無、鎮静剤使用の有無、生検割合、生検結果、生検確信
度による正診率、インジゴ散布割合について retrospective に検討した。生検確信度は、
確信度Ⅰ;上皮性腫瘍と診断するもの、Ⅱ;上皮性腫瘍を疑うもの、Ⅲ;上皮性腫瘍は
否定的なもの、Ⅳ;上皮性腫瘍ではないものとした。尚、当院では黒フードの装着は検
者に一任している。
【 結 果 】 対 象 症 例 は 738 例、 年 齢 中 央 値:69 歳(20-92 歳 )、 性 別: 男 性 / 女 性
=387/351、 抗 血 栓 薬: 有 / 無 =123/615、 鎮 静 剤: 有 / 無 =178/560、 委 縮:mild/
moderate/severe=328/139/271、生検割合:全体 9%(67/738)(背景粘膜別 mild 3%、
moderate 7.9%、severe 17.0%)、生検結果:胃癌 26 病変、adenoma6 病変、非癌 47
病変、MALT リンパ腫 1 病変(背景粘膜別の生検結果:mild 全例非癌、moderate 胃癌
3 病変、adenoma2 病変、非癌 6 病変、severe 胃癌 23 病変、adenoma4 病変、非癌 21
病変、MALT リンパ腫 1 病変)、生検確信度別の正診率:確信度Ⅰ 95.7%、Ⅱ 40%、Ⅲ
83%、Ⅳ 90.1%、インジゴ散布割合:3.5%(26/738)であった。
【結語】NBI 併用拡大内視鏡検査を行うことにより、生検やインジゴ散布を減らすことが
できる可能性が示された。
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セッション2 胃:一般
セッション2 胃:一般
S2-1 NBI 併用拡大内視鏡観察による胃病変診断能は短時間講義で向上するか?
東京医科大学 消化器内科 1)、がん研有明病院 消化器内科 2)、
静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科 3)、
〇草野 央 1)、山本頼正 2)、角嶋直美 3)
【 背 景 】NBI 併 用 拡 大 内 視 鏡(M-NBI) 観 察 に よ り 視 覚 化 さ れ た 微 小 血 管 構 築 像
(Microvascular pattern:V)、粘膜表面微細構造(Microsurface pattern:S)と病変部境界
(Demarcationline:DL)を指標とした VS classification system は、胃病変において癌と非
癌の鑑別といった質的診断に有用であると報告されている。しかし、これらは熟練した
内視鏡医による報告で、経験の少ない内視鏡医の学習効果については検討が少ない。
【目的】胃病変に対する M-NBI 観察の診断能が、短時間の講義で向上するかどうか検討
した。
【方法】胃癌の内視鏡診断に関する研究会(年に 3 回開催)に参加した 79 人の医師
(22 施設 ) を対象に読影をしてもらった。 胃病変 M − NBI 観察の静止画像を見て、VS
classification system に従い、DL の有無、S・V の不整の有無、癌・非癌の鑑別を、講義
前後に 20 例ずつ回答してもらった。拡大内視鏡写真は 1 病変につき最大倍率のものを
1 枚とし、組織学的に癌・非癌の病変を 10 例ずつ選び 20 問とした。初回テスト後には、
VS classification system について1時間講義を行った。講義前後の正診率(癌・非癌の
診断が正しかったものの割合)、感度(組織学的に癌と診断された病変のうち読影でも癌
と診断したもの)特異度(組織学的に非癌と診断された病変のうち読影でも非癌と診断
したもの)について検討した。
【 結 果 】 読 影 医 師 の 内 視 鏡 経 験 年 数 は 平 均 6.1 年(0-21 年 ) で あ っ た。 講 義 前 後 の
正 診 率、 感 度、 特 異 度 は そ れ ぞ れ 69.2/80.8%(P<0.001)、62.9/86.8%(P<0.001)、
75.6/75.1%(P=0.822) で、正診率と感度に有意差を認めた。M − NBI 観察経験数 50 例
以下の読影者のみに限ると、正診率、感度、特異度がそれぞれ、69.1/77.4% (P=0.001)、
62.3/83.3%(P<0.001)、75.7/72.0%(P=0.253) で、正診率と感度に有意差を認めた。
【結語】M − NBI 観察の経験が少ない内視鏡医でも、胃病変に対する M − NBI 観察の診
断能は、短時間講義で向上した。
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セッション2 胃:一般
S2-2 除菌後に発見された低分化型早期胃癌の 1 例
新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院 消化器内科 1)、
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野 2)
〇小林正明 1)、星 隆洋 1)、森田慎一 1)、兼藤 務 1)、須田剛士 1)、佐藤裕樹 2)、
水野研一 2)、橋本 哲 2)、竹内 学 2)、佐藤祐一 2)、寺井崇二 2)
低分化型早期胃癌の通常内視鏡典型像は、褪色調の平坦・陥凹病変である。NBI 拡大
観察によって、表面微細構造の消失と、不規則に屈曲、蛇行して次第に細まる特徴的な
微小血管を認める。しかし、低分化癌の所見にはバリエーションが多いため、日常のルー
チン内視鏡検査では注意を要する。内視鏡像に影響を与える因子として、癌の組織所見
(sig 単独、sig~por、tub2 混在)、癌の量、粘膜内浸潤部(全層、中層)に加えて、表層
上皮の所見(びらん、非癌上皮の被覆・残存)や局在(胃底腺領域、幽門腺領域)、背景
粘膜萎縮の程度などが挙げられる。また、最近では、被験者のピロリ菌感染状態が多様
となり、ピロリ持続感染、除菌治療成功後、既感染陰性、未感染を区別して検査に臨む
ことも必要である。今回、早期胃癌 ESD 後に除菌治療を行い、経過観察中に、強発赤調
の陥凹型を示した低分化型早期癌を経験したので報告する。
症例は 70 歳代女性。前庭部の分化型癌(2 病変)に対して ESD 施行した。3 か月後
の除菌治療は成功したが、1年後の内視鏡検査で胃体中部前壁に発赤域を認めた。病変
の指摘は、通常観察と非拡大 NBI は同等であった。除菌から 10 か月後に ESD を施行した。
病変は発赤調の陥凹型を示した。NBI 弱拡大では、発赤域より広い進展範囲を認識できた。
NBI 拡大では、網目状血管を認め、高密度であり、tub2 主体と考えた。空気量を減じると、
表層部に LBC 陽性の表面構造が視認された。病理所見は、印環細胞癌が胞巣をつくりな
がら粘膜中層を主体に進展し、最表層には非腫瘍性上皮が被覆残存していた。周囲は高
度の萎縮・化生粘膜であった。
ピロリ感染率低下に伴い、低分化癌の比率が高まる可能性が指摘されている。低分化
癌の内視鏡像に対する除菌治療の影響は明らかでないが、通常観察による存在診断と
NBI 拡大観察による質的診断は今後の課題と考えられる。
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セッション2 胃:一般
S2-3 除菌前後の内視鏡像が変化した 0-IIc 型胃癌の 2 例
佐久医療センター 内視鏡内科
〇高橋亜紀子、小山恒男、依光展和
今回我々は胃癌発見後に除菌を行い、その前後に NBI 拡大所見が変化した 2 症例を経
験したため、報告する。
【症例 1】60 代男性。胃体下部前壁に 3cm 大の境界不明瞭な陥凹性病変を認めた。NBI
拡大観察では、大小不同で不整な villi 様構造であり、境界明瞭であった。生検にて全層
性の tub1 であった。背景粘膜は不整のない villi 様構造で、LBC を一部で伴っており、
腸上皮化生と考えられた。
除 菌 3 ヶ 月 後 の ESD 時 に は、WLI に て さ ら に 境 界 不 明 瞭 と な り、NBI 拡 大 観 察 で
は villi 様構造の不整が軽度となっており、境界診断が困難であった。病理診断は tub1,
T1a-M, HM0, VM0, 0-IIc+uls, 30mm で、腫瘍の半分以上は表層が非腫瘍で覆われていた。
背景粘膜は完全型腸上皮化生と不完全型腸上皮化生が混在していた。
【症例 2】60 代男性。胃体上部前壁に 2cm 大の境界明瞭な黄色調の陥凹性病変を認めた。
NBI 拡大観察にて、大小不同と不整のある villi 様構造であり、血管の口径不同と走行不
整を中等度認め、境界明瞭であった。背景粘膜は不整のない villi 様構造で、LBC を一部
で伴っており、腸上皮化生と考えられた。生検で Gr.2 であったため、除菌を行い 1 ヶ月
に再検した。病変は境界不明瞭になり、NBI 拡大観察にて、villi 様構造の不整さは軽度
となっていた。生検診断は tub2 で、表層は非腫瘍で覆われていた。
除菌 4 ヶ月半の LECS 時に、WLI では再び境界明瞭となり、NBI 拡大観察にても不整
な villi 様構造を認めた。病理診断は tub2>tub1, T1a-M, HM0, VM0, 0-IIc+uls, 24mm で、
ほぼ全層置換していた。背景粘膜は萎縮した胃底腺であった。
症例 1 では除菌により表層が非腫瘍で覆われていた。症例 2 では除菌によりいったん
表層が非腫瘍で覆われたが、その後再び全層性となった。除菌後胃癌の診断には除菌後
の経過時間も考慮すべきと思われた。
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セッション2 胃:一般
S2-4 Helicobacter pylor i 未感染・低異型度高分化型胃癌の 1 例
順天堂大学医学部附属 順天堂医院 消化器内科学講座 1)、
順天堂大学大学院医学研究科 人体病理病態学 2)
〇松本紘平 1)、上山浩也 1)、松本健史 1)、赤澤陽一 1)、小森寛之 1)、竹田 努 1)、
浅岡大介 1)、北條麻理子 1)、八尾隆史 2)、渡辺純夫 1)、
【症例】35 歳男性。検診の上部消化管造影検査で異常を指摘され、近医の上部消化管内
視鏡検査で、前庭部に単発の隆起型びらんを認めた。生検の結果 Group 4 と診断され、
精査目的に当院を紹介受診した。通常白色光観察では、前庭部大弯に辺縁に丈の低い隆
起を伴う 10㎜大の軽度発赤調の陥凹性病変を認めた。NBI 併用拡大観察で、陥凹部に一
致して明瞭な Demarcation line (DL) を認めた。表面微細構造は、不整な弧状、一部に
多角形の腺窩辺縁上皮を認め、微小血管構築像は、不整な開放性ループ状血管や一部に
不規則に分枝した樹枝状血管を認めた。Irregular MV pattern plus irregular MS pattern
with a DL で癌と診断し、ESD を施行した。病理組織学的所見では、細胞・構造異型度
が低く腺腫と低異型度高分化型腺癌との鑑別を要したが、免疫染色では MUC2 ( 一部 +)、
MUC5AC (+)、MUC6 (+)、CD10 (+) で、粘液形質は胃腸混合型と判定され、総合的に判
断して低異型度高分化型腺癌と診断した (Type 0-IIc+IIa, 10 × 5㎜ , tub1, pT1a/M, UL(-),
ly(-), v(-), pHM0, pVM0)。内視鏡的・病理学的に萎縮はほとんど認めず、血中 HP IgG 抗
体陰性 (< 3.0U/ml)・尿素呼気試験陰性 (0.5‰ )・便中 HP 抗原陰性であることから、総
合的に HP 未感染胃癌と判断した。
【結語】今回、若年者かつ HP 未感染胃に発生した隆起型びらんを、詳細な NBI 併用拡大
観察により癌と診断し、ESD にて完全切除することができた。HP 未感染胃癌は稀である
が、今後、HP 感染率の低下と共にその頻度は相対的に増加すると予想され、若年かつ非
萎縮性胃粘膜であっても、癌の存在を念頭に置き NBI 併用拡大観察などの詳細な観察を
行う必要があると思われる。
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セッション2 胃:一般
S2-5 対比を行った早期胃癌の 1 例
東京都がん検診センター 消化器内科 1)、東京都がん検診センター 検査科 2)
〇山里哲郎 1)、入口陽介 1)、小田丈二 1)、水谷勝 1)、高柳 聡 1)、冨野泰弘 1)、岸 大輔 1)、
大村秀俊 1)、板橋浩一 1)、藤田直哉 1)、神谷綾子 1)、竹中由希夫 1)、清水孝悦 1)、
細井薫三 1)、山村彰彦 2)
症例は 70 歳台男性。スクリーニング目的の上部消化管内視鏡検査にて前庭部小弯に
15mm 大の境界明瞭な白色陥凹を認めた。生検にて高分化管状腺癌と診断された。病変
内に SM 浸潤を疑う様な隆起、深い陥凹等を認めなかった。NBI 拡大内視鏡にて、背景
粘膜は密度の低い MCE に囲まれた表面構造を呈していた。背景粘膜と病変部の間には
demarcation line を認め、白色部の NBI 拡大内視鏡所見では密度の上昇した表面構造と
大小不同を認め IMSP ありと判定した。しかしながら病変の表面に WOS の付着を認めて
おり、血管の判定は困難であった。Gastric ca, 0-Ⅱa, tub1, cM, 15mm 大と診断した。また、
病変近傍の小弯側に 5mm 大の小さな Ⅱc を認めており、2 病変に対し ESD で一括切除
した。ESD 時、NBI 拡大で詳細に観察した部位近傍にマーキングを行った。
新鮮切除写真にて病変はわずかな発赤と隆起を呈し、色調と凹凸変化で病変の境界は
ほぼ明瞭であった。新鮮切除写真を撮影後、ESD 時に行ったマーキング部をピン打ちし
た。ピン打ちで出来た穴の下端に割を入れ同部位から 2mm 間隔で割入りを行った。最
終病理診断は Well differentiated tubular adenocarcinoma of the Stomach, pType 0-Ⅱa+
Ⅱc, T1b2(SM2)(600μm), 18 × 10mm, tub1>tub2, mixed type, ly(-), v(-), HM0(11mm),
VM0(300μm), UL(-). であった。患者が追加手術を拒否したため経過観察しており、無
再発生存中である。
当日は NBI 拡大内視鏡写真と固定写真、新鮮切除写真を対比して提示する予定である。
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セッション2 胃:一般
S2-6 異所性胃腺から発生した胃粘膜下層浸潤癌の 1 例
広島大学病院 内視鏡診療科 1)、広島大学病院 消化器・代謝内科 2)、
広島大学病院 保健管理センター 3)、広島大学病院 病理診断科 4)、
県立広島大学 人間文化学部健康科学科 5)
〇吉福良公 1)、佐野村洋次 1)、田中信治 1)、栗原美緒 2)、水本 健 2)、実綿倫宏 2)、
岡 志郎 1)、日山 亨 3)、有廣光司 4)、嶋本文雄 5)、茶山一彰 2)
症例は 80 歳代女性。20XX 年 12 月、検診目的の上部消化管内視鏡検査にて体上部後
壁に径 10mm 大の陥凹性病変を認めたため、精査加療目的に翌年 1 月当科紹介受診し
た。当科での上部消化管内視鏡検査では、病変は褪色調で辺縁不整な陥凹を認め、粘液
成分の滲み出しを伴っていた。NBI 拡大観察では、陥凹中央部において、VEC (vessels
within epithelial circle) pattern を示す乳頭状不整粘膜が密に存在し、陥凹辺縁では不整
な MVP/MSP の広がりを認めた。また、demarcation line は全周性に認識可能であり、
癌と診断した。超音波内視鏡検査 (EUS) では、病変中央部で粘膜下層への突出を認めたが、
粘膜下層の最深部は保たれていた。また、粘膜下層に腺管の拡張と考えられる低~無エ
コー領域を伴っており、異所性胃腺の併存と考えた。X 線造影検査では、側面像にて明
らかな硬化所見を認めないものの、病変にやや厚みを認めた。以上より、早期胃癌 0-IIc
と診断し、粘膜下層浸潤も否定できなかったが、EUS にて粘膜下層の最深層が保たれて
いたことと、異所性胃腺の併存も考えられたことから完全摘除生検目的に同月 ESD を施
行した。病理診断は、Papillary adenocarcinoma, pT1b2 (SM 1000μm), UL(-), ly(-), v(), pHM0, pVM0 であった。腫瘍細胞の形態は幽門腺上皮に類似し、免疫組織化学的には
HIK1083( + )、MUC6( + )、HGM-45( +;focal)、MUC5AC( +;focal)、MUC2( − )、
CDX2( − ) であり、胃型 ( 幽門腺型 ) の形質を示していた。発育進展としては、粘膜下
層の異所性胃腺内で非腫瘍腺管と腫瘍腺管の連続性を認め、異所性胃腺からの癌化と考
えた。非治癒切除であったことから、追加外科的切除を行い、遺残やリンパ節転移を認
めなかった。
異所性胃腺から発生した癌は稀であり、今回、NBI 拡大観察にて詳細な表面構造を観
察し得た胃型の粘液形質を有する粘膜下層浸潤癌の 1 例を経験したので、若干の文献的
考察を加え報告する。
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セッション3 胃:一般
セッション3 胃:一般
S3-1 BLI 併用拡大内視鏡で VEC pattern を呈する領域と WOS 陽性の腺腫様領域が
混在した分化型早期胃癌の一例
原三信病院 消化器科 1)、原三信病院 臨床病理部 2)、
〇原口和大 1)、松坂浩史 1)、西嶋健一 1)、中村典資 1)、兼城三由紀 1)、千々岩芳春 1)、
河野眞司 2)
【症例】73 歳、男性
【主訴】なし
【既往歴】46 歳時 胆嚢摘出術、71 歳時 早期胃癌 ESD、その他に発作性心房細動、高
血圧症、高脂血症
【生活歴】喫煙:なし 飲酒:焼酎 1 合 / 日
【現病歴】2011 年 11 月、前医にて胃角部大弯の早期胃癌 0-IIa 病変に対して ESD 施行
され、術後診断は深達度 M の高分化型腺癌で根治度 EA であった。2013 年 11 月に前医
にて施行された上部消化管内視鏡検査にて、胃角部大弯の ESD 後潰瘍瘢痕の辺縁に発赤
調扁平隆起を指摘され、同年 12 月に当科紹介となった。当院での精査内視鏡検査にて、
前述の胃角部病変とは別に、前庭部大弯に白色光観察では 15mm 程度の境界やや不明瞭
な発赤調を呈する扁平な隆起性病変が疑われた。BLI 併用拡大観察では全周性に明瞭な
DL が認識され、病変中心部では整った円形ないし類円形の MCE の内部に微小血管が観
察され、乳頭腺癌に特徴的とされる VEC (vessels within epithelial circle) pattern を呈し
ていた。辺縁の一部に WOS 陽性で irregular MS pattern, absent MV pattern を呈する腺
腫に類似した拡大内視鏡像を呈する領域も認められた。拡大内視鏡所見から pap と tub1
が混在した分化型早期胃癌と診断し、後日当科入院にて ESD を施行した。
【 病 理 診 断 】Stomach (ESD) : Adenocarcinoma, tub1>pap, Lesion size: 18 × 12mm,
pType 0-IIa, pT1a, UL(-), ly0, v0, pHM0, pVM0。
【考察】BLI 併用拡大内視鏡で VEC pattern を呈する乳頭状の腺管構造が推測される領域
と辺縁の一部に WOS 陽性の腺腫様領域が混在した分化型早期胃癌の一例を経験した。
拡大内視鏡にて ESD 術前に組織構築像が推測可能であった症例であり、拡大内視鏡像と
病理像との詳細な対比を提示して報告する。
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セッション3 胃:一般
S3-2 胃原発髄外性形質細胞腫との鑑別が困難であった限局性胃炎の一例
石川県立中央病院 消化器内科 1)、石川県立中央病院 病理診断科 2)
〇辻 国広 1)、太田亮介 1)、大村仁志 1)、川崎 梓 1)、竹田康人 1)、柳瀬祐考 1)、中西宏佳 1)、
冨永 桂 1)、吉田尚弘 1)、松永和大 1)、竹村健一 1)、山田真也 1)、津山 翔 2)、
車谷 宏 2)、土山寿志 1)
【症例】67 歳女性。定期検査目的の上部消化管内視鏡検査で胃体下部小彎に前年度に
は認められなかった 15mm 大の黄白色の境界やや不明瞭な平坦な隆起性病変を認め
た。NBI 拡 大 観 察 で は Demarcation line は present、Microsurface pattern は regular、
Microvascular pattern は血管の増生を認めるが irregularity に乏しく regular の範疇で、
癌の所見に乏しいと判断した。総合的に形質細胞腫を疑い、病変より生検を行ったが、
確定診断は得られなかった。2 ヵ月後に上部消化管内視鏡検査の再検査を行った。病変
の形態に変化は認めなかったが、超音波内視鏡検査において第 2 層の明らかな肥厚を認
めた。採血所見や FDG-PET では異常を認めなかったが、本人の同意の下で確定診断目的
に ESD を行った。病理組織学的には粘膜固有層に形質細胞のびまん性の増殖を認めたが、
ISH ではκ鎖とλ鎖の両者の増殖を認めた。PCR を行ったがモノクローナルバンドの検
出はなかったことから、限局的な胃炎と診断した。
【まとめ】胃原発髄外性形質細胞腫の報告は進行例がほとんどであるが、近年早期で発見
された症例が散見される。本症例の内視鏡画像は形質細胞腫の内視鏡像と酷似しており、
拡大観察像も形質細胞の増殖をとらえていたと考える。本症例は内視鏡診断の限界例と
考えられ、今回報告する。
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セッション3 胃:一般
S3-3 拡大観察によって特徴的な画像を呈した十二指腸 MALT リンパ腫と
濾胞性リンパ腫の 1 例
国立病院機構 南和歌山医療センター 消化器科
〇木下幾晴、木下真樹子
【症例1】76 歳女性。スクリーニング上部消化管内視鏡検査にて、上十二指腸角に褪色
調の凹凸不整領域を認めた。拡大内視鏡観察では、病変部の微細表面構造は大小不同、
膨化・大型化、腺管の癒合などの不整な絨毛が不規則に分布していた。陥凹部分では表
面構造の消失した部分も認められた。微細血管構造は蛇行、分枝した樹枝状血管として
観察された。膨化・大型化などの不整絨毛構造は、上皮残存部の間質内の腫瘍リンパ球
浸潤が、無構造陥凹部分は、腫瘍リンパ球による上皮の破壊が病理的に対応すると思わ
れた。
【症例2】61 歳女性。出血性胃潰瘍で入院した際の上部消化管内視鏡検査にて、十二指
腸球部~下行部にかけて褪色調の凹凸不整領域を認めた。拡大内視鏡観察では 1 ~ 2㎜
大の白色調の半球状の隆起の集簇と、隆起以外の部分では平坦であるものの絨毛の腫大
が認められ、上皮内には不整な樹枝状血管が観察された。病理学的には半球状の隆起は
上皮直下の濾胞に、絨毛の腫大はリンパ球のびまん浸潤部分に対応すると考えられた。
【考察】文献的に濾胞性リンパ腫(以下 FL)と MALT リンパ腫(以下 MALT)は時に内
視鏡的な鑑別に苦慮するとされる。FL は上皮下に明瞭な結節を形成し、部分的にびま
ん性に浸潤する領域を混在することが特徴である。したがって濾胞を反映して半球状の
隆起が主となり、上皮内のびまん浸潤部分は腺管が破壊されることなく、絨毛の腫大の
みということが初期の FL の特徴と思われる。一方 MALT は病変内に濾胞を形成するこ
ともあるが、基本的にはリンパ球のびまん浸潤が主体であり、最大の特徴は LEL であ
る。したがって、残存腺管はリンパ球の浸潤の多寡により非常に多彩な表面構造を呈し、
LEL により上皮構造が消失する部分が観察される。FL と MALT の病理の違いを意識して
丹念に拡大内視鏡観察を行えば、内視鏡的な両者の違いを認識し鑑別により近づける可
能性があると思われた。
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セッション3 胃:一般
S3-4 共焦点内視鏡における fluoorescein 経静脈投与と粘膜滴下後の fluorescein
の粘膜内分布についての検討~正常胃粘膜において~
NTT 東日本関東病院 消化器内科 1)、獨協医科大学越谷病院 病理診断科 2)、
札幌厚生病院 病理診断科 3)、
〇野中康一 1)、大圃 研 1)、伴 慎一 2)、市原 真 3)、三角 宜嗣 1)、綱島弘道 1)、
瀧田麻衣子 1)、田島知明 1)、港 洋平 1)、酒井英嗣 1)、松山恭士 1)、村元 喬 1)、
松橋信行 1)
【 背 景・ 目 的 】 胃 粘 膜 に お い て probe-based confocal laser endomicroscopy (pCLE) は
fluorescein 静脈投与のみならず、胃粘膜滴下でも画像を得ることができる。今回我々
は fluorescein を胃粘膜表面に滴下したのちに、fluorescein が胃粘膜表層から粘膜内に
実際に浸透しているのかどうかを検討した。また fluorescein を経静脈投与した場合の
fluorescein の胃粘膜内における局在との比較も行い、我々が実施している fluorescein 粘
膜滴下法による pCLE の妥当性について検証した。
【対象・方法】健常男性のピロリ菌未感染の胃において、fluorescein 経静脈投与による
pCLE と fluorescein 滴下による pCLE 内視鏡を施行。1分後と5分後の胃体下部粘膜を
生検によって採取し、fluorescein の局在を観察した。
【結果】fluorescein 粘膜滴下1分後の生検組織ですでに、粘膜深部の胃底腺腺房細胞の細
胞質内に緑色蛍光を認めた。ごくわずかではあるが、腺窩腔内および粘膜固有層にも緑
色蛍光が観察された。滴下5分後の生検組織では1分後よりもさらに多くの緑色蛍光を
胃底腺腺房細胞の細胞質内に認めた。腺窩腔内や粘膜固有層の緑色蛍光は観察できなかっ
た。flourescein 経静脈投与においても粘膜滴下と同様の結果であった。
【考察】fluorescein を胃粘膜に滴下すると fluorescein が短時間に粘膜内に分布すること
が確認され、fluorescein 経静脈投与と同様に fluorescein の粘膜滴下によっても pCLE 画
像を得ることができるという事実を裏付けるものと考えられる。
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セッション3 胃:一般
S3-5 共焦点内視鏡を用いた早期胃癌の組織型鑑別
東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器肝臓内科 1)、東京慈恵会医科大学 内視鏡科 2)
〇小林雅邦 1,2)、郷田憲一 2)、堀内英華 1,2)、島本奈々 1,2)、原 裕子 2)、番 大和 2)、
樺 俊介 1,2)、土橋 昭 2)、炭山和毅 2)
【背景および目的】術前に早期胃癌の組織型を予測することは , 病変の治療方針を決める
上での重要である。我々は , 共焦点内視鏡 (Confocal laser endomicroscopy: CLE) を用い
て , 蛍光色素染色下に約 1000 倍の拡大倍率で生体内観察を行い , 各組織型(分化型・未
分化型)の病理像と , それに基づいた CLE の鑑別診断精度について検討した。
【方法】2014 年 4 月から 11 月までに当院で診断された早期胃癌のうち , CLE を施行
し、内視鏡的もしくは外科的切除がなされた 17 症例、19 病変 ( 分化型 15, 未分化型 4)
を対象とした。CLE 未経験で内視鏡経験 5 年以上の消化器内科医 2 名が , ランダムに並
べられた 19 病変の CLE 動画を読影した。分化型癌の CLE 像として , 辺縁不整な腺管構
造 (dark irregular epithelium), 蛇行した異常血管 (tortuous veins) などが挙げられてお
り , 未分化型癌の特徴では , 腺管構造が見られず (absence of glands), 黒色点状の構造物
(dark spots) を認めると報告されている。読影者は , これらの所見を加えた改訂版 Miami
classification に基づいて , 癌病変が分化型か未分化型かを診断した。ESD 切除標本によ
る組織学的診断を gold standard とし、混在型の場合 , 優位な方を最終組織型とした。
CLE 診断の sensitivity、specificity、accuracy、2 名の読影者間の診断の一致度 ( κ値 )
を評価した。
【結果】sensitivity、specificity、accuracy、κ値は各々 73%、50%、68%、0.76 (95%CI
0.44-1.1) であった。
【結語】2 名の読影者間の診断一致率は高いが , 診断精度は十分ではなく , 診断基準の改
良などが必要と思われた。
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セッション3 胃:一般
S3-6 NBI 併用拡大内視鏡で診断困難であった H.pylori 除菌後胃癌において
プローブ型共焦点レーザー内視鏡が有用と考えられた 1 例
藤田保健衛生大学 消化管内科
〇堀口徳之、田原智満、前田晃平、河村知彦、大久保正明、石塚隆充、中野尚子、長坂光夫、
中川義仁、柴田知行、大宮直木
【症例】64 歳男性
【主訴】特になし
【既往歴】胃潰瘍(13 年前 H.pylori 除菌)、早期胃癌(4 年前内視鏡治療)
【現病歴】早期胃癌内視鏡治療後フォローアップの検査で胃体下部大弯に発赤調の 0- Ⅱ c
病変を認め早期胃癌と診断。今回、内視鏡治療目的に当院へ紹介、入院加療となった。
【経過】第 2 病日に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)施行目的に上部消化管内視鏡検査施
行。白色光観察で体下部大弯後壁に発赤調の 0-Ⅱc 病変を認めた。NBI 併用拡大内視鏡
観察では病変中心は八尾らの VS classification による Microsurface (MS) pattern absent、
Microvascular(MV)pattern irregular をみとめ腫瘍露出部分と診断されたが口側、後壁
側、肛門側のそれぞれ病変境界と思われる部分は腺管の軽度大小不同は認めるが、White
zone が比較的均一な腺管構造であり周囲粘膜への移行は不明瞭で、境界診断困難と考え
られた。範囲診断目的に当院倫理委員会の承認を得てフルオレサイト静注後にプローブ
型共焦点レーザー内視鏡(pCLE、マウナケア社)を用い観察したところ境界診断困難な
部分に異型腺管を認め、さらに正常腺管との境界も同定可能であった。その範囲でマー
キングを施行し ESD を施行した。切除後病理は腫瘍径 10mm、高分化型管状腺癌、深達
度は粘膜内、水平断端と垂直断端は陰性で治癒切除であった(T1a、ly0、v0、pHM0、
pVM0)。
【考察】切除標本を確認すると、腫瘍腺管表層に異型度の低い上皮が確認され、低異型度
上皮が腫瘍腺管を被覆している所見を認めた。除菌後胃癌では被覆上皮の出現が近年指
摘されており、この被覆上皮が NBI 観察において範囲診断困難であった原因と考えられ
た。pCLE では表層より約 60µm 深部を観察しているため診断困難であった部分でも異
型腺管を観察でき、範囲診断が可能であったと考えられた。
【結語】pCLE を用いることで、診断困難な除菌後分化型早期胃癌の範囲診断が容易にな
る可能性が示唆された。
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セッション4 食道:要望・一般
セッション4 食道:要望・一般
S4-1 拡大観察の併用で診断し得た pT1a-MM 多発食道小癌の 1 例
埼玉県立がんセンター 消化器内科 1)、埼玉県立がんセンター 病理診断科 2)
〇都宮美華 1)、有馬美和子 1)、石川文隆 2)、西村ゆう 2)、黒住昌史 2)
当科では上部消化管内視鏡検査(GS)でルーチンに拡大内視鏡を使用し、随時画像強
調法併用拡大観察(以下拡大観察)を行っている。今回、2 つの pT1a-MM 食道小癌を
拡大観察で診断し内視鏡治療を施行した症例を経験したので報告する。
【症例】70 歳代、男性。[ 既往歴 ] 5 年前に下咽頭癌に対し CRT を施行し CR 継続中。
[ 現病歴 ] 下咽頭癌の経過観察目的に他院で施行した GS で、胸部下部食道前壁に 0-IIc 型
食道癌を指摘され、精査加療目的で当科を紹介受診した。
[ 初診時 GS 所見 ] 前医で指摘された病変は、上切歯列から 35cm 前壁に 20㎜大の発赤陥
凹性病変として認識され、拡大観察で B1 血管と AVA-small を認め、0-IIc 型食道癌 cEP/
LPM と診断した(病変③)。この他に、25㎝右壁に 5mm 大の淡発赤調の僅かな陥凹性
病変を認め、拡大観察で中央部にびらんと口径不同な B2 血管が見られ、0-IIc 型食道癌
cMM/SM1 と診断した(病変①)。また 30cm 右壁には淡発赤調の 10mm 大の浅い陥凹
性病変を認め、拡大観察で陥凹辺縁に B2 血管、陥凹内に B1 血管を認め、0-IIc 型食道
癌 cMM/SM1 と診断した(病変②)。CT、EUS、US で cN0 と診断し、IC の上 ESD を先
行し病理結果で追加治療を検討することとした。
[ 初回 ESD 時所見 ] 病変①は不明瞭となっていたため経過観察することとし、病変②と
③ を ESD し た。 病 理 組 織 学 的 に 病 変 ② は mod SCC, pT1a-MM, ly0, v1, INFb, 8x4mm
であったが、静脈侵襲が粘膜筋板に接している部位が最深部であった。病変③は mod
SCC,pT1a-LPM, ly0, v0, INFb, 19x8mm であった。
[6 カ月後の所見 ] 病変①は淡発赤陥凹部として認識できるようになっており、拡大観察
で B2 血管を認めた。cMM/SM と診断し ESD を施行した。病理診断は mod SCC, pT1aMM, ly0, v0, INFb, 6x6mm であった。
【考察】拡大内視鏡の併用で詳細な深達度診断が初回検査時から行うことができ、小さな
病変も生検することなく質的診断が可能であった。一方で拡大内視鏡を使用しても、脈
管侵襲の存在を予測することは難しかった。
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セッション4 食道:要望・一般
S4-2 当科における咽頭・食道表在癌に対する内視鏡診断・治療および術後追加
治療の現状
長崎大学病院 消化器内科 1)、長崎大学病院 病理診断科 2)
〇南ひとみ 1)、山口直之 1)、大仁田賢 1)、竹島史直 1)、中尾一彦 1)、福岡順也 2)
食道癌診断・治療ガイドラインにより、脈管侵襲陰性かつ INFa/b の T1a-MM 癌は慎
重な経過観察、それ以外の MM と T1b は脈管侵襲や浸潤形態に関わらず追加治療を考慮
することが推奨されている。術前の内視鏡像および病理を対比し、再発高リスク群の予
測が可能か検討を行った。
検討① 2007 年 9 月~ 2012 年 3 月に深達度 MM/SM1 であった 27 例の追加治療
および予後について検討を行った。検討② 2007 年 9 月~ 2015 年 1 月の食道表在癌
402 例 439 病変の内視鏡像と病理所見を対比した。
結果① MM は 16 症例 17 病変、SM1 は 11 症例 11 病変であった。T1a-MM の内、
脈管侵襲陽性 6 例、INFc1 例であった。2 例は手術を選択し、6 例に追加治療を行った。
SM1 の 2 例に脈管侵襲を認めたが、無治療で無再発生存中である。ESD 後局所再発の 2
例は、再 ESD にてコントロール可能であった。SM1 脈管侵襲陰性で追加治療未施行の
1例で 11 ヶ月後リンパ節・骨転移にて再発し、化学放射線療法を行うも 18 ヶ月後現病
死した。結果② 術前の内視鏡において横走する B2 血管を認め、術前診断 MM/SM1 相
当と判断した 102 病変の内、~ LPM 43 病変、MM 30 病変、SM1 18 病変、11 病変が
SM2 以深であった。~ LPM43 病変の内、41 病変で異常血管は表層のみであり LPM ~
MM と術前診断し、いずれも治癒切除であった。MM の 10 症例に脈管侵襲陽性を認め、
うち 3 病変は肉眼型 0-III、2 例は病変内に結節成分を認めていた。SM1 以深の 29 病変
中 12 病変で横走する異常血管は深部の太い血管と交通しており、SM1 以深の術前診断
であった。脈管侵襲陽性 8 病変中 3 病変で肉眼型 0-III、1例で AVA-L、3 例で結節成分
を要する混合型であった。
高リスク症例を正確に予測することは困難であるが、横走する異常血管が深部の太い
血管と交通している場合には、深達度 SM1 以深あるいは脈管侵襲陽性の高リスクと考え
られた。また、血管診断に加えて肉眼型や結節成分の有無を加味することは、要追加治
療症例の選別に有用である可能性が示された。
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セッション4 食道:要望・一般
S4-3 White globe appearance を伴った、Barrett 食道癌の 1 例
大阪府立成人病センター 消化管内科
〇東内雄亮、石原 立、加藤 穣、濱田健太、山崎泰史、松浦倫子、金坂 卓、山本幸子、
赤坂智史、鼻岡 昇、竹内洋司、東野晃治、上堂文也、飯石浩康
【緒言】White globe appearance (WGA) は胃の NBI 併用拡大内視鏡観察において見られ
る所見で、1mm 未満の白色、球状の小隆起である。組織学的には、上皮直下に存在する、
内部に壊死物質が貯留し著明に拡張した腫瘍腺管、intraglandular necrotic debris(IND)
と対応しているとされている。IND は胃癌において、特異的な組織学的所見であると報
告されており、WGA も癌の診断において特異度の高い内視鏡所見と考えられている。
【症例】40 歳台女性
【主訴】内視鏡治療目的
【既往歴】プロラクチノーマ
【現病歴】スクリーニングの上部内視鏡検査にて Short Segment Barrett E sophagus(SSBE)
と、食道胃接合部に陥凹性病変を指摘され、生検で腺癌と診断された。精査、加療目的
で当院に紹介され、受診した。
【 経 過 】 当 院 で 施 行 し た 上 部 内 視 鏡 検 査 に お い て、ECJ 直 上 の SSBE 内、2 時 方 向
に、10mm 大 で 発 赤 調 の 陥 凹 性 病 変 を 認 め た。NBI 併 用 拡 大 観 察 で は、irregular
microvascular pattern、absent microsurface pattern 及 び demarcation line を 認 め た。
また陥凹内辺縁に白色、球状の小隆起を認め、WGA と考えられた。Barrett 食道癌の臨
床診断で ESD が施行された。病理組織では高分化型腺癌、pT1a-SMM.ly0v0 であった。
また、腫瘍より肛門側の粘膜下層に固有食道腺を伴っており Barrett 食道癌と診断された。
また病変内に、壊死物質を内部に貯留した、拡張した腺管を認め、IND と考えられた。
【 結 語 】WGA を 伴 う Barrett 食 道 癌 の 1 例 を 経 験 し た。 今 後 Barrett 食 道 癌 に お け る
WGA の診断意義を検討する予定である。
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セッション5 大腸:要望
セッション5 大腸:要望
S5-1 日本全国のがん診療連携拠点病院における拡大内視鏡使用の現状
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 1)、
国立がん研究センターがん対策情報センター がん政策科学研究部 2)、
国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 検診部 3)
〇関口正宇 1)、坂本 琢 1)、岩本桃子 2)、山田真善 1)、中島 健 1)、松田尚久 1,3)、
東 尚弘 2)、斎藤 豊 1)
【背景】拡大内視鏡の大腸腫瘍診断における有用性は数多く報告されているが、日本全国
における使用実態については把握されていない。そこで本研究では、日本全国のがん診
療連携拠点病院における早期大腸癌診断に対する拡大内視鏡の使用割合とその診断能を
検討した。
【方法】国立がん研究センター研究開発費「がん診療評価指標の開発と計測システムの構
築に関する研究」(研究代表者:東尚弘)のために作成された、日本全国のがん診療連
携拠点病院 232 施設の院内がん登録と DPC/ レセプトデータを突合させたデータベース
(2012 年)を二次的に使用した。232 施設中、データが不完全な 8 施設を除く 224 施
設において大腸内視鏡検査が施行された早期大腸癌症例を対象に、「狭帯域光強調加算」
コードから 拡大内視鏡使用の有無を評価した。さらに院内がん登録データにおける臨床
診断と病理診断情報(TNM 分類)が両方とも得られる症例については、深達度診断(M/
SM)における正診率を算出した。
【結果】拡大内視鏡は早期大腸癌 12,588 例中、2,176 例(17.3%)に使用されていた。
施設単位で見ると、224 施設中、80 施設(35.7%)では拡大内視鏡が未使用で、残り
144 施設では使用割合が 0.9 ~ 87.2% と多岐に渡っていた。臨床・病理診断ともデー
タが得られた 8,435 例のうち、拡大内視鏡が使用された症例の深達度正診率は 83.8%
(1,489/1,776)で、未使用例(88.5%、5,894/6,659)よりも低い結果であった(P < 0.001)。
【結論】日本全国のがん診療連携拠点病院における早期大腸癌に対する拡大内視鏡使用割
合は低いことが明らかになった。がん診療連携拠点病院以外の施設も含めると、全国的
な使用割合はさらに低い可能性がある。診断能については、症例選択バイアスや深達度
区分(M/SM)等の問題故、評価が難しいが、一部の先進施設以外では、まだ診断精度
が不十分な可能性も考えられた。
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セッション5 大腸:要望
S5-2 ルーチン大腸内視鏡検査時の拡大観察が質的診断・治療方針決定に
有用であった微小 T1b 癌の 1 例
広島大学病院 内視鏡診療科 1)、同 消化器・代謝内科 2)、同 病理診断科 3)、
県立広島大学 人間文化学部健康科学科 4)、
〇朝山直樹 1)、田中信治 1)、岡 志郎 1)、住元 旭 2)、平野大樹 2)、田丸弓弦 2)、
二宮悠樹 2)、鴫田賢次郎 2)、林 奈那 1)、茶山一彰 2)、有廣光司 3)、嶋本文雄 4)、
【症 例】60 歳代男性。
【主 訴】なし(便潜血検査陽性)。
【家族歴】特記事項なし。
【既往歴】特記事項なし。
【現病歴】便潜血検査陽性の精査目的で施行した大腸内視鏡検査にて、S 状結腸に径
4mm 大の微小ポリープを認めた。NBI 拡大観察では、surface pattern は一部で高度不
整で、vessel pattern は太さ / 分布が比較的均一であったが、一部で蛇行した太い微小
血管を認めた(広島分類 Type C1、一部 C2)。インジゴカルミン散布による拡大観察で
は不整な V 型 pit pattern、クリスタルバイオレット染色による拡大観察では、VI 型高
度不整 pit pattern であった。以上の所見より、0-Is 型早期癌と診断し polypectomy で
はなく EMR にて病変を完全一括摘除した。病理組織所見は tub1, pT1b (SM 2000μm),
budding grade 1, ly1(D2-40), v0(VB), pHM0, pVM0 であった。追加外科手術を施行した
が、局所遺残やリンパ節転移は認めなかった。
当科では大腸の局在病変全てに対して NBI 拡大内視鏡観察をルーチンで行い、必要に
応じて色素拡大観察を施行しているが、本症例は拡大観察所見によって polypectomy で
はなく EMR を選択し完全一括切除が可能である。このように、拡大観察は大腸内視鏡検
査でルーチン化すべきである。
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セッション5 大腸:要望
S5-3 拡大内視鏡にて経時的変化を確認できた大腸 MALT リンパ腫の一例
秋田赤十字病院 消化器病センター 1)、岩手医科大学医学部 病理診断学講座 2)、
札幌医科大学医学部 分子生物学講座 3)
〇田中義人 1,2,3)、山野泰穂 1)、松下弘雄 1)、吉川健二郎 1)、原田英嗣 1)、中岡宙子 1)、
吉田優子 1)、佐藤健太郎 1)、今井 靖 1)、永塚 真 2)、菅井 有 2)、山本英一郎 3)、
青木敬則 3)、檜森亮吾 3)、鈴木 拓 3)
【症例】50 歳代、男性。
【現病歴】2014 年 4 月大腸ポリープの切除目的に大腸内視鏡検査を施行した際に、目的
病変とは別に横行結腸にまだらな弱発赤調の領域を指摘した。
【内視鏡所見 / 治療】内視鏡所見①(2014 年 4 月):まだらな弱発赤調の領域を NBI 拡
大観察したところ surface pattern は背景粘膜と同様でⅠ型 pit pattern を示唆したが、微
細な血管拡張像を伴う丈の低いなだらかな粘膜下腫瘍様小隆起が複数集合した所見とし
て認識された。確定診断には至らず他病変の治療もあり、経過観察とした。
内視鏡所見②(2014 年 7 月):通常観察では病変は前回観察時に比べより明瞭な発赤
調の領域として認識され、NBI 拡大観察では前回同様に微細な血管拡張像を伴っていた
が、今回は一様な丈の低い粘膜下腫瘍様隆起として認識された。インジゴカルミン散布
像では病変の表面はわずかな凹凸を認め、クリスタルバイオレット染色後の拡大観察で
は病変はⅠ型 pit で構成されていたが、病変内の凸部では I 型 pit の密度がやや疎となっ
ていた。以上より、粘膜固有層内での細胞増殖、特にリンパ球系の増殖が示唆され、3
か月の経過で病変が明瞭化してきていたこともあり、total biopsy 目的に EMR を施行し
た。
【病理所見】病理学的所見は HE 染色にて粘膜から粘膜下層にかけてびまん性のリンパ腫
細胞の増殖を認めた。また同部位には胚中心を認め、腫瘍細胞は辺縁帯に合致する分布
を認めた。
免疫染色では CD79a ++,CD20 ++,CD3 +,CD4 +,CD5 +,cyclin D1 -,CD23 -,CD10 -,Bcl-2
+ であり MALT (mucosa associated lymphoid tissue) の診断となった。
【まとめ】拡大内視鏡にて大腸 MALT リンパ腫の経時的な変化が確認できた貴重な症例
であり、他の自験例を含めその内視鏡的特徴について報告する。
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セッション5 大腸:要望
S5-4 Endocytoscopy による早期大腸癌の分化度診断
昭和大学横浜市北部病院 消化器センター
〇迫 智也、工藤進英、宮地英行、若村邦彦、三澤将史、森悠一、小形典之、工藤豊樹、
久行友和、林 武雅、片桐 敦、馬場俊之、石田文生
『目的』超拡大内視鏡(Endocytoscopy:EC)は生体内で約 380 倍の拡大倍率で病理
像に類似した画像を描出することができる。Pit pattern 診断は大腸病変の質的診断・量
的診断に有用であり、EC はその併用により診断能を上乗せすることが報告されている。
しかし EC による大腸癌の分化度診断の報告はないため、今回早期大腸癌の分化度診断
が可能か検討を行った。『方法』2006 年 8 月から 2015 年 5 月までに当院で EC 観察後
に切除された早期大腸癌のうち、EC 所見と切除標本の病理組織が詳細に対比可能であっ
た 94 例を対象とした。超拡大観察で得られる腺腔と核の形態から分化度を以下の項目
で検討し、切除標本の表層の病理組織と比較した。分化度診断を行う上での評価項目
を、(A) 管状の腺腔と腫大した核を認めるもの、(B) 不明瞭な腺腔と腫大した核を認める
もの、(C) 癒合する不明瞭な腺腔とその周囲に腫大した核を塊状に認めるもの、(D) 微細
顆粒状の所見とした。『成績』対象とした早期大腸癌 94 例のうち、切除標本の病理組織
学的検討にて病変表層の組織型が高分化腺癌 (tub1) であった病変は 65 例、中分化腺癌
(tub2) であった病変は 29 例であった。それぞれの深達度の内訳は、tub1 は粘膜内癌 35
例、粘膜下層浸潤癌 30 例、tub2 は粘膜下層浸潤癌 29 例であった。EC 所見 (A) は tub1
で 65 例(100%)、tub2 で 22 例(75.8%)、(B) は tub1 で 20 例(30.8%)、tub2 で 28
例(96.6%)、(C) は tub1 で 6 例(9.2%)、tub で 27 例(93.1%)、(D) は tub1 で 18 例
(27.7%)、tub2 で 15 例(51.7%)で認められた。EC 所見 (C) は tub2 において有意に高
値であり、EC における中分化腺癌の指標としたところ感度 93.1%、特異度 90.7%、正
診率 91.5%、陽性尤度比 10.1 であった。『結論』EC 所見 (C) は病理診断における tub2
の篩状構造を反映していると考察され、EC は早期大腸癌の分化度診断に有用である可能
性が示唆された。
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セッション5 大腸:要望
S5-5 大腸微小ポリープの診断における、内視鏡コンピュータ自動診断システムの
有用性
昭和大学横浜市北部病院 消化器センター 1)、昭和大学江東豊洲病院 消化器センター 2)、
名古屋大学 情報連携統括本部 3)
〇森 悠一 1,2,3)、工藤進英 1)、三澤将史 1)、若村邦彦 1)、前田康晴 1)、小川悠史 1)、
工藤豊樹 1)、林 武雅 1)、宮地英行 1)、片桐 敦 1)、石田文生 1)、井上晴洋 2)、森健策 3)、
二村幸孝 3)
【目的】コンピュータによる内視鏡自動診断は、「均てん化された診断」を可能としうる
夢のモダリティである。われわれは、endocytoscopy (EC: Olympus) が 380 倍の超拡大
観察により細胞を可視化できる点に着目し、リアルタイム自動診断システムを開発した
(Mori, Kudo et al. GIE 2015)。一方で、5mm 以下の大腸微小ポリープの診断は正診率
80% 程度の報告が多く (East et al. GIE 2007, Apel et al. GIE 2007)、決して容易なもので
はない。本研究では、大腸微小ポリープに対する自動診断の有用性を検討した。
【方法】開発された自動診断システムは、コンピュータ画像処理により自動抽出される
296 種類の画像特徴量 ( 核の大きさ・ばらつき・長短径・周囲長・細胞の配列法則等 )
と病理診断の関連性を機械学習させたプログラムで、内視鏡検査中のリアルタイム (0.2
秒 ) 診断を可能とする。今回、未知の大腸微小ポリープ 92 症例(平均年齢 65 歳、男
63, 女 29 症例)139 病変を対象に、自動診断システムの精度を評価した。
【結果】対象 139 病変の平均径は 3.6mm(2-5mm) で腺腫性ポリープが 91 病変、非腫瘍
性ポリープが 38 病変であった。自動診断システムによる腫瘍 / 非腫瘍の鑑別能は感度
88%, 特異度 92%, 正診率 89%, PPV 99%, NPV 85% であったが、機械学習における高自
信例 (=high confidence 例 , 113/139 病変 ) に限ると、感度 96%、特異度 98%、正診率
96%, PPV 99%, NPV 93% だった。
【考察】内視鏡自動診断システムは、大腸微小ポリープ診断における有用な診断支援と
なりうることが示された。
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セッション6 大腸:一般
セッション6 大腸:一般
S6-1 The Japan NBI Expert Team (JNET) 大腸拡大 Narrow Band Imaging (NBI) 分類
(JNET 分類)の現状
和田胃腸科医院 1)、佐野病院 2)、広島大学 3)、昭和大学横浜市北部病院 4)、
東京慈恵会医科大学 5)、国立がん研究センター中央病院 6)、藤井隆広クリニック 7)、
国立がん研究センター東病院 8)、国立病院機構 東京医療センター 9)、栃木県立がんセンター 10)、
調布外科 ・ 消化器科内科クリニック 11)、静岡県立静岡がんセンター 12)、京都大学 13)、
順天堂大学 14)、中国医科大学第一医院 15)、久留米大学 16)、聖マリア病院 17)、近畿大学 18)、
大阪府立成人病センター 19)、まちだ胃腸病院 20)、京都桂病院 21)、京都府立医科大学 22)、
藤田保健衛生大学 23)、寺井クリニック 24)、秋田赤十字病院 25)、とくら 山口医院 26)、
藤田保健衛生大学 27)、東邦大学 28)、青森県立中央病院 29)
〇和田祥城 1)、佐野 寧 2)、田中信治 3)、工藤進英 4)、斎藤彰一 5)、松田尚久 6)、藤井隆広 7)、
池松弘朗 8)、浦岡俊夫 9)、小林 望 10)、中村尚志 11)、堀田欣一 12)、堀松高博 13)、
坂本直人 14)、傅 光義 15)、鶴田 修 16)、河野弘志 17)、樫田博史 18)、竹内洋司 19)、
町田浩久 20)、日下利広 21)、吉田直久 22)、平田一郎 23)、寺井 毅 24)、山野泰穂 25)、
金子和弘 8)、中島 健 6)、坂本 琢 6)、山口裕一郎 26)、玉井尚人 5)、丸山尚子 27)、
林 奈那 3)、岡 志郎 3)、岩館峰雄 2)、石川秀樹 22)、村上義孝 28)、吉田茂昭 29)、斎藤 豊 6)
これまで日本では佐野分類、広島分類、慈恵分類、昭和分類などの大腸拡大 NBI 分類
が提唱され、質的・量的診断に対する有用性が多数報告された。しかし臨床の現場では
共通の診断基準が明確にされず、統一分類の必要性が唱えられるようになった。2011 年
に大腸拡大 NBI 統一分類の作成を目的に、厚生労働省の班会議(がん研究開発費)の中
で、これまでに多数の知見を報告してきた専門医からなる The Japan NBI Expert Team
(JNET) が結成され、2014 年 6 月に本邦初の大腸拡大 NBI 統一分類である JNET 分類が
作成された。この新分類は、Vessel と Surface のそれぞれの所見が治療方針決定に直結
する Type 1、2a、2b、3 の 4 つのカテゴリーからなる。Type 1 は過形成性ポリープ、
Type2A は腺腫~低異型度癌 (Tis)、Type 2B は高異形度癌 (Tis/T1a)、Type 3 は高異形
度癌 (T1b ~ ) の病理所見に対応している。今後、班会議および日本消化器内視鏡学会附
置研究会を通じて、妥当性に関する検討や実臨床における有用性評価を進めていく予定
である。
JNET 大腸拡大 NBI 分類(JNET 分類)
NBI
Type 1
Type 2A
・口径整
・均一な分布
(網目・らせん状)※2
Type 2B
Vessel
pattern
・認識不可※1
Surface
pattern
・規則的な黒色または白色点
・整(管状・樹枝状・乳頭状)・不整または不明瞭
・周囲の正常粘膜と類似
予想組織型
過形成性ポリープ
腺腫~低異型度癌(Tis)
・口径不明
・不均一な分布
Type 3
・疎血管野領域
・太い血管の途絶
・無構造領域
高異型度癌(Tis/T1a)※3 高異型度癌(T1b ~)
※1 認識可能な場合、周囲正常粘膜と同一径。
※2 陥凹型においては、微細血管が点状に分布されることが多く、整った網目・らせん状血管が観察されないこともある。
※3 T1b が含まれることもある。
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セッション6 大腸:一般
S6-2 当院における大腸 JNET 分類導入時の成績の検討
NTT 東日本札幌病院 消化器内科
〇松本美桜、吉井新二、吉田将大、重沢 拓、太宰昌佳、小野寺 学
【背景】2014 年6月に大腸腫瘍に対する NBI 拡大観察における、統一された分類であ
る JNET 分類が提唱された。それを受け、当院でもポリープ切除の際に拡大観察を行い
JNET 分類での評価を導入することとした。
【目的】JNET 分類導入時の医師間の診断一致率、診断精度を検討する。
【方法】当院の消化器内科5名が、JNET 分類について説明を受けたのちに、当院で拡大
NBI 観察後に内視鏡治療を施行された大腸腫瘍 27 病変の画像を病理組織結果を知らされ
ずに読影し、JNET 分類による評価を行った。
【結果】参加医師の内視鏡経験年数はそれぞれ 1、3、10、12、15 年であり、うち専門
医は 12、15 年の2名であった。
JNET 分類の Vascular pattern,Surface pattern の一致率は両者とも 18.5%(5/27)で
あった。内視鏡専門医2名間での一致率は 63.0%(17/27)、55.6%(15/27)、κ値は 0.47、
0.37 であった。
ま た、 内 視 鏡 経 験 の な い 初 期 研 修 医 2 名 も 加 え た 診 断 一 致 率 は vascular,surface
pattern でそれぞ 14.8%(4/27)、14.8%(4/27)であった。
全員の診断が一致した症例について正診率を求めると、Vascular pattern では 60.0%、
Surface pattern では 80.0%であった。
【考察】導入時の JNET 分類の診断にはばらつきがみられ、正確な評価にはトレーニング
が必要と思われた。一方で診断が一致した症例の正診率は高く、診断法としての有用性
の高さが示唆された。
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セッション6 大腸:一般
S6-3 拡大観察が有用であった早期直腸癌Ⅱa+Ⅱc の一例
国立がんセンター中央病院 内視鏡科
〇紺田健一、小林俊介、蓑田洋介、田中優作、関口雅則、田中寛人、宮本康雄、桑原洋紀、
居軒和也、高丸博之、関口正宇、山田真善、坂本 琢、中島 健、松田尚久、
斎藤 豊
症例は 50 歳代、男性。便潜血陽性のため前医で大腸内視鏡検査を受けたところ、直
腸に腫瘍性病変を認めた。前医の通常内視鏡観察では、直腸 Rb に 20mm 大の IIa+IIc 病
変を認めた。陥凹面は粘液の付着を認め詳細観察は困難であったが、NBI 拡大観察で血
管構造の消失を認め、また CV 染色拡大観察で pit 構造が観察されず、深達度は T1b (SM2)
と診断し、外科手術の方針となった。しかし患者の手術への抵抗が強くセカンドオピニ
オン目的に当院紹介となった。当院で施行した内視鏡検査は、通常観察で前医と同様に
直腸 Rb に 20mm 大の IIa+IIc 病変を認めた。また易出血性であり観察時(挿入前)より
陥凹面からの出血を認めた。陥凹面の NBI 拡大観察では、周囲と比べやや不整な微小血
管が観察されるが、surface pattern は保たれており、佐野分類 CP type Ⅲ A、JNET 分
類 Type2B と診断した。CV 染色拡大観察では小型 pit や一部大小不同の pit を認め、Ⅲ s
および VI 軽度不整と診断した。陥凹面も狭いことまた PG type であることから深達度は
T1a(SM1) と診断し、ESD の方針とした。ESD 直前に再度内視鏡観察を施行し、散布チュー
ブを用い愛護的に水洗を施行し、出血することなく粘液の除去ができた。NBI 拡大観察
は前回と同様の所見であった。CV 染色拡大観察では不規則な pit は認めず、小型 pit を
認め、Ⅲ s 型 pit pattern と診断した。以上より深達度は Tis(M) ~ T1a(SM1) と診断し、
ESD を施行した。
今回、詳細な拡大観察が非常に有用であった一例を Endocytoscopy の画像も含め報告
する。
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セッション6 大腸:一般
S6-4 直腸 0-Ⅰs+Ⅱc 型早期癌の一例
国立がん研究センター中央病院 消化器内視鏡科 1)、国立がん研究センター中央病院 病理科 2)
〇桑原洋紀 1)、田中寛人 1)、小林俊介 1)、蓑田洋介 1)、紺田健一 1)、田中優作 1)、宮本康雄 1)、
関口雅則 1)、居軒和也 1)、高丸博之 1)、関口正宇 1)、山田真善 1)、坂本 琢 1)、
中島 健 1)、角川康夫 1)、松田尚久 1)、関根茂樹 2)、斎藤 豊 1)
症例は 50 歳代男性。便潜血陽性で前医にて下部内視鏡検査を施行、隆起性病変を指
摘され当院紹介された。通常観察で直腸 Ra に 15mm 大の隆起性病変を認めた。隆起の
中央に相対的陥凹を認め、表面は一部凹凸不整もあり通常観察では T1b の可能性も否定
は出来ない所見であった。NBI 拡大観察では陥凹の一部に口径不同、蛇行、途絶を有す
る不整な微小血管を認めるものの血管密度が疎な部分は明らかでなく佐野分類 CP Type
IIIA、JNET 分類 Type2B と診断した。クリスタルバイオレット染色による拡大観察では、
同部は管状および口径不同や不規則な配列を示す pit を認め、Ⅲ L ~ VI 軽度不整と判断
した。また VI pit の範囲は狭く、明らかな demarcation line も認めないため VI (non-invasive
pattern) と診断した。以上より直腸の早期大腸癌、PGtype (polypoidgrowth)、肉眼型 0Ⅰs+Ⅱc、深達度 Tis ~ T1a と診断し内視鏡的切除を施行した。以上の症例に対して病理
結果を含めて供覧する。
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セッション6 大腸:一般
S6-5 特徴的な内視鏡所見を示した 0-Isp+IIa 型早期大腸癌の 1 例
愛知県がんセンター中央病院 内視鏡部 1)、愛知県がんセンター中央病院 消化器内科部 2)
〇田中 努 1)、田近正洋 1)、石原誠 1)、水野伸匡 2)、原 和生 2)、肱岡 範 2)、今岡 大 2)、
奥野のぞみ 2)、稗田信弘 2)、吉田司 2)、平山貴視 2)、渋谷 仁 2)、近藤 尚 2)、
鳥山和浩 2)、藤田 曜 2)、徳久順也 2)、山雄健次 2)、丹羽康正 2)
症 例 は 70 歳 代 女 性。 健 診 2 次 検 査 で 施 行 し た 大 腸 内 視 鏡 検 査 に て、S 状 結 腸 に
25mm 大の 0-Isp+IIa 病変を認めた。丈の高い Isp 部分は 10mm 程度で、頂部は正色調
で一部に白苔を伴っており、基部は発赤調であった。また、基部は細く柔らかで可動性
が認められた。Pit pattern 診断では、IIa 部分で VI 軽度不整 pit、Isp 部分は IV 型 pit お
よび VI 軽度不整 pit を認め、頂部には pit 不明瞭な無構造領域が認められた。NBI 拡大
観察で Isp 基部は広島分類 C1、佐野分類 IIIA であった。EUS は腸管の屈曲が強く病変の
詳細な評価は困難であった。腺腫内癌と診断し ESD にて一括切除を行った。病理組織診
断は高度異型を示す腺腫を背景にした高分化型腺癌であった。また Isp 部の頂部には豊
富な毛細血管や線維芽細胞で構成される肉芽組織が認められ、基部には高分化型腺癌が
粘膜下層へ浸潤していた。特徴的な内視鏡所見を示した早期大腸癌の 1 例を経験したた
め報告する。
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セッション6 大腸:一般
S6-6 「White opaque substance (WOS) が存在した早期大腸癌の1例」
福岡大学筑紫病院 消化器内科 1)、福岡大学筑紫病院 内視鏡部 2)
〇石原裕士 1)、久部高司 1)、今村健太郎 1)、山﨑一朋 1)、八尾建史 2)
症例は 60 歳代の女性。病変は直腸 Rb、約 10mm の陥凹を伴う発赤調隆起性病変
で、肉眼型はⅡa+Ⅱc。インジゴカルミン色素散布像では境界明瞭で不整な陥凹性病変と
して認め、空気多量の遠見像で管腔は弧の硬化像を呈し、伸展不良所見を認めた。NBI
併用拡大観察で病変の辺縁は、個々の微小血管の形態は均一なコイル状やループ状を
呈し regular microvascular(MV) pattern、腺窩辺縁上皮は規則的な弧状の形態を呈し、
regular microsurface(MS) pattern であった。
陥凹面で、個々の MV は WOS のため視認が困難となり評価できなかった。WOS の形
態は斑状や網状と多様性にとみ不整であり、WOS を表面構造の指標にし irregular MS
pattern と判定した。
ピオクタニン拡大観察で染色不良域はあるが陥凹面は VN の所見であった。
【診断・治療・経過】SM 深部浸潤の直腸癌と診断し、低位前方切除術を施行した。現在
まで再発なく経過良好である。
【切除標本の病理組織学的所見】高分化型腺癌 ,SM1850μm,ly0,v1, 簇出なし ,INFa, リン
パ節転移なし。Adipophilin 染色では腫瘍細胞内の基底膜側に陽性であった。
【考察】胃の WOS は腫瘍や腸上皮化生粘膜の上皮の細胞内に集積する脂肪滴であること
が証明され、八尾らにより微小血管が視認できないときに代わりに判定する表面構造の
指標として胃癌の診断体系に応用されている。大腸でも胃同様に NBI 併用拡大内視鏡観
察で血管の視認を困難にさせている WOS の存在を認めることは、久部により世界に先
駆けて報告された。久部らの検討では大腸上皮性腫瘍の約 40% に WOS が存在し、悪性
度が高い病変ほど WOS の存在頻度が高かったと報告している。本症例は NBI 併用拡大
観察で WOS がびまん性に存在していたため、微小血管像が視認できないため、WOS を
表面微細構造の指標に用いて診断を行った SM 癌症例であった。今後、大腸においても
胃と同様に WOS は拡大内視鏡の診断の新しいマーカーとなり得る可能性が考えられた。
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セッション7 大腸:一般
セッション7 大腸:一般
S7-1 直腸 0-IIc(LST-NG)病変の 1 例
国立がん研究センター東病院 消化管内視鏡科 1)、
国立がん研究センター東病院 臨床腫瘍病理分野 2)
〇岡本直樹 1)、池松弘朗 1)、大瀬良省三 1)、山本陽一 1)、高島健司 1)、中村 弘 1)、
本部卓也 1)、今城眞臣 1)、門田智裕 1)、森本浩之 1)、大野康寛 1)、矢野友規 1)、
小嶋基寛 2)、落合淳志 2)、金子和弘 1)
症例は 70 歳代、男性。便潜血陽性を主訴に近医受診、大腸内視鏡検査で直腸に病変を
認め、当院紹介となった。通常観察では、直腸 Ra に 20mm 大の発赤調の辺縁隆起を伴
う陥凹性病変を認め、空気の増減により陥凹の変形を認めた。インジゴカルミン撒布に
よる色素観察では、陥凹面はより明瞭となり、陥凹内に狭い範囲で腺管密度が高い領域
を認めた。NBI・BLI 拡大観察では、陥凹内の血管は一部で口径不同・不均一な分布の血
管を認めるも、ほぼ口径整・均一な分布であり、JNET 分類で Vessel pattern Type2A, ま
た Surface pattern は一部不整を認めるも、ほぼ整であり、Type2A と診断した。クリス
タルバイオレット染色下拡大観察では、VI 型軽度不整 pit pattern であり、non-invasive
pattern と診断した。以上より、0-IIc 型(LST-NG)早期大腸癌、深達度 M と診断し、内
視鏡的粘膜下層剥離術を施行した。病理診断は、adenocarcinoma, tub1, pT1a(M), ly0,
v0, pHM0, pVM0 であった。本症例は NBI と BLI の両システムで観察を行ったので、両
システムの画像を並べて提示する。
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セッション7 大腸:一般
S7-2 興味ある内視鏡所見を呈した LST NG pseudo depressed type の1例
松戸市立病院 消化器内科 1)、がん研究会有明病院 内視鏡診療部 2)
〇武田晋一郎 1)、土肥容子 1)、槇田智生 1)、森居真史 1)、齋藤秀一 1)、岡部真一郎 1)、
為我井芳郎 2)
症例は 70 代、女性。虚血性腸炎で入院した際に大腸内視鏡検査を施行したところ、S
状結腸に内部に軽度発赤領域を伴う 20mm 大の隆起性病変を認めた。インジゴカルミン
撒布にて病変内部に顆粒や結節は認めず、なだらかな陥凹を有し辺縁に偽足様の所見を
伴っていることから LST-NG(PD)と診断した。NBI 拡大観察では、血管の口径不同は
認められたが、疎血管野領域はみられなかった。クリスタルバイオレット染色による拡
大観察では、通常光観察において発赤がみられた周囲の領域で pit の内部狭小・辺縁不
整を呈していた。同部位では VI 高度不整 pit pattern であり、一部に不整で複合を伴う
pit を認めた。VI 高度不整を伴う領域が狭いことから SM 浅層までの早期大腸癌と診断し、
ESD を施行した。病理所見は発赤部周辺直下で、筋板を破って粘膜下層浸潤を来たして
いた。最終病理組織診断は tub1>tub2, T1a(SM580μm)、INFb、ly0, v0, budding G1 であっ
た。
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セッション7 大腸:一般
S7-3 短期間に形態変化を来した早期直腸癌の一例
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科
〇関口雅則、田中寛人、小林俊介、蓑田洋介、紺田健一、田中優作、桑原洋紀、宮本康雄、
居軒和也、高丸博之、関口正宇、山田真善、坂本 琢、中島 健、松田尚久、
斎藤 豊
症例は 50 歳代、男性。便鮮血陽性のため前医で大腸内視鏡検査を受けたところ、直
腸に腫瘍性病変を発見され当科紹介となった。
通常観察では直腸 Rs に 10mm 大、強発赤調、頂部に僅かな陥凹を有する平坦隆起性
病変として認識された。インジゴカルミン散布にて病変肛門側に正色調の一段低い隆起
を僅かに伴っていることが判明した。
NBI 拡大観察では平坦隆起部には不整な拡張血管を密に認めた。Surface pattern は認
識不能であった。JNET 分類 Type 3 と診断した。肛門側は網目状の血管を認めた。
CV 染色拡大観察では、平坦隆起部は pit の大小不同、配列の乱れ、狭小化、辺縁不整
を認め、Type VI (invasive pattern) と診断した。一方肛門側では、開大 II 型 pit を認めた。
超拡大内視鏡観察では平坦隆起部では腺腔不明瞭および核の不整形を認め、EC 3b と
診断した。肛門側の平坦部の腺腔は不揃いな円形を呈していた。
深達度評価のため超音波内視鏡検査を施行したが、病変に対する接線方向のアプロー
チが困難で評価はできなかった。
内視鏡的に深達度は T1b (SM2) と診断し、外科治療の方針となった。
外科治療前の点墨施行目的に再度 (1 ヶ月半後 ) 内視鏡検査を行った。通常観察では、
平坦隆起部の発赤の程度は軽減し、丈は低くなり、病変径も若干縮小していた。肛門側
は軽度褪色調であった。インジゴカルミン散布では、初回検査時と比べ周囲との境界が
不明瞭であった。NBI 拡大観察では平坦隆起部は血管密度の減少および拡張した血管の
途絶を明瞭に認めた。Surface pattern では無構造領域を認めた。CV 染色拡大観察では
全体として VI (invasive pattern) であり、初回検査時に肛門側に認めた開 II 型 pit は消失
していた。超拡大内視鏡観察では初回検査と同様 EC 3b の所見であった。
今回、短期間に肉眼形態が変化した稀有な一例を経験したため報告する。
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セッション7 大腸:一般
S7-4 微小な直腸 MALT リンパ腫の 3 症例 4 病変
弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座 1)、
弘前大学医学部附属病院 光学医療診療部 2)、
弘前大学大学院医学研究科 病理生命科学講座 3)
〇澤谷 学 1)、三上達也 1,2)、花畑憲洋 1)、吉田健太 1)、菊池英純 1)、平賀寛人 1)、珍田大輔 1)、
櫻庭裕丈 1)、下山 克 1)、鬼島 宏 3)、福田眞作 1)
【はじめに】直腸 MALT リンパ腫は比較的稀な疾患で、鑑別には神経内分泌腫瘍や良性
リンパ濾胞性ポリープなどと鑑別を要する。また、1cm 以下の微小な MALT リンパ腫に
対する拡大観察の報告は少ない。今回、我々は内視鏡的に一括切除し得た 1cm 以下の直
腸 MALT リンパ腫の 3 症例 4 病変を経験したので報告する。
【症例 1】75 歳、男性。大腸癌検診で FOBT 陽性にて当科受診。CS で Rb に 1cm 大の同
色調の SMT 様隆起性病変あり。頂部には浅い陥凹を有しており、NBI 拡大観察では比較
的深い部位に樹枝状の血管拡張がみられ、表層には軽度拡張、蛇行した血管が不均一に
分布していた。IC 撒布後の拡大観察では、疎な I 型 pit がみられた。全摘除生検目的に
EMR を施行したところ、MALT リンパ腫であった。
【症例 2】63 歳、女性。便柱狭小化にて近医受診。Ra に病変あり当科紹介。CS では Ra
に 6mm 大の比較的丈の低い SMT 様隆起病変あり。全体に同色調だが、斑状の白色調領
域が目立ち、同部に一致して浅い陥凹を有していた。また、NBI 拡大観察では一部にシ
アン色の太い樹枝状血管拡張がみられ、陥凹に一致してリンパ濾胞様の白色領域を認め
た。CV 染色では、疎な I 型 pit を有していた。EMR-L を施行し、MALT リンパ腫と診断。
【症例 3】77 歳、女性。大腸癌検診で FOBT 陽性にて CS。Ra に 6mm 大、Rb にだるま
状の 10m 大の SMT 様隆起性病変あり両病変とも浅い陥凹を有していた。NBI 拡大観察
では、Ra 病変はシアン色の太い血管拡張と表面の蛇行した血管拡張、Rb 病変は樹枝状
の血管拡張を有しており、特に Rb 病変で白色調領域が広くみられた。CV 染色では疎な
I 型 pit がみられた。ESD を施行し、両病変とも MALT リンパ腫であった。
【まとめ】4 病変中 3 病変で浅い陥凹とリンパ濾胞様白色調領域が、全病変で太い樹枝状
血管拡張がみられた。
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セッション7 大腸:一般
S7-5 NBI 観察が病変認識に有効であった肛門管癌の1例
佐野病院 消化器センター
〇内海貴裕、岩館峰雄、佐野 亙、砂川弘憲、服部三太、蓮池典明、佐野 寧
【症例】80 歳代女性
【既往歴・家族歴】直腸癌
【現病歴】直腸癌術後のサーベイランス目的に大腸内視鏡検査を施行された。
【内視鏡所見】反転操作で通常光にて肛門管に境界不明瞭だがやや褪色調な領域を認めた。
非拡大 NBI 觀察では白色調の 30mm 大の陥凹性病変として認識でき、一部ヘルマン線か
らのはみ出しを認めた。拡大 NBI 觀察では陥凹部に一致して拡張、蛇行、口径不整なルー
プ状血管を認めた。咽頭・食道領域の癌とは異なり、血管密度は疎で血管間の色調は白
色調であった。早期の肛門管癌と考え、患者の希望もあり内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
を施行した。
【病理】一部で粘膜下層への浸潤を認める扁平上皮癌を認めた。またHPV感染を示唆す
る koliocytosis を伴っていた。
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セッション7 大腸:一般
S7-6 大腸 Endocytoscopy 診断における EC3a 所見の核形態分類の検討
昭和大学横浜市北部病院 消化器センター
〇工藤豊樹、森 悠一、若村邦彦、三澤将史、一政克朗、中村大樹、前田康晴、豊嶋直也、
林 武雅、宮地英行、片桐 敦、石田文生、工藤進英
【背景】Endocytoscopy による EC 分類は、大腸病変に対する質的・量的診断について有
用と報告されている。EC 分類は現在亜型も含めて簡便に 5 つに分類されているが、中で
も EC3a 所見と診断された病変の内訳をみると腺腫~ SM-m までと幅広く、内視鏡治療
適応外病変まで含む症例もいくらか存在する。そこで EC 分類の深達度診断精度を更に
高めることを目的として、EC3a における SM-m の指標となる内視鏡所見因子の有無に
ついて検討した。
【方法】2005 年 5 月~ 2015 年 1 月の期間で EC 分類の EC3a または EC3b と診断され
た 277 病変について retrospective に検討した。SM-m の指標となる超拡大内視鏡所見の
因子については腺腔の不明瞭化を除いた、①核の高度腫大、②核の重層化、③血管の著
明な拡張、④微細顆粒構造とした。またその結果を基に、深達度診断において有用な因
子を加味した EC3a の診断精度についても検討した。
【結果】4 因子における多変量解析の結果、SM-m の診断に有用である因子は核の高度腫
大(p<0.01)、重層化(p<0.01)、微細顆粒構造(p<0.05)であった。これらの所見を
SM-m における重要因子と考え、EC3a と診断された病変のうち同所見が陽性であった病
変を EC3a-high grade、陰性であった病変を EC3a-low grade として診断を行った。その
結果、119 病変中 27 病変が EC3a-high grade と診断された。また診断精度においては
感度 88.9%、特異度 91.3%、陽性的中率 75.0%、陰性的中率 96.6%、正診率 90.8%、陽
性尤度比 10.2 であった。
【結論】EC3a 所見においては核の高度腫大、核重層化所見が SM-m の指標となることが
分かった。また EC3a に同所見を加味することにより、EC 診断における SM-m 以深の診
断精度が向上する可能性が示唆された。
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